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※eJudo携帯版「e柔道」9月19日掲載記事より転載・編集しています。

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全日本ジュニア体重別マッチレポート 3/4

永瀬貴規、新旧IH王者対決を制して初優勝
81kg級

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写真:準決勝、
永瀬貴規が佐藤正大を攻める
決勝に進出したのは第1シードの永瀬貴規(筑波大1年)と第2シードの小原拳哉(東海大相模高3年)。戦前の予想通りの顔合わせとなった。

10年高校選手権、11年インターハイの覇者である永瀬は昨年に続く決勝進出。この日は2回戦で木谷恒次郎(日体大1年)から大外刈と小内刈で2つの「有効」を奪って優勢勝ち、3回戦は向井翔一郎(高岡第一高2年)から大外刈で一本勝ち(0:44)、準決勝は今期高校選手権2位の佐藤正大(大牟田高3年)とGS延長戦をフルに戦いきり、僅差3-0で勝利しての決勝の畳。

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写真:3回戦、
小原拳哉は強敵上田達彦から一本勝ち
一方の小原は今期の高校選手権とインターハイの覇者。2回戦は徳永一光(鹿屋体育大1年)を僅か28秒の小外刈「一本」で一蹴、3回戦は優勝候補の一角・上田達彦(東海大1年)から「指導1」を奪った末に払腰で一本勝ち(3:01)、準決勝は前戦でインターハイ2位の渕原槙一(日体荏原高3年)に僅差3-0で勝ち上がってきた香川健吾(崇徳高3年)に支釣込足と裏投で2つの「技有」を奪って合技「一本」(3:25)の圧勝。3戦連続一本勝ち、今大会も圧倒的な強さを見せ付けての決勝進出だ。

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写真:決勝、序盤は小原が攻勢
決勝は永瀬が右、小原が左組みのケンカ四つ。
小原が奥襟を叩くと永瀬の頭が下がる。永瀬は両襟を持つが小原はその引き手を切り離して自らのみが袖を持ち、完璧な組み手。右大内刈、右内股と放ってこれは潰れてしまうが、直後の25秒に永瀬に「指導1」。

引き手争いからまたも小原がしっかり袖を持ち、左小外刈、左小内刈、左内股から朽木倒と一方的に攻める。永瀬は右小外刈を2連発するがこれは技が軽く、小原が場外に位置を変えて展開を切り「待て」。

直後、小原が奥襟を叩いて上下にあおる。永瀬は小原のパワーに抗することが出来ずそのまま膝を屈して畳に伏せてしまう。小原は苦笑い、会場はどよめき。直後の1分3秒、永瀬に「指導2」が宣告される。ここまでは小原が優勢、一方的な展開。

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写真:「指導2」失陥をきっかけに
永瀬が前に出て攻め始める
再開後小原はまたも二本持って完璧に近い組み手を得るが、永瀬はここから明らかに前に出始め、背中を握って思い切った右内股、小原は跳ねて回避。

永瀬は釣り手で上から背中を叩き、小原は横から背中を持ち返して応じる。永瀬が前に出始めたところでのこの五分の組み手、次の展開に向けて大きなカギを握るこの攻防で、小原はあっさり体落に掛け潰れてしまう。

圧倒的優位だったはずの小原が明らかに「潰れて展開を切ること」を志向したこの一撃で試合の潮目が変わり始める。永瀬は釣り手で肩口を握っての右内股。小原は巴投で対抗するが、下がり始めた故の技であることは否めず、試合の流れは徐々に永瀬。経過時間は2分2秒。
永瀬は背中を持っての左内股。
小原は流れを押し戻そうと引き出しの左小内刈、ここから釣り手で前に押し込んでの踵返に連絡し、永瀬は体を捻って伏せる。経過時間は2分28秒。

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写真:永瀬が
右大内刈を捻じ込んで「有効」奪取
2分44秒、永瀬、斜めの立ち位置から右大内刈を捻じ込む。進入角は浅かったが決めが良く、伏せて逃れようとした小原は中途で上体を制されて畳に押し付けられ「有効」。永瀬、ついにスコアをタイに戻す。

以降も永瀬は釣り手で奥襟、肩口、背中と位置を変えながら右内股で攻め、小原は左体落で対抗するがやや押され気味。攻める永瀬、散発ながら打ち返すことで陣地を回復しながらチャンスを待つ小原、という構図のまま本戦4分が終了し試合はGS延長戦へ。

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写真:小原は
延長戦開始早々に左内股も潰れてしまう
開始早々に小原が左内股に飛び込むが軌道が低すぎて掛け潰れる。
再開後永瀬は相手に膝裏に足を引っ掛けて右大外刈、小原は場外に向かって伏せて逃れる。
小原、相手の右袖を両手で握って右小内巻込の奇襲を見せるが永瀬余裕を持って捌き「待て」。

GS30秒過ぎ、永瀬は右大外刈から右内股と繋ぎ、この戻りに小原が右の浮技。永瀬は上に被って叩き落すがノーポイント。永瀬の圧力がジワジワ効き、小原が散発で打ち返すという本戦終盤の展開は継続。

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写真:永瀬の右体落が「技有」となり
熱戦に幕
GS1分2秒、永瀬が釣り手で上から背中を叩くと、小原は横から背中を叩き返して応じる。この瞬間に永瀬は低い軌道の右体落。間合いが近く、小原は相手の力を逃がせない。小原回転しながらズドンと畳に落ち、主審が「技有」を宣告して熱戦に幕。永瀬、悲願のジュニア初制覇を達成した。

長身を生かした強気の攻めでインターハイを制した永瀬の柔道は健在、「指導2」を失ってからの攻めは迫力十分だった。

一方の小原は「指導2」を得るまでの圧倒的な試合展開を見る限り勝利は濃厚と思われたが、永瀬の気迫に押されたか以降の試合ぶりは全くの別人。圧倒的な強さと裏腹の意外なまでのメンタルの脆さ、今期の団体戦で見せた弱点を再び晒した形での敗退だった。

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写真:優勝の永瀬貴規選手
【入賞者】
優勝:永瀬貴規(筑波大1年)
準優勝:小原拳哉(東海大相模高3年)
第三位:平井将太(東海大1年)
第三位:上田達彦(東海大1年)

永瀬貴規選手のコメント
「前半に「指導」を取られて、どうせ反則ポイントで負けるんだったら返されてもいいから投げに行こう、と思い切っていきました。去年決勝で負けたので今年は勝ちたかった。今日の試合内容は全部ダメ、準決勝もきつかったし、攻め手が遅いです。もっとガンガン先に攻めるようにしないといけない。アジアジュニアでしっかり勝って、シニアでも活躍できるようになりたい」

【準決勝】
永瀬貴規(筑波大1年)○GS僅差3-0△佐藤正大(大牟田高3年)
小原拳哉(東海大相模高3年)○合技[支釣込足・裏投](3:35)△香川健吾(崇徳高3年)

【3位決定戦】
平井将太(東海大1年)○優勢[有効・大外刈]△香川健吾
上田達彦(東海大1年)○背負投(0:27)△佐藤正大

【決勝】
永瀬貴規○GS技有・体落(GS1:05)△小原拳哉


ベイカー敗れる波乱、昨年2位の大町隆雄が優勝攫う
90kg級

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写真:2回戦、ベイカー茉秋が
藤田一生から大内刈で一本勝ち
この階級、そして今大会最大の注目は高校世代で今期負けなし、圧倒的な強さを誇っているベイカー茉秋(東海大浦安高3年)の戦いぶり。これまで相手にほとんど柔道をさせていないベイカーの快進撃はジュニアのカテゴリでも続くのか、それともいよいよ敗退してその力の現在地が示されることになるのか。畳に姿を現す度、会場の視線はベイカーの立つ第3試合場に一斉に注がれ続けた。

警戒、注目、期待と様々な周囲の感情が渦巻く中、ベイカーは2回戦でまず藤田一生(松山大1年)を1分18秒に大内刈「一本」で退けて勝利。

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写真:3回戦、ベイカー茉秋は
前評判の高かった新添悠司の
肘関節を極めて一本勝ち
3回戦は近畿ジュニアを圧勝した勢いのまま2回戦で11年インターハイ2位の郡司拳祐(慶応義塾大1年)を内股「一本」で下した新添悠司(龍谷大附平安高3年)と対戦。長身で懐の深い相手に距離を取られ続けたが、2分30秒に手立てを変えて隅返に飛び込む。これは遠くに落ちてしまったが、相手の腕が伸びたところを腕挫十字固に狙い、嫌って回ろうとする新添の肘を膝で押し込んで極め腕挫膝固「一本」。順調にベスト4入りを果たした。

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写真:小林の左内股「一本」
準決勝は一学年上の内股職人、小林悠輔(筑波大1年)が相手。引き手を争いながら下がり続けるケンカ四つの小林に対しベイカーはジックリ勝負、腰の差しあいに応じながらに応じながら58秒には内股透で転がし、1分10秒には裏投で完全に放り投げ(いずれも場外)て「指導1」奪取。危なげなく試合を進めていたが2分1秒に落とし穴が待っていた。

釣り手で横から背中を叩き、前に出ると場外際まで小林が下がる。ここで腰を差そうと右体落の形で踏み出すと、小林はスタンスの開いたベイカーの股中に左足を差し入れて左内股。フワリとベイカーの体が浮き上がり、あっという間に一回転。小林は前に体を捨ててこれを決める。ベイカーは咄嗟に身を捻り、主審は「技有」を宣告したが、副審2人が「一本」のゼスチャーで異見をアピール。技の評価は「一本」に訂正され、小林の勝ちあがり、そしてベイカーの敗戦が決まった。

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写真:投げを食らった直後のベイカー、
背後から主審の「技有」訂正、
「一本」のコールが響く
「油断があった」と試合後漏らしたベイカーだが、確かに試合ぶりにはその要素が多分に感じられた。下がる小林に対し「どう決めようか」と舌なめずりするかのような落ち着いた試合ぶりには敗退の匂いはほとんどなく、これは業師小林の一発の威力、その一発を生かす組み立てを完遂した図太さを称えるべきだろう。

そして幣サイト記事(7/21コラム欄「今夏、ベイカーを測るモノサシは見つかるのか?」)でも取り上げたベイカーの現時点での実力についてだが、アクシデント的な投技一発で決まったこの試合ではやはり測りかねる部分がある。この大会を見た人間のほとんどが「負けて驚いたがやはりベイカーは強い」という感想を抱いているはずだ。
我々が注視すべきは11月の講道館杯全日本体重別選手権。ここでシニアの強豪と対峙するときに、ベイカーの「底」が初めて見えることになるだろう。

ただし、ベイカーがケンカ四つの相手に横から脇を差した際のスタンスの広さはかねて隙として指摘されていたところでもあり、小林は巧みにそこを突いたと評することもできる。上から目線で試合を続けるのが持ち味となってきた感のあるベイカーがもし同じミスを続けたとしたら、その時、その時点から振り返ってこの試合の評価は「アクシデント」ではなくなるはずだ。

事故で終わるか、ベイカー神話が壊れた最初の試合となるか。この一戦の評価はこの試合を照射べきフィルタが与えられるであろう次戦に委ねられる、と見るのが正当な評ではないだろうか。

ベイカーは3位決定戦で山下竜志(立命館大2年)を立ったままの右大腰で投げつけて快勝(1:34)。3位を確保して今大会を終えた。

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写真:3回戦、大町隆雄が
山下竜志から内股透でを一本勝ち
激戦を勝ち上がって決勝に進出したのは大町隆雄(大牟田高3年)と小林悠輔。

昨年の全日本ジュニア2位、インターハイでは1回戦でベイカーに敗退も今期の高校生で唯一ベイカーに「一本」を許さなかった大町は2回戦の大一番、山本幸紀(桐蔭学園高3年)戦を背負投「有効」、大内刈「技有」と2つのポイントを奪って圧勝。3回戦は山下竜志(立命館大2年)から背負投と内股透で2つの「技有」を奪って合技の一本勝ち(1:18)、準決勝は、長倉友樹(筑波大1年)の欠場で混戦となったブロックを勝ちあがった安達裕助(北海高3年)を僅か30秒の掬投「一本」で一蹴。見事決勝へと勝ち上がった。

一方の小林は2回戦で廣重雄己(西日本短大附高3年)から内股で一本勝ち(1:16)、3回戦は強敵・長澤憲大(東海大1年)との消耗戦をGS僅差3-0で勝ち抜き、準決勝では前述の通りベイカー茉秋に一本勝ち。会場の話題を攫って決勝進出を決めた。

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写真:決勝、
大町が左一本背負投を連続で繰り出す
決勝は大町が右、小林は左組みのケンカ四つ。
引き手争いから大町が左一本背負投を連発、さらに引き手争いから釣り手一本の右内股で相手を崩し、直後の54秒に小林にやや性急な「指導1」が与えられる。

以後も引き手争いが続き、ファイタータイプの2人の対戦としては意外なまでの静かな展開。1分20秒過ぎに大町が釣り手を突いておいての左一本背負投、小林は手を畳について伏せる。

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写真:小林の左内股、
大町はケンケンしながら捌く
大町、二本持って良い組み手を作ると小林は釣り手で大町を振り崩しながら左内股。大町が腰を入れて対抗するとこれを乗り越えて再度の左内股に飛び込むが、大町はケンケンしながら股中で捌いて、潰れた小林の背に乗って「待て」。

2分を過ぎたあたりから小林がやや攻勢。下から釣り手を持って位置をずらしながらの左小外刈で相手を崩し、2分50秒には大町の右内股の起こりに反応して左内股をカチ合わせ、大町を大きく浮かせて腹ばいにさせる。

大町は左一本背負投に左回りの「韓国背負い」を放つが小林は動ぜず。やや試合が膠着した3分43秒に大町に「取り組まない」判断の「指導1」が与えられる。

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写真:大町の左背負投、
小林大きく崩れて「有効」
そのまま試合は動かず本戦4分が終了。試合はGS延長戦へともつれ込む。

延長序盤は奥襟を叩いた大町が右大内刈と右内股の連携で一方的に攻め、崩れた小林を引きずり出して再度の右内股で大きく崩す。

この展開が切れた直後のGS39秒、大町は左襟を両手で握っての左背負投に座り込む。やや深く入りすぎたが、小林はインパクトの瞬間に縦回転で大きく崩れてしまい、体を捻り切れずに体側からの転がり落ちる。勢いを殺さずにすぐに伏せた小林だが、着地の瞬間の体勢をしっかり見極めた主審は「有効」を宣告して試合終了。

大町、初の全国優勝は全日本ジュニアというビッグタイトル。強豪ひしめくこの階級を勝ち抜いて見事日本一の栄冠に輝いた。

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写真:優勝の大町隆雄
【入賞者】
優勝:大町隆雄(大牟田高3年)
準優勝:小林悠輔(筑波大1年)
第三位:ベイカー茉秋(東海大浦安高3年)
第三位:長澤憲太(東海大1年)

大町隆雄選手のコメント
「勿論目指してはいましたが、正直優勝までは考えていませんでした。一戦一戦確実に勝とう、と臨んだのですがそれが最後まで繋がりました。直前で背中を肉離れしてしまい不安があったんですが、試合中は痛くありませんでした。インターハイで負けているので、ベイカー選手と試合がしたかったです。トレーニングが好きでベンチプレスは140kg挙げられるようになりましたが、技術的にはまだまだなのでこれから頑張っていきたいです。組み手も悪いし、技ももっと増やしていきたいです。性格が慎重なので、どうしても確実に試合をしようとして思い切った技が出ない。これも今後の課題です」

ベイカー茉秋選手のコメント
「悔しいです。前半はいけると思っていましたが、油断してしまいました。研究されていたと思うし、誘いに乗ってしまったのかなと思います。隙があったんでしょう。監督には『試合をたくさんやっていればこういうこともある』といわれました。また一からやっていきます」

【準決勝】
大町隆雄(大牟田高3年)○掬投(0:30)△安達裕助(北海高3年)
小林悠輔(筑波大1年)○内股(2:01)△ベイカー茉秋(東海大浦安高3年)

【3位決定戦】
ベイカー茉秋○大腰(1:34)△山下竜志(立命館大2年)
長澤憲太(東海大1年)○優勢[指導2]△安達裕助

【決勝】
大町隆雄○GS有効・背負投△小林悠輔


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