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※eJudo携帯版「e柔道」3月22日掲載記事より転載・編集しています。

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全国高等学校柔道選手権大会男子団体戦マッチレポート
準々決勝~準決勝 2/2


準決勝

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写真:いよいよ勝負どころ、
東海大相模は円陣を組んで気合を入れる
第2シードの東海大浦安高と第3シードの東海大相模高がマッチアップする好カード。
12月の松前旗大会では東海大浦安が1人残しで勝利しているカードだ。このときは東海大浦安のベイカー茉秋が秋吉俊太に払腰「一本」、高梨優也に掬投「有効」、河端祥也に引き分けと3人を相手にし、鎌田嵩平が小原拳哉と引き分けている。東海大相模の得点は秋吉俊汰が女良魁斗から挙げた大腰「一本」の1点だった。

開示されたオーダー順は下記。

東海大浦安高 - 東海大相模高
(先)女良魁斗 - 眞砂谷幸弥
(次)石神大志 - 河端祥也
(中)鎌田嵩平 - 高梨優也
(副)ウルフアロン - 秋吉俊汰
(大)ベイカー茉秋- 小原拳哉

東海大浦安はベイカー茉秋、東海大相模は小原拳哉とともに大将にエースを置く布陣。

抜き役の駒数に劣る東海大相模は絶対の大駒である小原をどこに置くかが注目されてきたが、前で凌いで「タイで勝負すれば今の高校生では一番強い」(高橋洋樹監督)小原まで勝負を持ち込む作戦。

一方の東海大浦安は後衛3人に鎌田嵩平、ウルフアロン、ベイカー茉秋を据えた。この3人と小原はともに東京・春日柔道クラブの出身で、中学時代までは小原の実力が圧倒的に抜けていたという関係。4人全てが攻撃的選手だが、リードして終盤戦を迎えた場合、ガンガン来るであろう小原に対して、攻撃をアイデンティティとしてのしあがってきた浦安の中核を担うこの3人が冷静に戦うのか、はたまた打ち合いに応じるのか、このあたりがみものだ。

東海大相模、最後はどうしても小原が複数選手を抜く展開を覚悟しなければならない。逆に言えば東海大浦安にとって最悪のシナリオ、負ける場合の唯一に近い可能性は小原に走られてしまうこと。そのためには小原に当てる選手の枚数は1枚でも多いほうがいい。小原登場までにリードして1枚でも多く駒を残したい東海大浦安、一方タイ、もしくは最小の1人差で小原を登場させたい東海大相模、前半戦の焦点はここに絞られる。

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写真:東海大浦安・女良魁斗が
横三角から手順通りに抑え込む
先鋒戦は東海大浦安・女良が右、東海大相模・眞砂谷が左のケンカ四つ。
女良が巴投から引き込み、得意の腕挫十字固を狙うが眞砂谷これを持ち上げて「待て」。女良再び同様の展開を狙うも東海大相模サイドから「腕を伸ばすな!」と大きな声が飛び眞砂谷これを我慢して耐える。

残り1分を過ぎ、眞砂谷がクロスの組み手から前に振り崩したところを女良が捌いて伏せさせ、寝技の攻防開始。女良、頭を潰し踵を差し込んで頭をロック、さらにめくってと一切のプロセスを滞らせずに横三角を完遂、抑え込みに入ると眞砂谷一旦は逃れて「解けた」の声を聞くが、女良あきらめずに再び 横四方固にこれを極めて「一本」。2分31秒。大枠、女良が眞砂谷を圧倒したと言って良い試合だった。東海大浦安は1点を先制、東海大相模はファーストゲームをあっさり落として脆いスタート。

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写真:女良は先手の組み手で
河端に仕事をさせず
続く女良と河端祥也の試合は女良が盤面の安定を志向、組み手の巧みさと先手の技で試合を動的膠着に持ち込むが河端はこれを追い込み切れずに引き分け。小原-ベイカーの大将対決に持ち込むことが絶対条件のはずの東海大相模にとっては抜き役を担うべき河端の引き分けは非常に痛い結果。東海大浦安の1人差リードは動かず。

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写真:東海大浦安・石神大志が
体格を利した右内股巻込「技有」
次戦は体格で大きく勝る東海大浦安の次鋒石神大志が東海大相模の高梨優哉を圧倒。開始早々に右内股巻込で「技有」、これに続く後袈裟固は高梨なんとか逃れたが、1分3秒、石神の右内股が炸裂し「一本」。鋭角に畳に押し込まれた高梨が肩から落ちて肘を痛めてしまうほどの強烈な一発だった。東海大浦安、2人で2勝を挙げてこの時点で早くも2人差リード。

次戦、ところが石神は秋吉俊太を相手に攻め込まれ、前戦とは打って変わった脆い試合。秋吉は左背負投、一本背負投の形に腕を抱えた右大外刈と奔放に攻め、序盤で石神に「指導1」、残り28秒でついに「指導2」が与えられる。東海大相模この試合初のリード。
石神猛然と前に出て右大外刈も秋吉これを高々と持ち上げ抱えて「待て」。
ここでクロージングを誤った石神、畳を蹴って前に出るがこれを呼び込んだ秋吉、豪快に右背負投を決めて「一本」。東海大相模、1つ差を詰めて東海大浦安のリードは再び1人差。

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写真:鎌田嵩平が右小内刈で秋吉俊汰を
転がす。しかし判定は秋吉の「有効」
東海大浦安は73kg級の中堅、鎌田嵩平が登場。軽量を強気でカバーすることが身上の鎌田、開始早々鋭い右小内刈で秋吉を転がすが、秋吉は倒れながらこれを返そうとする。秋吉は体側から倒れ、一方鎌田は前に伏せる形で秋吉を制したと思われたが、主審はこれを秋吉の「有効」とジャッジ。浦安サイドは騒然。
ここで失点するわけにはいかない鎌田、強気に釣り手で奥襟を叩いての右内股、右袖釣込腰、組み際の左小内巻込と連発。1分過ぎからややこれをもてあまし始めた秋吉に「指導1」、さらに奥襟を叩き小内刈、袖釣込腰、体をくっつけての掬投で秋吉を伏せさせること数度、鎌田が攻撃を積み上げた残り23秒、ついに秋吉に「指導2」が与えられてスコアはタイ。試合はこのまま引き分けとなり、東海大浦安の1人差リードのまま、東海大相模は大将の小原拳哉が出動することとなった。

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写真:ウルフアロンと小原拳哉、
組み手に妥協しないウルフに
なかなか小原は形を作れない
東海大浦安副将のウルフアロン、小原ともに左のケンカ四つ。
小原は前に出ながら得意の二段の左小外刈、一方のウルフは小原の釣り手を絞って引き手側に乗せ、左内股巻込。ともに引き手が先に欲しい、引き手を制されたら残りの袖を制したい、と組み手に妥協せずこれが両袖の膠着を生む場面多々。ウルフが小原に良い形で引き手を持たれることを嫌い、釣り手を自らの引き手側、小原の左腕に乗せて凌ぐ展開が続き、小原なかなかしっかり持つことができない。焦れた小原、早い動きで組み際に奥襟を叩きながら二段の左小外刈で追うが、心得たウルフは場外に逃れ、積極性を匂わせるべく思い切り左内股を仕掛けて小原を跳ね上げる。

打開策が見えない小原、釣り手で奥襟を叩く良い形を技の仕掛けまで維持できず、右一本背負投を仕掛けるもウルフは左大内刈で展開を切り、寝技に持ち込んで時間を消費。残り時間わずか、小原右袖釣込腰を仕掛けるが防御に意識をシフトしているウルフはこれを振り返して動ぜず。試合はそのまま引き分けとなり、東海大浦安高が1人残しで勝利、見事決勝へと駒を進めた。

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写真:ウルフの割り切った戦いに
小原がつきあってしまい取り切れず
東海大浦安高○1人残△東海大相模高
(先)女良魁斗○横四方固△眞砂谷幸弥
(先)女良魁斗×引分×河端祥也
(次)石神大志○合技(1:03)△高梨優也
(次)石神大志△一本背負投(2:56)○秋吉俊太
(中)鎌田嵩平×引分×秋吉俊太
(副)ウルフアロン×引分×小原拳哉
(大)ベイカー茉秋

試合は小原、ウルフ、出場のなかったベイカーら主役級の得点がないまま終了。
双方の得点は合計3点、勝者は3人いたものの1人抜いて分けるというソリッドな試合を演じた選手が女良1人だったこともあり、緊張感に比してやや大味な試合だった。

ポイントは小原に仕事をさせなかったウルフの割り切りぶりと、抜き役を担うべき小原の意外な淡白さ。リードは僅か1人、準決勝までの試合ぶりも決して本来のものとはいえない出来の東海大浦安にとっては、たとえ盲目的な攻めであっても小原に開始からガンガン攻められて流れを作られるのが一番嫌だったはずだが、小原は意外にも丁寧な柔道でウルフの組み手争いにつきあい、自らの力を殺した。
東海大相模の高橋洋樹監督の口癖は「もっと激しく」、歴代チームのエース級は地力もさることながらこの「激しさ」を繰り出すべき場面では、激しさ自体で相手を恐怖させるようなラッシュ、ダッシュを厭わなかった。もし小原が激しさ自体でウルフの気持ちを挫くような試合を志向したならば、東海大浦安サイドに「全部めくられるかもしれない」「大将対決であればどう転ぶかわからない」という恐怖が生まれた可能性も皆無ではなく、そして恐怖自体で試合を誤る可能性もまた生まれたはずだ。ビハインドを背負い後のない小原は、ここに賭けるべきだったのではないだろうか。

この小原を止めたウルフはこれもおとなしい試合だった。思い切って仕掛けた、とるべきリスクをとって仕掛けた技は明らかに場外に出た後の内股一発のみで、ウルフ特有のお互いのバランス勝負になるような振り回し、距離を詰めての仕掛けはほぼ皆無。
東海大浦安は攻撃的であることをアイデンティティとしてのしあがってきたチーム。状況を弁えて引き分けという果実を得たこと、割り切って仕事をさせなかった冷静さが光る一方、あまりにも明らか過ぎる引き分け志向が決勝に与える影響もまた危惧される試合ぶりだった。

来なかった小原、行かなかったウルフ。ともに攻撃がテーマであるはずの両チーム、番長タイプの両ポイントゲッターの意外な「おとなしさ」、物分りの良さが目立った試合だった。

07年大会以来常に決勝の畳に上がり続けていた東海大相模は久々の準決勝敗退。
同校の高橋洋樹監督は「まだまだ力不足。体、技術、精神力と全ての面で浦安のほうが上だった」と試合を総括。「先鋒、次鋒で取って流れを作らなければいけなかった」と敗戦を分析してみせた。また、泣きじゃくる生徒を「泣くな、泣くなら勝って泣け」と叱咤した林田和孝総監督も「お粗末だった。勝負できる地力がまだない。心技体が備わってない」とほぼ全く同じコメント。「作戦があっても攻撃をしないと始まらない」と消極的な試合に陥った準決勝に評価は辛辣だった。

高橋監督はしかし「これでは終われない。夏に向けてまた鍛えなおします」と前を向き、「これだけ小さいチームでベスト4まで来た。これを励みに頑張らせます」とさらなる猛稽古を誓っていた。

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写真:桐蔭学園・藤井靖剛が
長友幹斉から跳巻込で一本勝ち
桐蔭学園高○2人残△天理高
(先)竹内信康×引分×長谷川綾一(先)
(次)渡部達也○大腰(2:48)△西尾徹(次)
(次)渡部達也△払腰(2:59)○長友幹斉(中)
(中)藤井靖剛○跳巻込(1:22)△長友幹斉(中)
(中)藤井靖剛×引分×石井湧磨(副)
(副)山本幸紀○優勢[有効]△大岩郁弥(大)
(大)岡田敏武

桐蔭学園高と天理高の対決は桐蔭が2人残しで勝利。
両チームともに、どこからでも得点の狙える駒の充実振りが特徴。ゆえにこの試合も取って取られてとスコア上は乱戦となった。

先鋒戦は引き分け。
次鋒戦は桐蔭学園の小兵・渡部達也が残り12秒の大腰「一本」で勝利して殊勲の先制点を挙げるが、天理も中堅長尾幹斉が左小外刈「技有」、隅落「有効」、さらに試合終了ギリギリの払腰「一本」で取り返して試合は拮抗。

中堅同士の対決では桐蔭学園唯一の大型選手である藤井靖剛が「指導1」を奪って長友を追い詰め、跳巻込で弾き投げて一本勝ち。天理はエース格の石井湧磨の出動となった。

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写真:藤井-石井による巨漢対決
桐蔭学園は後衛にエースの山本幸紀、重量級狩りを得意とする担ぎファイターの岡田敏武が控えており、この藤井-石井の対決がこの試合最後のポイント。石井はなんとしてもここを突破して山本を引っ張りだしたいところだったが、藤井もここは引かずにこの試合は引き分け。

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写真:山本が大岩の左払腰を隅落で返して
「有効」
盤面配置からして、石井が下がったところでこの試合の行方は見えた。桐蔭学園のエース山本は天理の大将・大岩郁弥を相手に冷静に戦い、左払腰を釣り手側に引き落とし返し「有効」ひとつを上積みして勝負を決めた。桐蔭学園高は優勝した05年大会以来の決勝進出。

敗れた天理も久々のベスト4進出。大型選手をそろえ、一発の恐怖を晒しながら試合を有利に進めて縺れる試合を寝技で取り切る、とこれはまさしくかつての天理の柔道。3位という結果のみならず、選手のタイプ、柔道の質を含めてまさしく名門復活といって良い快進撃だった。


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