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同じ反則行為であっても、講道館ルールとIJFルールでは、反則の重みが違う場合が多々あります。
試合者、審判員の方は誤解がないよう注意して下さい。
講道館 |
IJF |
解説および補足 |
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禁止事項(反則) 講道館規定:33項目 指導:14項目 |
試合者が禁止事項(反則)を犯したときは、その程度に応じ、「指導」、「注意」、「警告」、「反則負け」を宣告する。 既に反則を受けている試合者が、さらに禁止事項(反則)を犯したときは、現在受けている反則よりも重い反則となる。この場合、前に受けた反則は自動的に消滅する。 講道館規定の反則の累積についての詳しい説明はこちら |
禁止事項(反則) IJF規定:34項目 指導:23項目 |
禁止事項(反則)は軽微な違反(「指導」)と重大な違反(「反則負け」)に分類される。 2回目以降の「指導」の宣告は、自動的に相手の得点に反映する。前の罰則による得点は取り消され、次に高い得点が直ちに記録される。 IJF規定の反則の累積についての詳しい説明はこちら |
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指導 14項目 (講道館) |
指導 23項目 (IJF) |
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積極的戦意に欠け、攻撃しないこと。(約30秒間) 最初に与えられるものを「教育的指導」という。「教育的指導」は、反則とはならない。ただし、2回目に与えられるものは反則「指導」となる。 |
立ち姿勢において、組む前にでも組んだ後にでも、何の攻撃動作もとらないこと。(約25秒) (原則として片方の試合者のみに与える。) |
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相手と取り組まず、勝負を決しようとしないこと。(約20秒間) また、取り組んでも切り離す動作を繰り返すこと。 | 試合において、勝負を決しようとしないため、故意に取り組まないこと。 | 自分の襟をおさえて相手に握らせないことや、或いは自分の柔道衣の襟を握って前に広げ、相手がつかめないようにする動作にも適用される。 | ||
攻撃しているような印象を与えるが、明らかに相手を投げる意志のない動作を行うこと。(偽装的な攻撃) | 攻撃しているような印象を与えるが、明らかに相手を投げる意志のない攻撃を行うこと。(偽装的攻撃) | |||
立ち勝負のとき、極端な防御姿勢をとること。(6秒以上) | 立ち姿勢において、組んだ後、極端な防御姿勢をとること(通常5秒を超えて)。 | |||
立ち勝負のとき、相手の同じ側の襟や袖を握り続けること。(6秒以上) | 立ち姿勢において、攻撃をしないで「標準的」組み方以外の組み方そすること。(通常5秒を超えて)。
「標準的」組み方とは、左手で相手の上衣の右側の帯より上側の部分を、右手で相手の上衣の左側の帯より上側の部分を握ること。 |
いわゆる「片襟」や「片袖」の組み方を禁止している。後ろ襟では、柔道衣を正中線を越えて持ったときには、同じ側の襟を持ったと解釈される。また、腋の下から正中線を越えて持ったときも同様である。 また、たとえば右手は相手の右襟(または右袖・右腋)を握り、左手は何も握っていない場合(片手のクロス持ち)も同様である。 |
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立ち勝負のとき、相手の帯や裾等を握り続けること。(6秒以上) | ||||
立ち勝負の時、必要もなく相手の腕の下をくぐり抜けること。 技を掛けるためにくぐり抜ける、技に応じてくぐりぬけるときは反則としないが、防御を目的としてくぐり抜けたときは反則を適用する。 正中線を越えて後ろ襟を握られたときは禁止事項を犯して組んでいるとして扱い、くぐり抜けても反則は適用せず、そのまま6秒以上握り続ければ、相手に「同側の襟と袖を握る」の反則を適用する。 |
いわゆる「首抜き」のこと。 IJFには特に「首抜き」に関する規定はないが、首を抜いた後、「極端な防御姿勢」にあたるかどうか考慮しなければならない。 |
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相手の袖口や裾口に指を入れて握ること。立ち勝負のとき、相手の袖口を直接ねじって握ること、又は絞って握ること。 | 相手の袖口又は下穿の裾口に指を差し入れること。 | 自分の袖口に指を入れることはよい。(袖車絞などのとき) | ||
立ち姿勢において、防御のために相手の袖口を握り続けること(通常5秒を超えて)、及び捻り絞って握ること。 | ||||
親指と四指の間で相手の袖口を握ること。(いわゆるピストルグリップの禁止) | ||||
相手の袖口を折り返して握ること。(いわゆるポケットグリップ禁止) | ||||
立ったままで、試合者が互いの手の指を組み合わす姿勢を続けること。(6秒以上) | 立ち姿勢において、勝負を避けるために、相手と片手又は両手の指を組み合わす姿勢を続けること(通常5秒を超えて)。 | |||
服装を乱すこと、及び審判員の許可を得ないで勝手に帯等を締め直すこと。 | 故意に、自分の柔道衣を乱すこと、及び主審の許可なしに帯や下穿の紐をほどいたり、絞め直したりすること。 | |||
防御又は寝技に移るために、立ち姿勢又は寝姿勢から、相手の足(又は脚)を手でとること。ただし、巧みに相手を倒す場合を除く。 | 立ち姿勢から、同時に技を施すことなく、相手の足(両足)、脚(両脚)、あるいは下穿の脚部(両脚部)を、片手又は両手でとること。 | 手で足をとるのと同時に技が決まらないのに、なおも手で足をとり続ける行為を指す。手で足をとってすぐに「踵返」、「朽木倒」、「双手刈」などが決まる場合は該当しない。 | ||
帯の端や上衣の裾を相手の腕に巻きつけること。 | 帯の端や上衣の裾を、相手の身体のどの部分にでも巻きつけること。 | 相手の腕又は手首に半巻き程度であれば認められるが、一周以上巻きつけると危険を伴うことがあるため、反則を適用する。 | ||
柔道衣をくわえたり、相手の顔面に直接手(又は腕)や足(又は脚)をかけること。又は相手の髪をつかむこと。 |
柔道衣を口にくわえること(自分のものでも相手のものでも)。 | 腕挫十字固や三角絞などの技法として認められた技は、足が直接かかっても反則となならない。 | ||
相手の顔面に、直接手または腕、足又は脚をかけること。 | ||||
無意味な発声をすること。 | IJF規定では「反則負け」となる。「反則負け」の項目参照。 | |||
注意 6項目 (講道館) |
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絞技の中で、頸部以外を絞めること。 頸部であっても帯の端又は上衣の裾を利用して絞め、拳又は指で直接絞め、もしくは直接両脚で挟んで絞めること。 |
柔道衣の上衣の裾又は帯を使って、あるいは直接指で絞技を施すこと。 | 脚で相手の身体を絡んでいるだけのときは反則にならないが、胴締は禁止技となる。 | ||
相手の胴(胴絞)、頸、頭を脚で挟んで絞めること(両足を交差し、両足を伸ばして) |
三角絞は頸と腕を絡めるのであり、直接頸を絞めることにはあたらないため、反則とはならない。 | |||
固技のとき、相手の帯や襟に足(又は脚)をかけること。 | 相手の帯、もしくは襟に足や脚をかけること。 | |||
相手の指を逆にして引き離すこと。 | 相手の握りを解くために、相手の指を逆にとること。 | 掌全体をつかむ場合は反則にはならない。 | ||
寝技に引き込むこと。 | 相手を寝技に引き込むこと。 | |||
相手の握りを切るために、相手の手又は腕や膝を足(又は脚)で蹴り放すこと。 | 相手の握りを切るために、相手の手又は腕を膝や足で蹴ること。または技を掛けることなく、相手の脚や足を蹴ること。 | 相手の握りを切るために、膝で押し放すことも同様の行為とみなされる。 | ||
立ち勝負のとき、場外に出ること。ただし、相手の技又は動作により出る場合を除く。 | 立ち姿勢、寝技のいずれにおいても、場外に出るか、相手を故意に場外に押し出すこと。 | 講道館規定では、相手を故意に場外に押し出すと「警告」となるが、IJF規定では「指導」となるので、注意が必要。 | ||
講道館規定に、この反則項目はない。 | 攻撃を始めること、攻撃を行うこと、相手の攻撃を返すこと、また相手の攻撃を防御することなしに、危険地帯(赤畳)に両足が完全に入って立っていること(通常5秒を超えて)。 | |||
警告または反則負け 12項目 (講道館) |
反則負け 11項目 (IJF) |
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「警告」あるいは「反則負け」のどちらを適用するかは審判員の合議によって決定される。 | 「反則負け」は重大な違反を犯した試合者(もしくは「指導」を3回与えられている試合者がさらに軽微な違反を犯したとき)に与えられる。 IJF規定の反則の累積についての詳しい説明はこちら |
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故意に、場外に出ることや相手を出すこと。 | IJF規定では「指導」となる。「指導」の項目参照。 | |||
払腰等を掛けられたとき、相手の支えている脚を内側から刈り又は払うこと。 | 相手が払腰等を掛けたとき、相手の支えている脚を内側から刈ること。 | 相手の技を防ぐために、軸足の内側から止めることは防御の技法として認められており、反則とはならない。 | ||
河津掛で投げること。 *この技で投げることは禁止されているが、この技を掛けることや防御の流れでその体勢になったときは反則とならない。 |
河津掛を試みること。 | |||
関節技の中で、肘関節以外の関節をとること。 | 肘関節以外の関節をとること。 | 「腕緘」や「腕挫腋固」などで肘を攻撃していても、肩関節に影響を与える場合がある。明らかに肩が攻撃されて、相手が試合をする能力を失った場合は、負傷させた方の試合者が「反則負け」となる。 | ||
背を畳につけている相手を引き上げ又は抱き上げたとき、これを突き落とすこと。 | 背を畳につけている相手を引き上げ、これを畳に突き落とすこと。 | |||
試合者の一方が後からからみついたとき、これを制しながら、故意に同体となって後方へ倒れること。 | 試合者の一方が、後ろからからみついたとき、これを制しながら、故意に同体となって後方に倒れること。 | 「肩車」で直接後方にブリッジするようにして投げることは、肩膝立ちの姿勢からであっても反則となる。 | ||
立ち姿勢から腕挫腋固等を施す場合、一挙に体を捨ててとること。 | 腕挫腋固のような技を掛けるか又は掛けようとしながら、畳の上に直接倒れること。 | 肘関節を極めて投げる背負投や、腋固めの体勢で体を捨てながら掛ける内股も反則とする。 飛びつき十字固は反則とならない。 |
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場外で技を施すこと。 | IJF規定にこの項目はない。 | |||
審判員の制止又は指示に従わないこと。 | 主審の指示に従わないこと。 | |||
相手の人格を無視するような言動をすること。 | 試合中に、無意味な発声や、相手や審判員の人格を無視するような言動をとること。 | 「無意味な発声」は、講道館規定では「指導」であるが、IJF規定では「反則負け」となるので注意が必要。 | ||
頸の関節及び脊柱に故障を及ぼすような動作をすること。 | 特に頸や脊椎など、相手を傷つけたり危害を及ぼしたり、あるいは柔道精神に反するような動作と行うこと。 (手に粘着スプレーとつけたり、足にゴム製の当て具や伸縮性バンテージなどを付けることは公正さを欠くため「柔道精神に反すること」として「反則負け」とする。) |
IJF規定では、「蟹挟」がこの項目の対象となる。 (講道館規定では、「蟹挟」が有効技とするか否かは、大会主催者によって予め定められる。禁止した場合は、掛けたときは「警告」となり、さらに掛けたときは「反則負け」となる。) |
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相手の体に危害を及ぼしたり、柔道精神に反するようなこと。 | ||||
反則負け 1項目 (講道館) |
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内股、跳腰、払腰等の技を掛けながら身体を前方に低く曲げ、頭から畳に突っ込むこと。 | 内股、払腰等の技を掛けるか、又は掛けようとしながら、身体を前方へ低くまげ、頭から畳に突っ込むこと。また、立ち姿勢又は膝をついた姿勢から、肩車のような技を掛けながら、あるいは掛けようとしながら、まっすぐ後方に倒れること。 | 明記された技以外にも、「肩車」や「袖釣込腰」など頭から畳に突っ込んで掛けた技のすべてに適用される。 | ||
禁止事項(反則)に定めはないが、危険防止項目に「金属その他相手に危険を及ぼすようなものは、一切つけてはならない。」とあり、試合前或いは試合中に審判員が違反を発見した場合は従うように指示する。試合者が従わないときは「失格」となり、他方の試合者を「失格勝ち」とする。 | 硬い物質又は金属の物質を身につけていること(覆っていても、いなくても)。 | 指輪や金具がついているサポーターを含む。 | ||
「反則負け」した場合のその後の試合への出場について | ||||
講道館 |
IJF |
解説および補足 |
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「反則負け」となった試合者はその後の一連の試合に出場することができる。 講道館規定の反則の累積についての詳しい説明はこちら |
直接的な「反則負け」を犯した試合者は、その後一連の試合に出場できなくなる。 指導の累積により「反則負け」となった試合者は、その後の一連の試合に出場することができる。 IJF規定の反則の累積についての詳しい説明はこちら |
「一連の試合」とは、大会名称が同じであり、同じ大会期間中に行われるものを指すが、団体戦と個人戦は別の大会として扱う。 |
参考資料:
「詳解 柔道のルールと審判法 [2004年度版]」(大修館)
「講道館柔道試合審判規定 <取扱い統一事項> (平成13年6月4日改正)」(講道館/全日本柔道連盟)
「国際柔道連盟試合審判規定 2003年度4月14日施行(2003年IJF理事会決定)」(全日本柔道連盟)
各種公認審判講習会資料