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【レポート】代表戦で内村秀資が会心の勝利、東海大が日本大振り切る/全日本学生柔道体重別団体優勝大会レポート③準決勝(2)

(2021年12月17日)

※ eJudoメルマガ版12月15日掲載記事より転載・編集しています。
代表戦で内村秀資が会心の勝利、東海大が日本大振り切る
全日本学生柔道体重別団体優勝大会(男子23回)レポート③準決勝(2)
日時:2021(令和3)年12月8日(水)~9日(木)
会場:ベイコム総合体育館(尼崎市)
取材・文:古田英毅/eJudo編集部
写真:坂口美貴/eJudo編集部
→全試合結果

■ 準決勝
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内村秀資と村上優哉の先鋒戦

東海大 0代-0 日本大
[先鋒・73kg級]内村秀資×引分×村上優哉
[次鋒・100kg超級]松村颯祐×引分×東部直希
[五将・81kg級]山中堅盛×引分×賀持喜道
[中堅・60kg級]市川龍之介×引分×大田原優斗
[三将・66kg級]岸武蔵△両者反則負(3:08)△藤原大晴
[副将・100kg級]村尾三四郎×引分×山口貴也
[大将・90kg級]安部光太×引分×北條嘉人
[代表・73kg級]内村秀資〇GS技有・巴投(1:26)△村上優哉

先鋒戦(73kg級)は東海大・内村秀資が右、日本大・村上優哉が左組み。常であれば引き手争いの膠着に陥りやすいケンカ四つだが、ともに両手両足極めてよく動き、位置を変え、足を出し、手を交換し、決してひとつの形に留まらない早い展開の攻防が続く。ともに試合の流れを読むカンが良く、手先のタッチが増えればいったん釣り手を持ち合って引き手を争い、引き手争いが膠着するとみればすぐさま離れて両手でアプローチし、主審が「指導」を出す暇を与えず激しく駆け引きし、刃を入れる隙を探し続ける。内村は49秒に2分8秒と幾度か得意の両足巴投を試みるが心得た村上しっかりかわし、村上が得意の寝勝負を挑めばこれを良く知る市川はその端緒で引き込んで返し、あるいは絡みつかせたまま立ち上がってあっという間にあるべきシナリオを断ち切ってしまう。3分27秒双方に「取り組まない」咎による「指導」が与えられたが展開大きくは動かず、息詰まる攻防打ち続くままこの試合は引き分けに終わった。

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松村颯祐が上から持ち、東部直希が下から寄る前回対戦と同じ形。しかし松村は無理をせず。

エース同士がマッチアップした次鋒戦(100kg超級)は東海大・松村颯祐が右、日本大・東部直希が左組みのケンカ四つ。10月の東京学生体重別決勝では東部が「指導3」の反則、2週間前の全日本学生体重別選手権では松村が足車「一本」でそれぞれ勝利しているカード。ともに両手を上げて手先を争うところから試合がスタート、やがて様相は釣り手の形を変えながらの、引き手争いとなる。東部が釣り手で下から背を抱き松村が上から背を持ち返す、あるいは東部が前襟を高く握り、松村が外から閂に腕を抱える形をベースとした引き手争いが続く。東部が座り込みの左背負投に潰れた直後の1分8秒、双方に消極的試合姿勢の咎による「指導」。以後も引き手争いが続き、2分30秒過ぎには副審1人が「指導」のゼスチャー。しかし東部が片手の内股に潰れて展開が切れ、このアピールは流れる。松村は両手を持つ形の完成にこだわってか技が出ず、しかし東部の技も散発、あくまで片手技に留まるという時間帯が続く。3分14秒、釣り手で襟を高く握った東部が左内股も、松村が透かして攻防は収束。直後松村の側にのみ消極的試合姿勢の「指導」。勢いを得た東部直後の展開で思い切った左袖釣込腰。この試合で最も芯に近い技であったがしかし投げ切れず、「待て」。以後クロージングを意識した松村は手がたく進退、片手の右内股を放って形上展開を留保するとそのまま終了ブザーを迎えに行く態勢。エース対決はこのまま引き分けに終わった。

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賀持喜道が山中堅盛を攻める

五将戦(81kg級)も攻撃型対決。東海大・山中堅盛が右、日本大・賀持喜道が左組みのケンカ四つ。切れ味ベースの選手である賀持は組み手の完成に意識が濃やか、両手の手先をタッチする位置の選択が的確。山中のアドバンテージは体の力の強さだが、賀持の一手目から想起されるシナリオの筋目の悪さを感じるゆえか組み手にリセットを掛ける場面が多く、なかなか相手の体にアクセス出来ない。賀持が左内股、山中は右袖釣込腰で攻め合う。初弾は威力十分と思われた山中の袖釣込腰だが、一手目の持ち所が浅いゆえか徐々に芯を食えなくなり、賀持が余裕をもって捌く場面が増える。一方の賀持の技もここぞという深さには入れず、試合は1つの反則もないままあっという間に最終盤。残り10秒、引き手を折り込まれた賀持がなぜか弾かれたように伏せ、偽装攻撃の「指導」。しかし大局には影響なし。この試合も引き分けとなった。

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市川龍之介は引き手で持った襟を離さず、圧倒的に攻める。

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「指導2」を得た市川がスパートを掛けると、大田原優斗待っていたかのようにペースアップ。差をつけさせないまま引き分けをもぎ取る。

中堅戦(60kg級)は東海大の市川龍之介、日本大・大田原優斗ともに右組みの相四つ。ここは東海大の得点ポジション。市川長い腕と独特の間合いを利して一呼吸で引き手で襟を掴み、1分強にわたってこれを決して離さず進退。大田原の度重なる切り離し、片手の駆け引きをすべて峻拒して前に出続ける。このまま大田原に浮技の掛け潰れを強いた1分0秒、大田原に「取り組まない」咎による「指導」。大田原同じ轍は踏むまいと慎重に侵入角を探るが、市川またしても長い手を伸ばして一息で引き手で襟を掴む。釣り手も奥襟を掴み、頭を下げさせ、左右の出足払に大外刈、小外刈と攻め続けて圧倒的攻勢。釣り手を内側から回して奥襟を掴み、これを抜かせるなりの大外刈で大きく崩した2分49秒には、大田原に消極的試合姿勢の「指導2」。残り時間1分、3つ目の「指導」を得んと市川はペースアップ。敢えて同じ形ではなく「ケンカ四つクロス」で左側からアプローチする組み立ての巧さを見せるが大田原は大きく右一本背負投を仕掛けて市川に膝を着かせ、印象点を確保。さらに同じ形からの右一本背負投、相手に引き手で襟を突かせておいての左肩車と繰り出して並走。市川にラストスパートを決して許さない。意外な展開に市川やや怒気を発して突進。引き手を折り込み、巻き込み反転を強いて背中を向かせ、その裏に抱きついて一発勝負を図る。しかしここで終了ブザー、この試合も引き分けに終わった。大田原は殊勲。「指導2」失陥までの「死んだふり」から一転、市川の戦型の変化に対応して己もいきなりペースを上げ、要所のみを抑えて引き分けをもぎ取った戦いぶりは見事だった。

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岸武蔵と藤原大晴による三将戦

互いにやや戦線凹む三将戦(66kg級)は東海大・岸武蔵、前戦の殊勲者藤原大晴ともに右組みの相四つ。互いに引き手を求める手先の突き合いが続き、ともに組み合うことが出来ぬまま22秒双方に「取り組まない」咎による「指導」。続く展開も引き手を求めて両者接近と離脱を繰り返すが、藤原ここで敢えて釣り手から持ち、これを端緒に釣り手で奥、引き手で袖を得ることに成功。しかし岸は軽挙せず敢えてこれを受け入れ、釣り手の位置低いまま己も袖と襟を持ち返して横変形の組み合いに応じる。ここまで割り切られると藤原も逆に技が出せず、組み合ったまま立ち位置を取り合うのみで試合は膠着。なんとか頭を上げ始めた岸が左の大内刈に掛け潰れたところで「待て」。1分10秒、双方に消極的試合姿勢の「指導2」。以後双方厳しい組み手争いを縫って肩車、袖釣込腰と散発ながらも技を出し合い、藤原の右袖釣込腰を潰した岸が腕挫十字固を狙う場面も立ち現れる。しかし再び手先の組み手争いに場が流れると主審早々に試合を止める。副審との意思確認を済ませると3分8秒両者に「取り組まない」咎で「指導3」を宣告。この試合は両者反則負けとなり、両軍ともに得点は入らず。

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村尾三四郎の「一本大外」。1階級上の強者山口貴也と引き分ける。

副将戦(100kg級)は階級落ちで出場の東海大・村尾三四郎と日本大・山口貴也ともに左組みの相四つ。ポイントゲッター同士の戦いである。まずは互いに引き手を伸ばして襟を狙う、激しい組み手争い。このやりとりの中で山口がいったん袖を掴むが村尾あっさりクリア、自身が袖を持った僅かなチャンスを見逃さず片襟を差してノーステップの左大外刈に飛び込んで山口を大きく崩す。そのまま横三角を狙ったところで57秒「待て」。以後は引き手の絞り合いをベースに双方散発ながらも大きな技を撃ち合う展開。村尾は山口の大外刈の掛け潰れに食いついて片手絞、残り2分にならんとするところでは左大外刈を2連発、さらに左一本背負投に繋いで1つ山を作るが、なかなか具体的なポイントを挙げることが出来ない。中盤以降は手先の組み手争いが増え、2分47秒双方に「取り組まない」咎による「指導」。終盤はにじり寄る村尾に山口が抗する体で、攻守立場を激しく入れ替えながらの攻め合い。しかし決定的なポイントに至る機会はなく、この試合も引き分けに終わった。6戦をこなして、いまだスコアは0-0。

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北條嘉人が左一本背負投。曲者・安部光太だが北條の変調にどこか噛み合わず。

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安部が寝技に食いつくと、危機を感じた北條は早い割り切り。躊躇なく走って振り落とす。

大将戦(90kg級)は東海大・安部光太、日本大の北條嘉人ともに左組みの相四つ。安部は全日本学生優勝大会制覇の立役者、北條は学生体重別の覇者。安部両手で手先を争いながら近づき、ツト引き手で袖、釣り手で首裏を掴む完璧な組み手を作り出す。しかし北條動ぜず、ほぼ右組みの形のまま図太く組み合いを続け、大過なく試合を進めて最後はともに合意する形でいったん離してリセット。ここで主審が試合を止め、1分12秒双方に消極的試合姿勢の「指導」。安部は大枠優位も北條の独特のリズムの進退を前になかなかダッシュのスイッチが押せない印象。北條は素早い左一本背負投に一転緩やかな浮技とあくまでマイペース。安部の攻めは足技の蹴り崩しに留まり、2分56秒には双方に消極的試合姿勢の「指導2」。ここで奮起した安部が左払巻込、危うく横について逃れた北條が寝勝負を挑んで上から正対。安部は「草刈り」で北條に尻餅をつかせて再び寝技に食いつくが、ここは逃げるべきと割り切った北條躊躇なく立ち上がり、追いすがる安部を場外まで走って振り切り「待て」。この時点で残り時間は28秒。双方手先の争いから横変形に組み合い、無言で合意した形でクロージングを図る。このまま終了ブザーがなり、この試合も引き分けで終了。7戦連続引き分け、試合の行方は代表者1名による決定戦へと持ち込まれる。

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代表戦、内村秀資が村上優哉から巴投「技有」

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内村の勝利で東海大が決勝進出を決めた。

代表戦は抽選の結果、先鋒枠(73kg級)の再戦となった。内村秀資が右、日本大・村上優哉が左組みのケンカ四つ。内村釣り手で背、引き手で袖を掴む「ケンカ四つクロス」から素早く隅返で先制攻撃。同じ形のアプローチを一合続けると今度は両襟を掴んでの両足巴投、村上が伏せるとすかさず上から後帯を掴んで息もつかせぬ攻めを続ける。やや出遅れた村上「待て」を貰って立て直しを図るが、内村すぐさま相手が伸ばした釣り手を抱き込み崩し、決して試合が落ち着く暇を与えない。続く展開、内村引き手争いからやや体を開き、低い位置でわずかに引き手で袖を得るなりすかさず巴投一撃。独特の侵入角に村上一瞬対応が遅れてしまい、内村の右肩越しに回され、左後隅にくるりと落下。1分25秒主審が「技有」を宣してここでついに試合は決着。東海大が勝利を決め、決勝に勝ち上がることとなった。

内村の「入り」は見事。代表戦ではこうやると決めていたがごとく、今の今まで畳にいて戦っていたのではないかというロケットスタート。じっくり戦い方を見定めんとした村上に一歩先んじ、最後までこの差を詰めさせないままもっとも得意とする技で早々に勝負を決めてしまった。勝負を熟知しているとしか言いようがない。学生体重別決勝、GS延長戦に入るなりリズムを変えて早々に「技有」を取り切った、あの場面を強く思い起こさせる切り替えの上手さだった。

東海大が「負けない」ポリシー1つを貫き、戦力の厚さで押し切ったという一番であった。1階級上の100kg級に出場した村尾の割り切った戦い方に、この「分厚さ」は端的。これだけ戦力があると、たとえ日本代表の村尾であっても無理やり取りに行くよりは相手の強者を確実に潰す方が全体最適には適う。エース松村の姿勢も同様。日本大はレギュレーションを生かして7試合並走を続けたが、もう1試合戦い切るだけの余力はなかった。ただ1試合の結果が全体の勝敗を決める代表戦突入は挑む側にとってはこれ以上ないシナリオのはずなのだが、戦線に切れ目がない東海大相手にはこの法則は適用外。内村登場という引きの良さまでが、もはや必然と感じられるほどであった。

結果決まった決勝カードは、

東海大 ― 明治大

となった。

→男子レポート②準決勝(1)
→男子レポート①1回戦~準々決勝

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