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【レポート】松村颯祐が優勝、負傷のハンデ乗り越えた戦術眼光る/2021年度全日本学生柔道体重別選手権大会男子100kg超級レポート

(2021年12月6日)

※ eJudoメルマガ版12月5日掲載記事より転載・編集しています。
松村颯祐が優勝、負傷のハンデ乗り越えた戦術眼光る
2021年度全日本学生柔道体重別選手権大会(男子40回)100kg超級レポート
日時:2021(令和3)年11月26日
会場:千葉ポートアリーナ(千葉市)

取材・文:古田英毅/eJudo編集部

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1回戦、松村颯祐が峰本祐汰から支釣込足「一本」

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3回戦、松村が羽田野竜輝から裏投「技有」

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準々決勝、山本亮馬から内股「一本」

【決勝まで】

注目された中野寛太(天理大3年)が全日本学生優勝大会に続いて欠場。決勝に進んだのは東京地区大会で決勝を争った2人、松村颯祐(東海大4年)と東部直希(日本大4年)となった。

松村は1回戦からのスタート。優勝大会で軸足の腿を肉離れしているが、早く相手と繋がり、両足を着けたまま近づき、直接体の力を伝える技を軸に据えることでこのハンデを突破。1回戦は右相四つの峰本祐汰(近畿大)を両の足を着けたままじっくり追い詰めてまずは「指導2」確保。後のなくなった相手が奥襟を叩くと持たせたまま背筋を伸ばして密着、引き手で横帯を掴んで時計回りの支釣込足一撃。もろとも宙に浮きあがる強烈な一撃見事決まって2分44秒「一本」。2回戦は上林山勇斗(山梨学院大)を相手にこれも両足を畳から離さず、両襟ベースで徹底前進。開始17秒に得た「指導」1つをテコに試合を塩漬け、両者への同時反則2つをプラスして3分33秒「指導3」で勝利を決めた。羽田野竜輝(明治大)との3回戦も早々に「指導2」をリードすると敢えて奥襟を持たせたまま側面にアプローチ。引き手で横帯を持っての支釣込足、胴を抱いての裏投と体の力を伝えやすい技で投げを試み続ける。GS延長戦32秒、奥襟を掴まれると敢えて釣り手一本で密着、すると距離を詰められてしまった相手が思わず釣り手を奥からクロスグリップに持ち替える。ついに訪れたこのチャンスを逃さず裏投に捉え、「技有」奪取で勝ち抜け決定。山を1つ超えた準々決勝はケンカ四つの山本亮馬(天理大)を1分10秒股中に落とした右体落「技有」、1分43秒右内股「一本」と立て続けに投げて一蹴。続く準決勝は高橋翼(国士舘大)を畳に迎える大一番。ともに裏投が得意なパワー派対決だが。ここは相四つでも背中にアプローチする方法をきちんと確立している松村の方が上。横変形を強いて能動的に背中にアクセス、1分10秒裏投でまず「技有」確保。さらに焦った高橋との裏の取り合いをしっかり制して背中を抱くと、崩れ際を逃さず抱き止め制して隅落「技有」。2分19秒合技「一本」、全試合一本勝ちで決勝に駒を進めることとなった。

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準々決勝、東部直希が山本亮太から大外落「技有」

一方東部の登場は2回戦から。初戦は福田日向太(清和大)を常にコーナーに追い詰め続け、30秒、1分43秒といわゆる「めくり」(隅落)を2度決めてリスクないまま合技の一本勝ち。3回戦は黒河内健介(鹿屋体育大)を3分6秒左払巻込と横四方固の合技「一本」で手堅く下してベスト8入りを決める。準々決勝は前戦で中島大貴(東海大)に「指導3」で勝利している山本亮太(天理大)とマッチアップ。体の力の強い相手に序盤は技を弾かれ続けたが焦らず前進圧力を掛け続け、GS延長戦48秒に膝頭を捉えて左大外落。崩れた相手を背負投様に押し込んで回し「技有」奪取、これで勝ち抜けを決めた。準決勝は混戦ブロックを勝ち上がって来た千野根有我(筑波大)を相手にじっくり進退、リスクないまま2分50秒「指導2」対「指導3」の反則累積差で勝利決定。しっかり決勝へと辿り着いた。

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東部が左内股、松村が内股透で抗するこの試合最初の攻防

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3分過ぎ、東部が抱きつきの左小外掛で突進。この攻防が決着の伏線となる。

【決勝】
松村颯祐○GS足車(GS0:45)△東部直希

身長180センチ体重155キロの松村が右、173センチ125キロの東部が左組みのケンカ四つ。東京地区大会決勝では東部が勝利しているカード。

短躯を生かすべく低く寄りたい東部積極的に前へ出、釣り手で先に襟を得る。松村先んじてこちらは引き手で袖を一方的に掴み、釣り手は上腕裏を持って対応する。この形をベースに激しい引き手争いとなり、先に持った東部が左内股を仕掛け、松村が足を高く揚げて透かしたところで「待て」。続く展開は松村が上から背中を持ち、東部が横から抱え返しての引き手争い。東部が「出し投げ」の形で崩すが松村たたらを踏んで踏みとどまり、互いが引き手を持てないままの攻防が続く。1分6秒には双方に消極的試合姿勢の咎で「指導」。

以後は双方異なる引き出しを開け続けての組み手争い。一方的な形で持って低く寄りたい東部、たとえ掴まれても己がしっかり持って必要な間合いを取りたい松村というそれぞれの眼目を満たすため、双方やり方を変えながら刃の入れ所を探し続ける。松村は高い両襟、引き手先行の袖抑え、引き手で片襟を手繰っての釣り手襟持ちと相手の接近を阻みながら攻めの出しどころを探り、東部は襟を高く持って相手の肘の侵入を防ぎ、時に己の釣り手の肘を振り立て、あるいは下から持って体を預け、こちらも様々手立てを繰り出して接近のチャンスを窺う。

残り時間1分となるところで東部半身に体を入れながら、刈り足の膝を着いて低く左大内刈。これはかわされたが出来上がった高低差を利用して相手の釣り手を外すと、立ち上がるなり釣り手で背を抱いてついに松村の背面にアプローチ。松村上から背を持ち返して支釣込足で外そうとするが東部は崩れず、背中側にさらに深く一歩踏み込んで左小外掛に打って出る。松村腰を回して一瞬前技に切り返そうとするが東部の踏み込みの深さに間合いが噛み合わず、回避に切り替え。たたらを踏んで場外に出でて「待て」。

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東部の抱きつきを呼び込んだ松村が、右足車「一本」

以後も双方釣り手の組み合わせを変えながらの引き手争いが続き、展開は動かず。組み手争いは五分五分、潜在的な投げの可能性は松村の側にやや分がある印象だが、具体的な技を陣地構築のツールとして使っている東部の方が評価を受けやすいという流れ。残り4秒、東部が思い切って左内股。軸足が畳を捉えきれず滑り潰れるも、主審は試合を動かさんとここで松村に消極的試合姿勢の咎で2つ目の「指導」を宣告する。そのまま試合は、GS延長戦へと移る。

延長戦、松村は同側の袖を両手で掴む「ケンカ四つクロス」を経て背中を掴むと東部は横抱きで対応。引き手争い一合があり、東部が左大内刈を空振りして潰れ「待て」。再開されると、松村今度は両手で左襟を握って引き寄せ、釣り手で背中にアプローチする。東部は横抱きで対応して引き手争い。と、松村が片手のまま右内股のアクションを見せる。一瞬畳に右手を着いて耐えた東部、立ち直ると低く松村の腰に抱きつき、一歩大きく踏み込んで左小外掛の形で背中を取りに掛かる。本戦3分過ぎの攻防とまったく同じ形だが、松村は今度は食いつかれたことを利用して引き手を掴むと、軸足を一歩引くなり右足車に打って出る。前技であれば内側(内股)と予期していたであろう東部にとってはもっとも抗いがたい外側の技。左脚を大きく上げたまま右膝を固められた東部は両の腕を大きく前に伸ばしたまま剛体、一瞬の力の拮抗の後に両足がフワリと浮いて縦に一回転「一本」。

松村、みごと優勝決定。腿の肉離れで得意の内股が使えない中、決め技の足車は試合中の攻防の中で「この技ならいけるのでは」とひらめき、同じ形が出来上がるのを待って決めた技とのこと。己の出来ることの中で「効く」投げを見極める戦術眼、それを可能ならしめる引き出しの豊かさ。王座を獲るにふさわしい戦いぶりだった。

成績上位者と松村のコメント、準々決勝以降の結果は下記。

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100kg超級優勝の松村颯祐(左)と2位の東部直希。

【成績上位者】
(エントリー50名)
優 勝:松村颯祐(東海大)
準優勝:東部直希(日本大)
第三位:髙橋翼(国士舘大)、千野根有我(筑波大)

松村颯祐選手のコメント
「ここ最近個人では大きな大会で勝っておらず、学生最後の大会で優勝出来て嬉しいです。決勝の相手は組み手が上手く、自分はそこがあまりうまくない。粘りがポイントだと思っていました。東京学生で負けている相手でもあり、ここでリベンジしなければもうする機会がないかもしれない。必ず勝とう、ここで勝たなければいつ勝つんだ、と思っていました。(上水監督の評価は?)組み手が根気強く出来たのは良かった、と声をかけて頂きました。(―大会全体を振り返って)怪我もあり、自分がこうと思う技が掛けられないことが前提。その中で、8割くらいはイメージ通りにできたと思います。(―軸足の肉離れ。欠場もあり得ると思っていました)乱取りが出来たのは大会2日前、それまでは出ないつもりでした。ただ、片足が踏ん張れない中でどの技が使えるか、どうやれば崩せるかをずっと検証してきて、目途が立ったので出ることにしました。自分の技術を整理してあらためて見つめなおせた時間でもあったと思います。(―裏投が生きた?)はい。その印象を見せつつ支釣込足だったり、逆に寄らせたくない場面でこれがあることでしっかり距離が取れたり。準々決勝で内股を使ってみたんですけど、痛すぎてやはりこれは使えないなと(笑)。(―上水監督の理論が生きている?)理論は叩き込まれていますが、自分が本当に使いこなせているかというと非常に疑問です。考えることで、だんだん自分の頭の悪さに気付いていくという日々です(笑)。(―この先、超級を引っ張ろうという気概は?)斉藤立選手や中野寛太選手が出てきて名前が挙がることが多いのですが、自分もいるぞとアピールしたいです。(―今後の目標は)まず尼崎の団体でチーム2冠、大学4冠を達成すること。個人戦では講道館杯で勝つこと。シニアでも成績を残したい。」

【準々決勝】
髙橋翼○GS反則[指導3](GS1:21)△石川智啓
松村颯祐○内股(1:43)△山本亮馬
東部直希○GS技有・大外落(GS0:48)△山本亮太
千野根有我○優勢[技有・支釣込足]△寺本靜矢

【準決勝】
松村颯祐○合技[裏投・隅落](2:19)△髙橋翼
東部直希○反則[指導3](2:50)△千野根有我

【決勝】
松村颯祐○GS足車(GS0:45)△東部直希

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※ eJudoメルマガ版12月5日掲載記事より転載・編集しています。

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