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【レポート】内村秀資が優勝、決勝は田中裕大との大激戦を制す/2021年度全日本学生柔道体重別選手権大会男子73kg級レポート

(2021年12月5日)

※ eJudoメルマガ版12月5日掲載記事より転載・編集しています。
内村秀資が優勝、決勝は田中裕大との大激戦を制す
2021年度全日本学生柔道体重別選手権大会(男子40回)73kg級レポート
日時:2021(令和3)年11月25日
会場:千葉ポートアリーナ(千葉市)

取材・文:古田英毅/eJudo編集部

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2回戦、田中裕大が濵重竜二から左釣込腰「一本」

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準々決勝、田中が佐藤虎太郎から内股「一本」

【決勝まで】

決勝に進んだのは田中裕大(国士舘大2年)と内村秀資(東海大3年)。田中は全国高校選手権、内村はインターハイの覇者。ともに高校時代に日本一に輝いている有望選手2人が覇を競うこととなった。

田中は1回戦からの登場、この試合は松永諒人(鹿屋体育大)から2分35秒内股「技有」を奪い、そのまま攻め続けて3分6秒「指導3」で勝利。2回戦はケンカ四つの濵重竜二(岡山商科大)との腰の差し合いから横抱きに背中を掴んで左釣込腰一撃、背中合わせのまま投げ切って2分21秒「一本」。以降は強敵と連戦。まず勝負どころの3回戦、東京地区大会準決勝で敗れている村上優哉(日本大)との一番は残り17秒、相手が右足を狙って打ち込んだ支釣込足をそのまま呼び込み、左内股巻込に捉えて「技有」確保。優勢勝ちでベスト8入りを決める。準々決勝は佐藤虎太郎(早稲田大)にこれぞ田中という力強い左内股一撃、腿で叩き上げ、縦回転で大きく投げ切って2分23秒鮮やか「一本」。準決勝は勝部翔(天理大)を1分36秒に奪った隅返「技有」をテコに厳しい殿戦を戦い切り、みごと決勝進出を決めた。

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2回戦、内村秀資が松山孝誠を崩すと素早く腕挫十字固に移行。「一本」に繋ぐ。

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準々決勝、高橋慧から執念の隅返「技有」奪回。

内村は1回戦で佐藤友飛(東北学院大)と対戦、右腕で相手の左を固めながら背に回し当てるクラシカルな谷落で「技有」を奪うとそのまま上四方固に抑え込み、2分35秒合技「一本」。続く2回戦は松山孝誠(札幌大)を右の「小内差し」で伏せさせると淀みなく腕挫十字固に繋いで、30秒「参った」を引き出して一本勝ち。3回戦は染谷兼玖(日本大)を二段の右小外刈で崩し、そのまま激しく追い込んで1分9秒「一本」。極めて快調な滑り出しを見せる。しかし準々決勝は高橋慧玖(国士舘大)に大苦戦、1分1秒、左小外掛からの谷落をまともに受けて「技有」を失う危機。しかし残り42秒に右小外掛で突進、背を抱いて耐えた相手が正対すると動きを止めずに得意の隅返に繋ぎ、起死回生の「技有」奪回。迎えたGS延長戦9秒には時計回りの浮技に飛び込み、残った相手の右足を左で蹴り上げてフォロー、勝ち越しの「技有」。得意の捨身技2発で危機を脱出、合技「一本」でベスト4入りを果たす。準決勝は松山葵偉(日本大)を開始53秒、跳腰「一本」で退け、全試合一本勝ちで決勝の畳に乗り込むこととなった。

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田中が内村の右小外掛を迎え撃ち、左内股に繋ぐ。

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激しい攻め合いのさなか、持ち上げられた田中は内村の背を「馬飛び」で超えて回避。

【決勝】
内村秀資○GS技有・小内刈(GS0:10)△田中裕大

田中左、内村が右組みのケンカ四つ。両者釣り手前襟でガップリ組み合うが、内村すぐさま背中に持ち替えて得意の隅返で先制攻撃。田中が手を着いて体を支えて逆側に着地、両者が正対して「待て」。内村は続く攻防も捨身技、両襟を掴みに来た田中の正面から横にずれると両足の巴投に打って出る。いったん浮き、両足を着いて踏ん張った田中をもう一度持ち上げるが投げるまでには至らず「待て」。田中は持ち前の投げ一発をなかなか繰り出せないが、続く展開で内村が背を抱いての右小外掛に打って出ると待ってましたとばかりに迎え撃ち、大内刈で剥がすとそのままいったん作用足を着いてバランス、思い切り左内股に打って出る。これは投げ切れず、仕掛けた田中、大きく浮いた内村ともに膝を着く。寝勝負を期した田中先んじて動いて背を跨ぐが内村素早く動いて立ち上がりながら左の背負投の形で投げに出る。しかし持ち上げられた田中はすぐさま内村の後頭部を手で押し、馬飛びして回避。両者の身体能力の高さ、素晴らしい反射神経を存分に見せつけた攻防。

以後もしっかり掴んで投げたい田中に、「抱き勝負」からの捨身技をベースに攻める内村という形で試合が進む。潜在的な投げの可能性を感じさせるのは田中だが、エントリーの引き出しが豊富な内村の側が手数で上回る。内村が離れた位置から「内股-小内」のエントリー、さらに右方向へ肩車崩れの小外刈を見せた1分24秒、田中に消極的試合姿勢の「指導」。

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内村の出足払を田中がぎりぎりで振り返し、攻守次々入れ替わる競り合いが続く

続く展開、内村が右小外掛の形で体を預けると田中は左内股、さらに小内刈に繋いで大きく崩す。しかしたたらを踏んだ内村同側の袖を二本で掴む「ケンカ四つクロス」の右内股で振り回し返し、体を戻しながら時計回りの浮技、そのまま隅返に繋いで主導権を譲らない。続く展開、田中が両襟で寄せると内村はタイミングピタリの右出足払。あるいは「一本」すら想起されるタイミングだったが田中は肘をついて落下を押しとどめると片手で振り返す。内村は大崩れ、これもあるいはポイントかと思われたがこちらも手を着き、田中の乗り込みの前に力の圏外に逃れて伏せる。双方凄まじい身体能力。続く展開も見せ場、内村の右小外掛を田中が左内股に切り返すが、内村の抱きが深くインパクトをずらされた田中は釣り手側に大崩れ。しかし田中崩れの中途で振り向いて正対、内村の側は動ぜず両の手で背を抱き「サバ折り」の隅落で跨ぎ潰そうとする。しかし田中左手を離して畳に着いて一瞬体勢を持ち直すと、なんとそのまま時計回りに巻き込んで投げ返しを試みる。双方膝を着くがここまで来ても攻防は収束せず、両者ガバと立ち上がるなり内村は右小外掛、田中は躊躇せず左内股で思い切り投げに掛かる。両者崩れ、すぐさま立ち上がってここでようやくこのターン終了。まさしく好試合。息詰まる攻め合いが続く。

内村が釣り手を両腕で抱え込む変則の谷落、これを田中は左内股に切り返す。伏せた内村を田中が引き起こそうとすると内村はこれに合わせて右腕一本を抱えた一本背負投。しかし田中が左襟を掴んだまま押し込み、隅落の形で背中を着かせる。形はポイント級だったが、これは寝勝負と見られて「待て」。

激しい攻め合いの連続。しかし一連の攻防の先制権が内村にあったと見たか、主審はここで田中に消極的試合姿勢による「指導2」を宣告。残り試合時間は1分3秒。

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内村が近い襟を握った左釣込腰で展開を呼び込む。

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GS延長戦開始早々、右小内刈「技有」で熱戦決着。

後がなくなった田中背を抱いて迫るが、リードの内村ここはまず攻めの形を作ることが肝要と近い襟を引き手で抱えたハン=マゴメドフ式の右釣込腰で打開。さらに隅返を打ち込んで相手に攻めのチャンスを与えぬまま時計の針を進める。このまま本戦4分間は終了となり、試合はGS延長戦へ。

「始め」が宣されると、内村釣り手で首裏、引き手で腕を掴みながらの右「小内差し」。これまでの組み立てと異なる順方向・後ろ側の技に田中一瞬対応が遅れてしまう。まず体を開いて回避、ついで反時計回りに返そうと試みるが、内村に右腕の肘を体側に着けられてしまっており、体の制動が効かない。剛体のまま大きく崩れ落ち、これが解除されたのは既に体側から畳に落ちてしまった後。主審が「技有」を制し、激戦ここに決着した。

大会ベストバウト級の好試合だった。内村の勝因はエントリー、展開を作る技、そしてここぞの決め技と、試合を組み立てるツールの引き出しで勝ったこと。しかしこれらすべてを超えて、ここぞを譲らぬ勝負度胸とリスクを厭わぬ大胆さが何より光った。

これに柔道の力自体、そして投げの威力で最後まで抗った田中も見事。決めのいま一歩の遅れには何か負傷などトラブルがあったのではないかとも感じさせたが、柔道のスケール感の高さは階級随一。買える戦いぶりだった。

成績上位者と内村のコメント、準々決勝以降の結果は下記。

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73kg級優勝の内村秀資(左)、2位の田中裕大。

【成績上位者】
(エントリー53名)
優 勝:内村秀資(東海大)
準優勝:田中裕大(国士舘大)
第三位:勝部翔(天理大)、松山葵偉(日本大)

内村秀資選手のコメント
「優勝出来たことは嬉しいですが、課題が見つかった試合が多く喜べないところもあります。ただ、アグレッシブに攻められたことは良かった。決勝は相手のスピードを警戒していました。右小内刈という選択も、良かったと思っています。(課題とは?)たくさんありますが、ひとつ言えばケンカ四つ対策を一から見つめなおすこと。このままでは上では戦っていけないと強く感じます。(―この先の目標は)まずは体重別団体でしっかり仕事をすることです。」

【準々決勝】
田中裕大(国士舘大)○内股(2:23)△佐藤虎太郎(早稲田大)
勝部翔(天理大)○GS反則[指導3](GS1:40)△川田武史(國學院大
内村秀資(東海大)○GS合技[隅返・浮技](GS0:28)△高橋慧(国士舘大)
松山葵偉(日本大)○GS技有・大外刈(GS6:39)△顕徳大晴(天理大)

【準決勝】
田中裕大○優勢[技有・隅返]△勝部翔
内村秀資○跳腰(0:53)△松山葵偉

【決勝】
内村秀資○GS技有・小内刈(GS0:10)△田中裕大

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