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【レポート】新井雄士が「一本」連発で初優勝、決勝は台風の目・杉浦冬唯を振り切る/2021年度全日本学生柔道体重別選手権大会男子66kg級レポート

(2021年12月5日)

※ eJudoメルマガ版12月5日掲載記事より転載・編集しています。
新井雄士が「一本」連発で初優勝、決勝は台風の目・杉浦冬唯を振り切る
2021年度全日本学生柔道体重別選手権大会(男子40回)66kg級レポート
日時:2021(令和3)年11月25日
会場:千葉ポートアリーナ(千葉市)

取材・文:古田英毅/eJudo編集部

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2回戦、新井雄士が山田聖斗から袖釣込腰で「技有」奪回。

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準決勝、新井が湯本祥真から小外刈「技有」

【決勝まで】

決勝に進出したのは新井雄士(國學院大4年)と杉浦冬唯(愛知大4年)の2名。

新井は1回戦からの登場。初戦は本松要(大阪体育大)を相手に2分40秒片手の左袖釣込腰一撃、左で送り、残った右手で背を抱えて投げ切ったこの「技有」で優勢勝ちを果たす。2回戦は山田聖斗(桐蔭横浜大)と大激戦、開始22秒で隅落「技有」を失ったが、3分6秒右袖釣込腰で打点高く叩きつけて「技有」奪回。最後はGS5分37秒、素晴らしいタイミングの送足払「技有」を得て勝ち越し。総試合時間10分に迫ろうかというこの難しい試合を勝ち切ると、以降は早い時間帯での「一本」を連発。3回戦は澤田大輝(皇學館大)から開始1分に左内股「一本」、軸足でしっかり支えた打点の高い一撃を決めて快勝。準々決勝はこれもわずか43秒、松村士(東洋大)を左内股と袈裟固の合技「一本」に退ける。迎えた準決勝では湯本祥真(筑波大)から開始32秒小外刈「技有」を奪うと、焦った相手の内股を綺麗に透かして内股透「技有」。高校時代に神奈川県予選で全国大会への道を阻まれ続けた因縁の相手を、1分12秒合技「一本」に仕留める完勝。尻上がりに調子を上げて決勝進出を決めた。

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準決勝、杉浦冬唯が唯野己哲から袖釣込腰「一本」。マヌエル・ロンバルド式の強烈な一発だった。

杉浦はダークホース。早い段階から逞しい進退とスピードある連続攻撃でひときわ目立っていた、この日の台風の目。2回戦は泰京輔(帝京大)に釣り手側の肩車を決めて2分46秒「一本」。3回戦は幸田朗(帝京科学大)を相手にGS1分17秒、連続攻撃のさなかにまたも釣り手側の肩車を混ぜ込み、縦回転で投げ切って鮮やか「一本」。準々決勝は藤本大晴(日本大)をわずか24秒、豪快な「やぐら投げ」(左への内股)で叩き落とし「一本」。迎えた準決勝も2年生世代の全国高校選手権の覇者・唯野己哲(国士舘大)を相手に凄まじい大技一発。右袖釣込腰のエントリーから左で相手の胴を背中越しに左から抱き、半ば正対する形で高々持ち上げる。そのまま深く体を折り、頭越しに投げ落として1分34秒豪快過ぎる「一本」。マヌエル・ロンバルドを彷彿とさせる技法の、所謂「丸山スペシャル」である。会場はざわめきしばし収まらず。杉浦、なんと全試合一本勝ちで決勝の畳へと駒を進めることとなった

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新井と杉浦の決勝戦

【決勝】
新井雄士○GS反則[指導3](GS0:49)△杉浦冬唯

新井が左、杉浦が右のケンカ四つ。新井が内側から、杉浦が外から釣り手を持っての引き手争いが続く。「抱き勝負」からの大技一発もある杉浦だがなかなか引き手が持てぬと見るや、まず左方向への肩車を見せる。これは深く入れず、しかしすぐさま立ち上がって攻防継続。

1分11秒「待て」が掛かると杉浦の様子がおかしい。脚を伸ばし、手を振り、どうやら体のどこかが攣った様子。

新井は左大内刈、さらに両袖をほぼ一方的に抑えるが、杉浦は3回戦でも見せていた「モラエイ」に入り込む動きで新井の手を離させる。新井はしかしすぐさま掴み直し、万全の形から左内股一撃。杉浦立って受け切るが、直後の1分27秒杉浦の側に消極的試合姿勢の「指導」。以後は新井が内股、杉浦は肩車に巴投と技を見せる攻め合いも、2分9秒に「待て」が掛かると再び杉浦屈伸運動。いまやトラブルは明らか。新井は「小内・大内」の連携から左内股に繋ぐ素晴らしい攻め、入りは「一本」級もしかし杉浦脚を上げてこれも素晴らしいバランスで回避。

新井はここで展開の優位を確定させるべく、左釣込腰の大技に打って出る。釣り手で背中、引き手で近い襟を掴むハン=マゴメドフ式の技法、これで高く大きく杉浦を持ち上げ、伏せさせると3分0秒杉浦に2つ目の「指導」。手ごたえを得た新井は再び同じ技で大きく崩してもはや試合の行方見えたかに思われたが、しかし杉浦続く展開では背中の持ち合いに応じて右小外掛で突進、新井を場外まで追い掛ける強気を見せる。終盤には新井を下げ、滑り込むような浮技から腕挫十字固に繋いであくまで勝負から降りない。「それまで」が宣されると杉浦再び右足が攣ったか脚を屈伸、ここで試合はGS延長戦へ。

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リードした新井は引き手で近い襟を掴むハン=マゴメドフ式の釣込腰を連発。

新井は冷静、背中は持ち合うものの乗るか反るかの勝負には応じず、またもやハン=マゴメドフ式の左釣込腰で展開を取りに掛かる。引き手で左側にアプローチする必要がなくエントリーが容易、そして軌道が高く「攻め」の印象極めて強いこの技は、「指導2」リードのこの局面での選択としてまさに適切。小内刈から繋いで1回、相手の背中を抱くタイミングに合わせてさらに1回、といずれも思い切り放ったこの技の印象は比類なし。GS49秒、主審が合議を招集し、ほどなく杉浦に3つ目の「指導」を宣告。ここで試合が終わった。

新井らしい切れのある大技で投げに投げまくった準決勝まで、そして状況を見て的確に「大技による攻勢点」を取りに行った決勝。強さに加えて、高校時代には足りなかった「勝ち方」も得た新井、王座に就くにふさわしい戦いぶりだった。

決勝進出の杉浦は大健闘。国内の試合文化の文脈を一段飛び越えた、力と理のある柔道で会場を沸かせた。「研究が好き」とのことだがなるほど納得。直接投げにアプローチするこの方法論には、国内の選手ではなかなか対応出来ない。ワールドツアーで活躍する海外のランカーが学生大会に紛れ込んだらこうなるのではないかと思わせる、競技の一線と呼吸の出来ている柔道だった。

入賞者と新井、杉浦両選手のコメント、準々決勝以降の結果は下記。

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66kg級優勝の新井雄士(左)、2位の杉浦冬唯。

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準決勝、新井が湯本祥真から内股透「技有」

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準々決勝、杉浦の豪快な「やぐら投げ」(左内股)による「一本」

【成績上位者】
(エントリー53名)
優 勝:新井雄士(國學院大)
準優勝:杉浦冬唯(愛知大)
第三位:湯本祥真(筑波大)、唯野己哲(国士舘大)

新井雄士選手のコメント
「今日は自分の柔道を思い通りに表現出来ました。投げを決めた試合が多く、充実した内容で優勝出来たと思っています。決勝は『指導3』でしたが、満足しています。意識したのは準決勝。高校時代に県内で一緒に戦って来た相手だったので、なんとしても勝ちたいとひときわ集中して戦いました。同期に相田(勇司)、武岡(毅)と世界で戦っている選手がいますので、追いつけるように頑張りたい。」

杉浦冬唯選手のコメント
「決勝は全身が攣ってしまいました。決勝まで来るのが初めてで、この舞台で5試合戦うことがいかに大変かということがわかっていなかったですね。甘かったです。(―かなり良く試合を見ている柔道。研究は好き?)はい。国際大会なども見て、考えて練習しています。きょうは自分たちで研究して来たことが通用することが証明出来て、良い1日でした。」

【準々決勝】
湯本祥真(筑波大)○GS技有・内股(GS1:13)△佐藤大知(明治大)
新井雄士(國學院大)○合技[内股・袈裟固](0:43)△松村士(東洋大)
杉浦冬唯(愛知大)○内股(0:24)△藤本大晴(日本大)
唯野己哲(国士舘大)○合技[横四方固・袈裟固](2:54)△佐々木光太郎(法政大)

【準決勝】
新井雄士○合技[小外刈・内股透](1:12)△湯本祥真
杉浦冬唯○袖釣込腰(1:34)△唯野己哲

【決勝】
新井雄士○GS反則[指導3](GS0:49)△杉浦冬唯


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