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【レポート】2年生荒川清楓、悲願の個人戦全国制覇達成/第70回インターハイ柔道競技女子63kg級レポート

(2021年11月2日)

※ eJudoメルマガ版11月2日掲載記事より転載・編集しています。
【レポート】2年生荒川清楓、悲願の個人戦全国制覇達成
第70回インターハイ柔道競技女子63kg級レポート
日時:2021年8月12日
会場:長野市真島総合スポーツアリーナ(ホワイトリング)

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3回戦、矢澤愛理が青田れもんから右足車「一本」

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準決勝、矢澤は田中輝乃との競り合いを、後帯を掴んでの内股「技有」で乗り越える。

【決勝まで】

3月の全国高校選手権の覇者・石岡来望(岡山・創志学園高)が70kg級に階級を上げ、同2位の鹿歩夏(佐賀・佐賀商高)はトーレスアリネ(群馬・常磐高)との1回戦でいわゆる「頭突っ込み」の反則を犯して、ダイレクト反則負け。

決勝に進んだのは、矢澤愛理(長野・松商学園高)と、石岡の後輩・荒川清楓(岡山・創志学園高)の2人。

2019年世界カデ選手権2位、3月の全国高校選手権で3位入賞の矢澤は大活躍した団体戦(3位)に続いての登場。しかし序盤は苦戦続き。柿澤夏美(静岡・藤枝順心高)との1回戦は開始早々一本背負投崩れの右大外巻込を受け損なって「技有」を失うピンチ。1分48秒に右内股で膝を着かせて押し込んで無理やり「技有」奪回、迎えたGS延長戦40秒に2つ目の「指導」を得て優勢勝ちという辛勝でなんとかクリア。2回戦は松本登羽(鳥取・倉吉北高)を相手に「指導2」を先行、残り55秒両襟の右内股で「技有」を上積みして順調だったが、直後得意の大内刈を狙われて大内返「技有」失陥というこれも非常に危うい展開。そのまま逆に横四方固で抑え込んで2分41秒合技「一本」でなんとか収拾したものの、63kg級ながらチームの大黒柱として勝利必須の6戦を戦い抜いた団体戦の疲労をビビッドに感じさせる綱渡りの試合運び。しかし3回戦で青田れもん(栃木・國學院栃木高)を開始44秒鮮やかな右足車「一本」で退け、ここで体勢を立て直す。準々決勝の吉田日和(滋賀・比叡山高)戦はGS延長戦に右大内刈を突っ込んでおいての内股「技有」で勝利し、勝負どころと目された田中輝乃(東京・岩倉高)戦はGS延長戦1分23秒釣り手で後帯を引っ掴んでの右内股「技有」でクリア。消耗隠せずも、しっかり決勝まで勝ち上がった。

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準決勝、荒川清楓が杉山凛から隅落「技有」

2年生の荒川は2019年の全国中学校大会準優勝者、今大会団体戦の優勝メンバー。この日は2回戦で今野蒔友(秋田・本荘高)をGS延長戦1分43秒横四方固「一本」、続く3回戦は濱田美音(愛知・大成高)を「指導」2-0の僅差優勢で下す。準々決勝は竹腰楓華(長野・佐久長聖高)をGS延長戦2分41秒のこれも僅差優勢(「指導」差2-1)で退け、しぶとい柔道を前面に押し出してベスト4入り。迎えた杉山凛(山梨・富士学苑高)との準決勝は、残り15秒相手の右袖釣込腰で半ば投げられながら体を入れ替え、座り込んだ相手に被り返して隅落「技有」。もっとも大事なところでこの日初めて投技のポイントを得、見事決勝への勝ち上がりを決めた。

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決勝、GS延長戦の組み際に荒川が左大内刈。剛体で受けた矢澤は一瞬耐えたのちにズルリと崩れる。

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荒川思い切って被り「技有」。これで試合が決まった。

【決勝】
荒川清楓(岡山・創志学園高)○GS技有・大内刈(GS1:50)△矢澤愛理(長野・松商学園高)

荒川が左、矢澤が右組みのケンカ四つ。荒川は地力に勝る矢澤と組み合って勝負することを忌避、相手の組み手が十分になる前に肩車、左払巻込と伏せて終わる技での先手攻撃で手数を積む。矢澤は密着しての右内股、次いで絞られた袖を利用しての両袖の右袖釣込腰、さらに再度の右内股と威力のある技を打ち返すが、いずれも不十分。あと一歩ポイント獲得には届かない。荒川は手数を積むだけでなく、切れ味鋭い左小外刈など明確に「取る」ための技も放ち、試合の主導権を握り続ける。荒川が状況を積み、矢澤が大技で流れを引き戻すというサイクルの繰り返しで本戦の3分間が終わり、両者ノースコアで勝負はGS延長戦へ。

延長戦になっても構図は変わらず、荒川が先手攻撃を仕掛け、矢澤は密着からの威力のある技を打ち返す。いずれの側にも決定打はないものの、どちらかというと明確に投げる威力のある技がある矢澤が優位。しかし、荒川にやや手詰まり感が漂い始めたGS1分50秒、荒川が先んじて奥襟を叩き、これまで用いていなかった組み際の左大内刈で勝負に出る。やや遠間から相手の奥足に刈り足を引っ掛け、向き直りながら捻ると、剛体で受けてしまった矢澤は体側から崩れ落ちて「技有」。2年生の荒川が優勝を飾った。

矢澤の威力ある「打ち返し」に動ぜず戦い抜いた荒川は見事。体の強さとスタミナはもちろんだが、迷いなく己の戦型を貫いたことそれ自体が大きかった。中学2位の挫折、そして中学・高校でともに団体戦全国制覇という自信に裏打ちされた「攻め切る」柔道の勝利であった。

惜しくも戴冠ならなかったが、矢澤の柔道も素晴らしかった。勝ちぶりの良さはもちろんだが、高い身体能力とパワー、そして軸となる「内側の技」の強さを生かすべく練り込んだ方法論それ自体がみもの。まるでワールドツアーの上位選手のような論理的かつ、他と隔絶した発想。アプローチ1つ1つに、投下した思考量の多さがうかがわれた。燃料消費の激しいスタイルゆえ、大型選手と戦い続けた団体戦で激しく消耗。個人戦ではもはや「最後まで持つかどうか」が焦点となってしまった感があったが、間違いなく今大会もっとも輝いた選手の1人であった。

入賞者と荒川のコメント、準々決勝以降の結果は下記。全試合結果は記録ページを参照のこと。

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63kg級を制した荒川清楓

【入賞者】
優 勝:荒川清楓(岡山・創志学園高)
準優勝:矢澤愛理(長野・松商学園高)
第三位:田中輝乃(東京・岩倉高)、杉山凛(山梨・富士学苑高)
第五位:吉田日和(滋賀・比叡山高)、髙木水月(福岡・敬愛高)、トーレス アリネ(群馬・常磐高)、竹腰楓華(長野・佐久長聖高)

荒川清楓選手のコメント
「団体との2冠は嬉しいし、中学では2位だったので、リベンジ出来て良かった。団体戦ではやって来たことを出せなかったので、個人戦ではやってやろうと思っていました。(―決勝終了後、先輩の石岡選手と入れ替わりでしたね)頑張ってください、と声を掛けさせて頂きました。(―決勝の相手は強敵。ゲームプランは?)相手は強いですが、監督に、最後だからやり切れと言われて、その言葉を励みにやり切りました。(―GS延長戦でペースを掴んだ)何が何でも勝ちたかった、『指導』でもいいから欲しいと思って攻めました。最後まであきらめずに攻め続ける、自分の良いところが出せたと思います。(―大内刈が決まった瞬間は?)頭が真っ白になりました。日本一になった実感はなかったです。

【準々決勝】
矢澤愛理(長野・松商学園高)○GS技有(GS0:40)△吉田日和(滋賀・比叡山高)
田中輝乃(東京・岩倉高)○GS僅差(GS3:31)△髙木水月(福岡・敬愛高)
杉山凛(山梨・富士学苑高)○合技(GS2:53)△トーレス アリネ(群馬・常磐高)
荒川清楓(岡山・創志学園高)○GS僅差(GS2:41)△竹腰楓華(長野・佐久長聖高)

【準決勝】
矢澤愛理(長野・松商学園高)○GS技有(GS1:23)△田中輝乃(東京・岩倉高)
荒川清楓(岡山・創志学園高)○優勢[技有]△杉山凛(山梨・富士学苑高)

【決勝】
荒川清楓(岡山・創志学園高)○GS技有・大内刈(GS1:50)△矢澤愛理(長野・松商学園高)

※ eJudoメルマガ版11月2日掲載記事より転載・編集しています。

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