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【レポート】江口凜が春夏連覇、徹底マーク跳ね返し決勝も「一本」/第70回インターハイ柔道競技女子57kg級レポート

(2021年10月31日)

※ eJudoメルマガ版11月1日掲載記事より転載・編集しています。
江口凜が春夏連覇、徹底マーク跳ね返し決勝も「一本」
第70回インターハイ柔道競技女子57kg級レポート
日時:2021年8月11日(水)
会場:長野市真島総合スポーツアリーナ(ホワイトリング)

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3回戦、江口凜が森川柔から送襟絞「一本」

【決勝まで】

世界カデ王者で3月の全国高校選手権も制した世代の主役・江口凛(神奈川・桐蔭学園高)が徹底マークを跳ね返して決勝進出。まず山本空(大阪・東大阪大敬愛高)と大消耗戦、試合時間10分41秒(GS7:41)の長時間試合を「指導」2-1の僅差で勝ち抜くと、以降は得意の寝技を軸に勝ちを重ねた。2回戦は大熨綾香(岡山・創志学園高)から一本背負投「技有」を奪ってクリアすると、3回戦は森川柔(山形・羽黒高)を1分44秒得意の送襟絞「一本」で退ける。準々決勝は升澤凜(愛媛・新田高)をGS延長戦20秒「指導3」で退け、準決勝は前戦で小幡心里(島根・出雲西高)を破った星采伽(茨城・牛久高)をもっとも得意とする「腹包み」からの抑え込みに捉えて1分47秒崩袈裟固「一本」。すべての相手にターゲットとされる厳しい状況にありながら、「きちんとやれば大丈夫」と己に言い聞かせているかのような、丁寧で粘り強い戦いが印象的。勝ちに勝ちまくった高校柔道、いよいよ締めの一番に挑む。

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3回戦、奥井花奈が永松莉菜の払腰を弾き返し、大きく被って「一本」

もう1人のファイナリストは2017年全国中学校柔道大会63kg級王者の奥井花奈(愛知・大成高)。1回戦は大竹涼夏(新潟・新潟第一高)を1分50秒合技「一本」、2回戦は橋本瑠音(千葉・木更津総合高)をGS延長戦24秒「指導3」で下し、3回戦の永松莉菜(佐賀・佐賀商高)戦は開始28秒の払腰返「一本」でクリア。最大の勝負どころと目されたV候補・井田侑希(埼玉・児玉高)との準々決勝は刈り足を膕から滑り下ろしての左小外刈「技有」で乗り越え、伊藤あくあ(岐阜・美濃加茂高)との準決勝は小外刈「技有」で優勢勝ち。みごと決勝の畳へ辿り着いた。

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本戦は組み手に厳しい奥井が良く攻める。

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GS延長戦、江口は左技で攻めまくる

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最後は逆方向、右の一本背負投で「一本」

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廣川真由美監督と抱擁。勝ち続けねばならなかった江口の高校柔道が終わった。

【決勝】
江口凜(神奈川・桐蔭学園高)○一本背負投(GS1:39)△奥井花奈(愛知・大成高)

江口が左、奥井が右組みのケンカ四つ。江口は常の通り、釣り手のみを持った状態からの右一本背負投が組み立ての軸。しかしこれは奥井もよく理解しており、多少不十分でも早く二本を持つことで封じ込めを狙う。江口は強引な右一本背負投に敢えて奥を叩いての圧殺、そしてこの圧殺状態からの足技と狙いを散らしながら攻める。しかし本命はあくまで右一本背負投と寝技、これをよく知る奥井の前に具体的なポイントまでは辿り着くことができない。奥井は江口をよく研究しており、厳しい組み手でチャンスを作らせぬまま得意の右小外刈に右内股と切れのある技を出して優位に試合を進める。結果、ともに決定的な場面は作り出せず、2分26秒に奥井に消極的姿勢の「指導」が与えられたのみで、勝負はGS延長戦へともつれ込む。

延長戦に入ると、江口は左技主体の傾向を強め、大外刈を連発して相手の意識を左方向へと向けさせる。この技に意外な威力があったこと、そして延長戦に入りスタミナに勝る江口の側が体力面で優位に立ち始めたことで、あくまで本命は右技と理解していた奥井もこの左技を警戒せざるを得ない状況に追い込まれる。江口は左背負投、そして脇を差しての「熊代型」左大外刈とさらに左技を積む。江口のこの戦略的な「作り」は1分半に及ぶ。そしてGS1分39秒、まさに満を持して本命の右一本背負投一撃。完全に左方向、それも外側に意識が向いていた奥井は懐深くに侵入を許してしまい、勢い良くごろりと転がり「一本」。江口が周囲の徹底マークを掻い潜って見事優勝を果たした。

決勝は戦略勝ち。結果的にターゲット研究の成果を「対応」に費やすこととなってしまった奥井に対し、江口は不利をかこちながらも具体的な勝ちのルートを描いて作りを続けた。江口の体力的なアドバンテージはもちろんだが、戦略としてステージが一段上、戦う姿勢の位相が一段高かった。

背景には、寝技の選手であった江口がさらなる成長を求めて、投技を磨き続けたことがある。体があり、組み手と寝技で早い段階から結果を残す選手は特に女子に多いが、ほとんどの選手が潰れていく。残し過ぎた実績と結果を出し続けなければいけないプレッシャーから逆に柔道が小さくなっていく場合がほとんどだが、世界大会を制し、すべての選手に狙われる立場にありながら、ドラスティックに成長を企図し続けた江口の姿勢は素晴らしい。負けて失うものばかりが増え続ける、歯ぎしりするような試合の連続を勝ち抜いた精神力はもちろんのこと、勝ってなお柔道を変えることを厭わなかった江口の姿勢に拍手を送りたい。

入賞者と江口のコメント、準々決勝以降の結果は下記。全試合結果は記録ページを参照のこと。

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春夏連覇なった江口凜

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準決勝、牛久高・星采伽から得意の崩袈裟固で「一本」

【入賞者】
(エントリー48名)
優 勝:江口凜(神奈川・桐蔭学園高)
準優勝:奥井花奈(愛知・大成高)
第三位:星采伽(茨城・牛久高)、伊藤あくあ(岐阜・美濃加茂高)
第五位:升澤凜(愛媛・新田高)、小幡心里(島根・出雲西高)、葛城玲央奈(広島・広島皆実高)、井田侑希(埼玉・児玉高)

江口凜選手のコメント
「春の選手権で優勝。インターハイも優勝しないといけないなと思っていました。最後の試合を『一本』で決められたのが嬉しいです。(―プレッシャーは?) いつもは緊張しないのですが、今回は最後のインターハイだと思って、かなり緊張しました。プレッシャーが掛かっているなと自分でも感じました。(―決勝を振り返って)1回戦の相手がお互いを良く知っている幼馴染で、接戦で体力をかなり奪われてしまった。決勝は体力的にかなりきつかったのですが、最後のインターハイだし、力を出し切るしかないなと思いました。最後の一本背負投は狙っていたわけではなく、反射的に出た技です。(―立ち技を磨いて来た?)高校選手権の時もこれまでのように寝技で勝ちましたが、例えば自分が得意な『腹包み』はもう手を入れさせてもらえない。対策されていました。以後、これまで以上に立ち技を意識して練習してきたつもりです。決勝の他にもポイントを取れる試合がありましたし、成果が出たのは良かったです。(―オリンピックを見て印象に残ったのは?)新井選手です。決勝でポイントをリードしても、守りに入らずに攻め切っていました。あの柔道を見て、自分もインターハイを悔いなく終われるよう、最後まで攻め切ろうと思いました。(―高校2冠。今後は?)全日本ジュニア、講道館杯もあるので、まず1つ上のレベルで戦えるようにしっかり頑張ります。将来はオリンピックで活躍できる選手になりたい。」

【準々決勝】
江口凜(神奈川・桐蔭学園高)○GS反則[指導3](GS0:20)△升澤凜(愛媛・新田高)
星采伽(茨城・牛久高)○GS横四方固(GS0:57)△小幡心里(島根・出雲西高)
伊藤あくあ(岐阜・美濃加茂高)○肩固(1:52)△葛城玲央奈(広島・広島皆実高)
奥井花奈(愛知・大成高)○優勢[技有]△井田侑希(埼玉・児玉高)

【準決勝】
江口凜(神奈川・桐蔭学園高)○崩袈裟固(1:47)△星采伽(茨城・牛久高)
奥井花奈(愛知・大成高)○優勢[技有]△伊藤あくあ(岐阜・美濃加茂高)

【決勝】
江口凜(神奈川・桐蔭学園高)○一本背負投(GS1:39)△奥井花奈(愛知・大成高)

※ eJudoメルマガ版11月1日掲載記事より転載・編集しています。

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