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「重量級は厳しい状況、同じ会場で五輪本番の緊張感じた」鈴木桂治監督コメント要旨/グランドスラム・パリ2021

(2021年10月19日)

※ eJudoメルマガ版10月18日掲載記事より転載・編集しています。
「重量級は厳しい状況、同じ会場で五輪本番の緊張感じた」鈴木桂治監督コメント要旨
グランドスラム・パリ2021
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就任後初の遠征を終えた鈴木桂治監督。

就任後初の海外遠征となるグランドスラム・パリ(16日~17日)を終えた、日本代表・鈴木桂治男子監督のコメント要旨は下記。帰国後の19日、報道陣の取材に応じた。

*     *     *     *

――4階級で優勝、全体を踏まえた総括を

新しい体制になっての初めての試合ということで、試合前には私自身の思いも少し話しました。選手一人一人に課題があるということも。結果的には金メダル4つ、銀と銅も含めてメダルの数は多かったのですが、良い選手、悪い選手がはっきりしました。重量級は3名全員が初戦敗退。まったくもって実感のない大会になってしまった。選手それぞれ悔しい思いをしていると思いますが、世界で戦う、勝つというテーマは遠いなとあらためて実感しました。

――重量級についてもう少し詳しくお願いします。

軽量級と比べた場合に大きく違うのは、重量級は国内の稽古相手の数、稽古対象の選手が非常に限られてくるということです。限られた環境で技術や体力を磨くのは大事なことですが、海外に出られていないということで、詰めた稽古がまったく出来ていないと試合を見ても感じました。国内での稽古で自己満足になってしまっているのかなと感じています。軽量級であれば階級が上の選手とも出来るので、ある程度負荷をかけた稽古ができる。最重量級では海外選手のようなパワーや体格の差を持った稽古相手が国内では見つからない。色々な海外とのギャップが、今回は埋められませんでした。今後は海外相手の経験値を増やすのが第一。この結果を踏まえて重量級については今後の課題が大きく出たと思っています。

――優勝した田中、原田、佐々木、長澤の4選手について具体的評価をお願いします。

66kg級の田中に関しては、本当に若手らしく、それどころか勝負どころではまるで海外慣れしているような戦いも見せてくれました。まだまだパワーや攻撃の形など雑なので、逆に言えば本当に伸びしろしかない選手。自信にもなったと思いますし、シニアの海外選手の強さ、勝つことの難しさも実感できたと思います。大きく期待したいですし、今後色々な形でチャンスが回って来るのではと感じました。73kg級の原田に関してはもともと背中を持ったり海外の選手のような柔道スタイル。今回はすごくそれがマッチしたと思います。今後は、海外の選手は必ず研究してバッチリそれに備えてくる。そういったときに同じ形では難しいのではないかと話しました。自分の良さをもっと出しながら、さらに海外の選手に対応する形を磨いていって欲しい、進化して欲しいと感じています。81kg級の佐々木に関しては「強い」の一言。無双状態でした。立っても寝ても佐々木健志のステージだったなと思います。これまで勝った負けたの繰り返しが激しい選手だったので、今後は波の上下をなくすことが課題。優勝し続けることも大事ですが、強い弱いのはっきりした形が少しでも薄くなるように、安定した強さを出すことが次に繋がる課題だと思います。ここは本人も自覚しているし、戦いのパターンも色々な形を持っている。その出し方を間違えないこと、戦いの形、選択を間違えないこと、今後はさらにここに気を遣ってもらいたいと思います。今回は本当に強かったです。そして90kg級の長澤。世界選手権をはじめ数多くの大会を経験している選手。村尾、向など若手、年下が伸びてきて代表を奪われがちになっている中で、意地を出してくれました。大会前の調整練習を見ていても、すごく動きが良かった。決勝は準決勝で膝を傷めてテーピングが固めだったので、少し動きも硬く技の出し方も違和感があったと思うのですが、それでも勝ち切った。勝たないと後がないよと伝えていましたし、本人も十分わかっているはず。こういったプレッシャーのなかで勝ち切ったことは大きく評価したいと思います。

――練習パートナーとして斉藤立選手を帯同しました。

パリ五輪、ロサンゼルス五輪に向けてということで名前が挙がりました。あとは中野寛太選手も会見で名前を挙げさせていただきましたが、今回は本人が学生大会を選ぶということで選出できなかった。斉藤、中野、この2人がこういった先輩の試合を見ることは大事。今回の代表は負けてしまいましたが、本人に聞くと『世界の壁は厚いけども、俺だったらもっとやるという思いになりました』と言っていました。斉藤の心をあおるという意味でも今回国際大会の場を経験させたかったので、委員長、副委員長に無理を言って帯同させていただきました。パリで見たものをどう自分の試合に仕上げていくかが課題。若手と言っても大学3年になれば、強い選手は世界にたくさんいる。もう若手ではない。シニアで十分な結果を残せと伝えています。

――重量級、具体的にどう経験値を埋めるのか。

可能な限り海外への派遣などしていきたい。受け入れの状況にもよると思いますが、日本の連盟、医科学委員会の意見を聞きながら、なるべく一本でも多く海外の選手と組み合う時間を取りたい。今回の試合を見て特に強く思ったのはこの部分です。重量級は非常に厳しい状況に直面しています。

――海外の選手に関して、試合感覚や動きが違った?

重量級に関しては、世界ジュニアで活躍した選手は出てきていませんでした。66kg級の田中の初戦の相手(マクシム・ゴベル/フランス)は欧州ジュニアチャンピオン。世界ジュニアでも3位の選手です。GS延長戦でなんとか「指導」を重ねて勝ちました。そんなに力の差は大きく開いていないと思いましたし、彼(ゴベル)は世界ジュニア、欧州ジュニアを経験してグランドスラムに出てきて、結果としては田中に初戦で負けましたが、力だけで言えば決勝で当たる相手だったかもしれない。(海外勢は)そうやって段階を経て大会に出てきている。一方の田中が最後に国際大会に出たのはカデ。ジュニアではまったく国際経験がないので、今回は賭けでした。海外の選手はちゃんと段階を経て強化が出来ている、その現状はしっかりと目に焼き付けてきました。日本は、ときには強硬策も取らなければいけないのかなと思います。

――五輪を戦った選手が不在のなかで、世界の重量級の若手の力は?

優勝したタソエフは23歳、オランダのスパイカースも同じくらい。確実に育っている。今回はその2名、加えてフランスの重量級が目立っていました。100kg級も色々な選手、あまり聞いたことのない名前の選手が上位に上がって来ていました。日本以外の重量の若手は顕著に成長している。小川も佐藤も決して若手という括りではないので、ここに斉藤、中野が入っていったらと考えると、なかなか厳しいイメージです。若手、中堅、ベテランの括りをしっかりした上で強化を進めていく、考えていくことが大事だと思います。海外の若手は確実に育っているし、今回は出場者が少なかったですが、五輪ポイントが入るようになって本格的にパリ五輪に向けてスタートしたらもっと強い選手も出て来るし、聞いたことのない選手で力のある選手がさらに出てきます。日本もしっかりとした強化を進めていくことが一番だと思います。

――久しぶりの満員の会場で試合、パリ五輪の会場でもありました。

今回、私はコーチボックスに入らずにひたすら全試合を見ている立場でした。海老沼先生らコーチに聞くと、やはり『いっぱいに観客が入っていて、すごい』と。日本では所属の選手しか応援しなかったりしますが、フランスの観客は、良い柔道にはフランス人以外にも声援を送る。そしてフランス人への声援はさらに凄い。これを、いざ五輪で1人しか出ない状況、世界一が懸かった状況で食らったら、そしてアウェーの対戦だったらどうなるのか、と緊張感で震えました。日本人だとそれがプレッシャーになる選手がいると思いますが、フランスの選手は必ずこれを力にしてきます。2月のグランドスラム・パリはもっと盛り上がっていると思います。五輪のプレッシャー、環境をひしひしと感じられるはず。五輪本番に向けてどんなプレッシャーでもしっかりと受け入れられるメンタルの強さ、そういったものが今後の大きなテーマだと思います。

※ eJudoメルマガ版10月18日掲載記事より転載・編集しています。

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