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【プレビュー】グランドスラム・パリ2021最終日男子4階級プレビュー

(2021年10月17日)

※ eJudoメルマガ版10月15日掲載記事より転載・編集しています。
グランドスラム・パリ2021最終日男子4階級プレビュー
(81kg級、90kg級、100kg級、100kg超級)
■ 81kg級 他とまったく異なる超ハイレベル階級、実力ナンバーワンは佐々木健志
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ついに国際舞台に復帰する佐々木健志

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ブダペスト世界選手権で日本代表を務めた藤原崇太郎

(エントリー29名)

今年6月のブダペスト世界選手権王者のマティアス・カッス(ベルギー)と同2位のタト・グリガラシヴィリ(ジョージア)が参戦。これに2018年ワールドマスターズ覇者の佐々木健志(ALSOK)と2018年バクー世界選手権2位の藤原崇太郎(旭化成)が加わり、他階級とはまったく違う、飛び抜けてレベルの高いトーナメントが組まれた。有力選手の弾数こそ限られてはいるが、優勝の難度は世界大会にも引けを取らない。

実績から見た優勝争いの軸はカッスとグリガラシヴィリ。直近の試合でもカッスが東京五輪銅メダル、グリガラシヴィリが9月のグランプリ・ザグレブを圧勝と、安定して高いパフォーマンスを見せている。

しかし、それでも優勝争いの最右翼には佐々木を推したい。国内のファンはご存知のとおり、佐々木は昨年12月の全日本選手権で凄まじいパフォーマンスを見せてベスト4入り、さらに今年4月の全日本選抜体重別選手権でも他をまったく寄せ付けず全試合「一本」で優勝を攫っている。2019年の低調が響いてまだ世界大会の経験はないが、実力自体は間違いなく世界王者クラス。今回は準々決勝でカッスと戦う配置となっており、この試合が最大の山場だ。厳しい組み合わせであるが、とにかく佐々木らしい大暴れに期待したい。

一方の藤原は比較的戦いやすいプールBに置かれており、準々決勝で寝技巧者のギルヘルム・シュミット(ブラジル)に勝利しさえすれば準決勝でグリガラシヴィリに挑むことが出来る。ここまでは必達。可能であればこの試合にも勝利し、決勝で佐々木とのリベンジマッチに臨みたいところ。このところの藤原は安定した強さを見せる一方でなかなか優勝までは辿り着けておらず、国内の序列を永瀬貴規(旭化成)、佐々木に次ぐ3番手まで下げている。佐々木と同時派遣、かつ海外勢も一線級が出場している今大会はこの状況を変える大チャンス。気合の入った戦いを見せてくれるはずだ。

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ブダペスト世界選手権の覇者マティアス・カッス

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タト・グリガラシヴィリ

【プールA】
第1シード:タト・グリガラシヴィリ(ジョージア)
第8シード:ニコラス・デルポポロ(アメリカ)
有力選手:ティモ・カフェリウス(ドイツ)、ツルパル・テプカエフ(ロシア)

【プールB】
第4シード:ギルヘルム・シュミット(ブラジル)
第5シード:藤原崇太郎(旭化成)

【プールC】
第2シード:マティアス・カッス(ベルギー)
第7シード:アルフォンソ・ウルキサ=ソラナ(スペイン)
有力選手:アバス・アジゾフ(ロシア)
日本代表選手:佐々木健志(ALSOK)

【プールD】
第3シード:ムラド・ファティエフ(アゼルバイジャン)
第6シード:アルファ=ウマ・ジャロ(フランス)
有力選手:ティム・グラムコフ(ドイツ)

■ 90kg級 村尾三四郎の再スタートに刮目、因縁ある相手と連戦組まれる
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再起を期す村尾三四郎。5月のグランドスラム・カザンでは圧勝Vを飾っている。

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長澤憲大。ブダペスト世界選手権は5位だった。

(エントリー24名)

先月のグランプリ・ザグレブを制したママダリ・メフディエフ(アゼルバイジャン)が第1シード。加えて同2位のルカ・マイスラゼ(ジョージア)、さらに日本代表の村尾三四郎(東海大3年)と長澤憲大(パーク24)、ガンツルガ・アルタンバガナ(モンゴル)、フセン・ハルモルザエフ(ロシア)らの強豪が名を連ねた。「修羅の国」であるこの階級の常態に比すれば物凄くレベルの高いトーナメントとは言えないが、日本勢の参戦、そして81kg級から階級を変更したアンリ・エグティゼ(ポルトガル)の出来、フランシス・ダミエ(フランス)やヴァヒド・ボルチャシヴィリ(オーストリア)ら活きの良い若手の存在など、みどころは多い。。

注目はやはり村尾。6月のブダペスト世界選手権では、準優勝したダヴラト・ボボノフ(ウズベキスタン)の巧みな試合運びの前に2回戦敗退(「指導3」)を喫している。今回は出直しの大会。ここで確実に優勝し、2024年パリ五輪に向けた第一歩としたい。

今回は決勝までに山場が2つあり、準々決勝でハルモルザエフ、準決勝でメフディエフと過去敗れている2選手と戦うことになる。メフディエフには1勝2敗、ハルモルザエフとは0勝1敗、いずれも2020年以前に当時課題であった「力勝負」フィールドで後塵を拝している。村尾はコロナ期間に大きく地力を上げており、さらにブダペスト世界選手権以降は「技と組み手の幅を増やして、勝つ確率を上げて来た」とのこと。現在の実力ならば問題なく勝利できるはずだ。村尾らしい、遠間から一気に間合いを詰めての豪快な一撃に期待したい。

長澤もブダペスト世界選手権5位からの再スタートとなる。ライバルの村尾と同時派遣の今大会でしっかり結果を残したいところ。組み手の完璧さにこだわりすぎる癖に、どこまで折り合いをつけられるかが注目ポイントだ。耐える場面で耐え、勝負すべき場面できちんと勇を奮う、長澤本来のパフォーマンスの発露に期待。準々決勝のマイスラゼ戦が最初の山場。

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第1シードはママダリ・メフディエフ

【プールA】
第1シード:ママダリ・メフディエフ(アゼルバイジャン)
第8シード:アブデラフマネ・ディアオ(セネガル)

【プールB】
第4シード:村尾三四郎(東海大3年)
第5シード:フセン・ハルモルザエフ(ロシア)

【プールC】
第2シード:ガンツルガ・アルタンバガナ(モンゴル)
第7シード:レミ・フイレ(モーリシャス)
有力選手:フランシス・ダミエ(フランス)、アンリ・エグティゼ(ポルトガル)、ヴァヒド・ボルチャシヴィリ(オーストリア)

【プールD】
第3シード:長澤憲大(パーク24)
第6シード:ルカ・マイスラゼ(ジョージア)
有力選手:オーレリアン・ディエス(フランス)

■ 100kg級 プールAの準々決勝、飯田―アダミアン戦が最注目カード
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飯田健太郎

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第1シードを張るのはアルマン・アダミアン

(エントリー18名)

日本代表の飯田健太郎(旭化成)と2019年欧州王者のアルマン・アダミアン(ロシア)が優勝争いの軸。ここにシメオン・カタリナ(オランダ)、オニセ・サネブリゼ(ジョージア)、バットフヤグ・ゴンチグスレン(モンゴル)、アスレイ・ゴンザレス(ルーマニア)らが絡むというのがトーナメント大枠の構図だ。厳密な意味でのトップ選手は飯田とアダミアンしかおらず、激戦階級の100kg級としてはかなり寂しいトーナメントとなっている。

そして、優勝候補の飯田とアダミアンがともにプールAに配されており、早くも準々決勝で激突することになる。両者はこれが初顔合わせ。選手としての格は飯田が上だが、相性的にはアダミアンに分があると見る。飯田は以前から線の細さが課題として指摘されており、担ぎ技に足技と手札が増え、組み手の厳しさが増した現在でもこの弱点は完全には克服されていない。アダミアンは階級屈指のパワー派。あくまでも飯田勝利の可能性が高いと予想するが、厳しい戦いになることは必至だ。注目ポイントはいかに「厳しさ」を途切れさせないか。最近の飯田は昨年の全日本選手権に今年6月のブダペスト世界選手権と、いずれも試合の大半を支配しながら一瞬の緩みを突かれて敗れている。今回の陣容ではこの勝負どころでの甘さが勝敗に影響するような相手はアダミアンしかいないが、この点をいかに飯田が自覚的に詰めてきているのか、その戦いぶりを注視したい。

もう1つの注目ポイントはもと90kg級の世界王者ゴンザレスの出来。100kg級で参戦したグランプリ・ザグレブでは表彰台こそ逃したが、上位選手と堂々伍してさすがというところを見せていた。既に32歳、代名詞の「ゴンザレス背負い」はさすがに鳴りを潜めていたが、体落の巧さは出色。このまま100kg級で戦うのかどうかが見えてくる大会になるはずだ。

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2013年リオ世界選手権90kg級の覇者アスレイ・ゴンザレスが国籍をルーマニアに変えて復帰。

【プールA】
第1シード:アルマン・アダミアン(ロシア)
第8シード:飯田健太郎(旭化成)
有力選手:アーロン・ファラ(オーストリア)

【プールB】
第4シード:ズラトコ・クムリッチ(クロアチア)
第5シード:バットフヤグ・ゴンチグスレン(モンゴル)

【プールC】
第2シード:シメオン・カタリナ(オランダ)
第7シード:マルコ・クムリッチ(クロアチア)
有力選手:オドバータル・ハンガル(モンゴル)

【プールD】
第3シード:オニセ・サネブリゼ(ジョージア)
第6シード:ダリオ・クルビエヴァイト=ガルシア(ドイツ)
有力選手:アスレイ・ゴンザレス(ルーマニア)

■ 100kg超級 日本勢はともに初戦に山場、佐藤とタソエフの足技対決に注目
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選抜体重別を制した佐藤和哉

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小川雄勢。選抜体重別は2位。

(エントリー17名)

第1シードは今年の欧州王者のイナル・タソエフ(ロシア)。ここに日本代表の佐藤和哉(日本製鉄)と小川雄勢(パーク24)、先月のグランプリ・ザグレブを制しているユール・スパイカース(オランダ)、バクー世界選手権2位のウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)、100kg級から階級を上げたシリル・マレ(フランス)らが加わり、この時期としてはかなり魅力的なトーナメントが組まれた。ステファン・ヘギー(オーストリア)、マルティ・プーマライネン(フィンランド)ら切れのある技を持つ好選手も名を連ね、意外に厚みのある陣容だ。

日本代表の2名はいずれもノーシード。揃って厳しい組み合わせを引いており、佐藤がタソエフ、小川がスパイカースと初戦を戦う位置に置かれた。

国内では実績豊富な佐藤だが、ワールドツアーへの派遣は意外にも2018年のグランプリ・チュニス(5位)以来2度目。なんとしてもタソエフ狩りを果たして勝ち上がり、パリ五輪に向けてアピールしたいところ。佐藤とタソエフはともに足技、それも実力差に関わらず一瞬で勝負を終わらせる“払い技”の名手。試合は緊張感のある足技の応酬になる可能性大だ。背景関係なく、純粋に試合だけで考えてもかなり楽しみな一番。

一方の小川は、序列的には格下のスパイカースが相手。この選手はもともと担ぎ技連発による「指導」奪取型だったが、先月のザグレブ大会では鋭い投げを連発してトーナメントの頂点に辿り着いている。仮に小川が圧殺を志向するようであれば反対に型に嵌められてしまう可能性が高く、いかに具体的な投げを狙えるかが勝利の鍵になるだろう。4月の全日本選抜体重別選手権では、「指導2」を失った後という限定的なシチュエーションではあったが、明確に「投げて決める」意図が見て取れ、実はキャリアの中でも出色のパフォーマンスを見せていた。この傾向を推し進めた、積極的な柔道に期待したい。

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第1シードはイナル・タソエフ。

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今季一気に伸びた選手の1人、ユール・スパイカース。

【プールA】
第1シード:イナル・タソエフ(ロシア)
第8シード:オドフー・ツェツェンツェンゲル(モンゴル)
日本代表選手:佐藤和哉(日本製鉄)

【プールB】
第4シード:ウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)
第5シード:ムバグニク・ンジャイ(セネガル)

【プールC】
第2シード:ユール・スパイカース(オランダ)
第7シード:ジョセフ・テヘック(フランス)
日本代表選手:小川雄勢(パーク24)

【プールD】
第3シード:ステファン・ヘギー(オーストリア)
第6シード:マルティ・プーマライネン(フィンランド)
有力選手:シリル・マレ(フランス)

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