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【オーバービュー】佐々木健志、村尾三四郎、田中龍馬ら揚がる勢いの日本勢に注目/グランドスラム・パリ2021

(2021年10月15日)

※ eJudoメルマガ版10月12日掲載記事より転載・編集しています。
佐々木健志、村尾三四郎、田中龍馬ら揚がる勢いの日本勢に注目
グランドスラム・パリ2021オーバービュー
文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

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会場のアコーホテルズ・アリーナ・ベルシー。写真は2019年大会のもの。

史上最多となる9個の金メダルを獲得した東京オリンピックの熱狂から2か月半、いよいよ新生・日本代表が本格的なスタートを切る。新体制最初の国際大会はグランドスラム・パリ。3年後に控えるパリ五輪柔道競技と同じアコーホテルズ・アリーナ(旧ベルシー体育館、五輪期間はパリ・アリーナと改称の予定)で行われる、業界きってのビッグイベントである。

とはいえ五輪直後とあって、海外勢の一線級の参加は僅少。男子81kg級にブダペスト世界選手権金メダリストで東京五輪でも銅メダルを獲得したマティアス・カッス(ベルギー)とタト・グリガラシヴィリ(ジョージア)の2人がエントリーしているが、こういった超大物の複数出場は例外中の例外。地元フランスも若手が中心で(ただし世界ジュニアを見てもわかる通りかなり強力だが)、男女計56名のうち五輪選手は女子48kg級のシリーヌ・ブクリと男子73kg級のギヨーム・シェヌの男女それぞれ1名のみ。五輪を区切りに階級を変更した強豪たちの動向チェック(まとめを後掲する)という旨味はあるが、全体を通じて基本的には2番手以降、若手中心の大会だ。

となると注目はやはり、東京五輪で最強国の立ち位置を証明した強国・日本の代表ということになる。特に鈴木桂治新監督のもと、14階級に12人(※当初13人、永山竜樹が負傷のため欠場)を送り込む男子のメンバーが非常に面白い。「五輪代表の真後ろにいる選手たち」(鈴木監督談)という選手は①ブダペスト世界選手権代表(金メダル獲得者を除く)と②選抜体重別優勝・準優勝者という構成。まだまだあくまで機械的序列、「選考試合に勝った選手を派遣する」というフェアネスに則ったメンバーで、「鈴木色」が濃く出て来るのはおそらく次回グランドスラム・バクーの派遣からではないかと思われるが(※ただし「練習パートナー」という肩書きを設けての斉藤立の派遣リスト入りは、かなりの「色」。好意的に捉えたい)、それでも相当にエキサイティングな陣容。全員を紹介したいのだが、ここでは男子から3名を注目選手としてピックアップしたい。

■ 注目選手揃う男子日本代表
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佐々木健志。おそらくファンがいま一番国際大会で見てみたい選手のはずだ。

まず81kg級の佐々木健志(ALSOK)。2020-2021年シーズンの国内MIPは間違いなくこの人。ファンがいまもっとも世界で見たい選手と言い切ってしまっていいのではないだろうか。昨年末の全日本柔道選手権では81kg級の小兵ながら圧巻の戦いでベスト4入り、準々決勝では同大会3度優勝の実績を誇る体重145キロの重戦車・王子谷剛志を小内巻込と一本背負投で投げつけて講道館に「佐々木旋風」を巻き起こした。4月の選抜体重別も圧勝。準決勝で佐藤正大を僅か16秒で仕留めた鮮やかな跳腰「一本」、決勝で藤原崇太郎を沈めた強烈な腕挫十字固「一本」はひときわ忘れがたい。コロナ禍により日本代表の国際大会派遣自体がなく「実績なし」扱いで世界選手権代表に選ばれることはなかったのだが、今回は待ちに待ったその国際大会だ。しかも前述の通りこの階級はカッスとグリガラシヴィリが出てくれる。投げ、独特の寝技、そして強靭なフィジカルと他の日本人と系の異なるアプローチで世界に挑む佐々木、もっか国内無敵のこの男が世界の強豪を相手にどんな戦いを見せてくれるのか。

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村尾三四郎。ブダペスト世界選手権の蹉跌を経て、戦い方がどう変わるか。

続いて90kg級の村尾三四郎(東海大3年)。ご存じの通り5月のグランドスラム・カザンではミハイル・イゴルニコフ(ロシア)を大外刈「一本」、東京五輪2位のエドゥアルド・トリッペル(ドイツ)を内股「一本」と五輪メダリスト級をなで斬り。投げに投げまくっての圧勝Vで、IJFの実況解説者を「なぜ村尾が五輪に出ないんだ?」と呆れさせた。6月のブダベスト世界選手権では徹底警戒に遭い、銀メダル獲得のダヴラト・ボボノフ(ウズベキスタン)の「指導」奪取作戦に嵌って予選ラウンド敗退となったが、実力は間違いなく世界一を争うレベル。出国前の取材会では「(以後)技と組み手の幅を増やして、勝つ確率を上げて来た」「まともに組んでくれない相手でも、結果を出さなければならない」と語っている。あの試合の反省をしっかり生かし、相当意識の高い稽古を積んで来た模様。単に強い選手から勝てる競技者へと階段を登ることが出来るか、キャリアの節目になり得る大会だ。

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選抜体重別制覇、一気に派遣の一線に躍り出た田中龍馬。

そして66kg級の田中龍馬(筑波大2年)。とにかく選抜体重別が鮮烈だった。決勝で藤阪泰恒を沈めた豪快な浮落「一本」は、阿部・丸山以降がダンゴ状態の66kg級戦線に、これまでの文脈から一段ジャンプするニューヒーローの誕生の可能性を予感させた。真っ向から勝負する、「力」自体で2人の世界王者を追いかける選手に羽化してくれればこれほど面白いことはない。年齢的に伸び盛り、そしてコロナ禍で試合のなかった田中のイメージは「高校を出るなり選抜制覇」、そして「以後まだ天井にぶつかっておらず、力を図る物差しがない」状態。この大会がその「天井」になるのか、それともまだまだ余白は残されるのか。デニス・ヴィエル(モルドバ)、60kg級から階級を上げたヤゴ・アブラゼ(ロシア)らが今回のターゲット選手。

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古賀若菜。ブダペスト世界選手権は角田夏実に敗れて2位だった。

女子にも簡単に触れておく。男子に比べると人数、スケール感ともに一段落ちる派遣となったが、その中にあって48kg級でブダペスト世界選手権を制した古賀若菜(山梨学院大2年)にはひときわ注目が集まる。出国前の取材会では「全試合一本勝ちで優勝する」と“圧勝宣言”。得意の低い大内刈はもちろん、新たに練習を積んで来たと語る打点の高い袖釣込腰や一本背負投をどこまで使いこなせるかに注目したい。敵はフランス五輪代表を務めたブクリ、順調なら準々決勝で対戦が組まれるはず。世界ジュニアを獲ったばかりのアッスンタ・スクット(イタリア)も気にかけておきたい。

女子からもう1人。五輪王者新井千鶴が現役引退した70kg級、選抜体重別を素晴らしい内容で制した新添左季に期待したい。自衛隊体育学校の質の高い稽古でかつての強さが復活、どころか一段階段を上った気配あり。心機一転、キャリアの分岐点となる大会だ。

■ 階級を変えた強豪たち
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2013年の90kg級世界王者アシュレイ・ゴンザレス。久々の試合となったGPザグレブでは想像以上に逞しい柔道を披露した。

階級別のみどころはドローを踏まえたプレビュー記事で語らせて頂くが、ここで冒頭書いた全階級通じた「旨味」の部分、五輪を区切りに階級・所属国を変えたおもな選手たちを紹介しておきたい。

【男子】
60kg級→66kg級 ヤゴ・アブラゼ(ロシア)
60kg級→66kg級 ワリード・キア(フランス)
66kg級→73kg級 ヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)
81kg級→73kg級 ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン) ※出戻り
81kg級→90kg級 アンリ・エグティゼ(ポルトガル)
90kg級→100kg級 アスレイ・ゴンザレス(キューバ→ルーマニア) 
100kg級→100kg超級 シリル・マレ(フランス)

【女子】
70kg級→63kg級 バルバラ・ティモ(ポルトガル)

強いて誰か1人、と言われればGPザグレブで100kg級に出場し、かなりの戦闘力を示したもと世界王者ゴンザレスの名を挙げておきたい。今回もエントリーは100kg級。この後90kg級に戻すとの噂があるが、あの戦いぶりであれば100kg級で続けても上位定着があり得るのではないだろうか。世代きっての変化球選手アブラゼが66kg級にフィットするかどうかも見逃せないところ。

※ eJudoメルマガ版10月12日掲載記事より転載・編集しています。

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