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【レポート】フランス悲願の金メダル獲得、日本は流れ掴めず決勝で苦杯/東京オリンピック柔道競技男女混合団体戦

(2021年9月9日)

※ eJudoメルマガ版8月27日掲載記事より転載・編集しています。
フランス悲願の金メダル獲得、日本は流れ掴めず決勝で苦杯
東京オリンピック柔道競技男女混合団体戦レポート
→全試合結果
→早出し評①
→早出し評②

※日本代表全試合戦評は記事の末尾に掲載

オリンピックで行われる史上初めての柔道競技団体戦、決勝に進んだのは予想通り日本とフランス。2018年バクー世界選手権以来3大会連続で世界選手権の決勝を争ってきた2大強国が順当に決勝に進むこととなった。

■ 準決勝まで
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初戦に臨む日本チーム

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向翔一郎がエドゥアルド・トリッペルから背負投「技有」、一時2点差ビハインドを負った日本はこれでスコアをタイに戻す

※1回戦試合順 男子90kg超-女子57kg-男子73kg-女子70kg-男子90kg-女子70kg超
※準々決勝試合順 女子57kg-男子73kg-女子70kg-男子90kg-女子70kg超-男子90kg超
※準決勝試合順 男子73kg-女子70kg-男子90kg-女子70kg超-男子90kg超-女子57kg

【プールA/プールB】

男女混合団体戦制度開始以来全勝、世界大会4連覇中の日本は優勝候補筆頭。しかし出だし(準々決勝)のドイツ戦は戦いぶり噛み合わず。まず第1試合は「階級落ち」で女子57kg枠に起用された阿部詩がテレザ・シュトルの前にGS延長戦「指導3」で敗退。続く男子73kgではなんと絶対王者・大野将平がイゴール・ヴァンドケに残り20秒腰車「技有」を奪われて敗れてしまうという衝撃の展開。0-2ビハインドという予想外の出だしである。しかし日本はここから4連勝。まず女子70kg枠で新井千鶴がジョヴァンナ・スコッチマッロを相手に小内刈「技有」から縦四方固に繋いで僅か1分41秒で一本勝ち。悪い流れを断ち切ると、盤面配置上もっとも厳しいと思われていた男子90kg枠で向翔一郎がエドゥアルド・トリッペルを相手に背負投「技有」で勝利してスコアを2-2のタイまで戻す。ここからは得点ブロック。女子70kg超枠で素根輝がヤスミン・グラボフスキを大内刈で2度投げて2分8秒合技「一本」、続く男子100kg超枠では階級落ちで出動したウルフアロンが難敵ヨハネス・フレイをGS延長戦の肩車「技有」で下し、4-2の逆転勝ちでベスト4入りを決めた。

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モンゴル-韓国。ボルド・ガンハイチが9分越えの長時間試合の末にキム・ソンヨンから「指導3」をもぎ取る。試合は4-1でモンゴルが大勝。

プールBでは1回戦でモンゴルが韓国に4-1で大勝。第1試合はキム・ミンジョンがウルジバヤル・デューレンバヤルを払腰「一本」で退けて韓国が1点リード。しかし続く女子57kg枠でキム・チスがドルジスレン・スミヤにGS延長戦の隅落「技有」で苦杯、スコアは1-1となる。数年スパンの低調にあったリオ五輪銀メダリスト・ドルジスレンが意地を見せた格好だが、このところの成績に鑑みればキムとしては勝たねばならない試合。以後の盤面を考えれば勝利必須のこの試合を落としたことで韓国は流れをガックリ失い、続く男子73kg級の個人戦銅メダリスト対決はツェンドオチル・ツォグトバータルがアン・チャンリンをGS延長戦「指導3」で破り、ここでモンゴルが逆転。勢いは止まらず、女子70kg枠でもボルド・ガンハイチがキム・ソンヨンをGS延長戦5分27秒という長時間試合の末に大内刈「技有」で沈める。最後は男子90kg枠でガンツルガ・アルタンバガナがガク・ドンハンをGS延長戦「指導3」で破る殊勲を果たし、一気の4連勝でベスト8進出を決めた。

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ロシアvsモンゴル。ダリア・メジェツカイアがドルジスレン・スミヤから内股「技有」

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ミハイル・イゴルニコフがサイード・モラエイから出足払「技有」

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モラエイが肩車「技有」で逆襲。

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撃ち合いはモラエイの隅落「技有」で決着。この日のベストバウトだった。

続く準々決勝のロシアvsモンゴルは実に魅力的な撃ち合い。ハイライトは90kg枠、ミハイル・イゴルニコフとサイード・モラエイが激突した第4試合だ。

第1試合の女子57kg枠でダリア・メジェツカイアがドルジスレン・スミヤに内股「技有」、第2試合の男子73kg枠はツェンドオチル・ツォグトバータルがムサ・モグシコフに出足払「技有」でそれぞれ勝利してスコアは1-1のタイ。第3試合の女子70kg枠は個人戦で大活躍したマディーナ・タイマゾワが額の絆創膏と目じりのアザをそのままに、ボルド・ガンハイチと「技有」を取り合う激戦の末GS延長戦2分39秒「指導3」をもぎ取って勝利。ロシアが2-1をリードしたところで両雄の登場となる。

この試合は左相四つ。階級が上のイゴルニコフが得意の「作用足股中差し入れ」で圧を掛けて内股と大内刈を狙い、序盤はモラエイ必死の防戦。主導権を握ったイゴルニコフ、1分14秒には後帯を引っ掴んだまままず浅く左大内刈、これでモラエイを一歩下げると左出足払に繋いで高々放り投げ「技有」奪取。いかにもイゴルニコフらしいスケール感のある技。しかしビハインドのモラエイがその後も敢えて組み合い、接近戦に応じ続けると個人戦で目いっぱいの試合数をこなしているイゴルニコフは急激に疲労。モラエイ両袖を得て放った2分45秒の「モラエイ」は不発に終わったが、直後の3分4秒には右腕を抱えて脇下に潜り込み、鮮やか肩車「技有」奪回。試合はGS延長戦にもつれ込むこととなる。

そして決着もこの2人らしい「撃ち合い」。GS延長戦1分57秒、イゴルニコフが左内股もモラエイが抱き着いて股中で捌く。がくりと軸足の膝を着いたイゴルニコフの胴にモラエイが「さば折り」の形で食いついて勝負ありかと思われたが、イゴルニコフそのまま作用足を高く蹴り上げて再度の左内股。もろとも高く一回転してバランスの取り合い、そして空中で制動を利かせたモラエイがイゴルニコフを背中から叩きつけて決着の「技有」。モンゴルベンチは飛び跳ねて大喜び、モラエイは己が胸のモンゴル国旗を指さして実に誇らしげ。スター2人による息詰まる撃ち合い、そして「一宿一飯の恩義を返した」恰好の移籍選手モラエイの逆転勝ち。この日のベストバウトと言って良い大熱戦だった。

スコアは2-2のタイとなるが、試合は地力に勝るロシアがここから突き離して4-2で勝利。70kg超枠でアレクサンドラ・バビンツェワがオトゴン・ムンフツェツェグに縦四方固「一本」で勝利した段階でほぼ行方は見えた感あり、最終戦はタメルラン・バシャエフがウルジバヤル・デューレンバヤルを肩車「技有」で下してダメを押した。

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新井千鶴がマディーナ・タイマゾワから小外掛「技有」

[準決勝]
日本 4-0 ロシア
[73kg]大野将平○横車(0:31)△ムサ・モグシコフ
[70kg]新井千鶴○合技[小外掛・崩上四方固](3:10)△マディーナ・タイマゾワ
[90kg]向翔一郎○反則[指導3](3:37)△ミハイル・イゴルニコフ
[70kg超]素根輝○袖釣込腰(2:48)△アレクサンドラ・バビンツェワ
[90kg超]ウルフアロン ― タメルラン・バシャエフ
[57kg]芳田司 ― ダリア・メジェツカイア

準決勝は勝敗の曲がり角を取り続けた日本がロシアを圧倒。第1試合の73kg枠は大野将平がムサ・モグシコフから僅か31秒横車「一本」を奪う順当勝ち。第2試合は個人戦準決勝で史上に残る激闘を演じた新井千鶴とマディーナ・タイマゾワが激突、この試合を新井が3分10秒小外掛と崩上四方固の合技「一本」で取ったことで、全体の趨勢がほぼ見えた印象。第3試合は日本の不利が予想される90kg級枠だが、ここで向翔一郎がイゴルニコフに勝利する殊勲。疲労でパフォーマンスの上がらないイゴルニコフに対して担ぎ技の先手攻撃で「指導」先行、中途で集中力の切れたイゴルニコフの左ストレートを顔でまともに受けてしまう場面もあったが(「指導」が与えられた)、3分37秒掛けて「指導3」対「指導2」で勝利を決めた。第4試合は満を持して登場の素根輝がバビンツェワを袖釣込腰「一本」で下し、スコアは4-0。日本がストレート勝ちで決勝へ駒を進めることとなった。

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イスラエル―イタリア。ラズ・ヘルシュコがアリーチェ・ベッランディを攻める。

【プールC/プールD】

両プールとも1回戦が大激戦。

プールCの1回戦はイスラエルとイタリアが凄まじい競り合い。第1試合(90kg超)はペテル・パルチクがニコラス・ムンガイに開始11秒の大外刈「一本」で勝利してイスラエルが先制。しかし強豪同士がマッチアップしたここからの2試合は、52kg枠でオデット・ジュッフリダがティムナ・ネルソン=レヴィーにGS延長戦の内股「技有」、73kg枠でファビオ・バジーレがトハル・ブトブルに小内刈「技有」といずれもイタリアが勝利してスコアは2-1。これで試合はほぼ決まりかと思われたが、以降も交互に点を取り合う緊迫の展開が続く。70kg枠はギリ・シャリルがマリア・セントラッキオから片手絞「一本」、90kg枠はクリスティアン・パルラーティがリ・コツマンから内股「一本」、70kg超枠はラズ・ヘルシュコがアリーチェ・ベッランディからGS延長戦隅落「技有」でそれぞれ勝利し、6戦を終わってスコアは3-3のタイ。抽選で選ばれた代表戦カードは70kg枠。ここでシャリルがセントラッキオとの総試合時間10分13秒という消耗戦を「指導3」で勝ち切って熱戦にようやく幕。イスラエルがスコア4-3で勝利してフランスの待ち準々決勝へ。

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ノエル・ファンテンドがダヴラト・ボボノフから左一本背負投「技有」

オランダとウズベキスタンが激突したプールDの1回戦も大熱戦、ドラマの主人公はヘンク・フロル。第1試合でベクムロド・オルティボエフとマッチアップ、個人戦では開始25秒の袖釣込腰「一本」で敗れている相手だが、フロルはなんと、またもや19秒袖釣込腰「一本」で敗れてしまいウズベキスタンに先制を許す。以降試合は一進一退、70kg枠でグルノザ・マトニヤゾワがサンネ・ファンダイクにGS崩袈裟固「一本」で勝利する殊勲を演じたこともあり、盤面上やや不利と思われていたウズベキスタンが一時は2点差をリードするという意外な展開となる。しかしオランダは踏ん張りどころの第5試合でノエル・ファンテンドがダヴラト・ボボノフに合技で一本勝ちという最高の結果をあげ、第6試合でフッシェ・ステインハウスが順当に一本勝ちを果たして勝負を代表戦に持ち込むことに成功。

そして抽選の結果、運命の代表戦カードは90kg超枠に。フロルとオルティボエフ、この2日間で実に3度目の対戦である。2試合連続の秒殺、それも同じ技で勝利しているオルティボエフが断然有利と思われたが、ここで36歳のフロルが意地を見せる。巧みな組み手とむき出しの気迫で「秒」どころか、総試合時間8分を超える消耗戦に引きずり込み、最後は「指導3」をもぎ取って勝利。勝ちが決まるとトレードマークの大きな目をぎょろりと光らせて一声、勝利の咆哮。大ベテランの意地が、チームをベスト8に導いた

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準々決勝、ホマーヌ・ディッコがヘルシュコから大内刈「技有」。バタバタの試合にようやくゴールが見える。

プールCの2回戦(準々決勝)ではフランスとイスラエルがマッチアップ。イスラエルは前戦の勢いをそのままに、第1試合の57kg枠でティムナ・ネルソン=レヴィーが個人戦銀メダルのサハ=レオニー・シジクから1分57秒小外掛「一本」をもぎ取る大殊勲。慌てたフランスは続く73kg枠でギヨーム・シェヌが格上のブトブルからGS延長戦後袈裟固「技有」で勝利する意地を見せたが、事態の収拾には至らず。続く70kg枠ではマルゴ・ピノがシャリルに粘られてしまい、なんとGS延長戦7分36秒背負投「技有」でこの試合を落とす失態。3戦を終了してスコア2-1、イスラエルがリードという意外な展開で試合は後半戦へ。

しかしここからはフランスの得点ブロック。アクセル・クレルジェがコツマンを大外刈「一本」で下して追いつくと、ホマーヌ・ディッコがヘルシュコから2分掛からず合技の一本勝ち。個人戦2回戦の再現カードとなった第6試合は大黒柱テディ・リネールがオ-ル・サッソンから浮落と縦四方固の合技「一本」で下し、最終スコア4-2でベスト4進出を決めた。

プールDの準々決勝は総合戦力に勝るオランダがブラジルを4-2で撃破。ブラジルは60kg級vs66kg級の対決となった第2試合でダニエル・カルグニンがトルニケ・チャカドアにGS延長戦の肩車「技有」で勝利、さらにこれも階級落ち対決となった70kg超枠でマイラ・アギアールがフッシェ・ステインハウスに一本勝ちしたが、他のポジションはすべてオランダが取った。第6試合でフロルがラファエル・シウバに「指導3」で勝利し、最終スコア4-2でオランダのベスト4入りが決まった。ディテールは揺れたが、総合力で勝ったオランダの完勝である

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ギヨーム・シェヌがトルニケ・チャカドアから内股透「一本」

[準決勝]
フランス 4-0 オランダ
[73kg]ギヨーム・シェヌ○内股透(1:56)△トルニケ・チャカドア
[70kg]クラリス・アグベニュー○優勢[技有・隅落]△サンネ・ファンダイク
[90kg]アクセル・クレルジェ○優勢[技有・小内刈]△ノエル・ファンテンド
[70kg超]ホマーヌ・ディッコ○優勢[技有・大内刈]△フッシェ・ステインハウス
[90kg超]テディ・リネール ? マイケル・コレル
[57kg]サハ=レオニー・シジク ? サンネ・フェルハーヘン

迎えた準決勝第2試合はフランスがオランダを圧倒。前戦で不調だったピノを下げ、70kg級枠には63kg級の世界王者クラリス・アグベニューを起用。第1試合はシェヌが内股透「一本」でチャカドアを下し、迎えた第2試合はアグベニューが70kg級きってのパワーファイター・ファンダイクから隅落「技有」で勝利する大戦果。第3試合の90kg枠ではクレルジェが「団体戦男」ぶりを発揮、2019年の世界王者ファンテンドを小内刈「技有」で下してこの時点でスコアは3-0。第4試合はディッコが階級落ちのステインハウスを大内刈「技有」で下し、スコア4-0のストレートでフランスの勝利が決まった。実際の戦力差以上にスコアが開いた一番であり、フランスのモチベーションの高さとチームの一体感が強く感じられた試合であった。前回の団体戦出場時(2018年世界選手権)は階級差の壁を乗り越えられず不出来であったアグベニューのポテンシャルの高さは驚き。決勝に向けて、フランスが明らかに勢いづいた試合であった。

■ 3位決定戦
敗者復活戦はドイツが4-2でモンゴルに勝利(モラエイは個人戦90kg級2位のトリッペルに鮮やかな“モラエイ”による「技有」で勝利して意地を見せてくれた)、さらにイスラエルが総合力の違いを見せつけ、ブラジルを4-2でを下してそれぞれ3位決定戦に進出。

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アナ=マリア・ヴァグナーがフッシェ・ステインハウスから裏投「技有」

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銅メダル獲得のドイツチーム。最終戦を勝ち切ったザイドルをなぜかフレイが投げて祝福。

[3位決定戦]
ドイツ 4-2 オランダ
[70kg]ジョヴァンナ・スコッチマッロ△合技[大内刈・谷落](3:07)○サンネ・ファンダイク
[90kg]ドミニク・レッセル○GS反則[指導3](GS4:58)△ノエル・ファンテンド
[70kg超]アナ=マリア・ヴァグナー○優勢[技有・裏投]△フッシェ・ステインハウス
[90kg超]カール=リヒャード・フレイ△隅落(1:48)○ヘンク・フロル
[57kg]テレザ・シュトル○GS合技[大外刈・内股](GS0:57)△サンネ・フェルハーヘン
[73kg]セバスティアン・ザイドル○GS反則[指導3](GS4:50)△トルニケ・チャカドア

第1試合はドイツがオランダに勝利。実力拮抗のカードが多く、かつ力に勝る側がしっかり結果を残すことが続いた試合であったが、ドイツがドミニク・レッセルの大奮戦でこの構図を1つひっくり返した90kg枠がそのまま勝敗を分けたという格好。オランダは前戦の殊勲者フロルの一本勝ちで激しく抗ったが、最後は「階級落ち」カードとなった73kg枠でセバスティアン・ザイドルがチャカドアの粘りを押し切って「指導3」勝ち。ドイツが銅メダルに辿り着いた。

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ペテル・パルチクがタメルラン・バシャエフから隅落「技有」で勝利する殊勲。イスラエルが一気にメダルに近づいた。

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イスラエル、強豪ロシアを破ってみごと銅メダルを獲得。

[3位決定戦]
イスラエル 4-1 ロシア
[70kg]ギリ・シャリル△GS技有・体落(GS0:58)○マディーナ・タイマゾワ
[90kg]サギ・ムキ○背負投(3:47)△ミハイル・イゴルニコフ
[70kg超]ラズ・ヘルシュコ○合技[大外落・大内刈](0:45)△アレクサンドラ・バビンツェワ
[90kg超]ペテル・パルチク○GS技有・隅落(GS1:29)△タメルラン・バシャエフ
[57kg]ティムナ・ネルソン=レヴィー〇合技[浮落・大外返](3:22)△ダリア・メジェツカイア
[73kg]トハル・ブトブル ― ムサ・モグシコフ

強国ロシアを下す大殊勲。モンゴル、オランダ、ウズベキスタンと前半戦で輝いた実力派チームの中から、イスラエルがメダルに辿り着いた。第1試合は落としたが、90kg枠では同階級のライバル・モラエイの活躍に触発されたか、81kg級の2019年世界王者サギ・ムキがイゴルニコフを背負投「一本」で破る大仕事。これで流れを完全に掴んだ。ともに戦力苦しい第3試合をヘルシュコが合技「一本」で取って勝ち越すと、第4試合にハイライトが待っていた。階級落ちのパルチクが100kg超級銅メダリスト・バシャエフを相手に執念の試合を展開。両組みの練れた組み手と強烈な足技で試合をGS延長戦に持ち込み、相手が疲労すると見るや一転背を抱いての密着勝負で圧を掛け続ける。「指導」2つを失ったバシャエフがたまらずこの「抱き勝負」から支釣込足を試みると、後帯を引っ掴んだまま捩じり返して劇的隅落「技有」。スコアは3-1、これで勝負はほぼ決した。第5試合はこの日大活躍のネルソン=レヴィーがメジェツカイアを3分22秒の間に2度投げ、「一本」で試合終了。ポイントゲッター・ブトブルの登場を待たずに勝負を決めてみせた。イスラエル、大殊勲の銅メダル確定。ロシアはイゴルニコフ、バシャエフら主力の重量級勢が疲労困憊。メジェツカイアも不調から脱せず、団体戦はメンバーの良さほどの力を発揮できずに終わった。

■ 決勝
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決勝に臨む日本チーム。

[決勝]
日本 ― フランス
[70kg]新井千鶴 ― クラリス・アグベニュー
[90kg]向翔一郎 ― アクセル・クレルジェ
[70kg超]素根輝 ― ホマーヌ・ディッコ
[90kg超]ウルフアロン ― テディ・リネール
[57kg]芳田司 ― サハ=レオニー・シジク
[73kg]大野将平 ― ギヨーム・シェヌ

力関係と星取りの読みは直前プレビューに書いた通り。日本が73kg枠(大野)、フランスが90kg超枠(リネール)に鉄板基礎点を持っており、他の4階級は競り合い。その中で日本優位に振れているのが順に70kg超枠(素根)と70kg枠(新井)、完全にタイでどちらが勝ってもおかしくないのが57kg枠(芳田・シジク)、相性的にフランス優位と目されるのが90kg枠(クレルジェ)。日本は基礎点1つ(大野)と優位ポジション2つ(素根・新井)を取ればこの時点で3点、あとはタイの芳田で4点目を確保出来れば勝利決定というのが基本的な出口戦略である。一方のフランスは基礎点(リネール)と優位ポジション(クレルジェ)を取っても2点のみで、ここからタイ(シジク)の試合の勝ちを積み上げることと、不利と考えられる2ポジション(ディッコ、70kg枠)のどちらかで力関係を超えて1点を取らねばならない。事前の想定としては、日本優位である。

ただし、抽選の結果、73kg枠が6試合目に来てしまったことは日本にとって痛手。先手必勝の男女混合団体戦レギュレーションでは、常の引き分けありの団体戦のように、後方に控える大駒が相手の戦いにプレッシャーを与えることが出来ない。単に登場順が一番最後になるというだけで、最終戦まで試合が縺れない限りこの潜在戦力が具体的な点としてスコアボードに現れることはない。日本唯一の鉄板基礎点を担うはずの大野が「死に駒」になってしまった。考え得る限りもっともいやな巡りではある。

もうひとつ、事前予測からの変更要素としてはフランスの70kg枠がマルゴ・ピノからアグベニューに代わったこと。63kg級では絶対王者のアグベニューであるがかねて団体戦では成果を残せておらず(2018年バクー世界選手権では中堅以下の選手にパワー負け)、この起用は少々意外。ピノの不調を受けて起用されたこの日の準決勝では70kg級きってのパワーファイターであるファンダイクに勝利しているのだが、これはケンカ四つ。凌ぐ側にとって戦いやすい、力よりも技術がものを言う関係であった。一方新井とは、パワーをまともに受ける相四つ。70kg級でもナンバーワンの膂力を誇る新井と正面から組み合えばいかなアグベニューでも厳しいはず。63kg級におけるアグベニューの柔道が組み勝つことを前提にしていることを考えれば、その不利はいや増すと考えていい。新井が相四つを苦手にしているという不確定要素はあるが、かつてピノ(あるいはガイ)の出場を想定していた際の「大枠は競り合いも、新井が優位」という観測は、いまだ有効であるように思われる。

日本としては、まず第1試合に新井がしっかり勝ち、潜在的な「3点目」を確保した上で後衛に繋ぐこと。ここから素根、大野による2点の加点を折り込み、芳田の勝利、あるいは力関係を覆さんとする向とウルフによる1点の積み上げで4点確保を狙いたい。事前予測における星取り構図をきちんと維持することが、重要だ。

一方のフランスとしては、勝ちようがない73kg枠が最後になった対戦順のアドバンテージをしっかり生かしたい。第2試合(クレルジェ)と第4試合(リネール)はきちんと力と特徴を発揮出来れば勝利濃厚で、不利とされる第3試合(70kg超)も実質上の初対戦であり、絶対敗れると決まったわけではない。第2~第4試合での星取りは1点上回ることが予想され、タイの勝負の第5試合(57kg)を取ることで3点目までの確保は十分現実的。第6試合を勝利することは難しいので、ここまでに勝負をつけねばならない。やはりカギは第1試合。初対戦の70kg枠を取ることが、直接的な勝利への道である。

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第1試合、アグベニューが電光石火の小内刈2発「一本」でチームに先制点をもたらす。

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殊勲のアグベニューをリネールが出迎え、ねぎらう。

というわけで最重要試合となった第1試合は今大会の金メダリスト同士の対決、70kg級の新井、63kg級のアグベニューともに左組みの相四つ。50秒、アグベニューが強烈な先制弾。横変形の組み合いから新井が腰を引いて剛体になると左小内刈一閃、あっという間に転がして「技有」を得る。以後もアグベニューは先に引き手を得て組み手を引っ張り、抗した新井の左大内刈を返し掛ける場面も見せて優位。釣り手の絞り合いとなった2分53秒には両者に「指導」が与えられるが、ここでアグベニュー再び引き手から得ると、得意の横変形に構えて新井の釣り手を噛み殺す。新井定石どおりに支釣込足で剥がさんとするが、アグベニュー崩れながらも引き手を離さず、横にずれて態勢を整え直すとまたもや左小内刈を閃かせる。擦過音が聞こえるような鋭い一撃に新井あっという間に崩落、3分31秒2つ目の「技有」で勝負あり。もっとも大事と思われた第1試合はフランスが獲った。アグベニュー強し。そもそもの柔道の位相がまったく違うという印象だった。天王山はフランスが獲った。盤面大きく傾き、想定される正シナリオはこの時点で「フランス勝利」に書き換えられたと言って良い。

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クレルジェが向から「一本」。フランスは2-0と大量リード。

続く第2試合は向が左、クレルジェ右組みのケンカ四つ。開始1分25秒で両者に「取り組まない」咎で「指導2」までが与えられるが、こういう消耗戦は曲者・クレルジェのフィールド。向は左背負投で攻め、GS延長戦に入ると左大内刈に左背負投と重ねて山場を作り掛かるが、クレルジェは寝技で粘り、巴投であわやの場面を作ってひたすらチャンスを待ち続ける。GS1分を過ぎると向が釣り手で背中深くを持ち始める。これは向の集中が切れて来た兆し。心得たクレルジェさらにじっくり待ち、GS1分55秒向が強引な横落を仕掛けると待ってましたとばかりに右大内刈の形で押し倒す。死に体となっていた向あえなく転がり、「一本」。フランスは2-0と大量リード、日本は絶体絶命。

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素根がディッコから大内刈「技有」、このまま抑え込んで日本が1点を返す。

第3試合は素根が左、ディッコが右組みのケンカ四つ。この試合は素根が背景の不利を感じさせず淡々と仕事。ディッコは奥を叩き、右大内刈に右小外掛と激しく前に出るが素根冷静に捌いてその力を見極める。1分37秒に「指導」1つを失ったがこのあたりから頃合い良しとばかりに攻勢に出始め、完璧な組み手を作り出すと左大内刈に飛び込んでまず「技有」。ビハインドとなったディッコが背中を抱いて勝負に出てくると落ち着いて距離を取り、襲った浮技をしっかり潰して横四方固に繋ぐ。3分7秒合技「一本」、日本が1点を返してスコアは1-2となった。

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ウルフ痛恨の技選択ミス、左小外掛をリネールが右内股で切り返し「技有」

第4試合は100kg級の金メダリスト・ウルフとリネールが相まみえる超豪華カード。序盤からリネールが組み手で圧を掛け、3分0秒にはウルフに2つ目の「指導」が与えられるが、終盤になるとリネールは急激に消耗。これを待っていたとばかりにウルフが攻勢に出、抱きつきの大内刈に隅落と2度深く侵入して逆襲開始。GS延長戦になるとウルフの優位はさらに増し、左大内刈に左内股と内側の技を放ち続けて加速。スコアは指導差0-2だが、展開を握っているのは明らかにウルフ。引き手で袖、釣り手で上から持つほぼ完璧な形を作りだしてさらに攻めんとする構え。しかしここで、これまで内側の技を中心に攻めていたウルフが前技フェイントの左小外掛を仕掛けるミスを犯してしまう。疲労困憊であってもこれを見逃すリネールではない。自ら間合いに入って来たウルフを右内股で捉えてGS2分29秒「技有」。大熱戦であったが、これでスコアは3-1。フランスが金メダルに王手をかける。

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サハ=レオニー・シジクが芳田司から内股「技有」。フランスが4点先取で試合を決めた。

第5試合、勝つ以外に道のない日本の芳田、ここで試合を決めてしまいたいフランスのシジクはともに左組みの相四つ。シジクは奥襟を求め、芳田が絞り落とす展開。しかしビハインドの状況に焦ったか、常であればじっくり勝負するはずの芳田がここで強引な右袖釣込腰に打って出る。シジクこの隙を見逃さず切り返しの左内股、ぶらさがって体の伸び切っていた芳田耐えられず低空で一回転、48秒「技有」。シジクは以後袖を絞って徹底封殺の構え。芳田積極的に前に出るが、「指導」失陥のないシジクは残り1分を過ぎると完全な逃げ切りモード。残り19秒に「指導」1つを失ったが危なげなくタイムアップのブザーを聞き、ここで試合が終わった。

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勝利を喜ぶフランスチーム。素晴らしい試合だった。

フランス 4-1 日本
[70kg]クラリス・アグベニュー○合技[小内刈・小内刈](3:31)△新井千鶴
[90kg]アクセル・クレルジェ○GS大内刈(GS1:55)△向翔一郎
[70kg超]ホマーヌ・ディッコ△合技[大内刈・横四方固](3:07)○素根輝
[90kg超]テディ・リネール○GS技有・内股(GS2:29)△ウルフアロン
[57kg]サハ=レオニー・シジク○優勢[技有・内股)△芳田司
[73kg]ギヨーム・シェヌ ― 大野将平

最終スコアは4-1。フランスが団体戦の常勝チーム日本を破り、五輪柔道競技史上初めての団体戦王者の座に就いた。

ロンドン-リオ期に男子はリネール以外が低迷。女子も命綱であったジュニア上がりが成績を残せなくなって一時は非常に苦しかったフランスだが、粘り強い育成と女子の復活をテコに総合力アップ。見事世界一の座を射止めた。

日本は完敗。もともとレギュレーションに戦力が噛み合っているとは言い難かったのだが、個人戦で戦力が底をついて選手選択の幅が狭まり、かつ勝負どころを次々落とした。個々が個人戦の戦いを徹底するというこのレギュレーションの原理原則も曖昧になっていた印象で、勝っているときには見え難かった戦術・戦略の統一(強すぎたゆえに採られ続けた、ダブル指揮官という体制もこの部分に影響した可能性があるのではと感じた)という部分の弱さも見せてしまった。

一体感という部分でも、レジェンド・リネールが体を張ってチームをまとめたフランスが上。普段から男女ともに行動することが多く、ここ一番でチームがまとまる素地もあった。フランスが総合力に勝った、と総括してしかるべき一番であった。

■ 成績上位者
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史上初めてのオリンピック団体戦、頂点に立ったのはフランスとなった。

(エントリー12チーム)

【入賞者】
1.France (FRA)
2.Japan (JPN)
3.Germany (GER)
3.Israel (ISR)
5.Netherlands (NED)
5.Russian Olympic Committee (ROC)
7.Mongolia (MGL)
7.Brazil (BRA)

【成績上位者】
優 勝:フランス
準優勝:日本
第三位:ドイツ、イスラエル

■ 日本代表全試合戦評
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阿部は抱きつきの大内刈も、この形の得意な一階級上の強者シュトルには通じず。

日本 4-2 ドイツ

[57kg]阿部詩△GS反則[指導3](2:47)○テレザ・シュトル
阿部、シュトルともに右組みの相四つ。真っ向勝負が持ち味の阿部は体格が一回り大きなシュトルに大苦戦。まずは激しい組み手争いから試合が始まり、43秒、両者に取り組まないとして「指導」が与えられる。続く展開、シュトルが引き手を得て押し込むと阿部は為す術なく場外に押し出されてしまい、1分17秒、場外の「指導2」。これ以降も阿部は相手のパワーの前に自らの柔道ができず、最後は2分47秒、腰を抱いて勝負に出た際に帯より下を掴んだとして「指導3」を失ってしまう。日本、黒星スタート

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イゴール・ヴァンドケが大野将平から腰車「技有」。日本は0-2ビハインドという苦しい立ち上がり。

[73kg]大野将平△優勢[技有・腰車]○イゴール・ヴァンドケ
日本はエースの大野が登場。大野、ヴァンドケともに右組みの相四つ。大野が引き手を得るなりヴァンドケ隅返に引き込み流れを切る。これ以降も大野の組み手が十分になりかける度にヴァンドケは右一本背負投に肩車と低い技に体を捨てて展開を切り続ける。1分15秒、ヴァンドケに場外の「指導」。大野が圧を掛けながら前に出てヴァンドケが先手攻撃で掛け潰れる形はこの後も継続、3分19秒にはヴァンドケに偽装攻撃の「指導2」が与えられる。もはや大野の勝利は時間の問題と思われたが、残り20秒、大野が釣り手で奥を叩いたタイミングにヴァンドケが左腰車。大野これに飛んでしまい「技有」を失う。取り返さんと猛攻を仕掛けるも、あまりに時間がなくそのまま試合が終了。日本、絶対的得点源である大野の失点でまさかの2連敗。

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新井千鶴の一本勝ちで日本が反撃開始。

[70kg]新井千鶴○合技[小内刈・縦四方固](1:41)△ジョヴァンナ・スコッチマッロ
新井が左、スコッチマッロが右組みのケンカ四つ。新井釣り手を外から持って肘を入れ、組み手争いで優位に立つ。片手状態での攻防が続く中、42秒、新井が肩車。これはスコッチマッロ余裕を持って止める。再びの組み手争いのさなか、新井は釣り手を内から持つと場外際の腰の差し合いから左小内刈。崩れた相手を追い込んで浴びせ「技有」を得る。さらにそのまま足を抜いて縦四方固で抑え込み、1分41秒、合技「一本」。日本が1点を返す。

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向がトリッペルから背負投「技有」。日本はここでタイスコアに追いつく。

[90kg]向翔一郎○優勢[技有・背負投]△エドゥアルド・トリッペル
向が左、トリッペルが右組みのケンカ四つ。序盤はトリッペルのペースで試合が進む。まずは20秒、場外に押し出された向に場外の「指導」。続く展開でもトリッペルが左外巻込で向を伏せさせる。しかし、以降はやや減速、反対に向が肩車に左体落と先手攻撃で技を積む。1分9秒には、トリッペルに消極的姿勢の「指導」。どうやらトリッペルはまだ個人戦の疲れが抜けていない様子。これに気づいたか向さらにギアを上げ、次々と技を仕掛け続ける。1分50秒には向の左背負投でトリッペルが派手に一回転。ポイント級の一撃だったが、トリッペルが自ら回転を増して腹這いで着地しており、得点にはならない。それでも向は攻撃を続け、左「韓国背負い」を仕掛けた2分13秒、トリッペルに消極的姿勢の「指導2」が加えられる。直後の2分34秒、向が左背負投に潜るとトリッペル今度も自ら飛んで逃れんと試みる。しかし、今度は回避失敗。背中から落ちて「技有」となる。向、以降も優勢に試合を進め、このポイントを守りきって優勢勝ち。日本がついに同点に追いつく。

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素根輝がヤスミン・グラボフスキから大内刈「技有」

[70kg超]素根輝○合技[大内刈・大内刈](2:08)△ヤスミン・グラボフスキ
素根が左、グラボフスキが右組みのケンカ四つ。素根、組み合うことを嫌うグラボフスキを組み手の手順を進めながらじっくりと追い詰め、場外際で釣り手を得るなり左大内刈に飛び込む。刈り足を踵に引っ掛け低く刈り倒すとグラボフスキの巨体が崩れ落ち「技有」。以降もじっくり圧を掛けながら組み手を進める素根にこれを嫌って下がるグラボフスキという構図。1分36秒、グラボフスキに偽装攻撃の「指導」が与えられる。続く展開の2分8秒、素根、手繰って引き手を得ると、釣り手を上から差し入れ左大内刈。今度は膝裏を刈って浴びせて「技有」を得る。合技「一本」で素根が勝利、3連勝で日本が逆転。

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ウルフアロンがヨハネス・フレイから肩車「技有」。これで日本の勝利が決まった。

[90kg超]ウルフアロン○GS技有・肩車(GS0:22)△ヨハネス・フレイ
ウルフが左、フレイが右組みのケンカ四つ。フレイはかなり慎重、接近しては離れての組み手争いを繰り返す。1分16秒、両者に取り組まないとして「指導」。しかし以降も展開は組み手争いが中心、なかなか試合が動かない。それでもフレイが幾度か接近して攻める素振りを見せたため、1分50秒、ウルフのみに消極的の「指導2」が追加される。フレイ、これまでどおり組み手の攻防に嵌めて3つ目の「指導」を得ようとするが、ウルフは左大内刈を混ぜながら前に出続けこの意図は封殺。ウルフが組み勝って圧を掛け、フレイが担ぎ技で展開を切る形が続き、勝負はGS延長戦へ。

延長戦の開始直後、ウルフは組み手争いから左方向の肩車に潜り込む。フレイ反応間に合わず懐に入れてしまい、ウルフが走って転がしGS22秒「技有」。ウルフの勝利で最終スコアは4-2。日本が逆転勝ちでベスト4入り。

【準決勝】

日本 4-0 ロシア

[73kg]大野将平○横車(0:31)△ムサ・モグシコフ
大野が右、モグシコフが左組みのケンカ四つ。大野が釣り手を得るとモグシコフ引き手でこれを切り、得意の釣り手で深く抱き込む形を作る。ここから左体落に左内股と技を重ねるが、大野は崩れず、反対に腰を抱いてカウンターを狙う。31秒、場外際の腰の差し合いからモグシコフが一歩深く踏み込むと、大野これを見逃さず横車。ほとんど相手の真裏に抜けながら豪快に放り「一本」。エース大野の圧勝で日本が先制する。

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新井千鶴がマディーナ・タイマゾワから小外掛「技有」

[70kg]新井千鶴○合技[小外掛・崩上四方固](3:10)△マディーナ・タイマゾワ
ロシアはここからタイマゾワ、イゴルニコフと続く得点ブロック。新井が左、タイマゾワが右組みのケンカ四つ。個人戦ではトータル16分41秒の大熱戦となったカード。激しい組み手争いから試合が始まり、新井はこの試合でも釣り手を上から得て圧を掛ける。31秒、新井が場外際の左内股で大きく崩して伏せさせ「待て」。再び組み手争い。1分23秒、両者に片手の「指導」が与えられる。これを受けてタイマゾワは飛び付いて奥を叩くが、新井落ち着いて脇を掬いこれを潰す。続く展開の2分8秒、双方が脇を差しての腰の差し合いから新井が切り返して左小外掛「技有」。そのまま横四方固で抑え込むが、これは形が不十分なため3秒で逃してしまう。さらに寝技を展開するも、抑え込むには至らず反対にタイマゾワが裏固の形を完成させる。しかし新井、三角絞様に相手の上体に足を絡めて逃れ、被り返して崩上四方固で抑え込む。3分10秒、合技「一本」。新井の勝利で日本が2連勝。

[90kg]向翔一郎○反則[指導3](3:37)△ミハイル・イゴルニコフ
向、イゴルニコフともに左組みの相四つ。イゴルニコフ得意の片足を差した形を作ろうとするも、向は先に右袖釣込腰を仕掛けて展開を切る。ここからは激しい組み手争い。イゴルニコフ勢い良く両手を振り回す乱暴な組み手で向の顔を叩き、試合が止まる。さらに続く展開でもイゴルニコフはほぼ殴打するように釣り手を叩きつけ、向思わず畳に伏せる。イゴルニコフは自分は何もやっていないとアピールするも、映像確認の結果「相手を叩いた」というジェスチャーとともにイゴルニコフに「指導」が与えられる。しかしイゴルニコフ全く矛を収めず、続く展開でも釣り手を勢い良く振りながら向を場外に押し出す。向、頭を殴られたとアピールするも認められず、43秒、場外の「指導」を失う。もう一度イゴルニコフが勢い良く釣り手を振り回して向を伏せさせる展開を経た後、以降は一転して組み合っての攻防へ。組み力に勝るイゴルニコフは組み止めての勝負を志向するが、向は担ぎ技の先手攻撃を続けてこれに対抗。1分58秒、イゴルニコフに消極的姿勢の「指導2」が追加される。これ以降も大枠の様相は変わらず、組み合って片足を差した状態を作りたいイゴルニコフに、先手攻撃を徹底する向という構図。向、順調に手数を積むが、2分40秒、場外に押し込まれてしまい「指導2」を失う。しかしそれでも積極的に技を出し続け、3分22秒には右袖釣込腰でポイント級の投げを見せる。これはイゴルニコフが片肘と尻で着地しポイントにはならなかったが、直後の3分37秒、イゴルニコフが巴投を仕掛けた際に両手が離れてしまい偽装攻撃の「指導3」。向が強敵イゴルニコフに競り勝ち、日本が3連勝で王手を掛ける。

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素根がアレクサンドラ・バビンツェワから一本背負投「一本」

[70kg超]素根輝○一本背負投 (2:48)△アレクサンドラ・バビンツェワ
素根、バビンツェワともに左組みの相四つ。素根、余計な組み手争いをせずに引き手を確保。しかしバビンツェワ激しく前に煽り出し、左大外刈で伏せる。素根、崩れずも展開が切れてしまう。続く攻防もバビンツェワは激しく動きながら素根に揺さぶりをかける。引き手を得て奥を叩くが、素根を相手に組み合うことはせず、優位を作っては自ら離して「指導」奪取を試みる。しかし素根、全く揺るがず。1分30秒には組み手争いから片襟の左大内刈で畳に這わせ、これまでバビンツェワが積み重ねた状況を一気にひっくり返す。これ以降も組み手の攻防。バビンツェワが煽りながら自ら掛け潰れて展開を切る形で試合が進む。2分48秒、素根は一方的に引き手で袖を得ると、押し込んで相手に横を向かせ、釣り手も袖を得て低い右袖釣込腰に潜り込む。脇下に抜けて左一本背負投の形で鋭く引き落とすとバビンツェワ背中から勢い良く畳に落ちて「一本」。日本、4連勝の完勝でロシアを下して決勝進出。

[90kg超]ウルフアロン - タメルラン・バシャエフ
[57kg]芳田司 - ダリア・メジェツカイア

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新井とアグベニューによる第1試合

【決勝】

日本 1-4 フランス

[70kg]新井千鶴△合技[小内刈・小内刈](3:31)○クラリス・アグベニュー
新井、アグベニューともに左組みの相四つ。組み手争いから試合が始まり、24秒にアグベニューが左外巻込。新井これは余裕を持って潰す。続く展開、アグベニューはセオリーどおりにまず引き手を確保。横変形の形を作り、50秒左小内刈を仕掛ける。やや腰を引いて剛体になっていた新井、崩れ落ちるように転がり「技有」。リードを得たアグベニューは以降も先に引き手を得て組み手の攻防で優位に立ち、1分35秒には新井の強引な左大内刈を捲りかける場面も見せる。互いに釣り手の袖を絞り合って膠着した2分53秒、両者に消極的姿勢の「指導」が与えられる。続く展開、アグベニューは引き手から得ると再び横変形に噛み殺した形を作る。新井、左方向の支釣込足で引き剥がしにかかるが、アグベニュー崩れながらも引き手は離さず、再度横にずれた形を作り左小内刈に飛び込む。最初の「技有」と同様の形で新井大きく崩れ、アグベニューが捲るように浴びせると3分31秒「技有」。アグベニューが合技「一本」で勝利を収め、まずはフランスが先制。

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アクセル・クレルジェが大内刈「一本」

[90kg]向翔一郎△GS大内刈(GS1:55)○アクセル・クレルジェ
向が左、クレルジェが右組みのケンカ四つ。激しい組み手争いから試合が始まり、30秒に両者に取り組まないことによる「指導」が与えられる。しかし、これ以降も試合の中心は組み手の攻防。1分25秒には両者に片手の「指導2」が加えられ、どちらも後がなくなる。これ以降は向が肩車に担ぎ技と先手攻撃で手数を積み、クレルジェが伏せ際の寝技に巴投と打ち返して対抗するという構図。大枠としては向の優位に試合が進み、残り18秒には右背負投で惜しい場面を作るも、決めきれず。試合はそのままGS延長戦に縺れ込む。

延長戦になると向はさらに一段加速、左大内刈、左大内刈、左背負投と技を重ねて山場を作りに掛かる。しかしクレルジェこれを潰して寝技を展開。こちらも一歩も譲らず。GS53秒には「横巴」で惜しい投げを見せる。GS1分過ぎ、向この試合で初めて釣り手で深くを持っての大勝負を挑む。これはクレルジェが切り離すが、やや向の我慢が利かなくなってきた印象。GS1分55秒、向が強引な左方向の横落を仕掛けると、クレルジェこのチャンスを見逃さず右大内刈の形で押し倒す。死に体となっていた向はそのまま畳に転がり「一本」。向、やはり我慢が利かず。耐久作戦でこの弱点を突いたクレルジェが見事に勝利、フランスが2勝目を上げる。

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素根は淡々と「一本」奪取。日本はようやく1点を返す。

[70kg超]素根輝○合技[大内刈・横四方固](3:07)△ホマーヌ・ディッコ
これ以上負けるわけにはいかない日本は素根が登場。個人戦で対戦の叶わなかったディッコを畳に迎える。素根が左、ディッコが右組みのケンカ四つ。組み手争いから試合が始まり、ディッコは引き手で襟から持ち奥を叩く。そのまま右大内刈で攻めるが、素根、押し込まれながらも余裕を持って引き落とす。続く展開も同様の形となり、素根が左大内刈で伏せて展開を切る。以降もディッコは同様の組み立てで奥を得て右大内刈に右小外掛と技を仕掛けながら激しく前に出続ける。1分37秒、素根に消極的姿勢の「指導」が与えられる。リードを許した素根だが、この辺りからどうやら戦い方が分かってきた様子。続く展開では懐内で左大内刈を仕掛けてあと一歩でポイントという惜しい投げを放つ。さらに続く展開、素根は引き手を得ると釣り手を上から落とす完璧な形を完成、間髪入れずに左大内刈に飛び込み「技有」を得る。リードを許したディッコは背中を抱いて勝負を懸けるが、素根は落ち着いて距離をとり対処。相手の強引な浮技に被り返して横四方固で抑え込み、3分7秒、合技「一本」に至る。素根の活躍で日本が1点を返す。これでスコアは2-1。

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ウルフはリネールの消耗を待ち、内側の技で攻勢を取る。

[90kg超]ウルフアロン△GS技有・内股(GS2:29)○テディ・リネール
ウルフが左、リネールが右組みのケンカ四つ。リネール、引き手で釣り手側の袖をクロスで得ると奥を叩く。ウルフ、堪らず伏せてしまい29秒、ウルフに極端な防御姿勢の「指導」が与えられる。ここからは組み手争い、リネ−ル袖と前襟を得て1分7秒に場外際で右払腰。ウルフ大きく崩れて伏せる。リネールは続く展開でも引き手で釣り手側の袖を手繰り、奥襟を得て腰を切りながら圧を掛け、ウルフを圧し潰す。これ以降もリネールが組み勝ち、ウルフが凌ぐ展開が続く。リネールが煽り潰した3分、ウルフに偽装攻撃の「指導2」が追加される。さらに3分15秒にはリネールが浮落で大きく崩す惜しい場面も生まれる。しかし最終盤になるとリネールの息が上がり始め、ウルフが一転して攻勢。左大内刈に抱きついての隅落と深く入った技を2つ続け、本戦の4分間を終える。

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リネールがウルフの小外掛を切り返し、右内股「技有」

GS延長戦に入るとこのウルフの優位はさらに増し、左大内刈を軸に積極的に前に出て攻めるようになる。GS55秒にはリネールが右払腰を放つがウルフは崩れながらも潰し、反対に続く展開では釣り手のみの左内股、左小外掛と技を重ねる。ウルフは上から釣り手を持つことで長身のリネールにやや屈んだ姿勢を強い、これを嫌がって相手が釣り手を離したGS1分50秒に釣り手の手のひらを合わせた左大内刈で大きくぐらつかせる。スコア上は「指導2」が一方的に与えられているものの、展開を握っているのは明らかにウルフの側。しかし続く展開のGS2分20秒、ウルフが引き手で袖、釣り手で上から持つほぼ完璧な形を作っての攻防、これまで内を中心に攻めていたウルフが前業フェイントの左小外掛を仕掛けるミスを犯す。スタミナが削れているとはいえ相手はリネ−ル。当然相手が自ら作ってくれた内股のチャンスを逃すはずもなく右内股一閃。ウルフ一瞬浮いて体側から落ちてGS2分29秒「技有」となる。リネールが厳しい戦いにワンチャンスをものにして勝利、フランスが勝利に王手をかける。

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焦った芳田が袖釣込腰でぶらさがってしまい、サハ=レオニー・シジクが切り返しの左内股で「技有」

[57kg]芳田司△優勢[技有・内股)○サハ=レオニー・シジク
芳田、シジクともに左組みの相四つ。シジクは先に引き手で袖を得ると、前に出ながら奥襟を求める。しかし芳田は押し込まれながらも自らも袖を得て絞り合いの形を作り、27秒、右袖釣込腰で大きく崩す。ここで一度展開が切れ、続く攻防も絞り合い。芳田は強引に右袖釣込腰を仕掛けるがぶら下がる形になってしまい、シジクこの隙を見逃さず左内股を仕掛ける。体の伸び切っていた芳田、堪えられず低空で転がってしまい、48秒「技有」となる。リードを許した芳田はギアを上げて追い上げを図るが、シジクは袖を絞って徹底封殺の構え。1分35秒には芳田が右袖釣込腰で惜しい投げを見せるが、シジク反転して逃れてポイント獲得には至らない。これ以降も芳田積極的に前に出るがシジクの組み手の防壁を突破できず、度々右袖釣込腰で崩すも決めきれず。2分56秒には焦って仕掛けた右袖釣込腰が肘を決めたと取られかねない危うい形となってしまい、映像による確認も行われる。これはスルーとなったが、この時点で残り時間は僅か1分。「指導」を1つも失っていないシジクは完全に逃げ切りの体勢に入り、残り19秒に偽装攻撃の「指導」を失うもそのまま試合終了を迎える。スコア4-1でフランスの優勝が決まった。

※ eJudoメルマガ版8月27日掲載記事より転載・編集しています。

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