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【レポート】クルパレクが五輪2階級制覇の偉業達成、連覇途切れたリネールは銅メダル確保/東京オリンピック柔道競技男子100kg超級レポート

(2021年9月5日)

※ eJudoメルマガ版8月27日掲載記事より転載・編集しています。
クルパレクが五輪2階級制覇の偉業達成、連覇途切れたリネールは銅メダル確保
東京オリンピック柔道競技男子100kg超級レポート
■ 準決勝まで
トーナメントは多士済々。3連覇に挑むテディ・リネール(フランス)を筆頭に、2019年東京世界選手権の覇者でリオ五輪100kg級に続く2階級制覇を目指すルカシュ・クルパレク(チェコ)、2018年の世界王者グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)、リオ五輪と2019年世界選手権の銀メダリスト原沢久喜ら超メジャー選手はもちろんのこと、各ブロックに一癖も二癖もある強者がぎっしり。リオ後のこの階級の進化と充実を存分に示す、魅力的なラインナップとなった。

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テディ・リネールはノーシード。なんと第1試合、この日のオープニングゲームからの登場となった。

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1回戦、リネールがステファン・ヘギーから内股「一本」

【プールA】

ひときわ注目を浴びたのはやはりリネール(フランス)。この五輪開幕3日前になって突如、2月に膝靭帯を断裂していたことがフランスのメディアを通じて報じられ、事前予測は揺れた。これが本当であれば少なくともその後2か月から3か月はまともな稽古は出来なかったはずで、1月のワールドマスターズ・ドーハで見せた素晴らしいパフォーマンスを補助線に設定されていた「優勝候補筆頭・リネール」という構図は白紙撤回ということになる。

いったいリネールはどんな状態なのか。注目の中行われた1回戦はしかし、面倒なステファン・ヘギー(オーストリア)を一蹴。ケンカ四つのヘギーを相手に先に引き手で袖を抑え、完璧に組み勝ち、腰を切ってプレッシャーを掛け続ける。1分54秒、ヘギーがたまらず両袖の左体落で掛け潰れると、その立ち際を狙って右内股一撃「一本」。これが大会第7日のオープニングゲーム、リネールの「一本」によって最重量級この時代の最強選手を決める大会の幕が切って落とされた形。

続く2回戦はリオ五輪準決勝で激戦を演じた、オ-ル・サッソン(イスラエル)とマッチアップ。右相四つのサッソンを相手にリネールは慎重に組み手を進め、サッソンが伸ばす引き手のアプローチはすべて跳ねのけて自らが先に引き手で袖を掴み、釣り手で後襟を狙う。1分過ぎには頭を下げさせ、釣り手で後帯を引っ掴んで引込返。これは投げ切れなかったが、どうやらリネールの狙いは捨身技にあり。担ぎ技に繋がるようなやりとりを最小限に、体幹を捕まえて体ごと投げ切ろうという作戦だ。1分半過ぎ、サッソンが右に肩車を見せてリネール崩れるがなんとか防ぎ、自らが引き手一本で袖を掴む形を作り出す。ここから釣り手で背中を掴むと、下がった相手の頭を超えて後帯にアプローチ。しっかり握り直すと引込返一撃1分57秒「技有」。以降も引き手で一方的に袖を握り込み、釣り手で背中を掴むことで相手の仕掛けを封殺。苦しくなったサッソンが折り込まれた釣り手を流して右背負投のアクションを見せるとすかさず抱えて抱分で切り返しに掛かる。このまま終盤まで時計の針を進め、残り10秒となると引き手を折り込んで思い切った右大外刈。この刈り込みが空振りに終わったところで残り時間は3秒。このまま終了ブザー、リネール順当にベスト8進出を決めた。

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タメルラン・バシャエフとの準々決勝、リネールが引込返で攻める。

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リネール浮技式の抱分も帯を掴みそこなって不十分、バシャエフが浴びせて「技有」。

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映像チェックも判定は変わらず。リネールは苦笑いを浮かべて畳を後にする。

迎えたプールファイナルの相手は第1シードのタメルラン・バシャエフ(ロシア)。リネールが苦手とする「動ける担ぎ技ファイター」の代表格である。1月のワールドマスターズ・ドーハでは大外刈「技有」に小外刈「一本」で圧勝しているが、まったく油断のならない相手だ。

この試合は右相四つ。バシャエフ引き手で襟を狙うがリネールは徹底拒否。手先で弾き返し続けると、40秒過ぎから引き手で袖、釣り手で奥襟の良い形を作り出す。バシャエフは逆らわず敢えてそのまま左で組み、リネールの払腰を立ったまま受け切って「待て」。1分14秒には両者に消極的試合姿勢の咎で「指導」。以降も手先の組み手争いが続くが、大枠の優位はリネールにある印象、2分5秒にはバシャエフに「指導2」。ここから試合やや加速しバシャエフが左一本背負投フェイントの谷落、リネールが右内股に切り返してブレイク。続いてバシャエフ今度は打点の高い右一本背負投、リネール前に引きずって崩し返す。残り10秒、リネールがこの日の勝負技である後帯を掴んでの引込返を見せたところで本戦が終了。試合はGS延長戦に持ち込まれることとなる。

リネールは引き手で袖、釣り手で前襟を持って優位。左組みの形で応じたバシャエフは片襟の右小内刈でこれをいなすと、右釣り手を自ら切って体を開き、一瞬引き手一本の形を作り出す。リネールは釣り手のみを持つ形。ここからバシャエフが片襟の右背負投。片膝を着いたこの技は浅く、横向きで効き切らず。リネール一歩引いて浮技様の抱分で返そうとするが、引き手で掴もうとした後帯が手につかず、仕方なく柔道衣の背中を掴み直す。が、やはり拘束が甘く己のみが遠くに体を捨てる形になり、かつこのもたつきで技の仕掛けが一間遅れてしまう。体勢を立て直す時間と空間を得たバシャエフが振り向いて正対、膝を伸ばして押し込むと、リネール背中から落下「技有」。試合時間はGS延長戦29秒。映像チェックを経てもこの判定は覆らず、リネール五輪3連覇の夢はここで潰えた。リネールは一瞬両手を広げてアピールも、「礼」と抱擁を済ますと苦笑いを見せ、淡々と畳を後にする。

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敗者復活戦、リネールはラファエル・シウバから腕挫十字固「一本」

リネールは続く敗者復活戦でラファエル・シウバ(ブラジル)と対戦。やや慎重に過ぎた印象の本戦トーナメントから一転、自信満々に引き手で袖、釣り手で背中を掴む万全の組み手を作り出すと引込返に飛び込んで41秒「技有」。そのまま動きを止めず腕挫十字固に極めて46秒「一本」で3位決定戦進出を決めた。シウバのやり口と己との力関係を知悉するがゆえの完勝であるが、そもそもシウバを投げるということ自体ががこの超級世界にあっては異次元。やはりリネールは、強い。

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初戦を戦うバシャエフ。結果的には2戦いずれも投げを決めてベスト4へと進んだ。

というわけでこのプールからの勝ち上がり選手はバシャエフ。2回戦は後ろ重心で進退する巨漢ムバグニク・ンジャイ(セネガル)に持ち技が嵌らずやや手を焼いたが、1分54秒変則の谷落でまず「技有」。右相四つの相手にクロスグリップで叩かせたまま両袖を掴んで時計回りに回転、相手を右後隅に抜け落すという、バシャエフが時折見せる新技である。2分15秒には敢えて左構えで相手の奥襟襲来を待ち構え、背中と脇を差しての左小外掛で切り返し「一本」奪取。続く準々決勝は前述の通り、リネールを隅落「技有」で下してベスト4入りを決めた。

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2回戦、グラム・ツシシヴィリがテムル・ラヒモフから大外返「技有」

【プールB】

勝ち抜けはシード選手のツシシヴィリ。2回戦は長身・相四つのテムル・ラヒモフ(タジキスタン)の「両襟奥」組み手に手を焼き、頭を下げられ、送襟絞で絞め上げられ、2分過ぎまでは先の展望抱きがたい展開。しかし組み手を抑えるのではなく打点の高い左一本背負投で投げに掛かって敢えて乱戦に持ち込み、返す刀で思わず浅く飛び込んだラヒモフの左大外刈を一歩引いて崩すと、釣り手を深く抱いて真っ向刈り返す。これが決まって2分47秒大外返「技有」。以降はラヒモフの猛追を捨身技と片手技の掛け潰れでなんとかいなし続け、残り数秒、走り込んで来た相手の片襟を引っ掴むとその勢いを利して左背負投。ごろりと転がったラヒモフの背中の接地と試合終了を継げる銅鑼(ブザー)の音がシンクロ、これは「技有」。4分0秒、合技「一本」で初戦を突破。

続く準々決勝は前戦でウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)を大外返「一本」に屠っている大巨人シウバとマッチアップ。担ぎ技ファイターがシウバに勝つにはこれしかないとばかりに粛々と、しかし全力で(前戦同様気合いの声が物凄かった)担ぎ技を仕掛け続け、GS延長戦0分41秒一方的に3つの「指導」を奪って勝利を決めた。

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2回戦、原沢久喜がキム・ミンジョンを小内刈で崩す。

【プールC】

厳しい組み合わせを勝ち抜いて、日本代表・原沢がしっかり準決勝へと勝ち上がった。2回戦は東京世界選手権3位の若武者キム・ミンジョン(韓国)とマッチアップ。ケンカ四つから釣り手一本の右一本背負投を連発して手数を稼ぐキムに「指導1」対「指導2」のリードを許す嫌な流れだったが、あくまで冷静。3分25秒、釣り手で奥襟を得ると、キムが引き手を持ちに来る動きに合わせて一瞬呼び込み、絶妙なタイミングの右小内刈。崩れたキムが支釣込足のカウンターを試みると右大内刈に連絡して浴びせ、「技有」。引き続いての寝技の攻防が終わったところで残り時間は4秒。最後はキムの左小外掛による特攻を余裕を持って潰し、「技有」優勢で初戦突破を決めた。

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準々決勝、原沢はヤキフ・ハモーとの大消耗戦を内股「一本」で勝ち抜ける。

準々決勝は1月のワールドマスターズ・ドーハで苦杯を喫したヤキフ・ハモー(ウクライナ)と大熱戦。序盤は密着勝負を強いるハモーを相手に場外の「指導」を失い、さらに隅返で大きく放られる苦しい展開となったが、中盤以降はそのやり口を見極めて試合ぶり安定。釣り手を突き、脇を差し返し、決定的な間合いには入らせない。奥襟を持って攻め込む場面も増え始め、3分30秒には返し技を狙ったハモーを背中に食いつかせたまま右内股で叩き落す。この技は映像チェックの結果ノーポイントとなったが、主導権を握り返して本戦を終了、GS延長戦に勝負を持ち込む。GS延長戦35秒にはハモーに「指導」が与えられて一気に流れを掴むかに思われたが、序盤から打ち続いた接近戦の負担が大きく、両者このあたりから激しく疲労。「待て」が掛かるとともに膝に手を置き、様相は消耗戦となる。ハモーが袖車絞、原沢が崩袈裟固を決め掛かる場面もあったがともに疲労ゆえか決め切れない。迎えたGS2分10秒、原沢万全の形から右内股。釣り手は離れたが強引に投げ切りついに「一本」。

苦しい試合を乗り切ってベスト4入りを決めた原沢だが、激しく疲労。畳を降りるとその場で膝を折り、床に手をついてしばしうつ向いたまま制止。スタミナ抜群のはずの原沢が、ちょっと心配になるほど息を荒げ、なかなか呼吸が整わない。午後のセッションまでの数時間をいかに過ごすか、難しい課題が与えられたという印象の引き上げであった。

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2回戦、ルカシュ・クルパレクがヤヴァド・マージュブを隅返で攻める。

【プールD】

昨秋に新型コロナイウイルスに罹患、復帰後もなかなかパフォーマンスが上がらなかったシード選手クルパレクがどうやら復活。しっかりベスト4入りを果たした。

2回戦は、前戦でヨハネス・フレイ(ドイツ)を隅落「技有」で下したヤヴァド・マージュブ(オリンピック難民選手団)と対戦。序盤はマージュブの力強い組み手に頭を下げられ、腰を引いて守る場面が多い苦しい展開、しかし2分過ぎにマージュブの左大内刈を受け止めると両手で背中を掴み返して敢えて接近戦を挑む。応じたマージュブが腹を突き出して支釣込足を放つと、崩されながらも首を抱いて時計回りに捩じり返す名人芸、これで「技有」を得る。以後はマージュブの接近を組み手と足技でいなし続け、残り1分を過ぎたところの組み際に右小内刈フェイントの出足払。マージュブが片膝を着くとすぐさま「横返し」でひっくり返し、脇を差して横四方固に抑え込む。マージュブ諦めて間を置かず「参った」。試合時間は3分23秒。苦しい内容も結果は大差、さすがの強さで初戦突破。

準々決勝はここまでウルジバヤル・デューレンバヤル(モンゴル)を1分0秒袖釣込腰「一本」、ヘンク・フロル(オランダ)を25秒同じく袖釣込腰「一本」に仕留めている前半戦のMVP選手ベクムロド・オルティボエフ(ウズベキスタン)とマッチアップ。この試合はケンカ四つ、両袖がそのまま攻撃の起点になるオルティボエフに袖を掴まれたままにじり寄られて腰を引いての守備を強いられる、これも苦しい展開。51秒には袖を絞り込んでディフェンスしたという咎で「指導」1つを失ってしまうが、以降は苦しみながらも己が先に袖を掴むことで粘り、チャンスを探り続ける。2分20秒、オルティボエフが右内股。この試合初めて引き手で袖、釣り手で前襟という完全な形を作っての素早い一撃だったが、腋裏を握って待ち構えたクルパレク以外なほどあっさり透かし、叩き落として内股透「技有」。以降はこの日のオルティボエフの調子の良さを考えたか完全に勝負を割り切り、腰を引いたまま食いついて守備に専心。「指導」1つを失ったがなんとかタイムアップまで辿り着き、「技有」優勢でベスト4入りを決めた。

オルティボエフの勢いはここでストップ、敗者復活戦ではハモーに苦杯。慎重に試合に入って相手のペースに乗ってしまい、1分9秒に襲った左大外刈フェイントの背負投にすっぽり捕まって「技有」失陥。以後は体を抱いての捨身技という明確なカウンター技を持つハモー相手になかなかペースを挙げられず、大枠組み止められたまま時間を消費することとなる。最後は片襟の左背負投を潰されてタイムアップ。オルティボエフは7位で終戦、3位決定戦にはハモーが進むこととなった。

■ 準決勝
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準決勝、バシャエフがツシシヴィリの左釣腰のインパクトをずらし、隅落「技有」

準決勝第1試合、当代きっての担ぎ技遣い同士の対戦はバシャエフが右、ツシシヴィリが左組みのケンカ四つ。ツシシヴィリ引き手は手首を立てて袖を上から握る独特のグリップ、釣り手は後帯を掴み、時計回りに動きながら相手を圧する。両手を突いて耐えていたバシャエフが釣り手を背に回すと、きっかけを与えられたツシシヴィリは弾かれたように左釣腰。しかしバシャエフは釣り手側に一歩体を捌き、釣り手の四指で後襟を握って落とし、巧みに体を預けて捲りに掛かる。ツシシヴィリの体は釣り手側に戻され、激しく畳に落ちて45秒「技有」。

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ツシシヴィリが左釣腰、今度は投げ切って「技有」

ビハインドを負ったツシシヴィリ、1分12秒には襟を隠した咎で「指導」も失って形勢不利。ここからじわりと前に出て反撃を試みる。組み際の払釣込足で牽制すると釣り手で後帯を掴み、高く、低くと左釣腰を連発。これは投げ切れなかったが、引き手で袖を絞り、釣り手を背中を入れてじわりと迫り続ける。2分48秒、ツシシヴィリが釣り手で後帯を掴む万全の形。腰技の来襲を予期したバシャエフは右小外掛を狙う動きで反時計回りに体を捌くが、移動が不十分。中途半端な位置で歩みを止めてしまう。止まったその瞬間、ツシシヴィリ思い切った左釣腰。前段と異なりインパクトの位置が噛み合ったこの技にバシャエフたまらず一回転、頭を支点に伏せたかに思われたが僅かに体側が接地「技有」。

スコアが揃ったことで、ツシシヴィリに傾きかけていた流れが加速。試合は一気に動き、3分9秒には再び袖と後帯を得たツシシヴィリに対してバシャエフが後襟四指の右小外掛で勝負に出る。足を当て、次いで裏投で放らんと膝を伸ばすが、その腹の上でツシシヴィリは体を入れ替え、胸を合わせて被り、浴びせる。もはや体を戻す段階にないバシャエフは逆らえず、激しく畳に落ちて「一本」。タイスコア到達から僅か11秒、ツシシヴィリが逆転勝ちで決勝に駒を進めることとなった。

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クルパレクと原沢の準決勝

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両者疲労困憊のGS延長戦3分59秒、クルパレクの大外刈が決まって「技有」

第2試合は原沢が右、クルパレクが左組みのケンカ四つ。袖と奥襟の二本を持って戦いたい原沢に、リーチを生かして抱き込みたいクルパレクという構図で試合はなかなか動かず、1分43秒両者に「指導」。大きな動きがないまま本戦4分間が終わる。

延長戦、原沢は幾度か高い位置で釣り手を持つ「両襟奥」を作るが、脇を突かれて十分な間合いまで接近できず、なかなか技を仕掛けることができない。一方クルパレクは形上組み負けるも攻守をはっきりと分け、要所で的確に技を出して展開を握り続ける。この構図の攻防が続くうちに原沢の体力が減じ、流れは徐々にクルパレクに傾き始める。GS3分15秒には原沢が右内股で勝負に出るが、既に体力が削れており最後まで粘れず、捲られ掛けて「待て」。もはやクルパレクを投げるだけの体力は残っていない印象。原沢の展望一気に暗くなったこの直後、クルパレクは釣り手で脇深くを差すと一瞬左浮腰で前に振り、低く構えてそのままじわりと前に出る。疲労困憊の原沢は抗えずまっすぐ下がってしまい、クルパレクが斜めに左大外刈を仕掛けるとがくりと崩落。体側から勢い良く畳に落ちて「技有」を失う。試合時間はGS延長戦3分59秒、これでクルパレクの決勝進出が決まった。原沢はメダルを掛けて、3位決定戦に挑むこととなる。

■ 3位決定戦
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リネールは原沢の疲労を見抜き、圧殺と蹴り崩しで攻勢を取る。

第1試合はリネール、原沢ともに右組みの相四つ。準々決勝、準決勝と長時間試合を戦った原沢は既に体力が残っていない。1分27秒には両者に取り組まない咎の「指導」。直後、リネールが原沢を圧し潰し、この際足を持って防御した咎で1分37秒原沢に「指導2」。僅か10秒の間に、原沢はポイント上後がなくなってしまう。以降は再び組み手の攻防となるが、GS延長戦に入るといよいよ原沢の体力が尽き、反応のペースが落ち始める。これを的確に見て取ったリネール、奥襟を得て組み勝つと足を飛ばしてひたすら攻勢を演出。そしてリネールの右大外刈に原沢が前のめりに潰れたGS1分4秒、原沢に消極的姿勢の「指導3」が与えられて試合決着。リネールは銅メダルを確保、原沢は5位で五輪を終えることとなった。

リネール。失点の場面などは足が上手く動いていない印象で膝の負傷の影響は相応にあったように思われるが、それ以上に稽古が出来ない期間が長かったことが痛かったという印象。仕上げが甘かったゆえに己を信じ切れず、好調時に比べて試合ぶりが慎重に過ぎた。バシャエフ戦も大枠勝っていた試合であったが、詰めが甘かった。3位獲得はさすがであるが、負けて吹っ切れてからの2試合の出来が良かっただけに少々残念。

原沢。「早出し評」で指摘した通り、ここぞでもう1つ上を狙う勇気が欲しかったところだが、試合を見返すと消耗が異常。ここまで疲労する原沢の姿はなかなか見られない。ここまで疲れ切った状態でクルパレクやリネールを相手に一段上の力を出すことは、もはや難しいという印象であった。ハモー戦が厳しい試合であったことはもちろんだが、何かアクシデントがあったのではないか。時間が経ち、真相が語られることを待ちたい。

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バシャエフが背負投「技有」、そのまま抑え切って一本勝ち。

第2試合はバシャエフとハモーが激突。厳しい組み手争いも前線は袖先となり、これはどちらかというとバシャエフのフィールド。2分30秒、バシャエフは引き手で袖を制し切るとまず浅く、2度目は深く右背負投を2連発。いずれも外側に足を踏んで余裕を持って捌いたかに思われたハモーだが、2発目の引き込みの深さは予想外であったか耐えたまま頭を下げてゆっくり回転。右肩を着いて耐えたところにバシャエフが体ごと押し込み、ぐるりと回し切って「技有」。そのまま張った右肘と左引き手で右腕を挟み込んで崩袈裟固。2分40秒合技「一本」が宣されてバシャエフの銅メダル獲得が決まった。

■ 決勝
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形勢不利のクルパレク、起死回生の隅返「技有」

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そのまま横四方固で抑え切り「一本」

決勝はクルパレクとツシシヴィリともに左組みの相四つ。序盤は袖の絞り合い、このフィールドが得意なツシシヴィリが引き手で袖、釣り手で背中を抱く良い形を作り、クルパレクが捨身技で展開を切るという形で試合が進む。1分3秒クルパレクに偽装攻撃の「指導」。以降は低く構えて圧を掛けるクルパレクがペースを掴みかけるが、ツシシヴィリしぶとく担ぎ技で手数を積んで快走。2分52秒にはクルパレクに「指導2」が与えられるに至る。

クルパレクは準決勝の原沢戦の疲れが抜けきっていない様子。このまま試合はツシシヴィリ優位で進むかに思われたが、残り39秒、ツシシヴィリの右背負投の掛け止まりを待ったクルパレクが後帯を握って隅返。このカウンターが決まって試合の様相一変、起死回生の「技有」。試合巧者クルパレクがここを逃がすはずはなく、すぐさま抑えに掛かり、絡まれた足を引き抜き、横四方固でがっちり固定。「抑え込み」が宣されるとツシシヴィリはもはや諦めて脱力、3分47秒合技「一本」が宣されてクルパレクの優勝が決まった。クルパレクはリオ五輪の100kg級に続く、五輪2階級制覇の偉業を成し遂げた。

成績上位者と決勝戦評、日本代表選手全試合の戦評と全試合結果は下記。

■ 成績上位者・決勝戦評
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100kg超級メダリスト。左から2位のグラム・ツシシヴィリ、優勝したルカシュ・クルパレク、3位のテディ・リネールとタメルラン・バシャエフ。

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クルパレクは2階級制覇の偉業達成

(エントリー22名)

【入賞者】
1.KRPALEK, Lukas (CZE)
2.TUSHISHVILI, Guram (GEO)
3.RINER, Teddy (FRA)
3.BASHAEV, Tamerlan (ROC)
5.HARASAWA, Hisayoshi (JPN)
5.KHAMMO, Yakiv (UKR)
7.SILVA, Rafael (BRA)
7.OLTIBOEV, Bekmurod (UZB)

【成績上位者】
優 勝:ルカシュ・クルパレク(チェコ)
準優勝:グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)
第三位:テディ・リネール(フランス)、タメルラン・バシャエフ(ロシア)

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勝利を決めたクルパレク。昨年はコロナウイルスに罹患して戦線離脱、波乱万丈の1年間だった。

【決勝】

ルカシュ・クルパレク(チェコ)○合技[隅返・横四方固](3:47)△グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)

クルパレク、ツシシヴィリともに左組みの相四つ。序盤は激しい袖の絞り合い。このフィールドの方法論に勝るツシシヴィリが先に抜け出して釣り手で背中深くを得るが、クルパレクは隅返に肩車と先に技を出して展開を切る。1分3秒、クルパレクに偽装攻撃の「指導」。ここからはクルパレクが低く構えて圧を掛けながら前に出続け、ツシシヴィリが担ぎ技を狙うという展開。ツシシヴィリは左一本背負投に左背負投と技を仕掛けるが、クルパレクの懐の深さのためにいずれも浅い技に終わってしまう。しかし、この手数が評価され、2分52秒、クルパレクに消極の「指導2」が与えられる。ここまでの主導権はツシシヴィリ。クルパレクはどうやら準決勝の疲労がまだ残っている様子。このままツシシヴィリが押し切るかと思われたが、残り39秒、ツシシヴィリの右背負投の掛け終わりにクルパレクが後帯を持ってカウンターの隅返。これで「技有」を得るとそのまま寝技を展開し、脚を抜いて横四方固で抑え込む。「抑え込み」のコールが為された時点でツシシヴィリは諦め脱力。そのまま10秒が経過し、合技「一本」でクルパレクの優勝が決まった。クルパレクは五輪連覇、100kg級との2階級制覇を達成。

■ 日本代表選手全試合戦評
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2回戦を戦う原沢

【2回戦】

原沢久喜○優勢[技有・大内刈]△キム・ミンジョン(韓国)

原沢が右、キムが左組みのケンカ四つ。原沢、試合が始まるなり上から釣り手を得て右内股。キムはこれを跨いで躱し、そのまま捲って寝技を狙うが、ここは原沢が凌いで「待て」。以降は双方が釣り手一本の片手状態、原沢が上から持って圧を掛けながら煽り、キムが下か突いて担ぎ技を狙う形での攻防が続く。1分39秒、両者に消極的姿勢の「指導」。ここからキムが右一本背負投を連発して攻勢に出始め、2分36秒、原沢に消極的姿勢の「指導2」が宣告される。原沢としては嫌な流れ。しかし3分25秒、原沢は釣り手で奥襟を得ると、相手が引き手を取りに来たタイミングに合わせて右小内刈。一瞬呼び込みを呉れて放った切れ味鋭い一撃、大きく崩れたキムは苦し紛れに支釣込足でカウンターを試みるが、原沢が右大内刈の形で浴びせると背中から畳に落ちて「技有」。引き続いての寝技の攻防を終えた時点で残り時間は僅か4秒。特攻を掛けるしかないキムが左小外掛でぶら下がり、潰れたところで終了ブザー。原沢、優勢勝ちで難敵キムを突破。

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ハモーから内股「一本」

【準々決勝】

原沢久喜○GS内股(GS2:10)△ヤキフ・ハモー(ウクライナ)

組み手は原沢が右、ハモーが両組み。ハモーは左に組んでケンカ四つで試合を進める。激しい組み手争いから試合が始まり、35秒にハモーが釣り手で背中深くを得る。原沢脇を差して応じるも場外に押し出されてしまい、41秒に場外の「指導」を失う。直後の攻防でもハモーは釣り手で背中深くを得て密着、55秒には強烈な隅返に潜り込む。原沢思い切り放られ一回転。しかしあまりの勢いに相手の拘束が外れ、腹這いで着地して失点は免れる。以降もハモーはひたすら背中を抱いての密着を志向。一方原沢の側もどうやらこの形に慣れ始め、脇を差し、あるいは釣り手を突いて応じて決定的な間合いには入らせない。時間の経過とともに原沢が奥襟を得て攻め込むことも増え、3分5秒には相手の浮技をかわして抑え込みかける場面も生まれる。3分30秒には原沢が右内股、返し技を狙ったハモーは大きく崩れて抱きついたまま体側から畳に落下。ポイントの有無を巡り映像チェックが行われる。これは得点にはならなかったものの、ここに至ってペースは原沢。以降も攻め続け、優位を保ったまま本戦の4分間を終える。勝負はGS延長戦へ。

延長戦が始まるとハモーが組み際に片襟の右背負投を仕掛ける。原沢崩れるも、これは腋下に相手が抜けてそのまま畳に伏せる。ここからは原沢が奥襟を持ち、組み勝って攻防。場外際の右小内刈で大きく崩したGS35秒にはハモーに消極的姿勢の「指導」が与えられる。このあたりから接近戦を続けてきた両者は激しく疲労。ともに開始位置で膝に手を置く姿が目立つようになる。GS延長戦1分半には伏せ際にハモーが袖車絞を狙う危うい場面が生まれるが、原沢は反対に被り返して崩袈裟固で抑え込む。これは不十分な形ですぐに逃してしまい、GS1分49秒「待て」。続く展開のGS2分10秒、原沢は引き手で袖、釣り手で奥襟の万全の形を作ると右内股に飛び込む。釣り手が離れてしまったがそのまま強引に巻き投げて「一本」。原沢、1月のワールドマスターズのリベンジを果たしてベスト4入り。

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疲労が抜けず、準決勝は極めて苦しい試合となった。

【準決勝】

原沢久喜△GS技有・大外刈(GS3:59)○ルカシュ・クルパレク(チェコ)

原沢が右、クルパレクが左組みのケンカ四つ。袖と奥襟の二本を持って戦いたい原沢に、リーチを生かして抱き込みたいクルパレクという構図。まずはクルパレクが手繰って抱き込み潰し、ローリングからの抑え込みを狙う。ここは原沢が凌ぎ切り「待て」。しばし組み合っての膠着状態が続き、1分43秒、両者にブロッキングの「指導」が与えられる。以降は互いに組み手の陣地争いに終始し、大きな動きないまま本戦の4分間が終わる。

延長戦に入っても本戦と構図は変わらず。原沢は何度も高い位置で釣り手を持つ「両襟奥」の良い形を作るが、脇を突かれて十分な間合いまで接近できず、技を仕掛けることができない。一方形上組み負けているクルパレクの側は攻守をはっきりと分け、GS30秒に後帯を得ての隅返で惜しい場面を作るなど、要所で的確に技を出して展開を握り続ける。この形の攻防が続くうち、流れは徐々にクルパレクに傾き始める。GS3分15秒には原沢が右内股で勝負に出るが、既に体力が削れており最後まで粘れず、潰れて相手に捲られ掛けてしまう。直後の攻防、クルパレクは釣り手で脇深くを差すと一端左浮腰で前に振り、低く構えてじわりと前に出る。もはや疲労困憊の原沢は抗えずまっすぐ下がってしまい、GS3分59秒、クルパレクが斜めに左大外刈を仕掛けると崩落。体側から勢い良く畳に落ちて「技有」を失う。原沢は準決勝で敗退となった。

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リネールが攻勢を取り続け、消耗した原沢はこれに抗せず。

原沢久喜△GS反則[指導3](GS1:04)○テディ・リネール(フランス)

ともに右組みの相四つ。リネールまず引き手から持つと次いで釣り手で後帯を持ち、これを嫌った原沢は自ら畳に伏せる。この最初の攻防の後は組み手争いが続き、リネールの浮技失敗を挟んでの1分27秒、両者に取り組まない咎による「指導」。続く展開、原沢は先に奥を叩くが、すぐに切り落とされ、反対に背中を持たれてしまう。潰された際に脚に触れてしまい、1分37秒、原沢に足取りの「指導2」。原沢、僅か10秒の間に2つの「指導」を失ってしまう嫌な流れ。以降は再び組み手の攻防が続き、勝負はGS延長戦へ。

GS延長戦でも攻防の中心は組み手。しかし前戦で長い試合を戦っている原沢はすでに疲労困憊。これを的確に見て取ったリネールは袖と奥襟を得て組み勝つと、足を飛ばして蹴り崩しながらひたすら攻勢を演出する。リネールの右大外刈に原沢が前のめりに潰れたGS1分4秒、原沢に消極的姿勢の「指導3」が与えられ決着。原沢、5位で五輪を終える。

■ 全試合結果
【1回戦】
テディ・リネール(フランス)○内股(2:06)△ステファン・ヘギー(オーストリア)
テムル・ラヒモフ(タジキスタン)○優勢[技有・大外巻込]△アンディー・グランダ(キューバ)
ウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)○合技[大外巻込・崩袈裟固](3:09)△マチェイ・サルナツキ(ポーランド)
ヴラダト・シミオネスク(ルーマニア)○内股(0:56)△アリ・オマル(リビア)
ヤヴァド・マージュブ(オリンピック難民選手団)○優勢[技有・浮落]△ヨハネス・フレイ(ドイツ)
ベクムロド・オルティボエフ(ウズベキスタン)○袖釣込腰(1:00)△ウルジバヤル・デューレンバヤル(モンゴル)

【2回戦】
タメルラン・バシャエフ(ロシア)○合技[谷落・小外掛](2:51)△ムバグニク・ンジャイ(セネガル)
テディ・リネール(フランス)○優勢[技有・引込返]△オ-ル・サッソン(イスラエル)
グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)○合技[大外返・背負投](4:00)△テムル・ラヒモフ(タジキスタン)
ラファエル・シウバ(ブラジル)○GS大外返(GS1:43)△ウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)
原沢久喜○優勢[技有・大内刈]△キム・ミンジョン(韓国)
ヤキフ・ハモー(ウクライナ)○優勢[技有・大外刈]△ヴラダト・シミオネスク(ルーマニア)
ルカシュ・クルパレク(チェコ)○横四方固(3:23)△ヤヴァド・マージュブ(オリンピック難民選手団)
ベクムロド・オルティボエフ(ウズベキスタン)○袖釣込腰(0:25)△ヘンク・フロル(オランダ)

【準々決勝】
タメルラン・バシャエフ(ロシア)○GS技有・隅落(GS0:29)△テディ・リネール(フランス)
グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)○GS反則[指導3](GS0:41)△ラファエル・シウバ(ブラジル)
原沢久喜○GS内股(GS2:10)△ヤキフ・ハモー(ウクライナ)
ルカシュ・クルパレク(チェコ)○優勢[技有・内股透]△ベクムロド・オルティボエフ(ウズベキスタン)

【敗者復活戦】
テディ・リネール(フランス)○腕挫十字固(0:46)△ラファエル・シウバ(ブラジル)
ヤキフ・ハモー(ウクライナ)○優勢[技有・背負投]△ベクムロド・オルティボエフ(ウズベキスタン)

【準決勝】
グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)○隅落(3:09)△タメルラン・バシャエフ(ロシア)
ルカシュ・クルパレク(チェコ)○GS技有・大外刈(GS3:59)△原沢久喜

【3位決定戦】
テディ・リネール(フランス)○GS反則[指導3](GS1:04)△原沢久喜
タメルラン・バシャエフ(ロシア)○合技[背負投・崩袈裟固](2:40)△ヤキフ・ハモー(ウクライナ)

【決勝】
ルカシュ・クルパレク(チェコ)○合技[隅返・横四方固](3:47)△グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)

※ eJudoメルマガ版8月27日掲載記事より転載・編集しています。

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