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【レポート】素根輝金メダル獲得、盤石の戦いぶりで他を寄せ付けず/東京オリンピック柔道競技女子78kg超級レポート

(2021年9月3日)

※ eJudoメルマガ版8月27日掲載記事より転載・編集しています。
素根輝金メダル獲得、盤石の戦いぶりで他を寄せ付けず
東京オリンピック柔道競技女子78kg超級レポート
■ 準決勝まで
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イダリス・オルティスの初戦。ホシェリ・ヌネスを圧倒。

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準々決勝、シウ・シヤンから左の浮腰で「技有」

イダリス・オルティス(キューバ)、ホマーヌ・ディッコ(フランス)、素根輝、イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)のシード選手4人がしっかりベスト4まで勝ち上がった。それぞれの山に刺客ありも全員これに完勝、力の差を見せつけての決勝ラウンド進出。

第1シードのオルティスは2回戦でホシェリ・ヌネス(ポルトガル)と対戦、GS延長戦1分58秒の袖釣込腰「技有」で勝利。続く準々決勝はここまでヤスミン・グラボフスキ(ドイツ)を1分18秒谷落「一本」、さらにニヘル・シェイフ=ルーフー(チュニジア)を1分15秒大外巻込「一本」に仕留めて絶好調のシウ・シヤン(中国)から、まず53秒打点の高い左釣腰で「技有」。続いて2分25秒今度は低い左一本背負投に潜り込み、逆側に転がして2つめの「技有」を奪い、合技「一本」でベスト4入りを決めた。コンディション命のオルティスが本気になるのはオリンピックのみ。はっきりペースを上げるわけでなく終始淡々とした進退だが、やはりしっかり仕上げて来た様子。膝を伸ばしたほぼ棒立ち状態のままシウを抜き上げた釣腰のフォームから、状態の良さが匂い立った。

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準々決勝、ホマーヌ・ディッコがマリア=スエレン・アルセマンから小内刈「技有」。パワーファイトを強いられ続けたアルセマンはこの技に耐えた際に左膝を負傷。

ディッコは第5シード。2回戦はサンドラ・ヤブロンスキーテ(リトアニア)を相手に引き手で袖を一方的に抑え、釣り手で上から背中を掴んでの右小内刈。足を外して逃れんとした相手を無理やり左後隅に叩き落として「技有」、そのまま横四方固に抑え込んで「一本」。ここまで僅か28秒の早業だった。

注目の準々決勝は第4シードに入ったマリア=スエレン・アルセマン(ブラジル)と激突。この試合はディッコが右、アルセマン左組みのケンカ四つ。序盤からディッコが引き手で襟、釣り手で奥襟を掴んで腰の差し合いを挑み、アルセマンが背中を掴んで応じるというノーガード状態のパワーファイトが続く。ディッコが右内股と右大内刈を仕掛けんと腰を差し入れ、一方裏投を狙うアルセマンが背後から胴を抱きかかえたまま力を籠め続けて鬼の形相、最後はディッコの右払腰でブレイクとなった開始30秒までの攻防は圧巻だった。そしてこの試合は意外な結末を迎える。同様のパワーファイトから、ディッコが相手に腰を抱えさせたまま1分8秒に右小内刈。すると一瞬耐えたアルセマン意外にもがくりと頽れて後方に倒れ、「技有」宣告と同時に苦悶の表情で「参った」。膝を負傷した模様でもはや立つことかなわず、ここで試合は終了となった。記録はアルセマンの棄権負け。単なるアクシデントというよりは、体力あり過ぎる若いディッコに試合時間ほぼすべてパワーファイトに付き合わされ続けて体が持たなかったという印象。ディッコのパワーと体力恐るべし。2020年2月のグランドスラム・パリ、強引な仕掛けでワールドマスターズを制したばかりのテッシー・サフェルコウルス(オランダ)の膝を破壊した、あのシーンが強く思い起こされた。

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準々決勝、イリーナ・キンゼルスカがハン・ミジンから左大外刈「技有」

第3シードに配された両組みの強豪・キンゼルスカは充実の出来。ラリサ・ツェリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)との2回戦は「指導」ふたつを一方的に奪った末の3分22秒の組み際、釣り手を肘下に入れながら左大外落を決めて豪快「一本」。続く準々決勝は動き回るハン・ミジン(韓国)を両襟で組み止め、凌ごうとしたハンが袖を絞ると持たせたまま瞬間右から左に構えをスイッチして片襟の左大外刈。1分22秒、「技有」を得る。その後も左右に構えを変えながら左大外刈を中心に攻め続け、3分3秒には両襟を掴み、一瞬左へのフェイントを入れると本命の右大外刈一撃。耐えたハンを強引に捩じり落として文句なしの「一本」。階級屈指の大型、そして両組みという尖った特徴のあるキンゼルスカだが、加えてこの日の動きの良さは過去最高に近いレベル。「一本」2つを並べてベスト4入り決定。

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2回戦。素根輝がラズ・ヘルシュコから体落「一本」

優勝候補筆頭と目される素根は手堅く、危なげのない勝ち上がり。2回戦はケンカ四つのラズ・ヘルシュコ(イスラエル)が狙う先手掛け潰れ攻撃を、巧みな組み手と要所の技で封殺。2分10秒には左大内刈の牽制から左体落に繋いで「技有」リード。さらにヘラシュコの集中力が落ちて釣り手が甘くなったと見るや、再びの左体落で3分3秒「一本」。準々決勝は曲者カイラ・サイート(トルコ)とマッチアップ。返し技によるアップセットをもくろみ、背を抱き、圧を掛けるサイートの誘いにしかし素根は一切乗らず、巧みな組み手と懐の内側での技で淡々釣り手を剥がし続ける。順当に「指導」を奪い、大内刈と背負投で崩し、その試合ぶりまったく危なげなし。さらに展望開けぬサイートが焦れて前に出ようとした一瞬を見逃さず、出端を捉えて左体落一撃「技有」確保。そのまま横四方固で抑え込んで3分24秒合技「一本」。難敵サイートをまったく寄せ付けず、順当にベスト4入りを決めた。

■ 準決勝
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大一番はオルティスがディッコを凌いだ。

第1試合はオルティス、ディッコともに右組みの相四つ。今年1月のワールドマスターズ・ドーハではディッコが袈裟固「一本」で勝利している試合。

オルティス敢えて釣り手から持ち、打点の高い左一本背負投で先制攻撃。前に出てディッコの陣地を下げると今度は低く左一本背負投に潜り込んで「待て」。いずれの技も安定感あり。続いての展開ではこの組み手に応じたディッコが釣り手を上から叩き込みながら腰を入れて力勝負に出るが、オルティスはすかさず左浮腰で応戦。そのまま強引に右内股で投げ切ろうとしたディッコと技がかち合う形となり、しばしの力比べを経てバランスを崩したのはディッコ。オルティスが立ったまま時計回りに振り崩して「待て」。やはりオルティスの足腰の安定感はかなりのもの、少なくともこの試合においての力関係ではオルティスが上と見受けられた攻防。以降もオルティスが釣り手一本で前に出ては左一本背負投と左浮腰で崩し続けて優位に立つ。1分56秒にはひときわ思い切った左釣腰、これはディッコが外側に逃れて「待て」となったが明らかに勝負を決めに行った技。かなりの手ごたえがある模様。ディッコは奥襟を叩いての右内股を見せて形上並走も、明らかに後手を踏んでいる。続く展開、オルティスににじり寄られたディッコ仕方なしに釣り手を上から叩いてがっぷり組み合う体勢を作るが、これは相手の術中。オルティス瞬間胴を深く抱き、大きく踏み込んで横車一撃「技有」。経過時間は2分12秒、ここまでの試合内容を考える限り決定的なポイント。オルティスは以降も前に出、左一本背負投で展開を切り、進退に危なげなし。左右の構えを変えながら常に自分だけが力を籠められるポジションを確保する巧みな殿戦にディッコはまったくついていけず、そのままタイムアップ。オルティスが「技有」優勢で決勝進出を決めた。オルティスの強さが際立った一番であり、良くも悪くも力対力のパワーファイト以外に出口を持たないディッコの脆さが垣間見えた試合であった。

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素根がキンゼルスカから左大内刈「技有」

第2試合は素根が左組み、両組みのキンゼルスカが右に組んでケンカ四つの形で試合が進む。素根は敢えて組み手争いをせず先んじて引き手を確保、左袖釣込腰で先制攻撃。キンゼルスカは素根に袖を絞られると、そのまま左大外刈に切り返す巧技を見せて対抗。しかし徐々に素根が展開を取り始め、左大内刈で大きく崩した1分58秒にはキンゼルスカに「指導」。素根はキンゼルスカに左で奥を叩かせ、これを切り離しては引き手で袖を一方的に得て攻め続ける。そしてまたもこのプロセスを踏んだ2分49秒、万全の形から左大内刈を決めて「技有」確保。そのまま崩袈裟固に抑え込んで3分4秒「一本」。かつて苦手としていたキンゼルスカをまったく相手にせず、この時点でメダル獲得を決めた。

■ 決勝
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決勝は2019年世界選手権決勝の再現カード、素根とオルティスが激突。

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素根は組み手でしぶとく優位を得続ける。

素根が左、オルティスが右組みのケンカ四つ。オルティスは前戦同様左一本背負投で流れを作りたいが、素根としてはこれをさせるわけにはいかない。双方釣り手を上から持たんと、ここを前線に激しい組み手争いが続く。先にこのステージから降りたのはオルティス。しつこく、しぶとく襟を持ち続ける素根の前に、1分過ぎから釣り手で背を抱く形にいったん戦型を変える。しかし素根は内から持っても肘を相手の腕に乗せ、圧を掛けて侵入を防ぎ続ける。以降も組み手の主導権は常に素根にあり。オルティスは種々様々釣り手の形を変えてチャンスを探るが、素根は常に素早く的確に対応。巧みな手首と肘の操作で蓋をし続け、オルティスどうしてもその堅陣を崩せない。守りを固めた城の周りをうろつき、時折攻め所を見つけては探りを入れるもすぐさま銃撃に遭っていったん撤退という格好。どの角度から刃を向けても、そこには素根が既に兵を配していて手出しが出来ない。オルティスが力を効かせる形を作れぬまま、しかし素根も決定的なチャンスを作るまでには至らぬまま、あっという間に本戦4分間が終了。試合はGS延長戦へ。

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素根の左背負投。徐々に展開に差がつき始めた。

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素根の金メダル確定。ロンドン五輪の覇者・オルティスが素根を祝福する。

GS延長戦1分7秒、両者に消極的試合姿勢の「指導」。オルティスはペースを上げ、背中を抱き、素根の釣り手を絞ってとさらに手立てを増やして突破を試みるが、素根は巧みな肘の開閉と手首の操作を連動させて間合いをコントロール。決してオルティスに侵入を許さず、常に優位を取り続ける。様相は「完封」。次第にスコアにも差がつき始め、素根が左小内刈から左背負投と繋いだGS2分53秒にはオルティスに消極的試合姿勢の「指導2」。危機を感じたオルティスは掛け潰れを連発してスコアを戻しに掛かるが、素根の厳しく練れた組み手の前に大枠の構図は変えられず。そしてオルティス必死の延命を、GS4分52秒に素根が断ち切る。組み勝って左体落を仕掛けるとオルティス崩れて自ら膝を着き、ここで主審が3つめの「指導」を宣告。素根、みごと初出場で五輪金メダル獲得なる。

瞬間控えめに、汗をぬぐうがごとく両手で顔を覆って勝利を噛み締めた素根の目には涙。丁寧に「礼」を終え、オルティスの抱擁に応えて畳を降りると抑え切れず嗚咽、まさに感涙にむせびながらコーチと握手を交わした。その姿は20歳の若者にふさわしい初々しいものであったが、試合ぶりはまるで大ベテラン。百戦錬磨のオルティスに何もさせなかった決勝は、「指導3」というスコアだけでは測り切れない完勝だった。

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キンゼルスカが「技有」

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ディッコも一本勝ちで銅メダルを決めた。

3位決定戦第1試合はキンゼルスカがシウを圧倒。42秒右の外巻込で強引に転がしてまず「技有」、1分41秒釣り手を片襟に入れながら今度は左への大外巻込で投げ切って2つ目の「技有」奪取。合技「一本」で銅メダル獲得を決めた。キンゼルスカは「一本」が宣されると膝を着いたまま、手を叩いて絶叫。ウクライナからの移籍を経てついに五輪の表彰台に辿り着いた、その労苦が報われた瞬間だった。この選手を寄せ付けなかった素根の強さが改めて際立つ、素晴らしい出来であった。

第2試合はディッコとサイートというレベルの高いカード。この試合は右相四つ、サイート種々様々の手立てを駆使して奥襟確保。形上組み勝つが、がっぷりの組み合いでは完全にディッコが格上。組み合ったまま形を整えるとサイートの支釣込足を弾き返し、頃合い良しとばかりに右払腰。サイートが膝を着いて耐えると外巻込に連絡、背中で押し込んでごろりと投げ切ってこれは「技有」。その体勢を崩さず、裏固に抑え込んで1分13秒「一本」。ファーストアタックで勝負を決め、銅メダルに辿り着いた。

上位入賞者と素根全試合の戦評、全試合の結果は下記。

■ 成績上位者
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78kg超級メダリスト。左から2位のイダリス・オルティス、優勝した素根輝、3位のイリーナ・キンゼルスカとホマーヌ・ディッコ。

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素根、念願の金メダルを獲得。

【入賞者】
1.SONE, Akira (JPN)
2.ORTIZ, Idalys (CUB)
3.KINDZERSKA, Iryna (AZE)
3.DICKO, Romane (FRA)
5.XU, Shiyan (CHN)
5.SAYIT, Kayra (TUR)
7.ALTHEMAN, Maria Suelen (BRA)
7.HAN, Mijin (KOR)

【成績上位者】
優 勝:素根輝
準優勝:イダリス・オルティス(キューバ)
第三位:イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)、ホマーヌ・ディッコ(フランス)

素根輝選手のコメント(フラッシュインタビュー)
「(―夢がかないましたね?)(号泣)コロナ禍の中でオリンピックが開催されて感謝の気持ちでいっぱいです。(―決勝のポイントは)先に攻めよう、絶対に負けない、と思って戦いました。この大会のために練習を頑張って来た、それが出た、これに尽きると思っています。」

■ 日本代表選手全試合戦評
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ラズ・ヘルシュコから体落「一本」

【2回戦】

素根輝○体落(3:03)△ラズ・ヘルシュコ(イスラエル)

素根が左、ヘルシュコが右組みのケンカ四つ。素根が釣り手を内から持って圧を掛け、ヘルシュコが担ぎ技で展開を切るという形で試合が進む。素根は右一本背負投に左大内刈と要所で技を仕掛けて楔を打ち、手数の優位を許さない。2分10秒、素根は引き手から得ると釣り手を上から持って肘を落とし、浅い左大内刈の牽制から左体落へと繋ぐ。作りは十分、低く、鋭く潜り込んだ一撃にヘルシュコ堪らず転がり落ちて「技有」。リードを得た素根は攻めの手を緩めず、2分40秒には相手の伏せ際を捲り返して横四方固で抑え込む。これは7秒で解けてしまうが、直後の3分3秒、相手の釣り手が雑になったところを見逃さず鋭い左体落。ごろりと転がし「一本」。素根、万全の内容で初戦を突破。

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カイラ・サイートから体落「技有」。そのまま抑え込んで盤石の「一本」

【準々決勝】

素根輝○合技[体落・横四方固](3:24)△カイラ・サイート(トルコ)

素根が左、サイートが右組みのケンカ四つ。サイート試合が始まるなり釣り手で後帯を掴み、素根を引き落として潰す。以降、背中を抱いて圧を掛けて返し技を狙うサイートに、前襟を突いて距離を取りたい素根という構図で試合が進む。サイートは貪欲に奥を叩くが、素根は巧みな組み手と懐内での技で相手の釣り手を剥がし続ける。左体落に左大内刈とポイント級の技を2つ積んだ1分55秒、サイートに消極的姿勢の「指導」。以降も大枠の構図は変わらず。素根は2分29秒にも左大内刈から惜しい左背負投を放ち伏せさせる。誘いに乗ってこない素根に対して、サイートは打つ手なし。3分33秒、素根、ついに相手の出際を左体落にとらえて「技有」。そのまま横四方固で抑え込んで3分24秒、合技「一本」に辿り着く。

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キンゼルスカから大内刈「技有」

【準決勝】

素根輝○合技[大内刈・崩袈裟固](3:04)△イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)

素根が左、キンゼルスカは両組み。キンゼルスカはケンカ四つの形を作るべく右組みに構えて試合を進める。素根は組み手争いを最小限に先んじて引き手を確保、35秒に右袖釣込腰を仕掛ける。しかしキンゼルスカの巨体を崩すには至らず、そのまま伏せて「待て」。続く展開では組み手をスイッチしたキンゼルスカが左で奥を叩くが、素根それをすぐに切り離して再び一方的に引き手を得る。するとキンゼルスカ、袖を絞られたまま振り上げて左大外刈。一瞬足が深く掛かり掛けて危うい形と思われたが素根は冷静、組み合ったままこれを外す。いったん展開が切れた後の1分56秒、今度は素根が左大内刈。刈り足を引っ掛けて追い、バランスを崩したキンゼルスカは大きく崩れて腹這いで畳に落ちる。これを受けた1分58秒、キンゼルスカに消極的姿勢の「指導」。続く展開でもキンゼルスカは左で奥を叩くが、素根はまたもや落ち着いてこれを切り離し、引き手で袖を確保。2分23秒には左背負投に潜り込んで再び伏せさせる。直後の2分49秒、素根はこれまでと同様の流れで袖と前襟を得た万全の形を作り、左大内刈。刈り足の甲を引っ掛けて刈り倒し「技有」奪取。そのまま崩袈裟固で抑え込み3分4秒、合技「一本」に至る。かつて苦手としていた超大型選手キンゼルスカを全く相手にせず。素根、完璧な内容で決勝進出。

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勝利を決めた素根の目に涙。

【決勝】

素根輝○GS反則[指導3](GS4:52)△イダリス・オルティス(キューバ)

素根が左、オルティスが右組みのケンカ四つ。左一本背負投を狙いたいオルティスとそれを防ぎたい素根の思惑がかち合い、双方釣り手を上から持たんと激しい組み手争いとなる。1分過ぎからはオルティスが背中を抱く形に組み手を変更。しかし素根は内から持っても肘を相手の腕に乗せ、圧を掛けて技を封じ続ける。以降も状況に応じて形を変えながらの組み手の攻防が続き、あっという間に4分が経過。双方が一瞬形ができた僅かなチャンスに技を繰り出すも散発、決定打はなく、ポイントがないまま勝負はGS延長戦へ。

延長戦に入っても構図は変わらず、激しい組み手の攻防が続く。GS1分7秒、両者に消極的姿勢の「指導」が与えられる。ここからオルティスは背中を抱いて、釣り手で素根の釣り手を絞ってとあらゆる手立てで展開を取りに掛かる。しかし素根は釣り手の肘の操作で間合いをコントロールし、常に優位。左小内刈からの左背負投で伏せさせたGS2分53秒、オルティスのみに消極的姿勢の「指導2」が追加される。以降も組み手の攻防は常に素根が優位。オルティスは強引な掛け潰れで辛うじて「指導」失陥を先送りし続けるが、GS4分52秒、素根が釣り手を上から得て左体落を狙うとオルティス自ら崩れ落ち膝を着く。ここでオルティスに偽装攻撃の「指導3」が与えられ、素根の優勝が決まった。勝利の瞬間、素根は両手で顔を覆って感涙。敗れたオルティスは素根を抱き寄せ勝利を称える。素根、見事な戦いで念願の五輪金メダル獲得なる。

※ eJudoメルマガ版8月27日掲載記事より転載・編集しています。

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