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【プレビュー】最重量級に魅力的な人材集う、橋口茉央の春夏制覇なるか/第70回インターハイ柔道競技女子個人戦7階級ひとこと展望

(2021年8月6日)

※ eJudoメルマガ版8月6日掲載記事より転載・編集しています。
最重量級に魅力的な人材集う、橋口茉央の春夏制覇なるか/第70回インターハイ柔道競技女子個人戦7階級ひとこと展望
→第70回インターハイ柔道競技全カテゴリ組み合わせ(公式サイト)

■ 48kg級 池田湖音と近藤美月がトーナメント引っ張る
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全国高校選手権を制した池田湖音

3月の全国高校選手権を制した池田湖音(埼玉栄高)と、準優勝の近藤美月(佐賀商高)、ともに2年生の2人がトーナメントを引っ張る。池田はしぶとい柔道と担ぎ技が売り。近藤は決勝の勝敗こそ池田に譲ったが、豪快な左内股を軸に柔道の質の良さでは階級ナンバーワンと言っていい魅力的な選手。

有力選手としては同3位入賞の西ノ内智優(富士学苑高)と原田瑞希(柳ヶ浦高)のほか、この大会では棄権負け扱いで畳に立つことが出来なかった宮木果乃(修徳高)を挙げておきたい。

■ 52kg級 世代きっての大物、ついに高校全国デビューの横田ひかりに注目
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世代きっての大物・横田ひかり。

2019年全国中学校柔道大会をオール一本勝ちで駆け抜けた世代きっての大物・横田ひかり(佐久長聖高)が優勝候補の筆頭と読む。165センチの長身と、細身に似合わぬ芯のある体の強さが売り。得意技の大内刈の威力は特筆ものだ。コロナ禍、転校などあって高校カテゴリの全国大会はこれが初めて。どんな柔道を見せてくれるか、試合自体が非常に楽しみ。

対抗勢力は全国高校選手権のファイナリスト新井心彩(埼玉栄高)と塩原未々(松商学園高)。新井はパワフルな腰技が持ち味。小外刈、出足払と左の足技にも切れがある。塩原は足技と担ぎ技で戦うトータルファイター。新井は2019年全国中学大会決勝、塩原は今年の県予選決勝といずれも横田に敗れているが、どんな策を持ち込むか。

■ 57kg級 江口凜の「勝ち抜け」なるか、追うのは井田侑希、姥琳子
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江口凜が優勝候補筆頭

この世代のトップを走り続けている世界カデ王者・江口凜(桐蔭学園高)が優勝候補の筆頭。最後は寝技、それも「腹包み」ベースだとすべての選手に警戒されながら、それでも勝ち切ってしまう試合力の高さが売り。全国高校選手権の決勝も井田侑希(児玉高)に「技有」をリードされながら、片手絞「一本」で逆転勝利を決めている。この江口がターゲットとして狙われながら、それでもやはり勝ち切るかどうかが今大会のみどころ。

追うのは前述の井田侑希。体幹が強く、安定した進退から内股、担ぎ技と威力ある技を打ち込んでくるタフな選手だ。ほか、高校選手権では早い段階で江口に敗れているが、2019年の全国中学校大会の覇者・姥琳子(修猷館高)も注目に値する。

組み合わせは江口と姥が上側の山。姥は初戦に小幡心里(出雲西高)という高いハードルがあるが、ここを乗り越えて準決勝で江口へのリベンジを狙う。下側の山では井田が準々決勝で奥井花奈(大成高)とマッチアップ予定で、これがひとつの山場だ。高い確率で決勝は江口―井田の再戦になると読んでおく。

■ 63kg級 矢澤愛理と鹿歩夏がトーナメント牽引
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高校選手権2位の鹿歩夏。今大会は矢澤愛理と2強を張る。

2019年世界カデ選手権2位、今年3月の全国高校選手権3位の矢澤愛理(松商学園高)と、同2位の鹿歩夏(佐賀商高)がトーナメントを引っ張る。ともに高校選手権では石岡来望(創志学園高)の早い攻めに後塵を拝したが、柔道の質が良い。矢澤は早くからこの世代の一線で戦って来ており、進退自体が骨太。鹿は佐賀商の選手らしく、思い切りの良い投げが売りだ。

割って入りそうな選手は2019年全国中学大会2位で団体・個人とも良い柔道を見せてくれた荒川清楓(創志学園高)。得意技は内股と払腰。ほか、体の強さを生かし、独特の間合いの小内巻込を放つ田中輝乃(岩倉高)も面白い。矢澤には田中、鹿には荒川と超えるべきハードルがしっかり設定されている格好だが、順当に試合が進めば決勝カードは矢澤―鹿と読む。

■ 70kg級 柔道の質は大森恵花、勝負力は石岡来望
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無差別でべスト8入賞、急成長の大森恵花。

全国高校選手権無差別でベスト8に入っている大森恵花(渋谷教育学園渋谷高)を推す。長身を生かして二本しっかり持ち、崩し、削り、最後は投げに出るオーソドックスな柔道をベースラインに、勝負どころを譲らぬ思い切りの良さも兼ね備える。柔道自体の質が高い。

柔道の良さ、というところでは、辻ななる(津幡高)と森静玖(佐賀商高)の名も挙げておきたい。辻は体幹の強さを生かして豪快な技を連発、2019年の全国中学大会を獲った強者。63kg級で出場した全国高校選手権は矢澤愛理に一本負けを喫したが、本来の階級で頂点を目指す。森はまだ1年生、コロナ禍もあって中学時代個人で頂点に立つことこそ出来なかったが、ビッグゲームで度々印象的な活躍を見せて来た好選手。動いて、崩して、投げてとこちらも筋目の良い柔道をする。投げの威力で鳴る佐賀商で鍛えられ、一気に伸びている可能性がある。目を離すわけにはいかない選手。

石岡来望(創志学園高)は勝負へのこだわりの強さで勝ち抜くタイプ。63kg級で出場した全国高校選手権では序盤から良い投げを連発。準決勝では過去敗れた矢澤愛理を袖釣込腰で投げ、決勝も投げが売りの鹿歩夏を先手攻撃で凌ぎ切って優勝に辿り着いている。

組み合わせはかなり偏りがあり、上記選手では森のみが上側ブロック。大森、辻、石岡はすべて下側ブロックに集められた。下側の山では大森と石岡が準々決勝でぶつかる予定で、これがかなりの大一番。逆側は辻が3回戦を澤崎凜(大成高)と争い、準決勝で大森-石岡の勝者を待ち受ける格好だ。

■ 78kg級 事前予測難しい戦国階級、稲葉千皓と杉村美寿希がブロックの軸
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無差別3位入賞の稲葉千皓。

混戦階級。試合自体が少ない今季にあってもっとも事前予測が難しい階級。露出していない期間の稽古次第でまったく様相が変わる階級だ。

トーナメントを見つめる上で軸となるのは稲葉千皓(国士舘高)と杉村美寿希(比叡山高)。稲葉は全国高校選手権無差別で3位入賞。巧みな組み手と、突如ギアを上げて放つ払巻込の威力で勝ち上がる好選手。杉村は2019年のインターハイで1年生にしてベスト4入りを果たした強者で、大技はもちろん足技も巧み。全国高校選手権では稲葉のモードチェンジについていけず少々意外な敗戦、5位に終わっているが今大会で雪辱を期す。

ほか、浮田笑子(大成高)、三浦心暖(埼玉栄高)らの名が挙がる。身長173センチの長身選手、強豪集まる佐久長聖高でレギュラーを務めるオトゴンバヤルクスレンにも注目。ただし冒頭語った通り、この階級は大混戦。最終勝者は読みがたい。

■ 78kg超級 才能集った今大会の目玉階級 注目は橋口茉央、そして椋木美希と新井万央
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オール投技「一本」で高校選手権を制した橋口茉央

最重量級は近年にないほどタレントが揃った。それも典型的女子重量選手ではなく、新たな世代を切り開く、運動能力高く取り味のある選手がズラリ。

まず全国高校選手権無差別を全試合一本勝ち、それもすべて投技「一本」で決める圧勝で制した橋口茉央(佐賀商高)。しっかり二本持ち、足技で崩し、バネのある技で次々「一本」を決める様は、敢えて言えば男子重量級本格派選手のそれ。同じ「一本」でもまったく質が違う。体の芯が強いのか、立ち姿の良さと残身の安定感は特筆もの。体格に振り回されて足腰が崩れやすい女子重量級の文脈から一人離れた、少々異なる進化ルートを辿っていると感じさせられる。敢えて過去の女子選手で例えるとすれば杉本美香の系譜。日本の女子重量級に新たな時代が来たのではと感じさせる、「投げ」それ自体が看板になる大物である。試合後のコメントもポジティブ、スター性もありそうだ。

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高校選手権2位の椋木美希

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新井万央が久々全国大会の畳を踏む。

良い選手が一世代に集まるということか、高校選手権で橋口と決勝を争った椋木美希(創志学園高)もこの大会で非常に目立っていた。橋口の対抗馬一番手として挙げるに足る実力の持ち主。力があり、技が切れるという柔道自体の基本スペックが高い選手。

そして世代きっての大物・新井万央(埼玉栄高)がチームを変えてここに参戦。身長171センチ、体重85キロと均整の取れた体から内股、小外掛と威力ある技を繰り出す。こちらも橋口とは違う方向で、女子重量級旧来の類型からはみ出たアスリートタイプの大物だ。

この3名の魅力的な選手が今大会の主役。ここに、全国中学校大会2連覇者の大高ひかり(帝京高)が絡むというのが大枠の様相だ。

そして組み合わせ。上から順に新井、椋木、大高、橋口とここで挙げた全員が上側ブロックに入った。下側の山は2019年全国中学校柔道大会で70kg級決勝を争った朝原寿天良(中京高)と吉井なつみ(佐久長聖高)がいるが、全体から見ると空白地帯。とにかく上側ブロックが過酷だ。

準々決勝で新井と椋木、そして大高と橋口の激突が見られる。橋口は初戦に大型のエンフバヤルエンフズル(開志国際高)との対戦が組まれており、ここをどんな形で勝ち上がるかにまず注目したい。

※ eJudoメルマガ版8月6日掲載記事より転載・編集しています。

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