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【直前プレビュー】V候補濵田最初の山場はクカ戦、ヴァグナーとマロンガには「ワンチャンス」よりも「徹底」がカギ/東京オリンピック柔道競技女子78kg級

(2021年7月28日)

※ eJudoメルマガ版7月26日掲載記事より転載・編集しています。
V候補濵田最初の山場はクカ戦、ヴァグナーとマロンガには「ワンチャンス」よりも「徹底」がカギ/
東京オリンピック柔道競技女子78kg級直前展望
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濵田尚里は優勝候補の筆頭格。

(エントリー24名)

エントリーは24名。「概況解説・シード予想」で示した予想からの、シード選手配置の変更はなし。ノーシードの伏兵候補は抽選の結果ベルナデット・グラフ(オーストリア)がプールAのマドレーヌ・マロンガ(フランス)の直下、ベアタ・パクトがプールCの濵田尚里(自衛隊体育学校)の直下にそれぞれ配された。第1、第2シードが割りを食った格好だ。実力的にはそれほど脅威ではないパクトはともかく、グラフは正真正銘の強豪。あくまでマロンガの勝利と予想するが、覆いかぶさるスタイルのマロンガに対して潜って抱えるスタイルのグラフと相性は噛み合っており、もつれ際や出会い頭の一発による事故が起きてもおかしくない。この試合が序盤戦最注目のカードである。なお、それ以外の組み合わせに関しては上位選手はほぼシードに入っているため「概況解説・シード予想」の予想が大きく変わる点はない。決勝はまず間違いなくマロンガvs濵田になるはず。立技vs寝技、ライバル関係の総決算に注目だ。

有力選手の配置、各プールの勝ち上がり展望は下記。各選手の特徴については「選手名鑑」を、組み合わせは公式サイトで山組を確認のこと。

■ プールA
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ドレーヌ・マロンガ

第1シード:マドレーヌ・マロンガ(フランス)
第8シード:カリエマ・アントマルチ(キューバ)
有力選手:マー・ジェンジャオ(中国)ベルナデット・グラフ(オーストリア)カルラ・プロダン(クロアチア)

マロンガの山。実力ではマロンガが突出しており、この選手が最低限のコンディションと集中力を発揮すれば勝ち上がり自体はそれほど難しくない。準々決勝の相手は余程のことがない限りカリエマ・アントマルチ(キューバ)になると思われるが、ここも特に問題なく突破できるはずだ。本文でも触れたとおり最大の山場は初戦(2回戦)のグラフ戦。ファンとしてはこのプールの戦いぶりからマロンガの調子を測りたいところ。

■ プールB
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フッシェ・ステインハウス

第4シード:フッシェ・ステインハウス(オランダ)
第5シード:ナタリー・パウエル(イギリス)
有力選手:アナスタシア・タルチン(ウクライナ)ネフェリ・パパダキス(アメリカ)ユン・ヒュンジ(韓国)

フッシェ・ステインハウス(オランダ)とナタリー・パウエル(イギリス)、階級を代表する正統派のパワーファイター2名がシードを張る山。シード外の選手の顔ぶれを見る限り、この2名がそのまま準々決勝に勝ち上がる可能性が高い。両者の対戦成績はステインハウスが9勝3敗で現在3連勝中。両者の最近の戦いぶりから考えてもここは順当にステインハウスが勝ち上がるはずだ。

■ プールC
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プールファイナルのロリアナ・クカは難関

第2シード:濵田尚里(自衛隊体育学校)
第7シード:ロリアナ・クカ(コソボ)
有力選手:ベアタ・パクト(ポーランド)アレクサンドラ・バビンツェワ(ロシア)

濵田の勝ち上がりが濃厚。初戦(2回戦)の相手は前述のとおりパクト。ただしこの選手とは4月のグランドスラム・アンタルヤで対戦しており、圧殺からの寝技で圧倒している。相手に特筆すべき投技がないことからもそれ程苦戦することはないだろう。怖いのは準々決勝で対戦するロリアナ・クカ(コソボ)だ。この選手は組み力があり、投技も腰技に足技と威力のあるものが揃っている。1月のワールドマスターズ・ドーハで対戦した際にも先に「指導2」を先行されてからのGS延長戦での腕緘「一本」と辛勝だった。コソボの女子チームがここまで金メダル2個と好調なことからもハイコンディションで現れる可能性が高く、濵田としては立ち技にこだわらず寝勝負を徹底したいところ。強敵である。

■ プールD
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アナ=マリア・ヴァグナー

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マイラ・アギアール

第3シード:アナ=マリア・ヴァグナー(ドイツ)
第6シード:マイラ・アギアール(ブラジル)
有力選手:カレン・レオン(ベネズエラ)パトリシア・サンパイオ(ポルトガル)インバル・ラニル(イスラエル)

シード選手のアナ=マリア・ヴァグナー(ドイツ)とマイラ・アギアール(ブラジル)の勝ち上がりが濃厚。両者の対戦成績は1勝1敗。ただし最後に対戦したのはヴァグナー覚醒前の2019年であり、あまり参考にならない。組み手はケンカ四つ。パワーよりも技術が生きやすいはずで、相性的には本来アギアール有利だが、6月のブダペスト世界選手権でヴァグナーが見せた凄まじい馬力を考えれば勝利するのはこちらと読む。仮にアギアールが好調で足技を中心に組み立てた場合には勝敗が揺れる可能性もあるが、両者このところの戦いぶりを引き比べて考えれば、その可能性はあまり高くないだろう。

■ 準決勝―決勝
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2019年東京世界選手権決勝、マロンガと濵田の激戦。

濵田の準決勝はヴァグナー、決勝はマロンガと考えてほぼ間違いない。つまりクカ、ヴァグナー、マロンガと、もっとも強い3名全員を立て続けに倒さねばならないということになる。上位対戦の構図は「概況解説・シード予想」で書かせて頂いた通り寝技の濵田、立ち技のヴァグナーとマロンガというもの。

ヴァグナーの馬力と勢いは厄介だが柔道自体はプリミティブ。精度の粗さを規格外の体の長さでカバー、例えば「(引っ張って)固定して剛体を作る」「引っ張って回旋を呉れる」「相手が後退する距離以上に押し込む」などの大きな基本を忠実に、これを技術力ではなく体の「長さ」を使って目いっぱい表現していくという格好で勝っている。想像以上に遠くからケンケンが始まる、想像以上に袖が引っ張られる、予想を超えた距離を押し込まれる、これを思い切りよく徹底する。こういう柔道は、1つ決めどころを外せばがっくり決定率が落ちるはず。受けに関しては勘どころを1つ確実に外すこと、そして何より、立ち技の時間を減らして早々に寝技にエントリーして勝負を決めてしまうこと。これが肝要だと思われる。

決勝のマロンガは、投げだけでなく寝技もよく鍛えられている選手。獲り切るのは容易ではない。濵田としてはこの試合もまず立ち勝負ではなく寝勝負の時間の率を上げること。寝技が長くなればなるほど実力差は出やすくなり、そして寝技を嫌えば嫌うほど投技は硬直化し、半端な技が多くなり、結果的に寝勝負のエントリーは優位な形となる。序盤に寝勝負の展開を2度、3度と続けること。もちろんここで獲ってしまうのが一番いいわけだが、獲れずともしぶとくこれを続けること。ワンチャンスを確実に決めることよりも、まず寝勝負自体を「増やす」。これが勝利のシナリオと読む。

※ eJudoメルマガ版7月26日掲載記事より転載・編集しています。

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