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【直前プレビュー】新井千鶴の大願成就なるか、ジョーカー・タイマゾワはプールCでピノと同居/東京オリンピック柔道競技女子70kg級直前展望

(2021年7月27日)

※ eJudoメルマガ版7月26日掲載記事より転載・編集しています。
新井千鶴の大願成就なるか、ジョーカー・タイマゾワはプールCでピノと同居
東京オリンピック柔道競技女子70kg級直前展望
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5年にわたる新井千鶴の苦闘の、今日が集大成になるはずだ。

(エントリー28名)

エントリーは28名。「概況解説・シード予想」で示した予想からの、シード選手配置の変更はなし。新井千鶴(三井住友海上)の対抗馬で唯一シードから漏れていたマディーナ・タイマゾワ(ロシア)はプールC、マルゴ・ピノ(フランス)と同じ山に配された。新井はこの両者の勝ち上がった方と準決勝を争うことになる。それ以外の強豪は概ねバランスよくトーナメントの全体に散らばっており、前述のプールCがやや重たいくらいで勝ち上がりの難度はどこもそれ程変わらない。優勝争いも「概況解説・シード予想」で示したとおり新井が一段抜けた優勝候補。今大会数少ない「自分の柔道を出し切りさえすれば勝てる」選手であり、成否を分けるのはあくまで内面の要素だ。

有力選手の配置、各プールの勝ち上がり展望は下記。各選手の特徴については「選手名鑑」を、組み合わせは公式サイトで山組を確認のこと。

■ プールA
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サンネ・ファンダイク

第1シード:サンネ・ファンダイク(オランダ)
第8シード:アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)
有力選手:グルノザ・マトニヤゾワ(ウズベキスタン)、アリーチェ・ベッランディ(イタリア)、アッスマ・ニアン(モロッコ)

サンネ・ファンダイク(オランダ)の勝ち上がりが濃厚。初戦(2回戦)の相手に同じく腰技系の強者のグルノザ・マトニヤゾワ(ウズベキスタン)が置かれており、ここが最初の山場だ。ここを勝ち上がると恐らく準々決勝はアンア・ベルンホルム(スウェーデン)と対戦することになる。いずれも実力者ながらファンダイクが実力で明らかに頭一つ抜けており、かつこの選手は6月のブダペスト世界選手権で3位を獲得するなど最近非常に充実している。豪快な「一本」連発で勝ち上がる可能性が高いだろう。まるでこれから人を「仕留めに」行くような、その気合の入った表情に注目だ。

■ プールB
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6月のブダペスト世界選手権で驚きのVを飾ったバルバラ・マティッチ。今回も組み合わせに恵まれた。

第4シード:バルバラ・マティッチ(クロアチア)
第5シード:ミヘイラ・ポレレス(オーストリア)
有力選手:バルバラ・ティモ(ポルトガル)メガン・フレッチャー(アイルランド)キム・ソンヨン(韓国)

優勝候補不在の山。Aシード配置の現役世界王者・バルバラ・マティッチ(クロアチア)の力がやや抜けている。同じくシード枠で過去3勝3敗と対戦成績の競っているミヘイラ・ポレレス(オーストリア)が少々厄介だが、世界王者になった勢いも含めればかなりの確率でマティッチが勝ち上がるはず。あの勝利がフロックではなかったと証明するためにも、是非ベスト4に進出してファンダイクに挑みたいところ。

■ プールC
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マルゴ・ピノ

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マディーナ・タイマゾワ

第2シード:マルゴ・ピノ(フランス)
第7シード:マリア・ポルテラ(ブラジル)
有力選手:エリザヴェト・テルツィドゥ(ギリシャ)、マリア・ベルナベウ(スペイン)マディーナ・タイマゾワ(ロシア)

ピノとタイマゾワが同居する本トーナメント最大の激戦区。組み合わせはピノの側がほぼ無風でベスト8までの勝ち上がりが確定的なのに対し、タイマゾワの側は1回戦でマリア・ベルナベウ(スペイン)、2回戦でマリア・ポルテラ(ブラジル)と階級を代表する強豪2名を退けねばならない厳しい配置となっている。勝ち上がり候補はあくまでもタイマゾワだが、ピノと対戦するのは休憩を挟む前の準々決勝。いかにこの前2試合を消耗なく切り抜けられるかが勝敗を分ける鍵だ。両者は今回が初対戦。純粋な柔道の強さではピノが上と思われるが、ここは最近の好調と勢いを勝ってタイマゾワの勝利と予想したい。

■ プールD
第3シード:新井千鶴(三井住友海上)
第6シード:ジョヴァンナ・スコッチマッロ(ドイツ)
有力選手:マリア・ペレス(プエルトリコ)ジェンマ・ハウエル(イギリス)エルビスマル・ロドリゲス(ベネズエラ)イーファ・コーグラン(オーストラリア)

新井の山。勝ち上がり自体はまず間違いないと思うが、組み合わせはなかなか厳しく、初戦(2回戦)で2017年ブダペスト世界選手権で決勝を争ったマリア・ペレス(プエルトリコ)、準々決勝でジョヴァンナ・スコッチマッロ(ドイツ)とエルビスマル・ロドリゲス(ベネズエラ)の勝者との対戦が濃厚。対戦成績はペレスに5勝0敗、スコッチマッロとロドリゲスにともに3勝0敗と新井は一方的に勝ち越している。いずれも強者ではあるが実力差は大きいはずで、考え過ぎての自家中毒さえ起こさなければ問題なく勝利できるはず。思い切りの良い柔道で「一本」を重ねて勝ち上がりたい。

■ 準決勝〜決勝
ベスト4のカードはファンダイクvsマティッチ、タイマゾワvs新井。ファンダイクはマティッチに過去3勝1敗、現在は2連勝と勝ち越しており、最近の戦いぶりからも決勝にはファンダイクが勝ち上がってくると思われる。一方新井とタイマゾワは1勝1敗。「概況解説・シード予想」でも触れたとおり今年5月のグランドスラム・カザンではタイマゾワが勝利している。ただし、この試合は新井が自身のレベルが上がった組み手技術と技のミスマッチに陥っていた隙を突いてタイマゾワが勝利したという体のもので、実力自体は新井が何枚も上手だ。この「ミスマッチ」についてもかなり調整が進んでいるはずで、同じ試合展開にはならないはず。よって決勝のカードはファンダイクvs新井になると思われる。こちらも過去に敗れている相手だが、それも当時の組み手の拙さが引き起こした事故。現在はこの点が大きく改善されており、純粋な力比べならば遅れを取ることはないはずだ。自身の課題と向き合い進化を続けた新井の、その成果を存分に発揮しての戴冠に期待したい。リオ五輪を逃し、世界選手権を2連覇し、悩み、苦しみ続けた新井の道行きが、いよいよきょう、終わる。悔いのない戦いを。そして大願成就を心から願う。

※ eJudoメルマガ版7月26日掲載記事より転載・編集しています。

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