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【直前プレビュー】阿部詩は準決勝でケルメンディ、決勝でブシャーと対戦濃厚。カギは「勝負する時間帯」の見極め/東京オリンピック柔道競技女子52kg級直前展望

(2021年7月24日)

※ eJudoメルマガ版7月24日掲載記事より転載・編集しています。
阿部詩は準決勝でケルメンディ、決勝でブシャーと対戦濃厚。カギは「勝負する時間帯」の見極め
東京オリンピック柔道競技女子52kg級直前プレビュー
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V候補筆頭は阿部詩

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もっとも警戒すべきはアモンディーヌ・ブシャー。

(エントリー29名)

エントリーは29名。「概況解説・シード予想」で示した予想からの、シード選手配置の変更はなし。そもそもこの階級はメダル候補が全員シード枠に入っているため、ドローの結果でトーナメントの様相が大きく変わるということもない。爆発力があってファイトスタイル的に少々怖い存在のアンドレア・キトゥ(ルーマニア)の配置が唯一の注目ポイントだったが、この選手はプールDのオデット・ジュッフリダ(イタリア)直下の位置に置かれた。

優勝候補の阿部詩(日本体育大3年)の初戦(2回戦)の相手は、ドローの結果ラリッサ・ピメンタ(ブラジル)とアガタ・ペレンク(ポーランド)の勝者に決まった。いずれも好選手ながら阿部との間には大きな実力差があり、加えて序列をひっくり返すような爆発力のある柔道スタイルでもない。この試合でしっかり調子の確認を済ませ、出来れば気持ち良く「一本」で勝ち、以降の戦いに弾みをつけたい。ベスト8以降は「「概況解説・シード予想」で予想したとおり、準々決勝でチェルシー・ジャイルス(イギリス)、準決勝でオデット・ジュッフリダ(イタリア)、決勝でアモンディーヌ・ブシャー(フランス)とマイリンダ・ケルメンディ(コソボ)の勝者と戦うことになるはず。いずれも常のワールドツアーならば決勝で組まれるレベルのカードであり、熱戦必至だ。しかし阿部にはそのなかでも優勝できるだけの心身の強さが間違いなく、ある。阿部らしい豪快な「一本」連発による金メダル獲得に期待したい。

有力選手の配置、各プールのひとこと展望は下記。有力選手の特徴については「選手名鑑」を、組み合わせは公式サイトで山組を確認のこと。

■ プールA
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ひさびさ登場のナタリア・クズティナ

第1シード:アモンディーヌ・ブシャー(フランス)
第8シード:ナタリア・クズティナ(ロシア)
有力選手:パク・ダソル(韓国)

シード選手2名の勝ち上がりが濃厚。ナタリア・クズティナ(ロシア)の山には大枠では同系統の担ぎ技系粘戦タイプのパク・ダソル(韓国)が置かれており、2回戦で対戦することになる。この試合でクズティナの調子を見極めたいところ。準々決勝のブシャーvsクズティナについては「概況解説・シード予想」に詳しいのでそちらを確認いただきたい。

■ プールB
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マイリンダ・ケルメンディ

第4シード:マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)
第5シード:アナ・ペレス=ボックス(スペイン)
有力選手:プップ ・レカ(ハンガリー)ジョアナ・ラモス(ポルトガル)アンジェリカ・デルガド(アメリカ)ファビアン・コッヘル(スイス)ディヨラ・ケルディヨロワ(ウズベキスタン)ラグワスレン・ソソルバラム(モンゴル)

詰め込まれた選手が全員有力選手の、この階級における最激戦区。ただしAシード配置のケルメンディの実力が抜けていること、ほかに表彰台に絶対絡むというレベルの選手がいないことから、たとえば「死のブロック」とまで呼ぶには至らない印象だ。ケルメンディは1回戦でプップ・レカ(ハンガリー)、2回戦で恐らくジョアナ・ラモス(ポルトガル)と対戦することになるが、いずれも力の差があり、平均点の戦いで十分に勝利可能。続く準々決勝も含めてこのプール戦をどれだけ「強さ」を感じさせる内容で勝ち上がるかで、この選手の仕上がり具合を測りたい。

一方、下側の山はシード選手のアナ・ペレス=ボックス(スペイン)を筆頭に、全員が6月のブダペスト世界選手権の入賞者(7位以内)。その際の結果ではペレス=ボックスが銀メダルともっとも良い成績を収めているが、力に大きな差はないと見る。誰が勝ってもおかしくない混戦。いずれの場合も次戦のケルメンディに勝利することは難しいと思われるが、果たして誰が決勝ラウンドに駒を進めるのか、注目だ。

■ プールC
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気になるチェルシー・ジャイルス

第2シード:阿部詩(日本体育大3年)
第7シード:チェルシー・ジャイルス(イギリス)
有力選手:ラリッサ・ピメンタ(ブラジル)アガタ・ペレンク(ポーランド)、カチャコーン・ワラシハ(タイ)

シード選手2名の勝ち上がりがほぼ確実。阿部の山については本文のとおり。ジャイルスの側も力があるのは2回戦で対戦するだろうカチャコーン・ワラシハ(タイ)のみ、かつこの選手もあくまでアジア地域における強豪という位置づけ。ジャイルスとの間には相当な実力差があると思われ、アップセットの可能性は僅かだ。阿部とジャイルスの準々決勝については、「概況解説・シード予想」に詳しいのでそちらを確認いただきたい。

■ プールD
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勝負師オデット・ジュッフリダ。ビッグゲームでは特に面倒な相手。

第3シード:オデット・ジュッフリダ(イタリア)
第6シード:シャーリン・ファンスニック(ベルギー)
有力選手:アンドレア・キトゥ(ルーマニア)エカテリーナ・グイカ(カナダ)、グルバダム・ババムラトワ(トルクメニスタン)、ギリ・コーヘン(イスラエル)

勝ち上がり候補はあくまでジュッフリダながら、本文のとおり直下にキトゥが配されており、この選手との2回戦が最初の山場。キトゥは安定感こそないものの、昨年11月の欧州選手権では2位を獲得するなど調子次第では十分にメダルに絡む力を持っている。現時点での力関係や、ジュッフリダがそもそもパワー系全盛であったロンドン−リオ期に粘戦で序列を上げた来歴を考えれば、勝者はジュッフリダ。ただし強者に「梯子を掛けられる」バク自発力のあるタイプのキトゥが勝ち上がるシナリオも十分に考えられる。なお、両者はこれまでに13回も戦っており、戦績はジュッフリダの8勝5敗。現在はジュッフリダが5連勝中である。

一方下側の山は混戦。シャーリン・ファンスニック(ベルギー)がやや抜けているものの、6月のブダペスト世界選手権では良いところないまま初戦で「指導3」の反則で敗れている。大会間隔の短さを考えると復調しているかどうかは読み難く、ほかの3名にも十分にチャンスがあるはずだ。なお、2回戦は恐らくファンスニックvsコーヘンとなるが、両者これまでの戦績はファンスニックの4勝2敗。コーヘンはスタミナを生かしてガツガツと攻めるド根性ファイターであり、仮に勝利したとしてもここで体力を消耗する可能性が高い。このことやそもそもの実力差を考えれば、誰が勝ち上がったとしても上側から上がってくるジュッフリダ、あるいはキトゥに勝利するのは厳しいだろう。

■ 準決勝~決勝
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阿部とブシャーの決勝対決が濃厚。

阿部とケルメンディの準決勝、阿部とブシャーの決勝の見立てについては「概況解説・シード予想」で書き込んだのでそちらを参照頂きたい。いかに衰えたりとはいえケルメンディのパワーは脅威、阿部はまず足技で削り、消耗させ切った上で仕留めに掛かりたい。決勝、「潜り技」が得意なブシャーとは長い時間戦うこと自体が術中。難解な組み手に丁寧に対応し過ぎず、早い時間に勝負を決めてしまいたい。

※ eJudoメルマガ版7月24日掲載記事より転載・編集しています。

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