PAGE TOP ↑
eJudo

【直前プレビュー】「死のブロック」はプールA、準々決勝から強豪と3連戦の阿部一二三は戦略性の高さみせつける予感あり/東京オリンピック柔道競技男子66kg級

(2021年7月24日)

※ eJudoメルマガ版7月24日掲載記事より転載・編集しています。
「死のブロック」はプールA、準々決勝から強豪と3連戦の阿部一二三は戦略性の高さみせつける予感あり
東京オリンピック柔道競技男子66kg級直前プレビュー
eJudo Photo
V候補は阿部一二三

(エントリー27名)

エントリーは27名。「概況解説・シード予想」で示した予想からの、シード選手配置の変更はなし。第1グループで唯一シードから漏れていたデニス・ヴィエル(モルドバ)はプールAを引き、シード選手のサルドル・ヌリラエフ(ウズベキスタン)と1回戦で対戦する位置に置かれた。この山にはほかにもオルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)、イェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)、ダニエル・カルグニン(ブラジル)、モハメド・アブデルマウグド(エジプト)とノーシードの実力者が大勢詰め込まれており、まさに「死のブロック」となっている。下記各プールの有力選手のリストを見ていただければ、その密度の高さがいかほどかおわかりいただけるはずだ。このメンバーだけで1大会興業が打ててしまえるレベル。

一方、他ブロックはこのプールA過密の恩恵を受ける形となり、いずれもシード選手以外の強豪の姿は薄め。これは阿部一二三(パーク24)の置かれたプールBも変わらず、初戦(2回戦)の相手は恐らく中堅選手のキリアン・ルブルーシュ(フランス)。比較的戦いやすい選手である。ただし、順当であれば以降は「概況解説・シード予想」で書かせて頂いた通り、準々決勝でヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)、準決勝でマヌエル・ロンバルド(イタリア)、決勝でアン・バウル(韓国)という「フルコース」を戦うことになる。こちらの試合の予想は「概況解説・シード予想」に詳しいのでそちらをお読みいただきたいが、余力はいくらあってもあり過ぎということはない。まずは2回戦、ルブルーシュに粘戦を許さず早めに投げて試合を終わらせてしまいたい。

有力選手の配置、各プールのひとこと展望は下記。有力選手の特徴については「選手名鑑」を、組み合わせは公式サイトで山組を確認のこと。

■ プールA
eJudo Photo
マヌエル・ロンバルド

eJudo Photo
ヨーロッパきっての業師デニス・ヴィエル。

eJudo Photo
今期好調、技の切れるサルドル・ヌリラエフ。

第1シード:マヌエル・ロンバルド(イタリア)
第8シード:サルドル・ヌリラエフ(ウズベキスタン)
有力選手:オルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)イェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)デニス・ヴィエル(モルドバ)ダニエル・カルグニン(ブラジル)モハメド・アブデルマウグド(エジプト)

配された選手が全員有力選手の「死のブロック」。特にシード位置のロンバルドとヌリラエフにとってはまことにきつい配置、ロンバルドが初戦(2回戦)でサファロフとセリクジャノフの勝者、そしてヌリラエフは本文で触れたとおりヴィエルと1回戦を戦うことになる。最近の戦いぶりを考えればロンバルドの相手は恐らくサファロフ。これは実は昨年11月の欧州選手権でサファロフが勝利しているカードだ。この日のサファロフがここ数年で一番のハイコンディション(優勝を飾った)であったこと、かつ決着がロンバルドの右袖釣込腰が「立ち姿勢から危険な形で関節を極めた」とみなされてのダイレクト反則という特殊事情はあるものの、両者が試合をしていた3分強、ロンバルドはサファロフに徹底して両手で持たれ続け、全く自分の形を作れなていなかった。今回も恐らくサファロフは近い戦法で挑んでくるはず。これにロンバルドがどのような解を持ち込むのかに注目だ。ここでは敢えて純実力の高低差のみを考え、仮にロンバルドの勝利としておきたい。

ヌリラエフvsヴィエルはともに階級を代表する業師同士の対決。ノーガードでの技の打ち合いになることは間違いない。実力自体はヴィエルの方がまだ上と読むが、最近の調子ではヌリラエフの側に分がある。ここではヌリラエフの勢いを買ってこちらの勝利と予想するが、どちらが勝ってもおかしくない競った関係だ。なお、順当ならばいずれが勝ち上がったとしても、そのまま次戦も勝利してベスト8まで勝ち上がるはず。

よって準々決勝はロンバルドvsヌリラエフ。このカードは初顔合わせだが、技一発で鳴らす本格派の相手はロンバルドの得意とするところ。よほどコンディションに差がない限り、ロンバルドが勝ち上がるはずだ。

■ プールB
eJudo Photo
「削る」ことにかけては階級ナンバーワン、ヨンドンペレンレイ・バスフー。

第4シード:阿部一二三(パーク24)
第5シード:ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)
有力選手:キリアン・ルブルーシュ(フランス)ズミトリー・ミンコウ(ベラルーシ)

シード選手2名の勝ち上がりが濃厚。ヨンドンペレンレイの側には最近好調な両組み担ぎ技ファイターのズミトリー・ミンコウ(ベラルーシ)が置かれているが、この選手もその強さの源泉はパワーにある。力比べの土俵ではヨンドンペレンレイに分があり、今年3月のグランドスラム・トビリシでは得意の消耗戦の末にヨンドンペレンレイが勝利している。今回もヨンドンペレンレイが順当に勝ち上がるはずだ。よって準々決勝のカードは阿部vsヨンドンペレンレイ。詳細は「概況解説・シード予想」をお読みいただきたいが、阿部にとってはここをいかに消耗なく乗り切るかが以降の戦いを左右する重要ポイントだ。

■ プールC
eJudo Photo
アン・バウルの勝ち上がり濃厚。

eJudo Photo
アルベルト・ガイテロ=マルティン

第2シード:アン・バウル(韓国)
第7シード:アルベルト・ガイテロ=マルティン(スペイン)
有力選手:ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)アドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)

シード選手2名の勝ち上がりが濃厚。アンの側には上位選手は配されておらず、ベスト8まではほとんど無風。勝ち上がりはまず確実だろう。一方下側の山のアルベルト・ガイテロ=マルティン(スペイン)は1回戦からゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)、2回戦でアドリアン・ゴンボッチ(ロシア)と有力選手との戦いが続くことになる。特に初戦のザンタライアは強敵。ただしこの選手はコロナ明けに出場した3大会でいずれも序盤での敗退と明らかに調子を落としている。ここはガイテロ=マルティンが勝ち上がると予想して間違いないだろう。よって準々決勝のカードはアンvsガイテロ=マルティン。ともに担ぎ技系ながら選手としての格、実力はアンが数段上手だ。よほど当日のコンディションに差がない限り、アンが勝ち上がることになるだろう。ただしガイテロ=マルティンは体力を生かして粘戦を仕掛ける曲者。阿部と同様、アンにとってもここをどれだけ消耗なく勝ち上がれるかが以降の戦いに向けて極めて重要だ。

■ プールD
eJudo Photo
ヴァジャ・マルグヴェラシヴィリがAシード

eJudo Photo
バルチ・シュマイロフ

第3シード:ヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)
第6シード:バルチ・シュマイロフ(イスラエル)
有力選手:ヤクブ・シャミロフ(ロシア)セバスティアン・ザイドル(ドイツ)

このブロックもプールAの過密を受けて有力選手の数は少なめ。下側の山からはシード選手のバルチ・シュマイロフ(イスラエル)の勝ち上がりが確定的だ。一方上側の山はヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)の直下にヤクブ・シャミロフ(ロシア)が置かれており、両者のぶつかる2回戦が山場。ただしシャミロフの1回戦の相手には好選手のセバスティアン・ザイドル(ドイツ)で、こちらが勝ち上がるシナリオもありうる。実は、相性だけで言えばマルグヴェラシヴィリはシャミロフに4勝0敗、ザイドルに2勝2敗とむしろザイドルの方が苦手。いずれにせよ順当シナリオはマルグヴェラシヴィリのベスト8勝ち上がりで変わらないが、この1回戦は注目である。準々決勝のカードはマルグヴェラシヴィリvsシュマイロフ。パワーファイター同士の対決になる。対戦成績はマルグヴェラシヴィリの2勝1敗。ただし直近の試合である1月のワールドマスターズ・ドーハではシュマイロフが左膝車「一本」で勝利している。とはいえこの試合は「指導2」を奪い合った末のGS延長戦決着。力的には拮抗しており、今回も見応えのある力比べが見られるはずだ。なお、どちらが勝ったとしても準決勝で対戦するアンとは技量に差があるため、何らかの上澄み要素がない限りはアンが決勝まで勝ち上がる可能性大だ。マルグヴェラシヴィリ、あるいはシュマイロフとしては、左相四つという組み手の相性を生かして、技術より力の要素が大きい接近戦に活路を見出したい。

■ 準決勝~決勝
eJudo Photo
準決勝は阿部vsロンバルドと予想。因縁対決だ。

準決勝の阿部vsロンバルド、決勝の阿部vsアン戦に関しては「「概況解説・シード予想」で書き込んだのであらためてそちらを参照頂きたい。前者は相四つで阿部が引き手一本を持つ「片手状態」への互いの思考量の投下の多寡が勝負を分け、後者はケンカ四つで双方が釣り手一本を持つ片手状態からの具体的な手札の多寡とその選択の妥当性がキーポイント。ひとつポジティブな見立てを付け加えるなら、阿部の所属(パーク24)のチームメイトである60kg級の髙藤直寿と48kg級の渡名喜風南がきょう(24日)、戦略・戦術面でほぼパーフェクトな練り上げを見せてくれたこと。阿部もこの面ではかなり期待していいのではないか。健闘を祈る。

※ eJudoメルマガ版7月24日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る