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【直前プレビュー】ビロディドが初戦でブクリ引く試練、渡名喜はパレト戦の「勝ち方」がカギ/東京オリンピック柔道競技女子48kg級

(2021年7月23日)

※ eJudoメルマガ版7月23日掲載記事より転載・編集しています。
ビロディドが初戦でブクリ引く試練、渡名喜はパレト戦の「勝ち方」がカギ
東京オリンピック柔道競技女子48kg級直前プレビュー
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ダリア・ビロディド。厳しい組み合わせを引いた。

(エントリー28名)

エントリーは28名。「概況解説・シード予想」で示した予想からの、シード選手配置の変更はなし。第1グループで唯一シードから漏れていたシリーヌ・ブクリ(フランス)はなんと優勝候補のダリア・ビロディド(ウクライナ)の直下、ビロディドにとっての初戦(2回戦)で対戦する位置に配された。同じプールCには伏兵候補のガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)も詰め込まれており、密度極めて濃い「死のブロック」となっている。

ビロディドは今年2月のグランドスラム・テルアビブの決勝で、ブクリに右足車「一本」で敗れている。ただでさえ戦いたくない相手なのに、それが負ければ即大会終了の初戦。しかもブクリには1回戦があり、その相手も「適度に骨があるがまず敗れることはない」ミリツァ・ニコリッチ(セルビア)とまさに過不足なし。十分に体を温め、調子を上げて挑んでくること確実である。この状況下で本来の実力では勝るビロディドに問われるのは、精神面の強さ。準備も調子も仕上がっており自信満々、あるいはいずれ倒さねばならぬ相手と腹を括って現れるようならば、最低でも優勝候補の名に恥じない戦いを見せてくれるはずだ。戦いの様相についての予想は「概況解説・シード予想」で触れているので省くが、ここはビロディドの勝利と考えておきたい。おそらく48kg級としては最後となる試合。心身ともにそれ相応のハイコンディションに仕上げてきているはずである。

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日本代表は渡名喜風南。

第1グループほかの3名、渡名喜風南(パーク24)、ディストリア・クラスニキ(コソボ)、ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)は、難度に多少の差はあるものの、揃ってベスト4への勝ち上がりが濃厚。順当であればベスト4以降はこの3名とビロディド、あるいはブクリによる文字どおり最高峰のしのぎ合いが見られるはずだ。熱戦間違いなしである。

有力選手の配置、各プールの勝ち上がり展望は下記。選手個々の特徴については公開済みの「選手名鑑」、トーナメントの山組みは公式サイトで確認のこと。

■ プールA
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第1シードのディストリア・クラスニキ

第1シード:ディストリア・クラスニキ(コソボ)
第8シード:イリーナ・ドルゴワ(ロシア)
有力選手:ガブリエラ・チバナ(ブラジル)フランチェスカ・ミラニ(イタリア)

クラスニキの勝ち上がりが濃厚。2回戦にガブリエラ・チバナ(ブラジル)との対戦が組まれているが、両者の実力差を考えれば「秒殺」でクラスニキが勝利してもおかしくない。下側の山では2回戦でイリーナ・ドルゴワ(ロシア)vsフランチェスカ・ミラニ(イタリア)のカードが組まれており、この試合がこのプールの序盤戦における、一応の山場だ。本来の力関係からすればドルゴワが当たり前に勝つはずだが、今年のミラニは試合を見る限りそこまで強くないにも関わらず、何故か結果を残している。爆発力と優れた戦略で鳴らすイタリアの選手でもあり、実力以上に怖い存在だ。対戦成績はドルゴワが4勝0敗。あくまで勝つのはドルゴワと予想するが、ミラニの意外性が発揮されるのかどうかには注目したい。よって準決勝のカードはクラスニキvsドルゴワとなる。両者の対戦成績はクラスニキの2勝0敗。スタッツだけでなく内容も圧倒しており、今回もクラスニキの勝利となるはずだ。

■ プールB
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ムンフバット・ウランツェツェグ

第4シード:ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)
第5シード:フリア・フィゲロア(スペイン)
有力選手:カタリナ・メンツ(ドイツ)グルカデル・センツルク(トルコ)シラ・リショニー(イスラエル)

シード選手2名の勝ち上がりが濃厚。ムンフバットの側はほぼ無風でベスト8への勝ち上がりがまず確実。一方、下側の山のフリア・フィゲロア(スペイン)は2回戦でシラ・リショニー(イスラエル)の挑戦を受けることになる。戦績はフィゲロアの4勝1敗ながら、その1敗は最後の戦いである2019年のグランドスラム・デュッセルドルフだ。とはいえ、フィゲロアが地力を盛って再ブレイクしたのは2019年後半。そもそも相性的に戦いにくい相手ではなく、ここは順当にフィゲロアが勝利すると予想したい。よって準々決勝はムンフバットvsフィゲロア。両者の対戦成績はムンフバットの3勝1敗。しかし最後の対戦は2018年であり、両者がともにサンボ色の強い現在のスタイルとなってからはまだ顔合わせがない。「概況解説・シード予想」でも触れたとおり、同属性の強者による見応えのある変則合戦が見られるはずだ。ここは地力の差からムンフバットの勝利と読む。

■ プールC
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2回戦でシリーヌ・ブクリがビロディドに挑戦。序盤最大の山場。

第2シード:ダリア・ビロディド(ウクライナ)
第7シード:カタリナ・コスタ(ポルトガル)
有力選手:シリーヌ・ブクリ(フランス)ミリツァ・ニコリッチ(セルビア)ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)リ・ヤナン(中国)

ビロディドの山。前述のとおり直下にブクリが配されており、この2人が戦う2回戦が序盤戦最大の注目カードだ。一方下側の山は混戦。カタリナ・コスタ(ポルトガル)の2回戦進出はまず確実だが、相手役を決める下側の1回戦にはガルバドラフvsリ・ヤナン(中国)のカードが組まれた。ガルバドラフは2016年から3年連続で世界3位になっている強豪だが、実はリとは相性が悪く、対戦成績は1勝3敗の負け越し。さらにもっか成績が低迷しており、ここで敗れてもまったくおかしくない。仮に勝利したとすれば復調してきているということであり、その場合にはそのままコスタも食ってベスト8まで勝ち上がる可能性大だ。一方、もしリが勝ち上がった場合には、コスタが順当に勝ち上がるはずである。とはいえ、いずれが勝ち上がったとしても、上の山を勝ち抜いて来たビロディド、あるいはブクリに勝利するのは困難だ。

■ プールD
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パウラ・パレト戦が渡名喜優勝のカギを握る。

第3シード:渡名喜風南(パーク24)
第6シード:パウラ・パレト(アルゼンチン)
有力選手:チェルノビツキ ・エヴァ(ハンガリー)カン・ユジョン(韓国)マルサ・スタンガル(スロベニア)

渡名喜の勝ち上がりが濃厚。ただし、組み合わせは決して楽ではなく、初戦からいきなりチェルノヴィツキ・エヴァ(ハンガリー)、そして準々決勝はパウラ・パレト(アルゼンチン)、カン・ユジョン(韓国)、マルサ・スタンガル(スロベニア)のいずれかと戦うことになる。チェルノヴィツキは過去4勝と得意としているため問題ないが、嫌なのはパレトが準々決勝に勝ち上がってきた場合。パレトは最近調子を落としているが、本来は階級最上位の手数系粘戦ファイター。リオ五輪での異常なハイコンディションからも分かるとおり、非常にピーキングの上手い選手でもある。カン、あるいはスタンガルに勝利して勝ち上がって来るようであれば、最低限戦える状態に仕上げてきている可能性が高い。付き合えばどこまでも粘戦に付き合わされる厄介な相手。次戦以降はライバルたちとの連戦が待ち受ける渡名喜としては、いかにここを消耗なく切り抜けられるかが、メダルの色を左右する重要なポイントになるはずだ。

■ 準決勝~決勝
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この身長差、半端な距離はすべて危険。渡名喜がどう捌き、いかに懐に潜り込むか、その作戦に注目。

渡名喜―ビロディド戦、あるいは渡名喜―クラスニキ戦の「読み」は「概況解説・シード予想」を参照頂きたい。いずれも過去の対戦からお互い相手の作戦は十分読んでいるはず。これを前提に、「どう決めるか」よりもどうそこに至らんとするか、どんな手札を用意しているかがみどころだ。渡名喜、ビロディド戦では懐に入ってからの技ではなく「潜り込むまで」の方法、決勝はクラスニキに引き手を取らせないのではなく「先に与えぬまま攻めるために」どうするか。これがそのまま勝利へのカギである。注目したい

※ eJudoメルマガ版7月23日掲載記事より転載・編集しています。

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