PAGE TOP ↑
eJudo

【レポート】埼玉栄が接戦制して優勝、「勝ちを信じる力」際立つ/第69回関東高等学校柔道大会男子団体戦レポート

(2021年7月10日)

※ eJudoメルマガ版7月10日掲載記事より転載・編集しています。
【レポート】埼玉栄が接戦制して優勝、「勝ちを信じる力」際立つ
第69回関東高等学校柔道大会男子団体戦レポート
eJudo Photo
大会は無観客試合で行われた

日時:2021年6月12日~13日
会場:山梨県小瀬スポーツ公園武道館(甲府市)
※先鋒・次鋒・中堅 は体重73kg以下、副将と大将は無差別
※試合時間は3回戦まで3分、準々決勝から4分

取材・文:eJudo編集部

■ 準決勝まで
eJudo Photo
3回戦、修徳の次鋒石塚隼多が大宮工・長瀬晃生から内股「技有」

参加46校の中から激戦を勝ち抜いてベスト4に駒を進めたのは修徳高(東京)、木更津総合高(千葉)、埼玉栄高(埼玉)、習志野高(千葉)。

東京都予選1位の修徳は、まず2回戦で我孫子二階堂高(千葉)を4-1で下すと3回戦からはベストオーダーに切り替え、以降は無失点。まず大宮工高(埼玉)を全試合一本勝ちの5-0、続く準々決勝は千葉経大附高(千葉)を3-0で下して準決勝に名乗りをあげた。激戦区・千葉で揉まれた千葉経大附に個々の試合では粘られたものの、最終スコアは大差。競技力はもちろんメンタルの強さが際立った。負傷者多いV候補各校にあってこのチームはベスト布陣、軽量級のメンバーの良さもあってかなり充実感漂う勝ち上がり。

eJudo Photo
準々決勝、木更津総合の大将甲木碧が國學院大栃木・藤井達也から払巻込「一本」

木更津総合は間違いなくここまでもっとも目立ったチーム、強豪を次々下してのベスト4入り。まず2回戦で国士舘高(東京)を、先鋒岩川優吾、中堅吉澤勇志郎、大将甲木碧による3点奪取で一蹴。副将戦で小林開道が敵方のエース入来院大樹に「指導3」で敗れたものの、3-1の圧勝でこの難関をクリアする。そして3回戦ではV候補に挙げられていた東海大相模高(神奈川)も撃破。1年生ポイントゲッター木原慧登を負傷で欠く相手に得点を与えず、中堅吉澤が小泉孝介から「技有」優勢で勝利して先制すると、大将戦ではエース甲木が手塚春太朗を「指導3」で下してダメ押し。この試合も2-0と危なげないスコアで勝ち抜けを決めた。続く準々決勝は國學院大栃木高(栃木)を5-0とまったく寄せ付けず、勢いに乗って準決勝進出決定。

eJudo Photo
準々決勝、埼玉栄の大将野村陽光が日体大荏原・日髙輝海から決勝点となる支釣込足「技有」

今期インターハイ本戦の優勝候補筆頭と目される埼玉栄は、全国高等学校柔道選手権66kg級の覇者猪瀬真司を負傷で欠きながら、しかしこの軽量級重視レギュレーションでも奮戦。初戦の東海大浦安高(千葉)戦は先鋒戦で五十嵐雅人が三崎大和に「技有」優勢で屈して先制を許したが、中堅戦から西山一心・新井道大・野村陽光と3つの一本勝ちを並べて3-1の逆転勝ち。3回戦の足立学園高(東京)戦も副将新井が北川拓実に反則負け(DH)を喫するピンチを迎えたものの、大将野村が体格差を生かして鈴鹿睦月から「指導3」で勝利して1-1のタイスコアに持ち込むと、続く代表戦で続けて畳に上がった野村が北川を払腰「一本」で仕留めて勝ち抜け決定。山場の準々決勝、日体大荏原高(東京)戦からは副将に全国高校選手権無差別2位の長濱佑飛を投入。中堅西山が森勇晟に「指導3」で敗れて1点ビハインドとなったが、戦力的に前3人に重心のある日体大荏原相手にこれは想定の範囲内。まず長濱が大吉諒を僅か35秒の背負投「一本」で破ってスコアをタイに持ち込むと、大将野村は日髙輝海を攻め続け、終盤支釣込足で「技有」を得て勝利。後衛の安定感はやはりかなりのもの、2-1でこの試合を勝ち抜けて準決勝へと駒を進めた。

eJudo Photo
3回戦、習志野の大将伊澤直乙が白鴎大足利・岸田耕平の体ををめくり返して崩袈裟固に捉える。

習志野は全体的に軽量ながら良く鍛え抜かれた柔道を展開、歴代の型を引き継いだ好チーム。水戸啓明高(茨城)とマッチアップした初戦は1点ビハインドから中堅後藤颯太、副将小川永富、大将伊澤直乙斗と3つ「一本」を並べて3-1の逆転勝ち。3回戦の白鷗大足利高(栃木)戦は副将戦で相手方のエース齋五澤凌生に合技の「一本」1つを献上したが、中堅後藤と大将伊澤の得点源2人がしっかり一本勝ちして2-1で勝利を果たす。準々決勝も副将戦で常磐高(群馬)のエース小島アントニーに「一本」を奪われたものの、残り4枚がしっかり勝利してスコア4-1の圧勝。気を良くして準決勝の畳へ乗り込むこととなった。

■ 準決勝
eJudo Photo
先鋒戦、岩川優吾が腕を抱えて寝勝負を選択。「加藤返し」で切り返さんとした新村隼也とのせめぎあいとなる。

eJudo Photo
岩川が抑え込み、形を直しながら崩上四方固でフィニッシュ。値千金の「一本」。

木更津総合高(千葉) 2-1 修徳高(東京)
(先)岩川優吾〇崩上四方固(2:02)△新村隼也
(次)大松﨑彪貴×引分×石塚隼多
(中)吉澤勇志郎△反則[指導3](3:05)〇工藤泰輝
(副)小林開道×引分×濱田哲太
(大)甲木碧〇小外刈(1:50)△増山陽太

先鋒戦は岩川優吾、新村隼也ともに左組みの相四つ。両チームともこの先鋒戦はなんとしても先取点を挙げたいところ、序盤から積極的な技の攻防が続く。岩川が低い右袖釣込腰で新村の姿勢を崩すと、そのまま新村の頭上に回り込み、寝技の好機と新村の腕を抱え行く。この動きに対して新村は逆に「加藤返し」で切り返そうと岩川のズボンを掴んで後転を試みるが、岩川はうまく反応し、身を翻して逆に新村の上体に覆い被さって「抑え込み」のコールを受ける。新村必死に抵抗を見せるも、岩川はその動きを利用し、ついには完全な崩上四方固を完成させて「一本」。攻撃的な柔道が身上の新村だが、ここは墓穴を掘ってしまった格好。ここまで斬り込み隊長として常に先取点を挙げてきた新村で失点、修徳にとってはかなり痛い立ち上がり。一方の岩川は相手のポイントゲッター新村から一本勝ちを奪う大役を果たし、与えたダメージは「2点級」。木更津総合は最高のスタートを切る。

eJudo Photo
石塚隼多が隅落であわや「技有」獲得かと思われたが得点には至らず、この試合は引き分けに終わる。

次鋒戦は大松﨑彪貴が左、石塚隼多が右組みのケンカ四つ。これは互いに攻め合う好試合。大松﨑は足技で崩してからの左背負投に左体落と連発。石塚は右内股で対抗する。先鋒戦の痛い失点を早い段階で取り返したい石塚は休むことなく前に出続けるも、大松﨑も出足払、左大内刈で石塚の足を止め、さらに要所では小外刈を繰り出して石塚に決定的なチャンスを掴ませない。試合後半、やや甘く入った大松﨑の左内股を石塚がうまく隅落に切り返し、あわやポイント(副審1人は「技有」を示す)というシーンを作るも、結果として技の効果の宣告には至らず。終盤にはやや疲れの出てきた大松﨑が偽装攻撃で「指導2」まで追い込まれるも、ここで踏ん張って主導権を渡さず。この試合は引き分けに終わる。

中堅戦は吉澤勇志郎が左、工藤泰輝が右組みのケンカ四つ。この試合は序盤から一方的な工藤ペース。小刻みに動いて背負投、巴投と攻撃する工藤に対し、吉澤は防戦に手一杯。「指導」ひとつが与えられた後も、反撃の糸口が見いだせない。工藤2分40秒には「韓国背負い」で吉澤を大きく崩し、ここで吉澤には消極的試合姿勢の咎で2つ目の「指導」が与えられる。工藤はここが山場と攻撃の手を一切緩めず、背負投、体落と強気の技を繰り出し続けて3分16秒ついに吉澤に「指導3」。中堅戦が終わって1-1の内容差なし、完全なタイスコアのまま戦いは無差別ブロックへ。

eJudo Photo
修徳のエース濱田哲太が攻めに攻めまくるが、小林開道が耐え切った格好で副将戦は引き分け。

副将戦は小林開道が右、濱田哲太が左組みのケンカ四つ。修徳のエース濱田は一本勝ちこそが自らに課せられた使命と、猛然と小林に襲い掛かる。開始早々の濱田の猛攻に小林は思わず伏せて難を凌ごうとするも、寝勝負でも濱田は一切攻撃の手を緩めない。続いて組み際に虚を突くような右の高い一本背負投で小林を崩し、またもや執拗に抑え込みを狙う。東京都予選でも猛威を奮った「肩三角」グリップからの攻撃も繰り出して怒涛の攻め。濱田、2分30秒には払巻込からうまく体を反転させ、腕挫腋固を狙うも、ここは小林が自ら前転して難を逃れる。ここまで小林の攻撃は、組み際の一本背負投と小内巻込のみ、消極的試合姿勢による「指導」が与えられてもおかしくない場面が続くが主審は動かず。残り1分を切っても濱田の猛攻は止まず。背負投に片手の内股と立て続けに小林を伏せさせ、残り時間24秒となったところでは遂に走って小林に体を預け、深く踏み込みの効いた左大内刈で小林を大きく崩す。さすがにここまで静観を続けた審判もこれは無視出来ず、小林に対して消極的咎による「指導1」。濱田はさらに片手の内股で小林を崩しにかかるも、ここは小林しっかりと受け切って試合終了。試合時間のほぼすべてを攻撃に費やした濱田にとっては、無念の引き分けとなる。大将にエース甲木碧を残す木更津総合としてはしてやったりの試合。

eJudo Photo
大将戦は木更津総合・甲木碧が小外掛から捩じり倒し、増山陽太から「一本」

大将戦は甲木が左、増山陽太が右組みのケンカ四つ。千葉県100kg超級王者の甲木に対し、増山は80キロと軽量。増山まともに組み合ってはさすがに不利と、組み手を厳しく管理、組み際に背負投を狙ってリズムを作る。序盤は増山の上手い組み手が奏功、甲木に十分な引き手を与えないまま技を積み、ペースはしばし増山。しかし甲木が次第に相手の攻撃のタイミングを掴み始めた模様、1分58秒には増山が仕掛けた背負投の戻り際を裏投で大きく返す。これは増山が体を捻ってノーポイントとなり、直後甲木に消極的咎の「指導」も与えられたが徐々に潮目が変わり始めた印象。増山は以降もペースを変えずに試合を進めていたが、中盤になって遂に甲木に引き手を許してしまう。増山はこの状況を打開せんと片膝をついた低い右大内刈を繰り出すが、これは甲木にとって最高の投げどころ。迫力十分の小外掛で切り返して1分50秒鮮やか「一本」。エース甲木を大将に取り置いた陣形が奏功、木更津総合が2-1で勝利を収めることとなった。木更津総合は中止された昨年の第66回大会を除き、3大会連続の決勝進出。敗れた修徳は名将大森淳司監督のもと、選手全員がハードワークする「修徳イズム」が浸透。メンバーからも試合内容からも優勝が狙える好チームであったが、この試合では先鋒戦の一本負けが大きな誤算となってしまった。

eJudo Photo
中堅戦、習志野のエース後藤颯太が西山一心から値千金の「一本」。

eJudo Photo
副将戦、埼玉栄の長濱佑飛が一瞬左に組み変え、飯塚春貴から巴投「技有」

eJudo Photo
長濱が右小内巻込でトドメ、見事な「一本」。

埼玉栄高(埼玉) 2-1 市立習志野高(千葉)
(先)五十嵐雅人×引分×黒川龍磨
(次)杉野瑛星×引分×鎌倉啓太郎
(中)西山一心△浮腰(1:46)〇後藤颯太
(副)長濱佑飛〇小内巻込(2:53)△飯塚春貴
(大)野村陽光〇優勢[僅差]△伊澤直乙斗

先鋒戦、次鋒戦とともに試合自体を揺らすような大きな展開はなく、引き分けに終わる。

中堅戦は西山一心、後藤颯太ともに右組みの相四つ。後藤はきょうここまで全ての試合で一本勝ちをマークしている市立習志野のエース。開始早々から殺気を漲らせ、西山に圧を掛け続ける。対する西山もここは必死、不十分な形でも技を打ち返すことで後藤の組み手を遅らせて、なかなか決定的な機会を与えない。しかし後藤は引き手で袖を得ると一瞬加速、まず低い姿勢で西山の脇下から釣手を差し、相手の体を自身の腰の位置まで高々と吊り上げて浮腰の大技一発、高空から畳に叩きつけて1分48秒「一本」。西山はあまりの勢いと失点のショックでしばしその場から動けない。ポイントゲッター後藤の存在感比類なし、市立習志野が待望の先制点を獲得。

副将戦は長濱佑飛、飯塚春貴ともに右組みの相四つ。長濱は前戦の日体大荏原戦同様、1点ビハインドを負った状態での登場。対する飯塚は本来81キロ級の選手で体格的なハンデはあるもののよく鍛えられており組み手厳しく、強者長濱を相手にしてもなかなか十分な形を許さない。しかし長濱には焦りは寸分も感じられず。45秒、突如左組みに変化し、相手の虚を突くタイミングでの巴投を仕掛けると飯塚必死に体を捻るも逃れきれず、「技有」。以降は組み手うるさく粘る飯塚に対して、長濱は組み際の右一本背負投を連発して取りに掛かる。しかし中盤になると飯塚が長濱の右一本背負投に慣れてきた模様、腰を抱いて隅落に切り返すなどの見せ場を作る。すると2分53秒、それまで組み際の右一本背負投を執拗に繰り返してきた長濱が、同じタイミングからこの試合初めて小内巻込に変化。飯塚は全く反応出来ず、後方に大きく飛んで「一本」。序盤に決めた組み手の左右を変えての巴投、さらに一本背負投を執拗に巻き散らしておいてからの小内巻込。技巧派として全国にその名を轟かす長濱の面目躍如といったところ。素晴らしい勝ちぶりでスコアをタイに戻し、試合の襷を大将戦へと繋ぐ。

eJudo Photo
大将戦は野村陽光が「指導」2つを得て勝利。

大将戦は野村陽光、伊澤直乙斗ともに右組みの相四つ。身長181センチ、体重128キロの大型野村に対して、伊澤は本来81kg級の選手。体力差の現れやすい相四つということもあり、非常に厳しい戦いを強いられる。野村は二本持って圧力を掛けながら前進、大技を連発。こうなると伊澤はもはや一本負けを逃れるのがやっと。結果として伊澤には「指導2」が与えられ、野村の僅差優勢勝ちで試合が終了。埼玉栄が2-1で決勝進出を決めることとなった。市立習志野はエース後藤颯太を筆頭に軽中量級の好選手を揃え、小気味の良い柔道で大健闘。ベスト4入りで会場を沸かせたが、無差別級ブロックで大型選手を揃える他校との差が最後に現れてしまった。

■ 決勝
eJudo Photo
先鋒戦、組み手の手順を変えた五十嵐雅人が右小外刈一閃。

eJudo Photo
押し込み切って「一本」。埼玉栄が先制に成功。

埼玉栄高(埼玉) 2-1 木更津総合高(千葉)
(先)五十嵐雅人〇小外刈(1:30)△岩川優吾
(次)杉野瑛星×引分×大松﨑彪貴
(中)西山一心△反則(3:36)〇吉澤勇志郎
(副)長濱佑飛〇背負投(0:42)△小林開道
(大)野村陽光×引分×甲木碧

先鋒戦は五十嵐雅人が右、岩川優吾が左組みのケンカ四つ。五十嵐は73kg級のインターハイ埼玉県代表、一方の岩川も66kg級で千葉県代表の座を獲得している強者。ともに勝負のポイントはこことばかりに引き手の支配権を争い続け、序盤は大きな展開ないまま過ぎる。1分8秒、両者に対して消極的試合姿勢の咎による「指導」。直後、五十嵐が手順に変化をつけ、まず先に引き手で相手の腋のあたりを掴み、続いてこれまで下から持っていた釣り手で奥を叩いて岩川の頭を下げさせる。展開の変化に一瞬対応が遅れた岩川は、この試合初めて隙を見せた格好。五十嵐は勝機見えたとばかりに右足首を鎌のように利かせて岩川の左踵に引っ掛けると、後方に崩れかかる相手の胸に勢いよく自らの胸を被せて追い込んで1分30秒、小外刈「一本」。膠着した展開を先に動かした五十嵐が値千金の一本勝ち、先制点は埼玉栄の手に落ちる。

eJudo Photo
次鋒戦は攻め合いのまま引き分け。

次鋒戦は杉野瑛星が右、大松﨑彪貴が左組のケンカ四つ。この対戦も杉野が73kg級、大松崎は本来66kg級でやや体格差のある戦い。やはり引き手の探り合いから試合がスタート、攻めどころを見いだせない両者に対して57秒には消極的な咎の「指導」が与えられる。その後は一進一退の攻め合い。大松﨑が低い左大内刈を仕掛ければ杉野も右内股で反撃して双方譲らず。大松﨑は攻撃の種類に幅を見せるも、連戦の疲れからか技に威力が足りず相手を倒すまでには至らず。一方の杉野も内股のみを狙い続けてやや単調な展開となってしまい、この試合は引き分けに終わる。

eJudo Photo
中堅戦、指導差0-2まで追い込まれた吉澤勇志郎が猛攻、一時は「抑え込み」の宣告を引き出す。試合は「指導」3つを得て逆転勝ち。

中堅戦は西山一心が右、吉澤勇志郎が左組みのケンカ四つ。ともに準決勝戦では星を落としており、ここは負けられない一番。まず開始40秒、吉澤に対して「取り組まない」咎による「指導」。吉澤、早く指導差を追いつこうと、西山に場外指導を強いるべく圧力を加えるが、これを審判は「押し出し」と判断、1分20秒に吉澤に「指導2」が与えられる。これで後がなくなった吉澤、逆に覚悟が決まったか以後はまさに猛攻。まずは姿勢が崩れた西山に対して執拗に寝勝負を挑んで「国士舘返し」でめくり返し、やや不安定な形ながらも「抑え込み」の宣告を引き出す。これは西山が必死に抗って数秒で逃れたがその後も吉澤は前進を止めない。流れの悪さを嫌った西山は体落を仕掛けて展開を破ろうとするが、これを偽装攻撃と見なされ2分13秒に「指導」、さらに前に出てくる吉澤に対して大腰で合わせんとした動きにも2分50秒、偽装攻撃の「指導2」が与えられてしまう。ここで「指導」の数は同数となったが、流れは追いかけて来た吉澤の側にあり。吉澤は前に出、西山は組み際の肩車で応戦して必死の抵抗を見せる。しかし3分31秒、前に出る吉澤に対して、またも仕掛けた西澤の肩車が空振り。両手がすっぽ抜けてしまったこの行為に対して主審はすぐさま合議を要求。結果は偽装攻撃の咎による「指導3」の宣告。反則負けとなった西山は肩を落としてがっくり。吉澤は指導差0-2から「指導」3つを連取する殊勲。軽量級の3試合を終えてスコア1-1、内容差なしの状態で、勝負は後半の無差別ブロックに持ち込まれる。

eJudo Photo
長濱佑飛が右背負投

eJudo Photo
巧みに回し切って「一本」。

eJudo Photo
甲木碧が大外刈で攻めるが野村陽光動ぜず。後半戦は膠着したまま、この試合は引き分けとなる。

副将戦は埼玉栄のエース、主将の長濱佑飛が登場。開始線に立つ前は中堅戦で星を落として失意の西山の頭に軽く手をやり、フォローを欠かさない。この試合は長濱、小林開道ともに右の相四つ。長濱は引き手を掴むと間髪入れず打点の高い右一本背負投を仕掛け、小林を伏せさせる。続いて寝技でも「ボーアンドアローチョーク」を仕掛けるなど積極的、決して攻めを休まない。長濱、組み合いから引き手と釣り手の微調整を行うと、状況整ったとばかりに相手の股中めがけて低い右背負投に潜り込む。やや釣手の効きが浅く小林の体は左肩と頭から接地したが、ひときわ引き手の引き込みを強く効かせると縦にゴロンと一回転。決めもよく効いたこの技は「一本」。僅か42秒の早業、埼玉栄が再び2-1と試合をリードする。
 
両校の挙げたポイントはともに「一本」によるもの。埼玉栄としては大将戦で野村陽光が一本負けさえしなければ優勝が決定する。逆に木更津総合に残されたシナリオは甲木碧の一本勝ちで追いつき、代表戦に望みを繋ぐことのみ。

そんな背景の中始まった大将戦は野村、甲木ともに左組みの相四つ。まずは野村が甲木の奥を叩きに出る。甲木は野村に奥を叩かれながらも、強気に支釣込足を打ち返し、野村の巨体を大きく崩す。甲木は野村に奥を取られては面倒と、ここから徹底して野村の釣り手を落としにかかる。釣り手を落とされた野村は持ち味であるダイナミックな柔道が影を潜めてしまい、開始1分、野村に消極的な咎による「指導」。甲木は以降もこの流れを変えず、先に引き手を得ると、自身の釣り手を上下左右に動かしながら、野村の上体を煽っては左大外刈を狙う。野村はこのペースを打破すべく積極的に奥を叩きに出るものの、よく心得た甲木はその勢いを利用して、幾度となく左支釣込足で野村を揺らす。ここまでは完全に甲木のペースだが、野村に「指導」が追加される気配はなし。甲木こうなるとペースを上げたいところだが、以降組み合いとなった展開になかなか変化をつけられない。互いに十分な形まで組み手を作り切ることが出来ず、大枠足技での牽制に終始したまま時間を過ごすこととなる。結局大きなポイントが生まれるような展開がないまま4分が経過し、試合は引き分けで終了。追いかける側の甲木が思い切った攻めに出られず、思いのほか山場のないまま試合が終わってしまった。結果、2-1で埼玉栄の勝利決定。埼玉栄が第54回大会以来、2度目となる関東高校柔道大会の優勝を果たすこととなった。

eJudo Photo
軽量級重視のレギュレーションでも埼玉栄の勢いは止まらず。団結力の高さが印象的だった。

中量級以上の選手が充実してチームの性格としては本来無差別レギュレーション向きでありながら、しかも軽量級枠の要である66kg級全国高校選手権の覇者猪瀬真司を欠いてなお優勝した埼玉栄は見事。選手個々の競技力自体はもちろん、なにより団結力、そして勝ちを信じる力の強さが印象的だった。極めて具体的に全国優勝をイメージし、共有し、チーム全体でこれを為し遂げようとしている日々の稽古が戦いぶりの端々に匂い立っていた。コロナ禍にあって各チーム経験値が足りない中、全国中学校大会を2連覇して“優勝経験“を独占している格好の埼玉栄は、この「具体的に勝ちをイメージする力」において他の追随を許さない。加えてこのチームワークの高さ。来たるインターハイは間違いなく優勝候補の筆頭と見て良いだろう。

成績上位者と埼玉栄高・川原篤監督のコメント、準々決勝以降の対戦詳細は下記。

eJudo Photo
優勝した埼玉栄高

【成績上位者】
優 勝:埼玉栄高(埼玉)
準優勝:木更津総合高(千葉)
第三位:修徳高(東京)、市立習志野高(千葉)

埼玉栄高・川原篤監督のコメント
「(大会を振り返って)二日目の今日は初戦(3回戦)の足立学園戦から代表戦となり、以降も4回戦、準決勝、決勝と2-1の接戦が続きましたが、選手自らが円陣を組むなどをして、自発的にチームを盛り上げ、優勝を勝ち取ることが出来ました。今大会は軽量級でエントリーしていた猪瀬を外して戦うこととしたのですが、キャプテンの長濱が全ての試合で一本勝ちし、大きな働きを見せてくれました。また、他の選手も厳しい試合の連続をよく耐えてくれた。チーム全員の優勝だと思います。(インターハイに向けて)おかげさまで個人戦は全階級で県予選を制し、いまは団体戦の県予選を控えている状態ですが、今年のチームは全中で2連覇をした世代が揃い、皆が日本一の経験があります。ぜひ、団体戦でも県代表となり、インターハイでは悲願の団体優勝を成し遂げたいと思います。」

eJudo Photo
2位の木更津総合高

eJudo Photo
3位の修徳高

eJudo Photo
3位の習志野高

【準々決勝】

修徳高(東京) 3-0 千葉経済大附高(千葉)
(先)新村隼也〇優勢[技有]△荒井優太
(次)石塚隼多〇片手絞(1:20)△丸山海音
(中)工藤泰輝×引分×坂巻莞爾
(副)濱田哲太〇上四方固(0:45)△ムンフゾルウソフバヤル
(大)増山陽太×引分×武田知士

木更津総合高(千葉) 5-0 國學院大栃木高(栃木)
(先)岩川優吾〇縦四方固(3:15)△吉澤冠太
(次)大松﨑彪貴〇縦四方固(2:09)△小川泰生
(中)吉澤勇志郎〇反則(2:14)△野口康太
(副)小林開道〇優勢[技有]△落合啓太
(大)甲木碧〇払巻込(1:13)△藤井達也

埼玉栄高(埼玉) 2-1 日体大荏原高(東京)
(先)五十嵐雅人×引分×藤村心大
(次)杉野瑛星×引分×杉﨑大晃
(中)西山一心△反則[指導3](2:25)〇森勇晟
(副)長濱佑飛〇背負投(0:35)△大吉諒
(大)野村陽光〇優勢[技有・支釣込足]△日髙輝海

市立習志野高(千葉) 4-1 常磐高(群馬)
(先)黒川龍磨〇袈裟固(2:41)△新井俊樹
(次)鎌倉啓太郎〇優勢[技有]△竹吉一樹
(中)後藤颯太〇合技(2:43)△福島浩輝
(副)飯塚春貴△大外刈(3:51)〇小島アントニー
(大)伊澤直乙斗〇背負投(1:35)△菊池晏至

【準決勝】

木更津総合高(千葉) 2-1 修徳高(東京)
(先)岩川優吾〇崩上四方固(2:02)△新村隼也
(次)大松﨑彪貴×引分×石塚隼多
(中)吉澤勇志郎△反則[指導3](3;05)〇工藤泰輝
(副)小林開道×引分×濱田哲太
(大)甲木碧〇小外刈(1:50)△増山陽太


埼玉栄高(埼玉) 2-1 市立習志野高(千葉)
(先)五十嵐雅人×引分×黒川龍磨
(次)杉野瑛星×引分×鎌倉啓太郎
(中)西山一心△浮腰(1:46)〇後藤颯太
(副)長濱佑飛〇小内巻込(2:53)△飯塚春貴
(大)野村陽光〇優勢[僅差]△伊澤直乙斗


【決勝】
埼玉栄高(埼玉) 2-1 木更津総合高(千葉)
(先)五十嵐雅人〇小外刈(1:30)△岩川優吾
(次)杉野瑛星×引分×大松﨑彪貴
(中)西山一心△反則(3:36)〇吉澤勇志郎
(副)長濱佑飛〇背負投(0:42)△小林開道
(大)野村陽光×引分×甲木碧

※ eJudoメルマガ版7月10日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る