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「戦いはまず自分のため、試合は悪い状態を想定して準備」大野将平選手コメント要旨

(2021年7月8日)

※ eJudoメルマガ版7月8日掲載記事より転載・編集しています。
「戦いはまず自分のため、試合は悪い状態を想定して準備」
大野将平選手コメント要旨
8日、73kg級で五輪2連覇を狙う大野将平(旭化成)がオンラインで報道陣の合同取材に応じた。代表チームは15日後に迫った東京五輪開幕に向けて男子が4日から、女子が7日からナショナルトレーニングセンター(東京都北区)で合宿中。既に最終的な仕上げに入って精神・肉体を研ぎ澄ましていかねばらなない大事なタイミングの中、丁寧に、密度高い語彙で現在の心境や準備の状況、連覇に掛ける覚悟を語ってくれた。

コメントの要旨は下記。

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オンライン取材に応じた大野将平選手

――いまのコンディションを教えてください。

いま最終合宿中ですし、疲労感を感じながら稽古、トレーニングに取り組めていると感じています。コンディションどうこう関係なく、そもそも(当日は)「悪い」という心づもりをして試合に臨みたいと思っています。

――先ほどまでは団体戦に向けてチームビルディング講習に参加していました。最年長選手として、講習の感想や得た収穫を教えてください。

なかなか男女で稽古することもないのでこういう交流は大変助かりますし、知らなかった意外な面であったり、チームとして何かをする、作り上げることの重要性を感じました。

――無観客試合になる可能性がある(※その後決定)。その影響はどう考えますか。

影響はないんじゃないでしょうか。でも、我々アスリートとしては観客が入って試合をやれたほうがより良い、のは間違いないとは思っています。

――選手の中で2連覇がかかるのは大野選手のみ。重圧や気持ちの昂ぶり、難しさ、どう受け止めていますか。

よく2連覇についてご質問頂くんですけど、単なる言葉以上に2連覇というものの難しさを感じていますし、自分自身がいちばんその大変さというものを理解しています。2連覇がかかる試合だからということでもないのですけど、楽な試合は1つもありませんし、特に4年に1度のオリンピック、各国の選手は死に物狂いで戦ってきます。「簡単な試合はない」、それに尽きると思っています。先ほども言いましたけど、調子の良し悪しに左右されずに、むしろ自身の調子が悪いという心づもりをして試合に臨みたいと思っています。

――自国開催ですが、リオ五輪前とは違う心情でしょうか。

自分自身、初めて参加したリオオリンピックとの心情の変化を感じながら、違う状況で自分の集大成を迎えたいという強い思いがありましたので。そういった違いや変化を感じながら日々を過ごしています。

――結団式では、旧き良き日本の柔道を体現したいと仰っていました。大野選手のイメージする「旧き良き柔道」とは。

柔道は前回の東京オリンピック、1964年の東京大会から正式種目になりました。本当に歴史のある、オリンピックにも関係性の深い競技だと思っています。そういった前回の東京オリンピックの柔道、そしていまの国際化された柔道、その両方を見て感じ取れるような柔道を日本武道館で表現・体現できるように努力していきたいと思っています。

――天理大でも稽古されていた1964年大会の無差別王者、ヘーシンク選手の話題を時折されています。大野選手にとってヘーシンク選手はどのような存在ですか。

ヘーシンク選手だけではなく、海外にはいま本当に日本人より日本人らしいと言いますか、リスペクト出来る柔道家が多くいます。そういった選手を心から尊敬していますし、我々も学ぶところが多いと思っています。ですが、今回は自国開催のオリンピックですので、発祥国日本の柔道家として誇りを持って戦いつつ、やはり日本の柔道家の素晴らしさというのを姿勢や佇まい、そういった礼儀作法で伝えていくのも、我々の役目のひとつだと認識しています。

――結団式後の取材では「防衛的悲観主義」と話しておられた。この点についてもう少し詳しく教えてください。

金丸コーチともお話をさせて頂いて、天理大学の先輩である野村忠宏先輩の話になった。私も先週少し野村先輩と話をさせていただく機会があったのですが、そのときに、悲観的といいますが、何かこう不安や怖さを常に抱えて戦ってらっしゃる、それが決して悪いことではないんだということですね。私自身も、日々の稽古で自分が負ける姿を想像して、自分をどうしたら倒せるのか、自分自身がどうしたら負けるのかということだけを考えています。本当に、いわゆるネガティブな思考にはなってきますし、日々我慢を強いられるのですが、そういった稽古をこの5年間やって来ました。どうしても心が折れそうになる瞬間、我慢できない、辛く苦しい瞬間のほうが多いのですけど、それが勝ち続けるために必要なことだと思っています。敢えてマイナス、ネガティブなことを考えて、それが勝利をもたらす。それがいわゆる「防衛的悲観主義」ということだと考えています。

――井上康生監督と過ごして来た中で、印象的な出来事や言葉があれば教えてください。

井上監督自身が特に仰られるのは、監督自身のアテネオリンピックの話です。私もいま同じ境遇と言いますか、2連覇に挑戦するタイミングで、アテネオリンピックのお話はより心に響きます。リオデジャネイロオリンピックが終わって、全日本の監督としてではなく、柔道家の先輩、そして同じ金メダリストとして伝える、ということでお話を頂いたときに、お前はもう金メダルを1つ持っているんだから、2連覇に挑戦するにあたって、正々堂々と、思い切り立ち向かえばいい、と言われて、非常に楽になったことを今でもよく覚えています。ただし、その言葉を逃げ道にするだとか、それに縋るつもりは一切ありません。井上康生監督、鈴木桂治コーチが達成できなかった2連覇という壁を乗り越えて、自分自身の手で柔道界の歴史を作りたい。そういう強い思いがあります。

――今回は混合団体戦もあり、金メダルを2つ獲る可能性があります。最年長選手として日本チームを引っ張るというつもりはありますか。

個性豊かな選手が多いですし、私が引っ張ったり声を掛ける必要のないプロフェッショナル、最強かつ最高の集団だと信じています。その中で、最年長ということで、何か背中で見せることが出来たらいいなと思っています。

――天理大の後輩である丸山城志郎選手は惜しくも五輪代表に入れませんでした。何か丸山選手の思いを背負ってだとか、これまで何か丸山選手に掛けた言葉があれば教えてください。

丸山選手のオリンピックの夢を背負うという気持ちは一切ありません。丸山選手は2024年のパリオリンピックで金メダルを獲ると私は信じていますし、彼のオリンピックチャンピオンの道は彼自身が作っていくと信じています。昨年12月の一騎打ち、私も帯同させてもらいましたが、そのときの出来事といいますか物語と言いますか、そういったものはやはり私と、穴井監督と、丸山と、その3人しかわからないような濃密な時間でしたし、自分のこと以上に悔しかった記憶があります。そして、その丸山が先月世界選手権で調子が悪いながらも我慢の戦いで見事2連覇を達成したことに、これ以上ない勇気を貰いました。丸山に恥じないような、丸山に見てもらって恥ずかしくないような、そんな我慢の柔道を東京オリンピックでは発揮したい。

――何か丸山選手から選手から本番に向けて掛けられた言葉などはありますでしょうか。

いつも試合前後お互い掛ける言葉はありません。お互いの試合の前に乱取りで組み合ってお互い戦って、言葉は要らない関係ですのでそれだけで十分かと思っています。

――今回も丸山選手と乱取りをしてNTCに入ったのでしょうか。

・・・彼の世界選手権の前にやりましたので。それだけでひしひしと伝わってくるものがありました。

――地元・山口を含めて、全国の子供たちに五輪で一番何を伝えたいですか。

まだなかなか人のために頑張れる余裕がなく未熟だなと感じますし、まずは自分のために戦います。それが観ている皆さまの何か力になればいいな、なにか伝わればいいなと思っていますし、このコロナ禍で開催するために多くの方々が尽力下さっていることに感謝していますので、そういった応援の力に結果で恩返し出来たら最高だと思います。いま、同じ名前の野球の大谷翔平選手がアメリカの地で非常にスポーツを盛り上げてくれている。そういったことにも感謝しつつ、柔道界の同じ名前のものとして、負けないように東京オリンピックで活躍したいと思っています。。

――座右の銘、好きな言葉などがあれば教えてください。

オリンピックに関してはいつも通り平常心で臨もうと思っていますし、強いて言うならいつもの集中・執念・我慢で臨みたいです。

――その「集中・執念・我慢」で、大勝負の前にはどこがポイントですか。

全てが大事だと思います。

※ eJudoメルマガ版7月8日掲載記事より転載・編集しています。

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