PAGE TOP ↑
eJudo

【即日レポート】アグベニュー全試合一本勝ちの圧勝、決勝は大健闘レスキを退ける/ブダペスト世界選手権2021女子 63kg級レポート

(2021年6月10日)

※ eJudoメルマガ版6月10日掲載記事より転載・編集しています。
【即日レポート】アグベニュー全試合一本勝ちの圧勝、決勝は大健闘レスキを退ける
ブダペスト世界選手権2021女子 63kg級レポート
eJudo Photo
4連覇のクラリス・アグベニュー(フランス)

文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

ハンガリーで行われているブダペスト世界柔道選手権2021は9日、現地のパップ・ラズロ・スポーツアリーナで第3日の男女それぞれ1階級ずつの競技を行い、女子63kg級はクラリス・アグベニュー(フランス)が優勝を飾った。アグベニューは5度目の世界選手権優勝、2017年大会からこれで4連覇。

eJudo Photo
決勝、アグベニューの大外巻込「技有」

絶対の優勝候補アグベニューは盤石の勝ち上がり。ラーケ・オルセン(デンマーク)を1分31秒崩袈裟固「一本」、ハン・ヒジュ(韓国)を3分11秒裏投「一本」、準々決勝はマイリン・デルトロ=カルバハル(キューバ)を3分6秒腕挫十字固「一本」、そして準決勝は2分28秒サンネ・フェルメール(オランダ)を裸絞「一本」と決勝まで全試合一本勝ち。投技1つに固技3つ、しかも全て違う決め技で勝ち進んだ。攻守に隙なく、どの状況でも決め技があり、一つのやり方に固執せず「取れる状況」が生まれればそこに適した技を躊躇なくきっちり嵌めていく。いまのアグベニューの完成度の高さがしっかり表現された勝ち上がり。

決勝ではアンドレア・レスキ(スロベニア)とマッチアップ。左右厭わず奥襟を叩く相手の度胸の前に試合時間は3分を超えたが、慌てる様子はまったくなし。相手が右大腰で座り込んだ、その立ち上がり際を捉えてこの日初めて得意の左大外巻込一発「技有」。そのまま後袈裟固に抑え込み、全試合一本勝ちで優勝を決めた。五輪における絶対の優勝候補の座はもちろん継続、どころか「ますます強くなっている」と評して間違いない内容であった。

eJudo Photo
準決勝、アンドレア・レスキがアンリケリス・バリオスから裏投「技有」

銀メダルのレスキも大健闘。決勝のアグベニュー戦の善戦はもちろん、次々投げを決めた勝ち上がりも見事。特に初戦で見せた打点の高い左袖釣込腰「一本」は印象的だった。かつては「掛けて倒れる」選手ばかりのこの階級の典型と呼べる地味な選手だったが、同国の第一人者ティナ・トルステニャクを追いかける中で柔道の質が向上。ついにこの世界選手権決勝の大舞台で堂々アグベニューの敵役を務めるに至った。唯一アグベニューに抗し得ると思われた日本の鍋倉那美が早々に欠けて危機に陥ったトーナメントをいわば救った、今大会の功労者と言ってよいだろう。

その鍋倉は初戦敗退。東海大で稽古するアンリケリス・バリオス(ベネズエラ)を前に体が固まり、絞り合い、掛け潰れを続ける刹那的な進退。ともに「指導2」を失ったGS延長戦では、両袖を絞ったまま頭を下げて理由見出しがたい「待ち」で思考停止。腰を切った相手にこの突っ張った両手を引き込まれ、払巻込でドスンと崩れた直後のGS1分4秒、3つ目の「指導」を食って終戦となった。

おそらくメンタル的な問題がクローズアップされると思うのだが、この試合の因は技術的な曖昧さにこそあり。投げのダイナミクス、組み手のパターン、展開の作り方、もう少し踏み込むとここに紐づく自己理解。これまで精査のないまま、具体的な整理のないまま解決「出来てしまっていた」積年の技術的課題が一気に噴出したように見受けられた。体の強さや精神力でカバーしていた穴が、覆いを失って露になった一番と評したい。この敗戦の因をコンディションやメンタルの問題と片付けてしまう限り、本質的な解決は見込めない。正しくこの試合、そして自分と向き合うことを期待したい。

eJudo Photo
63kg級メダリスト、左から2位のアンドレヤ・レスキ、優勝のクラリス・アグベニュー、3位のアニャ・オブラドヴィッチとサンネ・フェルメール

(エントリー43名)

【入賞者】
1.AGBEGNENOU, Clarisse (FRA)
2.LESKI, Andreja (SLO)
3.OBRADOVIC, Anja (SRB)
3.VERMEER, Sanne (NED)
5.BARRIOS, Anriquelis (VEN)
5.QUADROS, Ketleyn (BRA)
7.DEL TORO CARVAJAL, Maylin (CUB)
7.OZBAS, Szofi (HUN)

【成績上位者】
優 勝:クラリス・アグベニュー(フランス)
準優勝:アンドレヤ・レスキ(スロベニア)
第三位:アニャ・オブラドヴィッチ(セルビア)、サンネ・フェルメール(オランダ)

【準々決勝】
クラリス・アグベニュー(フランス)○腕挫十字固(3:06)△マイリン・デルトロ=カルバハル(キューバ)
サンネ・フェルメール(オランダ)○合技[隅落・谷落](1:10)△アニャ・オブラドヴィッチ(セルビア)
アンリケリス・バリオス(ベネズエラ)○優勢[技有・隅落]△オズバス ・ソフィ(ハンガリー)
アンドレヤ・レスキ(スロベニア)○合技[小内刈・大腰](3:20)△ケトレイン・クアドロス(ブラジル)

【敗者復活戦】
アニャ・オブラドヴィッチ(セルビア)○GS反則[指導3](GS0:38)△マイリン・デルトロ=カルバハル(キューバ)
ケトレイン・クアドロス(ブラジル)○合技[隅返・崩袈裟固](1:14)△オズバス ・ソフィ(ハンガリー)

【準決勝】
クラリス・アグベニュー(フランス)○裸絞(2:28)△サンネ・フェルメール(オランダ)
アンドレヤ・レスキ(スロベニア)○優勢[技有・裏投]△アンリケリス・バリオス(ベネズエラ)

【3位決定戦】
アニャ・オブラドヴィッチ(セルビア)○GS技有・谷落(GS0:37)△アンリケリス・バリオス(ベネズエラ)
サンネ・フェルメール(オランダ)○合技[隅返・小外刈](3:05)△ケトレイン・クアドロス(ブラジル)

eJudo Photo
決勝を戦うアグベニューとレスキ。

【決勝】
クラリス・アグベニュー(フランス)○合技[大外巻込・後袈裟固](3:26)△アンドレヤ・レスキ(スロベニア)
アグベニュー左、レスキが右組みのケンカ四つ。アグベニュー引き手で前襟、釣り手で奥襟を確保。レスキいったん釣り手で片襟を突き、左組みにスイッチして堂々応じるが主審は意外にも「待て」。13秒レスキに「取り組まない」咎による「指導」。アグベニューは丁寧に組み手を進め、レスキこれに付き合っては勝ち目なしと組み際に抱きついての右小外掛を試みる。これは深々入ったがアグベニュー反転してなんとか逃れ、42秒「待て」。以後はアグベニューが引き手で袖、釣り手で背中を持つ手堅い組み手から鋭い左出足払、左小内刈と繰り出して順調。しかしレスキも右体落を繰り出して粘る。レスキは敢えて左に組み替えることを厭わず、ここから右で腋をカチ上げての右大腰を放って大きく崩す場面も作る大健闘。アグベニューの抱きつき大内刈もかわし、試合時間は3分を超える。ここでレスキが座り込みの右大腰。しかし間合いが遠く座り込んでしまい、この立ち上がりを待ち構えたアグベニューが左の大外巻込一撃「技有」。アグベニューこのまま後袈裟固に抑え込んで合技「一本」。

■ 日本代表選手勝ち上がり
【2回戦】
アンリケリス・バリオス(ベネズエラ)〇反則[指導3](GS1:04)△鍋倉那美
鍋倉左、バリオス右組みのケンカ四つ。手先の組み手争いから双方絞り合っての両袖となる。鍋倉このまま押し込んで前に出、バリオスが腰を切るとひとまず右大外刈で相手の膝を上げる。しかし釣り手を低く残したまま崩れてしまい、自ら手を放して畳に潰れる。チャンスを貰ったバリオスが横三角で一方的に攻めて「待て」。鍋倉少々様子がおかしい。鍋倉続く展開も巻き込みであっさり潰れ、バリオスまたもや寝勝負で一方的に攻め「待て」。この後は互いに引き手で袖を持っての絞り合いが続き、2分23秒秒双方に「指導」。鍋倉膠着を打開せんと抱きつきの大内刈から右内股もバリオス長い体で受け切って崩れない。鍋倉引き手はしっかり絞るが自らの釣り手を絞られると打開策がなく、低い体勢のままひたすら前に出るのみ。バリオスが腰を切ると流れで大外刈の入れあいに付き合い、スローペースを期す相手の意図に乗り続ける格好。3分43秒双方に消極的試合姿勢の「指導」。試合はGS延長戦へ持ち込まれる。鍋倉釣り手を上から降らせ、胴を抱きながら右大内刈も空振り。バリオスが背中を持ち返して対応すると腰を引いたまま潰れてしまう。あわや試合終了かと思われたが、主審ここは1回ウォッチ。続く展開、鍋倉引き手で袖を抑えると相手にも袖を与えたまま動きを止めてしまう。バリオスが腰を切ると、釣り手を持っていかれたまま、引き手で袖を絞って頭を下げ、ひたすら守る形。もっとも良くて両者への「指導」という、スコアを考えればまったく理由のない行動。バリオスが払巻込を放つと両腕を狭く引き込まれたままドウと横倒し。ポイントにはならなかったが、主審鍋倉に消極的との咎で「指導」を与える。これで終戦。鍋倉何も出来ぬまま敗退。

※ eJudoメルマガ版6月10日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る