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【プレビュー】「片足の帝王」イゴルニコフ参戦、準々決勝で村尾三四郎と激突/グランドスラム・カザン2021最終日男子プレビュー(90kg級、100kg級、100kg超級)

(2021年5月7日)

※ eJudoメルマガ版5月7日掲載記事より転載・編集しています。
「片足の帝王」イゴルニコフ参戦、準々決勝で村尾三四郎と激突
グランドスラム・カザン2021最終日男子プレビュー(90kg級、100kg級、100kg超級)
→グランドスラム・カザン2021組み合わせ(公式サイト)

■ 90kg級 「片足の帝王」イゴルニコフ参戦、準々決勝で村尾三四郎と激突
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ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)

(エントリー42名)

五輪金メダル候補の「片足の帝王」ことミハイル・イゴルニコフ(ロシア)が出場。第2シードに配されたこの選手を筆頭に、ネマニャ・マイドフ(セルビア)、アクセル・クレルジェ(フランス)、マーカス・ニーマン(スウェーデン)ら世界大会でメダルを狙うクラスの強豪が顔を揃えた。五輪・世界選手権の直前とあって全体のレベルは平時のツアーと比べるとさすがに一段落ちるが、シード外にも日本代表の村尾三四郎(東海大3年)、イスラム・ボズバエフ(カザフスタン)、ルカ・マイスラゼ(ジョージア)など上位陣と伍する力を持つ選手がずらり。非常に見応えのあるトーナメントとなっている。

とはいえ上位陣は既に五輪の出場を決めた状態での調整出場。メンバーの豪華さに比して代表争いなどの注目すべきストーリーは薄く、どちらかといえば村尾やマイスラゼ(本来の階級は81kg級だが)ら2024年のパリ五輪を目指す若手選手がスタートを切るための大会という切り口で見るべき大会だろう。

最大の注目ポイントはブダペスト世界選手権の代表・村尾三四郎の出来。既にワールドツアーで幾度か表彰台に登っている村尾だが、国際大会への出場は2020年2月のグランドスラム・パリから約1年3ヶ月ぶりとなる。村尾はコロナ禍による大会休止期間に課題であったフィジカル面が強化され、組み手技術の向上も相まって柔道の安定感が大きくアップ。昨年10月末の講道館杯兼全日本選抜体重別選手権では圧倒的な強さで優勝を果たした。今年4月の選抜体重別選手権では準決勝で田嶋剛希(パーク24)にGS延長戦の小内刈「技有」で苦杯を喫しているものの、純粋な柔道の強さで言えば世界大会でも十分に表彰台に手が届く位置にあると思われる。今大会では準々決勝でイゴルニコフと対戦する位置を引いており、五輪本番直前に世界のトップ選手に挑戦するというこれ以上ないチャンスを得た。村尾は2019年2月のグランドスラム・デュッセルドルフでイゴルニコフと対戦した際には「指導3」の反則で勝利しているが、その頃とはどちらもほぼ別人と言っても過言ではない。実際に戦ってみるまで試合の様相は読み難いが、国内の柔道ファンとしてはここでイゴルニコフを破り、世界に村尾の存在をあらためて示してほしいところ。なお、村尾は1回戦でシリル・グロスクラウス(スイス)、2回戦でコムロンショフ・ウストピリヨン(タジキスタン)、3回戦でクエジョウ・ナーバリ(ウクライナ)と、イゴルニコフに辿り着くまでの3試合も非常にタフな相手が続く。できるだけ良い内容で勝ち上がって大一番に向けて勢いをつけたいところ。仮にイゴルニコフに勝利すれば以降は準決勝でニーマン、決勝でマイドフと、この階級のメインストリームの一である「勝負師タイプ」と連戦する可能性が高い。こちらもどのようなアプローチで攻略するのか非常に興味深い。

とはいえ、あくまでも今大会のメインはイゴルニコフ戦。それ以降のことはそれが終わった後に考えるとして、まずはこの試合に集中したい。

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村尾三四郎

【プールA】
第1シード:ネマニャ・マイドフ(セルビア)
第8シード:ニコラス・ムンガイ(イタリア)
有力選手:アブデラフマネ・ベナマディ(アルジェリア)、ダヴィド・クラメルト(チェコ)、フセン・ハルモルザエフ(ロシア)

【プールB】
第4シード:エドゥアルド・トリッペル(ドイツ)
第5シード:アクセル・クレルジェ(フランス)
有力選手:イスラム・ボズバエフ(カザフスタン)、ピオトル・クチェラ(ポーランド)

【プールC】
第2シード:ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)
第7シード:コムロンショフ・ウストピリヨン(タジキスタン)
有力選手:ヤホル・ヴァラパエウ(ベラルーシ)、シリル・グロスクラウス(スイス)、クエジョウ・ナーバリ(ウクライナ)、ペテル・ジルカ(スロバキア)
日本代表選手:村尾三四郎(東海大3年)

【プールD】
第3シード:マーカス・ニーマン(スウェーデン)
第6シード:ラファエル・マセド(ブラジル)
有力選手:ルカ・マイスラゼ(ジョージア)、リ・コツマン(イスラエル)

■ 100kg級 久々登場の世界王者チョ・グハンに注目
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チョ・グハン(韓国)

(エントリー30名)

2018年バクー世界選手権王者のチョ・グハン(韓国)が1月のワールドマスターズ以来久々に国際大会に登場。この選手にペテル・パルチク(イスラエル)とアルマン・アダミアン(ロシア)を加えた3名が優勝争いの軸だ。ほかにもカール=リヒャード・フレイ(ドイツ)やメルト・シスマンラル(トルコ)などワールドツアーの上位常連が多数参加。90kg級同様平時の大会があまりに豪華なために少々物足りなさを感じてしまうが、これは贅沢というもの。十分にレベルの高い、面白いトーナメントである。

最大の注目ポイントはチョの仕上がり。実績・実力とも申し分ないチョだが、意外にも直近3大会(といっても過去1年以内に出場したのは前述のワールドマスターズのみだが)はすべて早期敗退に終わっており、結果を残せていない。敗れた相手は2020年グランプリ・テルアビブのダニエル・ムケテ(ベラルーシ)を除けばニイアズ・イリアソフ(ロシア、2019年ワールドマスターズ)、ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン、2021年1月ワールドマスターズ)といずれも世界大会表彰台クラスの強豪ではあるものの、さすがに今回も勝てないようだとそもそもの実力評価が変わってきてしまう。前述のとおりチョがツアー再開後に出場した試合は1月のワールドマスターズ・ドーハただ1試合のみ。チョ以外の韓国選手はコンスタントに試合に出て力を練ることを続けており、そんな中、結果が残せていないチョが五輪最終戦のこの段階まで大会に姿を見せなかったのは少々意外だ。これが怪我などのアクシデントによるものなのか、それともじっくり力を蓄えていたのか、そのあたりが見極められる大会になるだろう。今大会は初戦(2回戦)で昨年のU23王者マティアス・マドセン(デンマーク)とミキタ・スヴィリド(ベラルーシ)の勝者の挑戦を受けることになっている。いずれも実力者ながら平時のチョならば余裕をもって、それも投げて勝利できる相手。まずはこの試合に注目したい。

序盤戦に組まれている好カードとしては、プールD1回戦のアダミアンとシスマンラルの試合を紹介しておきたい。両者はともにパワー派。柔道の相性も噛み合うと思われ、思い切った投げの応酬が期待できるはずだ。ここで勝利した選手がそのままプール戦を勝ち上がると予想され、優勝争いという意味でも注目度の高い一番である。

【プールA】
第1シード:ペテル・パルチク(イスラエル)
第8シード:シメオン・カタリナ(オランダ)
有力選手:アーロン・ファラ(オーストリア)、サーイエニッチ ・ミクロス(ハンガリー)

【プールB】
第4シード:ムハマドカリム・フラモフ(ウズベキスタン)
第5シード:ラファエル・ブザカリニ(ブラジル)
有力選手:ボリス・ゲルギエフ(ブルガリア)、オニセ・サネブリゼ(ジョージア)、アレクサンダー・クコリ(セルビア)

【プールC】
第2シード:チョ・グハン(韓国)
第7シード:カール=リヒャード・フレイ(ドイツ)
有力選手:マティアス・マドセン(デンマーク)、ミキタ・スヴィリド(ベラルーシ)、ズラトコ・クムリッチ(クロアチア)、ニイアズ・ビラロフ(ロシア)

【プールD】
第3シード:アルマン・アダミアン(ロシア)
第6シード:レオナルド・ゴンサルヴェス(ブラジル)
有力選手:メルト・シスマンラル(トルコ)、ボヤン・ドセン(セルビア)、ダニエル・ディチェフ(ブルガリア)、カイハン・オズチチェク=タカギ(オーストラリア)、ヨアキム・ドファービー(スウェーデン)

■ 100kg超級 各国一番手の出場はごくわずか、第1シードのバシャエフが優勝候補
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タメルラン・バシャエフ(ロシア)

(エントリー22名)

先月行われた大陸選手権で各国の代表争いはあらかた決着。既に「上がり」となった選手が多く、トーナメントは各国の2番手が中心の少々寂しい陣容となっている。唯一、ブラジルがラファエル・シウバとダヴィド・モウラのダブルエースを同時出場させているが、全体としては消化試合の匂いが濃いと言わざるを得ない。とはいえ若手からベテランまで、揃ったのはいずれも柔道自体が魅力的な選手ばかり。観戦という視点では相当楽しめるはず。

第1シードはタメルラン・バシャエフ(ロシア)。4月のグランドスラム・アンタルヤで原沢久喜(百五銀行)を内股透「一本」で破って優勝しているが、そこまでの成績と直後のヨーロッパ選手権でライバルのイナル・タソエフ(ロシア)が素晴らしい内容で優勝を果たしていることから考えると、恐らく五輪の目はもうない。モチベーション維持が難しいタイミングではあるだろうが、優勝争いという意味ではやはりこのバシャエフが筆頭格。前述のブラジル勢2名とロイ・メイヤー(オランダ)を含めたAシード選手4名が対抗馬という構図だ。

【プールA】
第1シード:タメルラン・バシャエフ(ロシア)
第8シード:アリアクサンドル・ヴァハヴィアク(ベラルーシ)
有力選手:ユール・スパイカース(オランダ)、アリシェル・ユスポフ(ウズベキスタン)

【プールB】
第4シード:ダヴィド・モウラ(ブラジル)
第5シード:ヨハネス・フレイ(ドイツ)
有力選手:ベクボロト・トクトゴノフ(キルギスタン)

【プールC】
第2シード:ラファエル・シウバ(ブラジル)
第7シード:マチェイ・サルナツキ(ポーランド)
有力選手:アントン・クリヴォボコフ(ロシア)

【プールD】
第3シード:ロイ・メイヤー(オランダ)
第6シード:ヴラダト・シミオネスク(ルーマニア)
有力選手:アレン・ツォヴレボフ(ロシア)、エリック・アブラモフ(ドイツ)

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