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【即日レポート】ブシャー圧勝で初の欧州制覇、57kg級は35歳モンテイロが地元で6度目のV/欧州柔道選手権2021第1日女子(48kg級、52kg級、57kg級)

(2021年4月17日)

※ eJudoメルマガ版4月16日掲載記事より転載・編集しています。
[即日レポート]ブシャー圧勝で初の欧州制覇、57kg級は35歳モンテイロが地元で6度目のV
欧州柔道選手権2021第1日女子(48kg級、52kg級、57kg級)
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52kg級を制したアモンディーヌ・ブシャー。

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決勝、ブシャーがオデット・ジュッフリダからまず肩車で「技有」。

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続いて深く腕を抱えての左一本背負投「技有」。圧勝だった。

文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

今年のヨーロッパ王座を争う欧州柔道選手権2021が16日、ポルトガル・リスボンで開幕。初日の女子は軽量3階級の競技が行われた。

52kg級は第1シードのアモンディーヌ・ブシャー(フランス)が圧巻のパフォーマンスで初優勝。初戦からアンドレア・キトゥ(ルーマニア)という難敵との対戦だったが、ここをGS延長戦42秒の肩車「技有」で切り抜けると、以降は並み居る強者をまったく寄せ付けず。ファビアン・コッヒャー(スイス)を54秒肩車「一本」、アナ・ペレス=ボックス(スペイン)を30秒肩車「一本」と一蹴し、決勝では今大会最大の難関オデット・ジュッフリダ(イタリア)と対戦。開始51秒に肩車で「技有」を奪うと、以降は得意の足技を狙うジュッフリダの誘いに乗り過ぎず、自らの動きを抑えてじっくりチャンスを待つ。2分21秒、立ち際に得意の釣り手一本の形が出来上がると、この機を見逃さず左一本背負投。深く腕を抱え込んだこの一撃で「技有」を得て試合を決めた。

ブシャーの仕上りは極めて順調。得意の肩車はバリエーションがさらに増え、「腕さえ拾えば潜り込んでどんな形でも投げる」達人の域。キトゥに反則紛いの投げを打たれた場面では審判へのアピールを敢えて抑えるなど戦い方全般に抑制が利いており、課題のメンタルも十分意識している模様。現時点における打倒・阿部詩の一番手は間違いなくこの人、と断言出来るハイパフォーマンスだった。

3位にはジェフェン・プリモ(イスラエル)とプップ・レカ(ハンガリー)が入賞。この日はジュフリダのみならずプップ、キトゥ、エヴェリン・チョップ(スイス)ら足技の手練れの活躍が目立った。この52kg級のみならず、単に取るためだけではなく足技を打つこと自体で展開を作るという日本的な文化が(特に欧州を中心に)出来始めており、数年前を考えれば隔世の感あり。そしてこの日出場がなかったチェルシー・ジャイルス(イギリス、陽性者発覚のためチーム全体が棄権)らの台頭もあり、数年間停滞していた52kg級世界が五輪を前に急激にレベルアップしている印象を受けた。

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6度目の優勝を決めたテルマ・モンテイロ。

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決勝、モンテイロがカヤ・カイゼルから浮技「一本」

57kg級は35歳となった地元・ポルトガルのスター、テルマ・モンテイロ(ポルトガル)が優勝。初戦でこちらも大ベテランの40歳サブリナ・フィルツモザー(オーストリア)を袖釣込腰「技有」で破ると、続く準々決勝はミナ・リベール(ベルギー)を大外刈と出足払の合技「一本」で下してベスト4入り。もっとも厳しいと思われたノラ・ジャコヴァ(コソボ)との準決勝は「指導2」を先行されたまま凌ぎ続ける苦しい展開となったが、試合時間8分を超えてから「指導」2つを追いつく粘りを見せると、GS延長戦6分47秒に得意の右大外刈を決めて鮮やか「一本」。決勝はダークホースのカヤ・カイゼル(スロベニア)を相手にGS延長戦39秒、右大外刈から作用足を流しての浮技という素晴らしい組み立てで強烈「一本」締め。2015年以来6度目となるヨーロッパ制覇を決めた。

35歳となったモンテイロだが、その柔道は間違いなく今がいちばん面白い。ひところは一本背負投と巴投を中心に手数を稼ぐ、内容よりも結果で評価されるタイプに堕ちつつあったのだが、払釣込足という組み立ての軸を得たことで柔道が激変。切れる足技の恐怖を晒して相手の動きをコントロール、払釣込足に出足払、大外刈に袖釣込腰と大技で勝負出来る、柔道自体が魅力的なオールラウンダーに変貌を遂げた。おりしも日本では同世代、2014年チェリャビンスク世界選手権で決勝を争った宇高菜絵が選抜体重別2位入賞を果たしたばかり。柔道はどこまでも上手くなれる、技術と経験を積むことで新たな世界が開ける、と身をもって示してくれた「1985年生まれ世代」の奮闘劇だった。

優勝候補の筆頭と目されたサハ=レオニー・シジク(フランス)は準決勝でカイゼルに苦杯。支釣込足を振り返されて開始2分「技有」失陥、これを取り戻せないまま優勢負けした。3位決定戦を勝って表彰台は確保したものの、実はいまだシニア大会でのタイトルはなし。優勝候補として乗り込んだ大会を獲り損なうことが続いており、五輪を前に純競技力以外での壁にぶつかっている印象。

もう1人の3位はジャコヴァ。3位決定戦はエテリ・リパルテリアニ(ジョージア)とのパワー対決を、隅落「技有」に内股「一本」と立て続けに奪う一方的な内容で制した。

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第1シードのディストリア・クラスニキが優勝。決勝はダリア・ビロディドの欠場による不戦勝ちだった。

48kg級はワールドマスターズ連覇者ディストリア・クラスニキ(コソボ)が圧勝。全試合一本勝ちで決勝まで勝ち上がると、対戦相手のダリア・ビロディド(ウクライナ)が畳に現れず。不戦勝ちで初の欧州制覇を決めることとなった。

ここまで3大会連続でV逸、内容的にもまったくの不出来だったビロディドはどうやら復調気配。戦いの軸である遠間からの大内刈と横三角にこだわることで歯車が回り始め、準決勝までは全試合「一本」で勝ち上がった。しかし実力差を考えれば手間取った印象は否めず、疲労のため「待て」が掛かると目を泳がせてなかなか立ち上がれない場面も頻発。コンディション面、そして課題のメンタル面はまだ整っていないと評するのが妥当なところ。決勝は五輪を見据えての戦略的撤退という形だが、クラスニキのとの出来の差を考えれば敵前逃亡との評価はまぬがれない。本来であればここで優勝して「禊ぎ」を済ませ、過去3大会の不出来をアクシデントの域に押し込めたかったはずだが、「絶対王者」の称号を五輪に持ち込むことはもはや難しいという印象だった。

各階級の入賞者と成績上位者、決勝ラウンドの結果は下記。

■ 48kg級
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48kg級メダリスト。左から2位のダリア・ビロディド、優勝のディストリア・クラスニキ、3位のメラニー・クレモンとサビーナ・ギリアゾワ。

(エントリー21名

【入賞者】
1.KRASNIQI, Distria (KOS)
2.BILODID, Daria (UKR)
3.CLEMENT, Melanie (FRA)
3.GILIAZOVA, Sabina (RUS)
5.DOLGOVA, Irina (RUS)
5.STANGAR, Marusa (SLO)
7.FIGUEROA, Julia (ESP)
7.RISHONY, Shira (ISR)

【成績上位者】
優 勝:ディストリア・クラスニキ(コソボ)
準優勝:ダリア・ビロディド(ウクライナ)
第三位:メラニー・クレモン(フランス)、サビーナ・ギリアゾワ(ロシア)

【3位決定戦】
メラニー・クレモン(フランス)〇GS反則[指導3](GS3:48)△イリーナ・ドルゴワ(ロシア)
サビーナ・ギリアゾワ(ロシア)〇優勢[技有・大内刈]△マルサ・スタンガル(スロベニア)

【決勝】
ディストリア・クラスニキ(コソボ)〇不戦△ダリア・ビロディド(ウクライナ)

■ 52kg級
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52kg級メダリスト。左から2位のオデット・ジュッフリダ、優勝のアモンディーヌ・ブシャー、3位のジェフェン・プリとプップ・レカ。

(エントリー26名)
【入賞者】
1.BUCHARD, Amandine (FRA)
2.GIUFFRIDA, Odette (ITA)
3.PRIMO, Gefen (ISR)
3.PUPP, Reka (HUN)
5.PEREZ BOX, Ana (ESP)
5.TSCHOPP, Evelyne (SUI)
7.COHEN, Gili (ISR)
7.KOCHER, Fabienne (SUI)

【成績上位者】
優 勝:アモンディーヌ・ブシャー(フランス)
準優勝:オデット・ジュッフリダ(イタリア)
第三位:ジェフェン・プリモ(イスラエル)、プップ・レカ(ハンガリー)

【3位決定戦】
ジェフェン・プリモ(イスラエル)〇合技[小外掛・崩袈裟固](2:29)△エヴェリン・チョップ(スイス)
プップ・レカ(ハンガリー)〇GS合技[肩車・隅落](GS0:54)△アナ・ペレス=ボックス(スペイン)

【決勝】
アモンディーヌ・ブシャー(フランス)〇合技[肩車・一本背負投](2:21)△オデット・ジュッフリダ(イタリア)

■ 57kg級
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57kg級メダリスト。左から2位のカヤ・カイゼル、優勝のテルマ・モンテイロ、3位のサハ=レオニー・シジクとノラ・ジャコヴァ。

(エントリー28名)

【入賞者】
1.MONTEIRO, Telma (POR)
2.KAJZER, Kaja (SLO)
3.CYSIQUE, Sarah Leonie (FRA)
3.GJAKOVA, Nora (KOS)
5.LIBEER, Mina (BEL)
5.LIPARTELIANI, Eteri (GEO)
7.MEZHETSKAIA, Daria (RUS)
7.NELSON LEVY, Timna (ISR)

【成績上位者】
優 勝:テルマ・モンテイロ(ポルトガル)
準優勝:カヤ・カイゼル(スロベニア)
第三位:サハ=レオニー・シジク(フランス)、ノラ・ジャコヴァ(コソボ)

【3位決定戦】
サハ=レオニー・シジク(フランス)〇優勢[技有・大外刈]△ミナ・リベール(ベルギー)
ノラ・ジャコヴァ(コソボ)〇内股(2:00)△エテリ・リパルテリアニ(ジョージア)

【決勝】
テルマ・モンテイロ(ポルトガル)〇GS浮技(GS0:39)カヤ・カイゼル(スロベニア)

写真提供:欧州柔道連盟
Photo: Eurpean Judo Union
※権利者の許可を得て掲載しております。無断転載・転用を禁じます。

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