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【レポート】大物出現、橋口茉央が全試合を投技「一本」の圧勝V/第43回全国高等学校柔道選手権女子無差別レポート

(2021年3月31日)

※ eJudoメルマガ版3月31日掲載記事より転載・編集しています。
【レポート】大物出現、橋口茉央が全試合を投技「一本」の圧勝V
第43回全国高等学校柔道選手権女子無差別レポート
取材・文:eJudo編集部

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準決勝、橋口茉央が稲葉千皓から大内刈「一本」

【決勝まで】

橋口茉央(佐賀県・佐賀商高)と椋木美希(岡山県・創志学園高)、ともに強烈な「一本」を連発してひときわ目立っていた2名が決勝へと勝ち上がった。

橋口は全試合一本勝ちでの決勝進出。1回戦で岡葉月(栃木県・足利短大附高)を僅か26秒の右払腰「一本」(0:26)で畳に沈めると、2回戦で丹波那月(和歌山県・箕島高)に右内股「一本」(0:50)、3回戦で小林絆(京都府・立命館宇治高)に右払腰「一本」(0:35)と、3試合続けて1分以内に、それも豪快な投げで試合を決める圧巻の勝ち上がり。準々決勝では鋭い足技の切れも見せ、檮木碧(三重県・高田高)を右小外刈「一本」(1:20)に沈めてベスト4入り。続く準決勝も稲葉千皓(東京都・国士舘高)をまったく相手にせず、右小内刈「技有」、右大内刈「一本」(2:29)と2度投げつけて一蹴。凄まじい強さで決勝の畳へと辿り着いた。

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準決勝、椋木美希が星野七虹から払腰「一本」

対する椋木も素晴らしい内容。まず1回戦で熊谷李美(宮城県・東北高)に一方的に「指導」3つを積み重ねての「指導3」反則(2:03)、続く2回戦で中村菜美(青森県・八戸学院光星高)に左小外刈「技有」から横四方固で抑え込んでの合技「一本」(1:06)と序盤戦を手堅く勝ち上がると、最初の山場と目された3回戦では澤崎凜(愛知県・大成高)と対戦。この試合はGS延長戦までもつれ込むが、最後は左内股「技有」(GS4:24)で勝利してベスト8入りを決める。ここから明らかに一段ギアが上がり、準々決勝では大森恵花(東京都・渋谷教育学園渋谷高)を、相手のクロスグリップの左大外刈を切り返しての豪快な大外返「一本」(1:40)。これは自らの引き手が頭の後ろにある力のこもらない状態のまま投げつけた凄まじい一撃。続く準決勝でもここまで全試合一本勝ちで勝ち上がってきた星野七虹(神奈川県・桐蔭学園高)を豪快な左払腰「一本」(1:43)に沈めて決勝進出を果たした。

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橋口が椋木の内股を華麗に透かす

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しっかり決めきって「一本」

【決勝】

橋口茉央(佐賀県・佐賀商高)○内股透(1:30)△椋木美希(岡山県・創志学園高)

橋口が右、椋木が左組みのケンカ四つ。いずれも技一発の威力を押し出した攻撃的な選手、試合は序盤から攻め合いとなる。まず橋口が巧みな釣り手のコントロールで釣り手を内から持つ形を作り、引き手で袖を得た20秒に右内股。しかし椋木余裕を持って立ったまま受けきり「待て」。続く攻防では橋口が腰を切ったタイミングに椋木が左小外掛を合わせるが、今度は橋口が立ったまま弾き返し、浮落に切り返して伏せさせる。ここからは組み手の攻防が続き、1分2秒に椋木が強引な左内股で橋口を振り回すように伏せさせ「待て」。

続く展開、先に橋口が釣り手を内から得て引き手で袖を得るが、椋木がすぐに下から釣り手を内に差し入れ持ち直す。さらに引き手も外からに持ち替えようとすると、先んじて橋口が右支釣込足、これに椋木が左大内刈を打ち返してもつれるような形で場外際に両者が移動する。しばし組み合ったままの膠着を経ての1分20秒、椋木が相手を前に煽り出そうと釣り手を振ると橋口これに鋭く反応、先に腰を切って右内股。しかしこれは浅く、椋木すぐさま腰を差し返して左内股を打ち返す。ぶら下がるような形になってしまった橋口は釣り手を離し、相手の背中に回す。このまま腰を落とし、誘う構え。すると椋木は釣り手を相手の帯に持ち替え「吊る」理合の左内股で勝負に出る。両者ともにまことに適切な状況判断。しかしここは誘った橋口の側に分があった。跳ね脚の挙上動作に一瞬先んじて自らの脚を高く上げて透かし、引き手の牽引を効かせて捻り落とす。橋口の美技炸裂。的を失った椋木の体は勢い良く背中から畳に落ちて1分30秒内股透「一本」。橋口が全試合一本勝ちという抜群の内容で各チームのエース格が揃う女子無差別を制した。

冒頭書かせて頂いた通り、両者の強さは際立っていた。特に橋口の強さには、トーナメントがひとめぐりした段階で早くも「この選手が優勝するだろう」と思わせるだけの説得力があった。決勝はこの日会場で最も良い柔道をしていた2名が順当に勝ち上がり、そして雌雄を決するという構図のまさに頂点対決。その上で双方が投げで勝負を決めんと積極的に攻め合い、そして実際に投げで勝負が決まった。見ていてカタルシスのある、満足感の高い階級であった。

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準々決勝、橋口茉央が檮木碧から小外刈「一本」

橋口はそもそもの地力で一段抜けており、加えて豪快な腰技、跳ね技に鋭い足技、さらには小型選手の必須技術である内股透も使いこなし、「技」と「体」が高い位相でバランスしていた。「これさえやれば」と早い段階で自分の得意な技術数個に潜り込み、適性に叶った引き出しを増やせないまま年齢を重ねることの多い女子の重量級選手としてはちょっと信じがたいほどの出来の良さ。また、重量級の女子選手には気持ちが弱い選手が多いのだが、橋口は優勝後のインタビューで「ひとわたり見た瞬間に優勝するのは自分だな、自分が一番強いなと思った」と堂々と言ってのけるなど、「心」の点でも異次元。身体能力高く柔道はのびやか、加えてこの強心臓。まさに大物出現、シニアでの活躍が楽しみである。

敗れた椋木も素晴らしい柔道を披露。決勝では紙一重の投げの打ち合いで遅れを取ったものの、柔道の筋目のよさ、潜在能力の高さはこちらも特筆もの。さらなる成長に期待したい。

橋口の佐賀商はこの日3名が決勝に進出する大活躍、椋木の創志学園も決勝に2人を送り込んでいる。夏のインターハイは団体、個人と、この2人が暴れまくる大会になるだろう

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優勝した橋口茉央

【入賞者】
(エントリー47名)
優 勝:橋口茉央(佐賀県・佐賀商高)
準優勝:椋木美希(岡山県・創志学園高)
第三位:稲葉千皓(東京都・国士舘高)、星野七虹(神奈川県・桐蔭学園高)
第五位:杉村美寿希(滋賀県・比叡山高)、檮木碧(三重県・高田高)、渡邊菜月(大阪府・東大阪大敬愛高)、大森恵花(東京都・渋谷教育学園渋谷高)

橋口茉央選手のコメント
「とても嬉しいです。絶対に「一本」を取ってやるという気持ちで畳に上がりました。一戦一戦しっかり自分の柔道ができていて良かったと思います。(自分の柔道は)持ってからすぐ技を掛ける柔道です。(決勝で敗れたチームメイトは)頑張っていました。力に変えました。みんなの分まで絶対に自分が取ってやるという気持ちで戦いました。(優勝できるなという)手応えがありました。一渡り見た瞬間にこれはいけるな、自分が一番強いなと思いました。目標の選手は素根輝選手です。身長が低くても高い選手に負けずにバンバンいけることに憧れます。組み手をもっと徹底してやれば大きい相手でも投げられると思います。担ぎ技は練習中、試合で掛けたことはないけれど伸ばしていきたいです。自分の良いところは持ったらすぐに技を出せるところ。(コロナ期間は)マスクを付けての練習だったので、それでスタミナがついたかな?ここ一年で一番伸びたのは気持ち。心が折れなくなりました。1番の得意技は払腰です。高校ではまだまだ大会が続くので、全部の大会で優勝したいと思います。将来的にはオリンピック選手を目指して頑張ります。」

【準々決勝】
稲葉千皓○優勢[技有・大外巻込]△杉村美寿希
橋口茉央○小外刈(1:20)△檮木碧
星野七虹○合技[大内刈・崩上四方固](2:08)△渡邊菜月
椋木美希○大外返(1:40)△大森恵花

【準決勝】
橋口茉央○大内刈(2:29)△稲葉千皓
椋木美希○払腰(1:43)△星野七虹

【決勝】
橋口茉央○内股透(1:30)△椋木美希

※ eJudoメルマガ版3月31日掲載記事より転載・編集しています。

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