PAGE TOP ↑
eJudo

【レポート】石岡来望、しぶとい柔道で初の全国優勝もぎとる/第43回全国高等学校柔道選手権女子63kg級レポート

(2021年3月31日)

※ eJudoメルマガ版3月31日掲載記事より転載・編集しています。
【レポート】石岡来望、しぶとい柔道で初の全国優勝もぎとる
第43回全国高等学校柔道選手権女子63kg級レポート
取材・文:eJudo編集部

eJudo Photo
3回戦、石岡来望が松田蘭から背負投「技有」

【決勝まで】

石岡来望(岡山県・創志学園高)と鹿歩夏(佐賀県・佐賀商高)の、2019年インターハイでともに1年生ながらベスト8まで勝ち上がっている実力者2名が決勝へと勝ち上がった。

石岡は2回戦から登場すると、初戦で福本麻尋(徳島県・板野高)に得意の左背負投「一本」(0:37)と上々の滑り出し。以降も3回戦で松田蘭(三重県・名張高)に背負投で2度投げての合技「一本」(2:20)、準々決勝で髙梨美宙(山形県・羽黒高)に左内巻込「技有」から袈裟固で抑え込んでの合技「一本」(1:45)と万全の内容でベスト4入りを決める。準決勝の相手は前戦で辻ななる(石川県・津幡高)との優勝候補対決を右大内刈「一本」(2:42)で制して勝ち上がってきた矢澤愛理(長野県・松商学園高)。石岡にとっては2019年全日本カデ選手権の決勝で敗れた因縁の相手でもある。この試合は両者一歩も譲らず「指導1」を取り合ってGS延長戦へともつれ込むが、最後は石岡が両袖の袖釣込腰、一度耐えられたところから強引に押し込んでの「技有」(GS4:20)を得て勝利。ライバルとの大一番を制して決勝進出を果たした。

eJudo Photo
準決勝、鹿歩夏が徳田和華から外巻込「技有」

一方の鹿も全試合で投げを決める好内容での勝ち上がり。初戦となった2回戦で中村弘実(神奈川県・相洋高)を切れ味鋭い左小外刈「一本」(2:44)で下すと、3回戦で二宮冴羽(大分県・大分西高)を谷落「一本」(0:55)、準々決勝で松村芽衣(愛媛県・新田高)を大外落「一本」(2:07)と、得意の足技を軸に3試合連続の「一本」でベスト4に勝ち上がる。続く準決勝では一本勝ちこそならなかったが、徳田和華(東京都・淑徳高)にGS延長戦での左外巻込「技有」(GS0:45)で勝利。前評判どおりの強さで決勝への勝ち上がりを決めた。

eJudo Photo
鹿が石岡を大内刈で大きく崩す

【決勝】

石岡来望(岡山県・創志学園高)○GS僅差(GS1:53)△鹿歩夏(佐賀県・佐賀商高)

石岡、鹿ともに左組みの相四つ。低く構えて担ぎ技を狙う石岡に奥を叩いて腰技を仕掛けたい鹿と両者のスタイルは対照的。まず17秒に鹿が奥襟を得て左払腰を仕掛けると、石岡が腰に食らいついて返し技を狙い、両者が同体で伏せる。先に動いた石岡は右手を相手の後帯に差し入れて括り「横返し」。相手を回すことには成功したが、足が抜けずに38秒「待て」。
続く展開でも石岡は両襟の左背負投で相手を伏せさせ片手絞(所謂「腰絞め」)を狙う。ここも鹿が凌ぎ切るが、「待て」が掛かった1分6秒、鹿に消極的姿勢の「指導」が与えられる。

eJudo Photo
石岡は得意の担ぎ技を連発

以降も石岡は相手を振り回しながら得意の担ぎ技を連発。しかし鹿も要所で腰技を放って譲らず、スコアの変動がないまま試合は本戦終盤まで進む。残り3秒、相手の奥襟を嫌って腰を引いて守勢に回った石岡に極端な防御姿勢の「指導」。これでスコアは「指導1」同士のタイとなり、勝負はそのままGS延長戦へともつれ込む(※本大会のルールではGS延長戦で「指導」に差が生まれた段階でGS僅差決着)。

GS20秒、鹿はまず引き手で前襟を得ると次いで釣り手で奥襟を確保、さらに引き手を袖に持ち替え万全の形を作る。これを嫌った石岡が腰を引くと相手の重心移動に合わせて左大内刈に飛び込み、一気に後方に刈り倒す。石岡なんとか体を翻して伏せるが、主審の判定は「技有」。しかし、石岡は完全に腹這いで伏せており、これはすぐに取り消される。以降は石岡が一段警戒レベルを上、本戦と同じ構図で石岡が担ぎ技を仕掛け続ける攻防が続く。GS1分31秒、石岡が左背負投で掛け潰れたところで主審が合議を招集、しかし、ここではどちらにも「指導」は与えられず試合続行となる。

eJudo Photo
この背負投の後に鹿に「指導」が与えられて決着となった。

直後の攻防、これまであくまで手数を積むことを優先して浅い左背負投を連発していた石岡が、釣り手で相手の釣り手を抑えた形から懐に潜り込みながら、引き手を相手の釣り手に持ち替える面白い作りの左背負投を仕掛ける。これまでとは異なる本気の一撃に鹿は完全に背中に乗ってしまい大きく前方に崩れるが、両手で袖を握っての技であったために拘束が甘く、背中を着くギリギリで凌ぐ。続く展開、石岡が両手で引き手側の襟を得て相手にもたれかかるような浅い左背負投で伏せると、主審は再び合議を招集する。鹿の消極的姿勢、石岡の偽装攻撃のどちらも考えられる状況だったが、ここは鹿に消極的姿勢の「指導2」が与えられ、GS1分53秒、石岡の僅差勝利で試合決着。最後に仕掛けた技単体は偽装攻撃と見なされてもおかしくない浅いものだったが、その前段の一発の残像が良く効いたと評価したい。石岡、見事キャリア初の全国優勝達成。

周囲の優勝を飾った石岡は見事。決勝こそ掛け潰れを連発して偽装攻撃のリスクを背負うなどメンタル面の弱さを見せてしまったが、準決勝までは全試合で得意の担ぎ技を決めて「担ぎ技を仕掛け続けてリズムを作る」自身の柔道を貫いた。競技力は十分、今後は勝負どころでいかに気持ちを強く持てるかが課題になるだろう。一方2位の鹿も好選手。組み合った場面での力強さが印象的だった。決勝こそ相手の手数攻勢の前に自分の良さを出すことが出来なかったが、足技を中心に投技にもかなりの威力がある。今後組まれるであろう矢澤や辻といった同タイプの強豪との対戦が楽しみだ

eJudo Photo
優勝した石岡来望

eJudo Photo
準決勝、石岡来望が矢澤愛理から袖釣込腰「技有」

【入賞者】
(エントリー47名)
優 勝:石岡来望(岡山県・創志学園高)
準優勝:鹿歩夏(佐賀県・佐賀商高)
第三位:矢澤愛理(長野県・松商学園高)、徳田和華(東京都・淑徳高)
第五位:辻ななる(石川県・津幡高)、髙梨美宙(山形県・羽黒高)、濱中くるみ(和歌山県・箕島高)、松村芽衣(愛媛県・新田高)

石岡来望選手のコメント
「今までずっとここというときに、自分の弱さが出て勝ち切れなかった。でも、このコロナの期間で先生にも色々指導してもらって、大学生とも一緒に練習させてもらって、より一層強くなれました。優勝できて良かったです。心が折れかける場面も何回もあったんですが、日本一になりたいという気持ちでやり切れました。得意技は背負投です。(コロナ期間は)組み合っての稽古が出来ず、チームとして高め合えなことがきつかったで。自分は結構単純なので、オンとオフを切り替えてやるときは本当にやるという感じでやっていました。やっぱり全国の舞台は楽しい。団体も個人も日本一になって、シニアでも戦っていけるような選手になりたいです。」

【準々決勝】
矢澤愛理○GS大内刈(GS0:18)△辻ななる
石岡来望○合技[内巻込・袈裟固](1:45)△髙梨美宙
徳田和華○合技[内股・横四方固](2:49)△濱中くるみ
鹿歩夏○大外刈(2:07)△松村芽衣

【準決勝】
石岡来望○GS技有・袖釣込腰(GS4:20)△矢澤愛理
鹿歩夏○GS技有・外巻込(GS0:45)△徳田和華

【決勝】
石岡来望○GS僅差(GS1:53)△鹿歩夏

※ eJudoメルマガ版3月31日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る