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【レポート】底の知れない大物感、江口凛が徹底マーク振り切って優勝飾る/第43回全国高等学校柔道選手権女子57kg級レポート

(2021年3月30日)

※ eJudoメルマガ版3月30日掲載記事より転載・編集しています。
底の知れない大物感、江口凛が徹底マーク振り切って優勝飾る
第43回全国高等学校柔道選手権女子57kg級レポート
取材・文:eJudo編集部

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準決勝、井田侑希が山本空から袖釣込腰「一本」

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2回戦、江口凛が姥琳子から崩袈裟固で「一本」

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準々決勝、江口凛が荒川清楓から崩袈裟固で「一本」。2回戦と同様「舟久保固め」と呼ばれる技術である。

【決勝まで】

絶対的な優勝候補と目されていた江口凛(神奈川県・桐蔭学園高)が順当に決勝進出。反対側の山からは井田侑希(埼玉県・児玉高)が勝ち上がった。

井田は1回戦で郷原百恵(京都府・京都文教高)を右袖釣込腰「技有」の優勢で下してトーナメントをスタート。続く2回戦は森川柔(山形県・羽黒高)にGS延長戦での僅差勝利(GS2:21)と振るわなかったが、以降は持ち味の投げ技が冴え渡り3試合続けての一本勝ち。3回戦で大山明莉(東京都・藤村女子高)から右内股「技有」に左一本背負投「一本」(2:28)、準々決勝で瀬野智香(香川県・坂出第一高)から豪快な右内股「一本」(0:17)、準決勝で山本空(大阪府・東大阪大敬愛高)から左袖釣込腰「技有」に右袖釣込腰「一本」(2:37)と計5つの投げを決めて決勝の畳に辿り着いた。

一方の江口は1回戦で豊福花梨(広島県・広陵高)を腕挫手固の形から捲っての横四方固「一本」(2:59)で下して大会を開始。最初の山場となった2回戦では姥琳子(福岡県・修猷館高)に得意パターンの「腹包み」を徹底対策されてGS延長戦までもつれ込むが、最終的にはその「腹包み」からの崩袈裟固(所謂「舟久保固め」)で抑え込んで一本勝ち(GS1:06)。続く3回戦では尾畑はるか(山口県・高川学園高)を「指導2」の僅差優勢で破り、準々決勝では荒川清楓(岡山県・創志学園高)から再び得意の「舟久保固め」で「一本」(2:54)を奪ってベスト4入りを決める。準決勝の相手は同じく優勝候補の奥井花奈(愛知県・大成高)。この試合は両者譲らず「指導2」を取り合ったまま合計時間13分に及ぶ大消耗戦となるが、担ぎ技と足技でしぶとく戦い抜き、最後は「指導3」の反則(GS10:21)で勝利。ぶじ決勝への勝ち上がりを決めた。

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井田が江口から釣込腰「技有」

【決勝】

江口凛(神奈川県・桐蔭学園高)○片手絞(2:21)△井田侑希(埼玉県・児玉高)

江口が左、井田が右組みのケンカ四つ。試合が始まると江口は余計な組み手争いをすることなく引き手で前襟を確保、間髪入れずに釣り手で脇を差しながら低空の左大内刈に飛び込む。この技に井田は大きく崩れて畳に伏せ、江口が得意の寝技を展開しようと背中に着くが、ここは井田も江口の得意パターンを良く承知しており、脇に手を入れさせず凌いで「待て」。ここまで17秒。江口が先手を取った格好だが、しかし以降は一転して井田が優位の時間帯を作る。釣り手で相手の釣り手を抑える形を起点に。まず両袖の右袖釣込腰で江口を伏せさせ、続く攻防も同様の作りから右袖釣込腰、右釣込腰と技を繋いで自らの技で展開を終える。これを受けて1分16秒、江口に消極的姿勢による「指導」。続く展開でも井田の優位は継続、流れを切ろうと江口が放った浅い左一本背負投の戻り際に奥襟を引っ掴み、強引な右釣込腰で相手の上を乗り越えながら回しきって1分30秒「技有」を得る。

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江口が片手絞を狙う

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膝を入れて絞め上げ「一本」

残り時間と井田にまだ「指導」が1つも与えられていないことを考えると、状況を積むスタイルの江口には非常に厳しいポイント失陥。井田が一気に勝利に近づいた印象。追う立場の江口は1分55秒に組み手争いから右一本背負投を仕掛けるが、守りに意識のある井田は余裕を持って、立ったままこれを捌く。

しかし続く展開、井田は組み際に自ら低い左一本背負投を仕掛けるミスを犯してしまう。井田としてはひとまず展開を流して優位を継続せんという意図のはずだが、江口を相手にこれは致命傷。掛け潰れた段階ですでに左手が首に掛かっており、この時点で万事休す。寝技巧者の江口は瞬時に相手の足を抱えて片手絞(所謂「ボーアンドアローチョーク」)の形を作り上げる。右膝を体の間に落として一気に絞め上げると2分21秒、井田が「参った」。劇的な逆転勝利で江口が優勝を決めた。

江口は周囲の徹底マークを見事弾き返しての優勝。その逞しい戦いぶりはリオデジャネイロ五輪63kg級金メダリストのティナ・トルステニャク(スロベニア)の全盛期を彷彿とさせる。相手に手の内がバレていても構わず自分の得意な方法論を押し付け続けて勝利した2回戦や、本来リードを奪われると厳しい「状況を積み重ねるスタイル」ながら土壇場で逆転勝利を収めた決勝など、ちょっと底の見えないスケール感。凄味を感じさせる戦いぶりだった。

一方、敗れた井田も存在感十分。投げに投げまくった準決勝までの勝ち上がり、そして受けの強い江口を投げた決勝と、能力の高さを存分に見せてくれ

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優勝した江口凛

【入賞者】
(エントリー47名)
優 勝:江口凛(神奈川県・桐蔭学園高)
準優勝:井田侑希(埼玉県・児玉高)
第三位:山本空(大阪府・東大阪大敬愛高)、奥井花奈(愛知県・大成高)
第五位:瀬野智香(香川県・坂出第一高)、永松莉菜(佐賀県・佐賀商高)、升澤凛(愛媛県・新田高)、荒川清楓(岡山県・創志学園高)

江口凛選手のコメント
「ポイントを取られたのは組み手の甘さなどによるもの。課題、改善するところがたくさんあります。準決勝も決勝も内容的にはあまり良くなかったので、嬉しいというよりはホッとしたという感じです。(決勝の片手絞は)絞めに入ったのはわかったのですが、相手の手が首のところにありしっかり入らないかと思いました。でもここで決めるしかないと思って、最後まで決めにいきました。立技があまりできないので、得意は寝技。練習で立技から寝技の繋ぎをたくさんやっていたので、それが試合で出せました。(大会が開催されて)やっぱり嬉しかったし、この状況下で開催してくれることにありがたいと思いました。コロナ期間は自分の中でやれることを見つけないといけない時期で、自主性が身につきました。練習ができない期間があって、自分でトレーニングだったり走ったり、体力をつける練習が多かったと思います。準決勝が凄く長い試合になって途中で少しバテてしまったんですけど、後半に巻き返せたのはそのおかげかもと思います。五輪を目指して、これからも全国大会やシニアの大会を勝っていきたいです。世界の舞台で戦える選手になりたい。」

【準々決勝】
井田侑希○内股(0:17)△瀬野智香
山本空○小内刈(0:16)△永松莉菜
奥井花奈○GS小外刈(GS0:32)△升澤凛
江口凛○崩袈裟固(2:54)△荒川清楓

【準決勝】
井田侑希○袖釣込腰(2:37)△山本空
江口凛○GS反則[指導3](GS10:21)△奥井花奈

【決勝】
江口凛○片手絞(2:21)△井田侑希

※ eJudoメルマガ版3月30日掲載記事より転載・編集しています。

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