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【レポート】大会の主役は花岡晴琉、スケール大きい柔道で「一本」連発/第43回全国高等学校柔道選手権男子73kg級レポート

(2021年3月31日)

※ eJudoメルマガ版3月30日掲載記事より転載・編集しています。
大会の主役は花岡晴琉、スケール大きい柔道で「一本」連発
第43回全国高等学校柔道選手権男子73kg級レポート
文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

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2回戦、花岡晴琉が小幡礼希から内股「一本」。

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花岡は続く3回戦も鈴木孝太朗から内股「一本」。

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準決勝では全中王者の平野蒼空も内股「一本」に屠り去る。

【決勝まで】

序盤戦に大会最大級の衝撃。2回戦で花岡晴琉(宮崎・延岡学園高)が、優勝候補筆頭格と目された小幡礼希(奈良・天理高)を内股「一本」で打倒。それも開始僅か7秒という「秒殺」、斬撃と呼ぶべき切れ味鋭い一撃であった。近畿ブロック大会を全試合一本勝ち、ほぼすべてをこの内股で勝ち抜いている小幡は「一本」の宣告を聞いてガックリ。一方の花岡は、これが当たり前とばかりに淡々と開始線に戻り、大物感十分。

1回戦でも筒井直也(新潟・新潟第一高)を1分7秒の内股「一本」で屠っている花岡の勢いはこの後も止まらない。小幡打倒で一気に注目を浴びることとなった3回戦も鈴木孝太朗(岐阜・美濃加茂高)を1分14秒内股「一本」。準々決勝はV候補の一角に挙げられる竹市裕亮(福岡・大牟田高)に粘られたが、残り36秒竹市の隅返を空中で組み止めて制し、叩き落として浮落「技有」、このポイントで勝ち抜け決定。迎えた準決勝は同学年の全国中学校大会王者平野蒼空(神奈川・桐蔭学園高)と激戦。投げの切れ味と威力に勝るのは明らかに花岡だが、平野の粘りと「際」の強さは異次元。たとえ投げが嵌っても最後に背中を着くのはどちらかわからない、というエキサイティングな試合となったが、花岡はこの面倒な相手にもあくまで投げ一発の威力で勝負。残り5秒には組み手で圧し、思わず畳に着いた平野の腕を引き手で拾い、得意の右内股で完璧に投げつける。これは「待て」の後でノーカウントとなったが、動揺することなくGS延長戦でも大技を連発。1分20秒過ぎからは内股、内股、大内刈と迫力の3連打、さしもの平野もここで気持ちが折れた印象。花岡続く展開で釣り手で深々背中を得ると、またもや右内股。ケンケンで回し、決して逃さぬところまで間を詰めてから満を持して体を捨て、豪快「一本」。5戦中4戦を内股「一本」で決めるという素晴らしい勝ち上がりで、見事決勝進出の栄を得た。

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3回戦、田中龍雅が加藤真那登から内股「一本」

逆側の山では全国中学大会2階級制覇者の後藤颯太(千葉・習志野高)が初戦(2回戦)で消える波乱。中川倖士朗(高知・岡豊高)が恐れを知らぬ試合ぶりでペースを掴み、最後はGS延長戦6分45秒、膝車で「技有」を奪って勝利を決めた。

このブロックからの決勝進出者は1年生の田中龍雅(佐賀・佐賀商高)。こちらも花岡に勝るとも劣らない、素晴らしい勝ちぶり。1回戦は今野太陽(宮城・仙台育英高)から2分14秒小外刈と隅落の合技「一本」、2回戦は斉藤尊(京都・京都文教高)を2分12秒釣込腰「一本」、3回戦は加藤真那登(福島・東日本国際大昌平高)を開始51秒の内股「一本」、準々決勝は南出健慎(石川・鶴来高)を1分11秒背負投「一本」と他を寄せ付けぬ圧倒的な出来。準決勝は前述中川をベスト8で下した大搗弘晟(兵庫・神港学園高)から袖釣込腰「技有」を奪って勝利決定。5戦して「一本」4つに「技有」優勢1つという、花岡とまったく同じスタッツで決勝へ駒を進めることとなった。

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花岡が思い切った右大外刈。田中は驚異的な粘りでポイントを回避。

【決勝】
花岡晴琉(宮崎・延岡学園高)○優勢[僅差]△田中龍雅(佐賀・佐賀商高)

花岡の強い体と豪快な内股、対する田中の厳しい組み手と担ぎ技。キャラクターの立った両者による注目の一番は、ともに右組みの相四つ。花岡引き手で袖を一方的に掴んでいきなりの優位、田中はどうしても切れず、両手でこの腕を抑える形の右体落に潰れて展開を切る。

続く展開も花岡が一方的に引き手を確保。両袖で抗した田中だが腰を引いて守らざるを得ず、このまま大内刈に潰れて「待て」。田中は組み際に釣り手で袖を抑えながらの右小内刈を放って展開を散らし、花岡はまず引き手で前襟を掴むと背筋を立て、相手を蹴り崩しながら組み手を整える。続いて再び蹴り崩して相手の背を低くさせ、瞬間釣り手で上から背中を掴み、体勢は十分。さらに釣り手で後帯を握って退路を封じると、思い切り右大外刈に飛び込む。これで試合を決めんとの殺気満々、そしてまともに力を食った田中が吹っ飛ぶ軌道はポイント級。しかし驚異的な粘りで背からの着地は逃れ「待て」。田中の細かい技の積み上げを花岡が大技一撃で吹き飛ばしてしまったという格好、ここで花岡の優位を認めた主審は1分8秒田中に「指導」を宣告する。

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「指導2」リード後も大技で攻め続ける花岡。

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残り数秒、田中が腰を抱えての袖釣込腰。もっとも取り味のある技を「取りさえすればそのまま勝利」のこの場面まで取り置く、田中の勝負師ぶりも凄まじい。

続く展開も花岡が引き手で袖を一方的に掴んで、優位。引き出しの多い田中は釣り手を肘下に入れて固定しての右背負投、ここから巻き込む形で潰れていったん展開を切る。田中釣り手で相手の引き手の袖を持って押し込むが、一合矛を交えると外側から掴んで優位を取っているのは花岡の側。花岡このまま引き手を折り込んで再び右大外刈の大技、田中は膝を着いて伏せ、なんとか逃れる。直後主審は田中に2つ目の「指導」を宣告。経過時間は2分11秒、残り時間は49秒。

このまま試合が終われば負けとなってしまう田中は激しく前へ。片手の右袖釣込腰で体を預けるが、立って受け切った花岡は位置を正対に直し、奥襟をひっつかむ。たまらず田中が伏せるとそのまま寝技を展開、「待て」が掛かった時点で残り時間は29秒。続いて田中右一本背負投も、花岡再び引き手を折り込み、奥を掴んで右大外刈。両者の体がぶつかって弾け、この技はブレイク。残り時間はほとんどない。

しかしあきらめない田中、ここで組み際に片手の右袖釣込腰。左手で腰を抱えて密着をキープ、このまま回旋を呉れると花岡の体がついてくる。田中が回し、花岡が耐える数秒の間。そしてどうやらノーポイントで花岡が着地した瞬間、終了ブザーが鳴り響く。「指導2」の僅差優勢による花岡の勝利で試合は決着。花岡、キャリア初の全国制覇達成なる。

ともに圧倒的な勝ち上がりで迎えた決勝。花岡のスケール感の大きさと強さが際立った一番であったが、不利をかこつ中で、もっとも可能性のある技を最後の数秒に入れてくる田中の手立ての豊かさと肝の太さも見事。スコア上のリードに満足せず最後まで大技で投げに行く花岡、圧倒的不利にあってもあきらめず最後の最後まで武器を取り置き、絶命級の刃を入れて来た田中。実に見ごたえのある試合であった。

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優勝した花岡晴琉

【入賞者】
優 勝:花岡晴琉(宮崎・延岡学園高)
準優勝:田中龍雅(佐賀・佐賀商高)
第三位:平野蒼空(神奈川・桐蔭学園高)、大搗弘晟(兵庫・神港学園高)
第五位:竹市裕亮(福岡・大牟田高)、川西成汰(岡山・作陽高)、南出健慎(石川・鶴来高)、比嘉俊磨(沖縄・沖縄尚学高)

花岡晴琉選手のコメント
「めちゃくちゃ嬉しいです。自分の柔道は、攻めて『一本』を取る柔道。決勝も投げに行く、攻めることを考えました。どんどん掛ける、『一本』を狙う姿勢が優勝に繋がったと思います。 (-準決勝までは内股で『一本』を量産しました)中学の時から掛け出してずっと、磨いてきた技。コロナで練習が出来ない1年間もひたすら内股を磨く稽古を続けて来ました。1回戦、2回戦が良い出来で、3回戦が自分としてはうまくいかず、どうかな、と思いましたが、磨いてきた内股を信じて、一戦一戦しっかり戦いました。理想は井上康生先生の内股。あのフワっと浮く感じ、こうやって投げたら会場が沸くだろうな、と憧れます。一足、ケンケン、どれも好きで、DVDを見て日々研究しています。次はインターハイの優勝を目指します」

【準々決勝】
花岡晴琉○優勢[技有・浮落]△竹市裕亮
平野蒼空○GS僅差(GS6:18)△川西成汰
田中龍雅○背負投(1:11)△南出健慎
大搗弘晟○GS内股(GS0:13)△比嘉俊磨

【準決勝】
花岡晴琉○GS内股(GS1:44)△平野蒼空
田中龍雅○優勢[技有・袖釣込腰]△大搗弘晟

【決勝】
花岡晴琉○優勢[僅差]△田中龍雅

※ eJudoメルマガ版3月30日掲載記事より転載・編集しています。

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