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【レポート】勝負どころ見極めた戦術眼光る、白金宏都が初の日本一に/第43回全国高等学校柔道選手権男子60kg級レポート

(2021年3月29日)

※ eJudoメルマガ版3月29日掲載記事より転載・編集しています。
勝負どころ見極めた戦術眼光る、白金宏都が初の日本一に
第43回全国高等学校柔道選手権男子60kg級レポート
文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

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準決勝、金井拓真が五十嵐健太から背負投「一本」。

【決勝まで】

決勝に進んだのはいずれも2年生、金井拓真(群馬・桐生第一高)と白金宏都(長野・佐久長聖高)の2人。

金井は1回戦からのスタート。まず渋田凱(福岡・嘉穂高)をGS延長戦41秒の袖釣込腰「技有」で破り、2回戦は山岡弘昌(鳥取・倉吉北高)からGS延長戦2分28秒小外刈「技有」を奪って勝ち抜け。3回戦は加藤修三(宮崎・延岡学園高)をGS延長戦5分7秒という長時間試合の末に僅差の優勢で破り、準々決勝は古賀大士郎(佐賀・佐賀商高)を背負投「技有」による優勢で破ってベスト4入りを果たす。迎えた準決勝はこの学年の全国中学校大会55kg級王者五十嵐健太(神奈川・桐蔭学園高)とマッチアップ、GS延長戦の開始早々に釣り手を片襟に差しての右背負投を決めて鮮やか「一本」。キャリア初の全国大会決勝への切符を手に入れることとなった。

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決勝の畳に臨む白金宏都。

白金はここまでの全試合が延長戦、粘りを見せての決勝進出。まず南太陽(大分・柳ヶ浦高)を相手にGS延長戦56秒、袖釣込腰「技有」を得て初戦を突破。2回戦は宮田大聖(福井・福井工大福井高)をGS延長戦2分16秒背負投「一本」で下し、3回戦は浅井恵河(北海道・北海高)からGS46秒背負投「技有」を奪って突破。準々決勝では久松万照(高知・岡豊高)をGS1分6秒の巴投「技有」で破ってベスト4入りを果たす。準決勝は前戦で優勝候補の近藤耀聖(千葉・習志野高)を僅差で破っている寝業師・林壮真(東京・明大中野高)をしぶとく攻め続け、GS延長戦2分56秒3つ目の「指導」を奪って競り勝ち、こちらも初の全国大会決勝進出を決めた。

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白金が巴投で先制攻撃

【決勝】
白金宏都(長野・佐久長聖高)○GS僅差(GS3:12)△金井拓真(群馬・桐生第一高)

決勝はともに右組みの相四つ。手先の組み手争いが続くも、前に出続ける白金が優位の印象。やや窮した金井が片手の片襟右背負投で展開を切るが空振りして潰れ31秒「待て」。ここまで、互いが組む場面はゼロ。

白金引き手で袖を得ると釣り手で腋裏を持ち、抱えるようにして巴投一撃。両足で制動して転がし、相手が伏せると素早く脇について捲り返しを試み、次いで腕挫十字固を狙う。下から極めんと粘り、体が屈曲して力が籠らなくなったところで「待て」。経過時間は55秒。

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膝をついた金井を、白金が前に引きずる。

ここまで後手を踏む金井、引き手を折り込んで片襟の背負投を仕掛けるが作りが出来ずに技が小さい。白金片襟を掴んで前にあおりを呉れ、金井が釣り手をクロスに入れて耐えるとすかさず体を開いてこれを外す。組み手の軸がなくなった金井は勘の良さゆえか嫌って自ら伏せてしまい、主審は1分19秒偽装攻撃の「指導」を宣告。

以後も一見めまぐるしい組み手争いが続くが、優位を取るのは常に白金。引き手で袖を折り込んで前に出ると金井嫌って場外へ右背負投で潰れ「待て」。再び白金が袖を折り込むと金井右袖釣込腰に潰れ、白金は立ったままこれを前に引きずる。金井は屈したまま膝で畳を滑ることとなり、無抵抗のまま「待て」。さらに白金が引き手で袖を確保して前進、金井がこれを捌きあぐねる絵が続く。金井右の担ぎ技で抗するもお互いの姿勢が低く、空振りに近い技で展開を終えるに留まる。本戦3分はこのまま終了、試合はGS延長戦へ。

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GS延長戦開始早々、金井が袖釣込腰で白金を崩す。

開始早々、金井が片手の右袖釣込腰。これはタイミングが良く、白金前に崩れて「待て」。金井がついに、始めて有効打を放った格好。手ごたえを得た金井は続いて片襟の右背負投を2連発、GS延長戦26秒には白金にも「指導」。

スコアがタイとなったこの時間帯が明らかに勝負の分水嶺。ここで流れを取らんと白金激しく前へ。まず釣り手をクロスに相手の釣り手の袖を下から抑え、すぐさまこれに引き手を合わせて両手で袖を絞る。ここから釣り手を放せば、引き手一本で一方的に袖を絞る形が完成する強いプロセス。この両手を絞った形のまま右大内刈を呉れると、金井大きく崩れて「待て」。

ここに勝機を見出すのが白金の勝負勘の良さ。金井も嫌な予感がしたのかまず片手の袖釣込腰で展開を切って展開を押し戻そうとするが、白金またもや「右で右の袖を下から抑え」「すぐさま左を添えて両手で片手を絞る」プロセスで一方的に袖を掴む。次いで釣り手を放し、これを腋裏に回して抱え込むように得意の巴投一撃。崩れた金井に食いついて脚を腕に絡め「ホイジンハ・ロール」を試みる。これは金井が長い体で耐え切ったが、展開再び白金に振れ始めた印象。

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白金は引き手で袖を得ると、打点の高い右一本背負投を連発。

白金またもやまったく同じプロセスから引き手で袖を一方的に持ち、折り込みながら前へ。金井堪らず場外に出てGS1分57秒「待て」。副審1人が「場外」をアピールし、金井は窮地。もはやこの手順の効果を確信した白金は再び両手で袖を確保、金井右の片襟背負投を2連発して展開を切るが、これは単に眼前の状況を流すにとどまり、根本的解決には至らない。白金さらに一段アイデアを推し進め、同じく釣り手をクロスに両手で袖を抑えると、捨身技中心のこれまでとは一転、打点の高い右一本背負投で抜き上げに掛かる。立ったまま担ぎ、背にぶら下がった相手を内巻込で落としに掛かると激しく崩れた金井なんとか伏せて「待て」。続く展開、金井が担ぎを警戒すると見るや白金同じ動作でフェイントを呉れて今度は巧みな右小内刈、金井が伏せて「待て」。

有効打が2つ続いたこのチャンスを試合巧者・白金は見逃さない。「始め」が掛かると、再び同じ手順で袖を確保、またも打点高く、立ったままの右一本背負投に入り込む。金井たまらず潰れて「待て」。有効打が3つ続いたこの状況に審判団は全員が合意、GS3分12秒主審が金井に2つ目の「指導」を与えて試合が終わることとなった。白金が僅差の優勢で勝利し、初の全国制覇決定。

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2つ目の「指導」で試合が終わった。

ほぼ組み手争いに終始したと言っていい消耗戦。白金のフィールドで進んだ試合であり、金井は本来の力を出させて貰えなかった印象。その一見地味な「指導」の奪い合いの中で、白金の勝負勘の良さがひときわ光った。妥協のない切り合いの中から、この試合で「効く」方法を的確に見分ける戦術眼、そしてそれをしつこく続ける徹底力、さらにそれを土台に一段上のアイデア(打点の高い右一本背負投)を繰り出すジャンプ力。決勝に関しては、白金の勝利はロジカルな結果だった。

成績上位者、優勝者のコメント及び準々決勝以降の結果は下記。

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優勝の白金宏都

【入賞者】
(エントリー47名)
優 勝:白金宏都(長野・佐久長聖高)
準優勝:金井拓真(群馬・桐生第一高)
第三位:五十嵐健太(神奈川・桐蔭学園高)、林壮真(東京・明大中野高)
第五位:宮本隼岳(広島・広陵高)、古賀大士郎(佐賀・佐賀商高)、近藤耀聖(千葉・習志野高)、久松万照(高知・岡豊高)

白金宏都選手のコメント
「全国大会は初出場ですが、人より頑張って来た自信がありました。嬉しいです。決勝の相手とは練習をしたことがあって、強いことが十分わかっていた。試合の前は『一本』を取りに行く柔道をしようと思っていたが、勝ちにこだわって『指導』狙いになってしまった。いつも先生に、『一本』を取りに行く柔道を教えて頂いているんですが、試合の中盤まで取れないと勝ちにこだわり過ぎてこういう試合になってしまう。これがやはり課題です。勝ったからといって次の試合で目標を変えてはいけないなと、あらためて思っているところです。(-延長戦の連続。体力面での不安は?)稽古で補っているので、大丈夫。不安はありませんでした。これからは、自分よりも格上の選手に勝てるような練習をしていきたいと思います」

【準々決勝】
五十嵐健太○優勢[技有・背負投]△宮本隼岳
金井拓真○優勢[技有・背負投]△古賀大士郎
林壮真○GS僅差(GS5:31)△近藤耀聖
白金宏都○GS技有・巴投(GS1:06)△久松万照

【準決勝】
金井拓真○GS背負投(GS0:12)△五十嵐健太
白金宏都○GS反則[指導3](GS2:56)△林壮真

【決勝】
白金宏都○GS僅差(GS3:12)△金井拓真

※ eJudoメルマガ版3月29日掲載記事より転載・編集しています。

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