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【インタビュー】国立大医学部から全日本選手権出場、弘前大・藤本智朗が快挙/令和3年全日本柔道選手権東北予選会

(2021年3月17日)

※ eJudoメルマガ版3月17日掲載記事より転載・編集しています。
国立大医学部から全日本選手権出場、弘前大・藤本智朗が快挙/令和3年全日本柔道選手権東北予選会
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本戦進出を決めた藤本智昭
※写真提供:弘前大柔道部

既報の通り、7日に行われた全日本柔道選手権の東北地区予選会で、弘前大の藤本智朗が2位に入賞して全日本選手権本戦進出を決めた。白陵高(兵庫)出身でインターハイ81kg級ベスト8の実績がある藤本は医学部の3年生。現役医学生の本戦進出は史上初、全日本柔道選手権史に新たな1ページが書き加えられることになった。

学業に手を抜くことが許されない医学部の学生が、全日本選手権という柔道界最高峰の舞台に辿り着いたことはまさに快挙。コロナ禍の中で逆に力を大きく伸ばしたという藤本に、インタビューを試みた。いかに学業と稽古を両立させ、どうこの1年間を過ごして結果に繋げたのか。指導する同大の高橋俊成監督のコメントと併せて、お読み頂きたい。

弘前大・髙橋俊哉監督のコメント
「(―藤本選手はどんな学生ですか?また、監督が考える勝因は?)凝り性で、学業も稽古も手を抜かない学生。夜中にトレーニングをするので、守衛さんから度々クレームが来るくらい。もともとフィジカルが強かったが、この1年で下半身が強化されてバランスが良くなり、力がうまくスピードに転換されるようになって、得意の担ぎ技がさらに切れるようになった。コロナ禍の中で自分の柔道を良く考えたり、中断前に肘を怪我したりしたことで、『力づくではダメだ』と方向を定めたことが良い面に働いたと思います。東北の子は引っ込み思案で、予選でも高校のOBや東京帰りの選手と戦うと一歩下がって遠慮してしまう。それを取っ払ってくれたのは頼もしい。他の学生も力的に物凄く差があるわけではないので、羨むだけでなく悔しがって、良い稽古に繋げてもらいたい。」

■ 藤本智朗選手に聞く
―――全日本選手権本戦進出、おめでとうございます。

ありがとうございます。今年はコロナで学生の試合もなく、力を発揮する場はここしかないなと狙いを定めて、全日本出場という目標に向かって1年間頑張って来ました。それが間違っていなかったと実感しています。

――― 本戦進出のイメージはありましたか?

勿論目指してはいましたが、実際のところ、なかなか現実的には勝つイメージが持てませんでした。ただ、東北は警察選手が優位なので(※編集部註:今年は警察官が出場していない)チャンスが来ているのは間違いない、これを生かさなければとは思っていました。春からは4年生になるので、現役の終わりも近い。なんとかここで勝ちたいという一心で戦いました。

――― この1年間で大きく力を伸ばされたと聞いています。

コロナ禍で、青森でも練習は7月中旬まで出来ず、まず単純に力をつけようとトレーニングでフィジカル面の強化を図りました。きちんと記録していくと、伸びていることが数値で実感できる。また、些細なことでも出来ることがあるはずと食事の内容をしっかり考えるようになった。それでフィジカルが上がって練習が再開してみると、これまで以上に、自分で考える稽古が出来るようになっていたんです。もともとうちの部は、監督の方針で「自分で考える稽古」がモットー。2年生までは練習についていくこと自体に必死でなかなかこれが出来なかったが、フィジカルが上がったことで稽古の中身が変わった。技が強くなったというよりは、相手の技をしっかり受け止められるようになって、『自分の練習』が出来る時間が増えた。自分はどう攻めるか、どういう工夫をするかに稽古のリソースを割けるようになった。部員もそれほど多くないし層も厚いとは言えないので、「今日は足技とこの技だけ」「わざと組ませる」など課題を持って稽古しています。それが結果に繋がった面はあると思います。

――― 身長、体重と、いまのウエイトの数値や、おもに取り組んでいる種目を教えてください。

身長は176センチ、体重は93キロ。スクワットは240キロ、ベンチプレスは175キロでやっています。大野将平選手に触発されて、ハイクリーンなどもやっています。

―――柔道歴を教えてください。また、医師を志したのはいつごろから?

5歳のときに、明石市にあった野々池柔道サークルというところで柔道を始めました。白陵中高に進んで、柔道部に入りました。医師になりたいと思ったのは中学2年くらいから。兵庫県では進学校で、周りに医師志望者が多かったことに影響されたのだと思います。先生が、柔道も勉強も頑張れと励ましてくれて、どちらも続けることが出来ました。

――― 高校時代はインターハイで2年時ベスト16、3年時にベスト8。

高校のときも大した選手ではなく、どちらかというと勉強中心。大学に入っても同じ感じでいけると思ったら、稽古がきつくて1、2年生まではついていけなかった。ですので、良いタイミングで自粛期間が来たとも思います。フィジカルを上げることも出来ましたし、考える時間が増えて、結果的に稽古の土台を作り直せたと思っています。

――― 医学生は忙しいと思います。普段の生活、1日の平均的なスケジュールを教えてください。

朝は7時から8時まで部全体の朝練に参加します。そのあと車で医学部キャンパスに移動して、8時40分から17時30分まで授業。もう稽古が始まっているので、遅れて、18時から稽古に出ます。1時間15分から1時間半くらい練習して、そのあとは家に帰って勉強。23時からジムに行って1時くらいまでトレーニング。怒られるかもしれませんが、いま嵌っているのでなかなか止められない。寝るのは2時くらいで、6時半くらいに後輩に起こしてもらって(笑)、それから朝練に行きます。疲労が溜まるとトレーニングを休む日を作ったり、授業がないタイミングで眠ったり。睡眠は5時間くらいですね。

―――かなりハードですね。その中で全日本選手権出場という、柔道人最高の栄誉を得ました。

一生懸命考えたことが形になったのは、自分の人生の自信になります。

―――柔道の好きなところは

これも、大学に入って高橋先生のもとで柔道をすることになって、考えることが増えたテーマです(笑)。自分はなんで柔道が好きなのだろうと。まだ明確に答えは出ていません。考えずに直感的に出した答えは、純粋に投げて気持ちいいと感じられること。考えた答えは、まだ形になっていんですが、「精力善用 自他共栄」の周辺にあると思っています。柔道が物凄く強い選手でも、それで直接社会の役に立つのは難しい。オリンピックに出るレベルになるとまた違うかもしれませんが。ただ、練習の中で、どうやろうかと考えること自体、しんどいことを耐えたり乗り越えたりすること自体、ここで培った考える力や忍耐力は将来の仕事や人生に絶対に役立つと思っています。

―――全国の、勉強も柔道も頑張る高校生に何かひとことお願いします。

柔道競技以外にも、勉強しながらスポーツを頑張る子はたくさんいます。ただ、柔道の世界では柔道だけで評価されるのは当然のこと。それがスポーツの良いところだし、魅力だとも思います。これは両方やろうとする人にはしんどいことかもしれないし、自分も、どちらか片方で行きたいと思ったことはありますが、そこで頑張ることで得られることもたくさんあります。色々なことを頑張っているということ自体で得られる評価もあるし、成果は生活の色々な面で出てくると実感しています。あきらめないで頑張って欲しい。私も、偉そうなことを言えるわけではなく、まだそれが何かを考えている立場。考えて、一緒に頑張っていきましょう。

―――将来、どんな医師を目指すか、ビジョンを聞かせてください。

整形外科医を目指しています。全日本柔道連盟の医科学委員会に興味があって、ぜひ関われるようになりたいと思っていますが、なにより、勤務する病院で1人1人の患者さんにしっかり向き合って、しっかり診られる医師になりたいです。

―――全日本選手権という大舞台に向けて

出場する選手は有名な選手ばかり、強豪実業団や大学で鳴らす人たちばかりです。その中で、自分は、誰にも知られていない選手。自分が勝つと思っている人はいないと思いますが、マークされていないアドバンテージというのもあると思います。自分は背負投が得意なのですが、技の特徴として、決まるときはかなり派手に決まるんです(笑)。大舞台でこの技を決めて、一泡吹かせてやりたい。まだまだ時間もありますし、まずは1勝を目指して全力で頑張ります。

※ eJudoメルマガ版3月17日掲載記事より転載・編集しています。

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