PAGE TOP ↑
eJudo

【プレビュー】第43回全国高等学校柔道選手権・男子個人戦5階級ひとこと展望

(2021年3月17日)

※ eJudoメルマガ版3月17日掲載記事より転載・編集しています。
第43回全国高等学校柔道選手権・男子個人戦5階級ひとこと展望
eJudo Photo
日本武道館に高校生が帰って来た。写真は一昨年度大会の開始式。

第43回全国高等学校柔道選手権がいよいよ19日(金)に開幕。コロナ禍による1年休止を経て、ついに高校生の全国大会が再開されることとなる。個人戦のみの開催とはいえこの一歩はまことに大きい。困難な社会状況の中、強い意志で実現に向かって動いた全国高体連柔道専門部、そして主管を担う東京都高体連柔道専門部の労に敬意を表したい。

さて、今年も「ひとこと展望」で有力選手を紹介させて頂くのだが、ご存じの通り高校カテゴリの大規模大会は丸一年以上開催されておらず、情報が極端に乏しい。この1年間で急激に伸びた選手をフォローすることは難しく、今回は2019年冬季招待試合までの戦いぶり、そして全国中学校大会の結果から延長線を引くという形で有力選手を紹介したい。観戦の指標となれば幸いである。

女子はオフシーズンの招待試合が少なく、大規模大会の開催は2019年夏(2代前)まで遡る。この時高校カテゴリで活躍していた現2年生は当然ながら極端に限られ、当時カデカテゴリで結果を残した選手の出場も57kg級の江口凛(桐蔭学園高)と63kg級の矢澤愛理(松商学園高)ら非常にわずか。もともと女子は全国中学校大会からの結果の反映率が高くなく、階級によっては現時点での戦力分析が、たとえ仮説のレベルであっても立てにくい状況にある。今大会の「ひとこと展望」は男子のみとさせて頂く。何卒ご了承願いたい。

■ 無差別 勝負力の中山康、膂力の甲木碧、切れ味の齋五澤凌生
eJudo Photo
中山康(大成高)

1年生時から活躍した選手が多く、コロナ禍による休止を経た今大会にあっても比較的有選手の顔が見えやすい階級。優勝候補と考えられる選手を何人か挙げてみたい。

「勝負力」という観点からは大成高のエース、2018年全国中学校大会90kg級の覇者・中山康を推す。体幹が強く足技も切れるオールラウンダーで、ここぞの勝負どころを譲らない勘の良さと気の強さ、そして場面に応じた引き出しの豊かさがある。世代全体が1年間試合不足で、技を磨くことは出来ても相手のタイプや状況に応じた「試合力」を伸ばすことが難しかったというこの状況にあっては、勝負の綾をもぎ取ることに長けた中山のような勝負師タイプに相対的なアドバンテージが生まれる可能性は十分。

eJudo Photo
甲木碧(木更津高)

もう1人、2018年全国中学校大会90kg超級3位の甲木碧(木更津高)の名前を挙げておく。2019年冬季招待試合シリーズでは1年生ながらエース級の働きだった。勝負どころで駆使した技が「抱き勝負」中心というパワー頼りの危うさも感じさせたが、このタイプとしては世代随一の力を持つのではないかと思われる。誰にも負けぬ膂力の獲得を目指したのか、技術の習得に舵を切ったのか、今大会はこの1年の研鑽の方向性が問われる。この甲木の配された右下ブロック最下段は長濱佑飛(埼玉栄高)、笠原勇馬(作陽高)が同居し優勝候補3人が2回戦までに潰し合う大会屈指の「死のブロック」。笠原が所属する作陽は抱き勝負の得意な大型に対して対処の引き出し豊か。笠原はもともと本格派だが、どんな手段を持ち込むのか非常に楽しみ。

これに、トーナメント左最上段に座った藤本偉央(崇徳高)を加えたところまでが過去の実績からの優勝候補。1年生世代では2019年全国中学校大会90kg級3位の齋五澤陵生(白鴎大足利高)に注目したい。上位に完成度の高い人材揃った同大会では優勝こそ逃したものの、柔道の気風の良さ、投技の切れ味では世代ナンバーワンクラスだった。甲木・長濱・笠原の「死のブロック」の勝者をベスト4で待ち受ける、これも厳しい位置に配されたが健闘に期待。

【2018年全国中学校大会上位入賞者×今大会出場者】
90kg級 ①中山康(大成高) ②長濱佑飛(埼玉栄高)
90kg超級 ③笠原勇馬(作陽高) ③甲木碧(木更津総合高)
【2019年全国中学校大会上位入賞者×今大会出場者】
90kg級 ③齋五澤凌生(白鴎大足利高)

■ 81kg級 柔道伸びやかな天野開斗と菊池駿星に注目
eJudo Photo
天野開斗(東海大相模高)

eJudo Photo
菊池駿星(大成高)

eJudo Photo
長谷川環(日体大荏原高)

柔道の質から、天野開斗(東海大相模高)と菊池駿星(大成高)に注目しておきたい。

1年時から団体戦に出場、それも前代全国優勝候補の筆頭だった東海大相模高でレギュラーを争った天野開斗は激戦地・神奈川から2年連続の代表権獲得。神奈川県予選ではケレン味のない柔道で、全試合を秒殺「一本」で勝利していた。一見すると線が細く、組み手にうるさい難剣遣いと戦ったときにどれだけの対応力があるかまだ測りかねるところはあるが、何より戦いぶり自体に注目しておきたい選手だ。

菊池も1年生時から団体戦のレギュラーとして活躍。2019年冬季招待試合シリーズは、大技ばかりで攻めまくる骨の太い戦いぶりで一本勝ちを連発、チームの水田杯制覇に貢献した。当時はまだ線の細い印象であったが、大成らしく「まず地力を練る」スタイルのこの方向で稽古を積んでいれば、かなりの成長が期待出来るはず。

1年生世代からは、2019年全国中学校柔道大会の覇者・長谷川環(日体大荏原高)が出場。一発の強さに加え、切れる足技が特徴。もともとスケール感のある選手だが、東京都の戦い方を見る限り組み手の手堅さも得つつあり、今大会も期待大。この代の全国中学大会団体戦優勝メンバーで個人戦では長谷川と決勝を争った粂田和樹(埼玉栄高)にも注目。

【2018年全国中学校大会上位入賞者×今大会出場者】
73kg級 ③長澤篤希(静岡学園高)
81kg級 ①菊池駿星(大成高) ③東郷丈児(鹿児島情報高)
【2019年全国中学校大会上位入賞者×今大会出場者】
81kg級 ①長谷川環(日体大荏原高) ②粂田和樹(埼玉栄高)

■ 73kg級 V候補は後藤颯太、戦いぶり楽しみな小幡礼希
eJudo Photo
全国中学校大会で2階級を制した後藤颯太(習志野高)

eJudo Photo
小幡礼希(天理高)

他階級から体重を上げて流入した有望選手が多く、様相の読めない激戦階級。

天理高の1年生・小幡礼希の前評判が高い。近畿ブロック大会は全試合一本勝ちで優勝、4戦中3戦を得意の内股「一本」で勝利している。天理の柔道が資質に噛み合ったか、全国小学生学年別大会連覇時を彷彿とさせる、どころかそれ以上の圧倒的な勝ちぶり。今大会もっとも楽しみな選手の1人である。初戦を勝ち抜くと2018年全国中学校大会55kg級2位の五十嵐雅人(埼玉栄高)と戦うことになっており、ここが最初の山場。

2017年の50kg級、2018年の60kg級と全国中学大会を2連覇した後藤颯太(習志野高)は実績、実力の両面から優勝候補の筆頭。足技が切れ、反射神経が良く、体幹が強い。体重を増やしながら強くなるという「伸びる」選手の条件を満たしながら、しかも常に結果を残し続けているこの世代のスター候補である。

2018年全国中学大会73kg級の覇者・平野蒼空(桐蔭学園高)は泥臭く、自身の連続攻撃を押し付けてペースを掴める勝負師タイプ。これら全国王者経験者に全国中学校大会60kg級2年連連続ベスト8の竹市裕亮(大牟田高)を加えたところまでが優勝候補と考えられる。竹市と森勇晟(日体大荏原高)が戦う1回戦は全階級通じた序盤の最注目カードの一。

【2017年全国中学校大会上位入賞者×今大会出場者】
55kg級①後藤颯太(習志野高)
【2018年全国中学校大会上位入賞者×今大会出場者】
55kg級 ②五十嵐雅人(埼玉栄高)
60kg級 ①後藤颯太(習志野高)
66kg級 ③花岡晴琉(延岡学園高)
73kg級 ①平野蒼空(桐蔭学園高) 
【2019年全国中学校大会上位入賞者×今大会出場者】
55kg級 ③田中龍雅(佐賀商高)
60kg級 ③高森和(比叡山高)
73kg級 ③小幡礼希(天理高)

■ 66kg級 服部辰成と顕徳海利の1年生2人に注目
eJudo Photo
全日本カデを制した福田大和(平田高)

eJudo Photo
服部辰成(東海大相模高)

eJudo Photo
顕徳海利(神港学園高)

2年生世代の全国中学校柔道大会(2018年)で決勝を争った福田大和(平田高)と猪瀬真司(埼玉栄高)がともに県代表で出場。福田は2019年全日本カデも全試合一本勝ちの圧倒的な強さで制しており、実績からの優勝候補はこの2人ということになる。

トーナメントの軸になり得る有力選手として、服部辰成(東海大相模高)と顕徳海利(神港学園高)の1年生2人を挙げたい。服部は世代きっての大物と目される注目株。全国中学校柔道大会では早くから優勝候補に挙げられながら2018年に60kg級で2位、徹底マークを受けた2019年は66kg級ベスト8と頂点に立つことは出来なかったが、柔道自体の完成度の高さは高校生離れしている。組み手、足技、投げに寝技と神奈川県予選ではあまりの隙のなさゆえ逆にスケール感を測ることが出来なかったが、強敵揃う大舞台でどんな試合を見せてくれるか非常に楽しみ。

2018年に全国中学大会50kg級2位、2019年に55kg級を制した顕徳は未完の天才肌。同大会では切れ味鋭い技で勝負を決め続け全試合一本勝ちの圧勝。スピードファイター揃うこの階級にあって、速さそれ自体で相手を寄せ付けなかった。今年の近畿ブロック大会決勝では秋田伯(比叡山高)に上四方固「一本」で敗れており、スピードファイターゆえの「軽さ」が払拭出来ていない可能性があるが、今大会ではかなり面白い試合を見せてくれるはず。

組み合わせは顕徳と福田が左下、服部と猪瀬が右下にまとめられて潰し合い。上記の秋田と、2019年全国中学校大会2位の末次晴倫(福岡・沖学園中)が比較的戦い易い山に配される形となった。

【2018年全国中学校大会上位入賞者×今大会出場者】
55kg級 ③石本力也(箕島高)
60kg級 ③工藤泰輝(修徳高)
66kg級 ①福田大和(平田高) ②猪瀬真司(埼玉栄高)

【2019年全国中学校大会上位入賞者×今大会出場者)】
55kg級 ①顕徳海利(神港学園高)
66kg級 ②末次晴倫(沖学園高)

■ 60kg級 全中制した五十嵐健太、近藤耀聖らに注目
eJudo Photo
五十嵐健太(桐蔭学園高)

eJudo Photo
近藤耀聖(習志野高)。50kg級出身ながら軽量級王国・千葉を勝ち抜いての出場。

中学時代の有力選手が増量して転出、さらに世代を引っ張ると目された2019年全国中学校大会の覇者小野日向(足立学園高)が東京都の支部予選にエントリーしなかったため今大会は不参加。高校カテゴリの試合も1年間まったくなく、5階級中もっとも「やってみなければわからない」階級となっている。

参加者のうち、全国中学大会の勝ちぶりが印象的だったのは、2019年大会50kg級を制した近藤耀聖(習志野高)。一見薄い体から力強く切れ味ある技を連発、飄々と「一本」を重ねていた。2年生世代では同2018年大会55kg級優勝の五十嵐健太(桐蔭学園高)、そして中学時代からのこの階級の実績では2019年大会60kg級2位の井出凱王(天理高)の名前が挙がる。1月の近畿ブロック大会決勝で井出を破って優勝している田村倫徳(比叡山高)も気に掛けておきたい。

組み合わせは序盤に山場があり、右上ブロックでは1回戦で近藤と井出が激突。左上では、五十嵐の初戦に田村がかち合う可能性大。

【2018年全国中学校大会上位入賞者×今大会出場者】
50kg級 ③吉田晴平(田村高)
55kg級 ①五十嵐健太(桐蔭学園高) 
【2019年全国中学校大会上位入賞者×今大会出場者】
50kg級 ①近藤耀聖(習志野高)
60kg級 ②井出凱王(天理高)

※ eJudoメルマガ版3月17日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る