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【プレビュー】100kg超級の優勝候補は影浦心、ライバルはスタイル被るキム・ミンジョン/グランドスラム・タシケント2021最終日男子プレビュー(90kg級、100kg級、100kg超級)

(2021年3月7日)

※ eJudoメルマガ版3月7日掲載記事より転載・編集しています。
【プレビュー】100kg超級の優勝候補は影浦心、ライバルはスタイル被るキム・ミンジョン
グランドスラム・タシケント2021最終日男子プレビュー(90kg級、100kg級、100kg超級)
グランドスラム・タシケント組み合わせ(公式サイト)

文責:eJudo編集部

■ 90kg級 ガクーボボノフと長澤-トリッペル、スタイル対照的な強者の激突がみどころ
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長澤憲大

(エントリー44名)

王者クラスの参戦は第3シードのガク・ドンハン(韓国)のみ。世界大会の優勝を目指すレベルの強豪が多数参加してしのぎを削っていたここ数大会と比べると、少々寂しい顔ぶれとなった。とはいえママダリ・メフディエフ(アゼルバイジャン)やダヴラト・ボボノフ(ウズベキスタン)、トート・クリスティアン(ハンガリー)などの上位陣の参加はあり、優勝の難度は低くない。

実績・実力面から考えれば優勝候補はガクということになる。2018年以降はっきり好調と言えるような試合はまだ見せていないが、そろそろ五輪に向けて調子を上げてくるはず。現時点でどこまで仕上がっているのかに注目したい。キーポイントは、この成績的な低調期の間にオールラウンダー志向を強めてもはや内股ファイターと言って良いほど技の幅を広げたガクが、本来の得意技である担ぎ技をどの程度使ってくるかだ。

日本代表は2018年バクー世界選手権3位の長澤憲大(パーク24)。比較的戦いやすい位置に置かれており、決勝までの相手で苦労しそうなのは準々決勝で対戦するエドゥアルド・トリッペル(ドイツ)くらいだろう。長澤の武器は国内屈指の組み手技術と、丁寧な作りから放たれる威力のある内股。「詰将棋」のようなスタティックな試合展開であればどんな強者にも遅れを取ることはないが、トリッペルは密着勝負や強引に引っこ抜く袖釣込腰などパワーを全面に出して強引に勝負を決めに来るタイプ。滑り込むような横掛などトリッキーな技も使いこなす、相手との「噛み合わなさ」を利して勝ち抜く選手でもある。つまり両者のスタイルは真逆、こういう場合はいずれが勝つにしても実は一方的な展開となる可能性が高い。ここでトリッペルをどの程度封じて勝つことが出来るかで、今回の長澤の調子が測れるだろう。

決勝カードは長澤対ガク、あるいはボボノフになると予想される。ボボノフとガクもまた、ガクが理詰め、ボボノフが直感派とスタイルは対象的。この2人が戦うプールD準々決勝の様相も、長澤-トリッペル戦に近いものになるはずだ。

決勝については、ガクが勝ち上がってきた場合にはレベルの高い組み手の攻防と先の読み合い、ボボノフが勝ち上がってきた場合にはトリッペル戦からさらにレベルの上がった、スタイルの押し付け合いという様相になるだろう。いずれの場合も、投げ自体以上に組み手の攻防に注目して観戦したい。

【プールA】
第1シード:トート ・クリスティアン(ハンガリー)
第8シード:コルトン・ブラウン(アメリカ)
有力選手:ニコラス・ムンガイ(イタリア)、ウシャンギ・マルギアニ(ジョージア)

【プールB】
第4シード:エドゥアルド・トリッペル(ドイツ)
第5シード:長澤憲大(パーク24)
有力選手:ミラン・ランドル(スロバキア)、シリル・グロスクラウス(スイス)

【プールC】
第2シード:ママダリ・メフディエフ(アゼルバイジャン)
第7シード:ガンツルガ・アルタンバガナ(モンゴル)
有力選手:リ・コツマン(イスラエル)、ダヴィド・クラメルト(チェコ)

【プールD】
第3シード:ガク・ドンハン(韓国)
第6シード:ダヴラト・ボボノフ(ウズベキスタン)
有力選手:ペテル・ジルカ(スロバキア)、コムロンショフ・ウストピリヨン(タジキスタン)、アヴタンディル・チリキシヴィリ(ジョージア)

■ 100kg級 「当落線上」の選手に千載一遇のチャンス、注目は五輪出場目指す高木海帆
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カイハン・オズチチェク=タカギ(高木海帆・オーストラリア)

(エントリー40名)

選手層が極めて厚く、常に高い水準のトーナメントが組まれる本階級。しかし今回だけは様相が違う。連続出場を続けてきたトップ層が一斉に休養を取り、最近ではちょっと記憶にないレベルの、強豪の影が極めて薄いトーナメントが出来上がった。過去の実績からすると優勝候補は第1シードのラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)、第2シードのアレクサンドル・イディー(フランス)、第4シードのラグワスレン・オトゴンバータル(モンゴル)あたりということになるのだろうが、いずれもそこまで抜けた力を持っているわけではなく、誰が優勝してもおかしくない。五輪出場の当落線上にある選手にとっては千載一遇のチャンスと言って良い大会だろう。

注目選手は高木海帆(カイハン・オズチチェク=タカギ、オーストラリア)。東京五輪出場を目指して2017年にオーストラリアに国籍を移したが、その後は決して順調というわけでなく、現在のワールドランキングは44位。五輪出場のためには是が非でもここで結果を残してポイントを稼がなければならない。実は女子70kg級の同国選手イーファ・コーグランが好調で、このままいけば五輪出場枠入りが有力。これで大陸枠が空くことに加え、この先高ポイントが望めるコンチネンタル大会(アジア・オセアニア選手権)が控えている。早期敗退が続いている高木だが、今回勝ち上がりさえすれば五輪出場が現実的に見えてくる状況なのだ。今回の配置は、シード選手がラファエル・ブザカリニ(ブラジル)とミキタ・スヴィリド(ベラルーシ)という、もっとも戦いやすいプールD。十分上位進出を狙うことが出来るはず。可能ならばメダルを獲得して、一気に番付を上げたいところ。

【プールA】
第1シード:ラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)
第8シード:ヨアキム・ドファービー(スウェーデン)
有力選手:ニイアズ・ビラロフ(ロシア)

【プールB】
第4シード:ラグワスレン・オトゴンバータル(モンゴル)
第5シード:サーイエニッチ ・ミクロス(ハンガリー)
有力選手:ズラトコ・クムリッチ(クロアチア)、メルト・シスマンラル(トルコ)、アレクサンダー・クコル(セルビア)

【プールC】
第2シード:アレクサンドル・イディー(フランス)
第7シード:グリゴリ・ミナシキン(エストニア)
有力選手:ヴェグ・ジョンボル(ハンガリー)、ボヤン・ドセン(セルビア)、トマ・ニキフォロフ(ベルギー)、ダニエル・ディチェフ(ブルガリア)

【プールD】
第3シード:ラファエル・ブザカリニ(ブラジル)
第6シード:ミキタ・スヴィリド(ベラルーシ)
有力選手:マティアス・マドセン(デンマーク)、カイハン・オズチチェク=タカギ(オーストラリア)

■ 100kg超級 優勝候補は影浦心、ライバルはスタイル被るキム・ミンジョン
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影浦心

(エントリー40名)

当初は現役王者のルカシュ・クルパレク(チェコ)がエントリーしていたが、ドロー前の段階で姿を消した。

数大会続いたトップ層の参戦ラッシュはひと区切り。今大会に世界王者クラスは出場しておらず、優勝争いは日本代表の影浦心(日本中央競馬会)が1番手。ここに東京五輪の代表権を争うキム・ミンジョン(韓国)とキム・スンミン(韓国)の韓国勢、ラファエル・シウバ(ブラジル)とダヴィド・モウラ(ブラジル)のブラジル勢を加えたところまでが、表彰台の圏内だ。

影浦は現在国内の100kg超級の2番手の立場にある。しかし講道館杯を制して優勝候補として臨んだ昨年12月の全日本選手権では、大学の先輩・羽賀龍之介(旭化成)に組み手で完封され、一方的に3つの「指導」を押し付けられて完敗を喫してしまった。今大会は出直しの大会、対戦相手の顔ぶれ的にも、求められる結果は優勝のみだ。ライバルたちにあらためて影浦強しと示すような骨の太い戦いに期待したい。

逆側の山の選手の対戦相性を考えると、決勝の相手はキム・ミンジョンになる可能性が高い。キムは影浦と同じ「担ぎ技系」の代表格、影浦にとっては階級内での存在感を維持するためにも絶対に負けられない相手である。そして勝敗を分けるポイントは実は担ぎ技ではなく、担ぎ技以外の「対同系統用」の技術になるはず。これはかねてから影浦が取り組んできた課題でもある。影浦がどのような組み立てで戦い、どの技術を出口と定めるのかに注目したい。

【プールA】
第1シード:ダヴィド・モウラ(ブラジル)
第8シード:ヴラダト・シミオネスク(ルーマニア)
有力選手:ユーリ・クラコヴェツキ(キルギスタン)、アレン・ツォヴレボフ(ロシア)

【プールB】
第4シード:キム・ミンジョン(韓国)
第5シード:キム・スンミン(韓国)
有力選手:マチェイ・サルナツキ(ポーランド)

【プールC】
第2シード:ラファエル・シウバ(ブラジル)
第7シード:ウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)
有力選手:アリシェル・ユスポフ(ウズベキスタン)、アントン・クリヴォボコフ(ロシア)、ウルジバヤル・デューレンバヤル(モンゴル)

【プールD】
第3シード:影浦心(日本中央競馬会)
第6シード:テムル・ラヒモフ(タジキスタン)
有力選手:シプーツ・リハールト(ハンガリー)、ベクボロト・トクトゴノフ(キルギスタン)、アダム・オクルアシヴィリ(ジョージア)

※ eJudoメルマガ版3月7日掲載記事より転載・編集しています。

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