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【eJudo’s EYE】調整未完のまま圧倒的な強さ、リネール勝利の因はエッジの効いた「内省」/ワールドマスターズ・ドーハ2021評②

(2021年1月18日)

※ eJudoメルマガ版1月14日掲載記事より転載・編集しています。
【eJudo’s EYE】調整未完のまま圧倒的な強さ、リネール勝利の因はエッジの効いた「内省」
ワールドマスターズ・ドーハ2021評②
文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

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圧勝したテディ・リネール。昨年2月の連勝ストップ時とは別人の出来だった。

100kg超級に出場したテディ・リネール(フランス)の強さは圧倒的だった。ちょっと衝撃的だった。弛み切っていた体がいくぶん締まり、というよりもその「いくぶん締まった」(26キロ減量したそうである)程度の、明らかにまだベストコンディションでない中途半端な仕上がりでここまで一方的に勝ってしまったことが強さの印象をいや増した。「もうリネールは終わったのでないか」と一度思わされていた反動もあるのだろうが、そのインパクトは絶大。筆者は軽い絶望すら感じた。頭の中に去来する台詞は「勝てっこない」。リネールの治世長かれど、ロンドン五輪からこっち、ここまでの敗北感を感じたことはない。

リネールが実質不在だったこの1年数か月、コロナ禍による大会中断を挟みながらも重量級世界はそれなりに動き、勢力図は変わり、新たな序列が組みあがりつつあった。イナル・タソエフとタメルラン・バシャエフのロシア勢2人が新興勢力を引っ張り、これに五輪合わせで息を吹き返した中堅組がついていくという構図。あとはグラム・ツシシヴィリとルカシュ・クルパレクの世界王者2人に銀メダリスト原沢久喜の合流を待って東京五輪前の再編成は大枠完了、最後のピースは衰えつつある模様のリネールが果たしてどの位置に座るか、というのがその大枠のイメージだったのだが、とんでもなかった。そういうこまごました「池の中」の生態系とは棲んでいる平面がまったく違った。

リネールが今大会に持ち込んだ戦い方はシンプル。引き手による袖の把持をベースに相手に持たせないまま自分だけが一方的に持ち、頭を下げさせ、何もできなくなった相手の小さな抵抗アクションを待って大きく刃を入れるというもの。つまり、常の、強かったころの、典型的なリネールのやり口である。思い切って投げに出ていた2019年(GPモントリオール/GSブラジリア)モードから少々揺り戻して、「指導」を取れる場面は無理をしないという塩梅の調整はあった(おそらく東京五輪はこういうチューニング)が、戦い方の基本方針が変わったわけではない。

敢えてこれまでと違うところを挙げるとすれば、引き手を持つためにまず釣り手で片襟を差すという組み手の基本の「キ」を極端に多用していたこと。片襟を差しながら足元を蹴ってのアプローチも積極的に使っていた。ご存じの通りこれは、引き手を先に持ちたがって(あるいは攻撃を凌ごうとして)逆構えで向かってくる相四つ、そしてもちろん常の通り左に構えるケンカ四つの相手に対し、己が先に引き手を得る手段として非常によく効く。そしてこの「先に引き手で袖を抑える」ことこそリネールの柔道のまさにキモ、ここからすべてが始まる柔道の起点である。この起点に至るためのシンプルな手段1つをきちんと得たというだけで、「池の中の住人」たちはまったく手が出なくなってしまった。決勝におけるタソエフの「バンザイ」状態、巨人の周りをクルクル回るだけで何も出来なかったバシャエフの無力ぶりは、これまで我々が熱狂していた国際大会はなんだったのかと見ていてむなしくなってしまうほどだった。

特に相四つは好餌。まさに相四つの、それもリネールと同じ大外・内股系の本格派である原沢久喜が日本代表としてこの選手と戦わねばならないことの重みを「それでもやはりやるんですね」とあらためて突き付けられた気がした。今更ながらだが、原沢はリネールの最も得意とする「同じ組み手の本格派同士」のフィールドでさらにその上を行かねばならないのだ。リオ五輪後の4年間のアプローチは果たして正しかったのだろうか、相四つの本格派が今のリネールにいったいどうやって勝てばいいのだろうか、などとグルグル考えつつトーナメント表をみやれば今回の原沢は対戦にすら手が届かず、どころか1分弱しか畳に立たぬまま早々に姿を消しているのだから不安はいや増す。我々日本のファンには、俺たちの代表はどうやったらリネールに勝てるのだろうと妄想させてもらえるだけの権利が本当にあるのだろうか、とちょっと惨めな気分になってしまった。

原沢評は別稿に譲るとして。ただ単にリネールが復活した、そしてべらぼうに強かった、とだけ言っていても仕方がない。どう刃を入れるべきか少しでもヒントを得るべく、ここ数年折あるごとに行って来た「リネール観察」を続けてみたい。試合個々の様相に関しては最後に全試合の戦評を載せるのでそちらを参照頂くとして、気づいたことをいくつか。

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引き手による袖の把持はリネールの生命線。

まず、前述の通り片襟からのアプローチを多用していたことに注目したい。これが実は今回のリネールの強さのカギであり、以後のリネールを考える上での観察のキモであると思う。なぜ片襟を使うのか、それは引き手が欲しいからだ。なぜ引き手が欲しいのか、それは己のベースが「引き手一本で袖」の形に他ならないからだ。引き手で自分だけが一方的に袖を持ち、遠間に立つことこそがリネールの柔道の一丁目一番地。これが出来れば負けることは絶対にない。勝つために釣り手で奥襟を掴んで一方的な形を作ることも容易、凌ぐために残る釣り手で手先を絡ませ時間稼ぎすることも可能。相四つであろうがケンカ四つであろうが、この「引き手一本で袖」を作れれば実質すべては終わる。そして絶対に欲しい己の柔道の起点がこの「引き手一本で袖」なのであれば、これを作るためにもっとも効率的な行動を考えるべきだ。

この、余剰を削ぎに削ぎ落した己のベースが「引き手一本で袖」に他ならないというエッジの効いた自己理解が、今回のリネールの強さの因であると喝破する。影浦心戦の敗戦を経、コロナ禍で対人稽古がままならぬ中、では己の柔道とはなんぞやときちんと内省を重ねたのだろう。さらにリネールは、引き手一本で袖、そして遠間、とあらためて得たこの解に対してきちんと「式」を考えて来た。それが正面の相手に対する片襟差しと、左構えの相手に対して斜めから歩んでの片襟差し+蹴り崩し、である。「片襟差しの蹴り崩し」は実はある程度動ける選手でないと出来ないのだが、これを実現し得るだけの体はきちんと作れていた、というのが今回の様相と考える。フィジカルは未完成だが、内省はこれまでにないほど強烈だった。そして得られた「引き手一本で袖」という結論に対し、正しく自身の特徴に叶った方法論を見出し、これが実現できるレベルのフィジカルをきちんと作り上げて来た。先日の評で取り上げたダリア・ビロディドがこの期間に自己理解を誤り、ためにフィジカルが落ちたときに立ち戻るべき座標を見失い、パニックに陥って敗れたこととはまさに対照的である。

この内省の深さは、今回のリネールの組み手に迷いがほとんどなかったことにも見て取れる。袖が取れなければ迷い手よりはまず前襟、釣り手で勝ったら袖に持ち替える。片方を譲るときには片方で大幅な優位を取ってから。苦手だったケンカ四つの相手の「横抱き」にも迷いなく反応し、襟を持ったまま背筋を伸ばしてすばやく外し、まったく問題にしなかった。組み手の迷いのなさ自体で相手を置き去りにした感すらあり。よほどしっかり考えて来たのだろう。ここには、フィジカルさえ戻ればなんとなるさ、というようなプランの曖昧さは一切ない。

ここから妄想を進める。リネールの一番棲みたい位置はやはり遠間なのだな、とこの「片襟差し」の多用を通じて再確認。そしてこの確認の副産物としてリネールの投技が「切れない」理由にも思い至る。ただでさえリーチが長いリネールが袖口(相手の腕がいちばん長くなる部分)を掴んで遠間に体を置いているわけだから、当然胸を合わせるのは難しい。インパクトを相手に伝えにくい。体のサイズが噛み合わない上に立ち位置も遠い。いきおい、相手の体を伸ばして(袖を一杯に引いて)、遠い地点に固定点を置く(足を伸ばして腰や膝を支える)巻き込み技が増える。当然ながら、投げ自体は映えない。

とまで考えて。しかし、例えばルカシュ・クルパレクや原沢久喜を投げた際(ともに2019GPモントリオール)にはしっかり胸を合わせていたことに思い至る。あの時は、慎重居士のリネールがルールに合わせてついに大胆な勝負技を養って来たと観察したものだが、実は以後のリネールの戦いはそこまでドラスティックに変わってはいない。贔屓目かもしれないが、原沢やクルパレクにはあのリネールをして、胸を合わせてガッチリ力を伝えねばこいつは投げられない、と思わせるだけの体の力があるのだろう。ではどうすればいいのか。少なくともリネールがもっとも好きな遠間で組み止められてしまっては何も出来ないから、勝負をかけるならやはり密着だ。ここで議論はスタートに戻り、しかし担ぎ技がなくパワー比べでも分が悪い原沢がリネールに密着しても吹っ飛ばされるだけではないのか、でも遠間で組み手に付き合って全てを封じられるよりも密着攻撃を磨きに磨くほうがまだ可能性があるのではないのか、と妄想は続く。

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決勝、イナル・タソエフの大内返にリネールは一瞬体勢を崩しかかる。

今回リネールが隙を見せた場面は本当になかったのか、とメモを見返してみる。あった。決勝のタソエフ戦、頭を下げた相手に対して右大内刈に出たところを大内返で崩され、たたらを踏んであっさり矛を収めたシーンである。以後リネールは一切冒険を止め、組み勝っての反則奪取に舵を切って手堅く「指導3」まで試合を運んでいる。先日のビロディド評で、格闘技における強さの要素として身体的記号に勝るものはないと書かせていだいたわけだが、これはイコール、競技者の長所と短所(特徴)はどこまで行っても強い身体的記号の呪縛から逃れられないということでもある。足が長くて重心が高いリネールの弱点はやはり足元なのだ。タソエフはひょっとすると手ごたえのみを得て深追いをやめ、本番までこの大内返を取っておいたのかもしれない。そのくらい可能性を感じさせる技であった。しかし、リネールは実際に倒れたわけでも伏せたわけでもなく、やはり容易に崩せる相手ではない。足腰の強さは驚異的だ。となると、刈ったり掛けたりするよりも払うほうが可能性があるのではないか。リネールはフランスのアフリカ系選手の例に漏れず、大柄な割にステップが軽い。重心移動の際をなんらか払い技で狙えば上体の拘束如何に関わらず「すっ転ぶ」目があるだろう。2010年東京世界選手権無差別決勝における上川大樹の支釣込足、2017年ブダペスト世界選手権準決勝でツシシヴィリが放った出足払(払釣込足)がすぐに思い浮かぶ。これは本質的な攻略法になり得る。ただ上川もツシシヴィリも、2014年チェリャビンスク世界選手権の七戸龍(刈り技だが)も、足技で大きく相手を崩しながら上体を拘束できぬためポイントには届かなかった。あれだけ背が高いと落ちるまでに時間もあれば空間もあり、体が長いので崩された足から肩までの距離も遠い。身を翻しやすい。しかし上体を拘束できるような状態で、リネールに払い技を打ち込むことは出来るのか、ステップを強いることは可能なのか。

というあたりで今回の妄想は終わる。「絞って来た」程度のいわば中途半端なフィジカルにも関わらずリネールがここまでの強さを見せた理由は、何より内省が強烈だったから。正しく自己理解し、余剰を削いで己のストロングポイントを見つめなおし、それを最大限ぶつけるべく正しいアプローチを採ったから。そしてこの先どう刃を入れるのか、これを考えるキーワードは「距離」と「足技」。以上が今回の観察である。

最後にリネールの全5試合の様相を、常の戦評の形で記しておく。ぜひ皆さんも一緒に、どうすればこの相手を崩せるのか、考えてみて欲しい。

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リネールがロイ・メイヤーから払巻込「技有」

【1回戦】
テディ・リネール(フランス)○合技[払巻込・引込返](3:27)△ロイ・メイヤー(オランダ)

両者右組みの相四つ。開始早々に「待て」が掛かると開始線に戻ったメイヤー前傾して静止し「はじめ」の声を待つ。その様まるで役者絵のよう、やる気十分。
リネールは手堅く組み手をバーター、結果引き手で襟、釣り手で奥をガッチリ掴む。完全に左に組んで抗するメイヤーは全身を大きくゆすって切り離そうとするが、4度これを試みるもリネールの手はまったく離れない。ここでリネールは右大外刈、メイヤーがドウと伏せて「待て」。
続く展開、リネールがまず両袖、次いで引き手一本で袖、続いて釣り手で奥、と完璧な組み手。窮したメイヤー場外に向かって左背負投に潰れて48秒場外の「指導」。続く組み際にメイヤーが片襟の右大外刈に右背負投と放つが空転、「待て」。早くも出来ることがなくなって来た印象。組み手のやり取り数合を経てリネールが引き手で袖、釣り手で奥襟を持つ完璧な形を作ると、メイヤーは引き手を突っ張り棒にしてひたすら耐える苦しい形。ここで頃合い良しとばかりにリネールが右払腰、相手の腰が遠いと見て巻き込みに連絡するとメイヤーたまらず転がり2分42秒「技有」。
続く展開、リネールが引き手で一方的に袖を持って押し込み、釣り手で上から背中を掴むとコーナーに詰まったメイヤーは頭を下げてバンザイ状態。リネール釣り手の握りを確かめると勝負技の引込返、これが決まって「技有」。合技「一本」で勝負が決した。

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ザアリシビィリの右一本背負投を潰して、あっと言う間に絞技に繋ぐ。

【2回戦】
テディ・リネール(フランス)○片羽絞(1:49)△ゲラ・ザアリシヴィリ(ジョージア)

リネール右、ザアリシヴィリが左組みのケンカ四つ。リネール手先を絡ませる組み手の攻防からあっという間に引き手で袖を押し込み、釣り手で奥襟を掴む一方的な形を作り出す。このまま頭を下げて何もできなくなったザアリシヴィリの足元を蹴り崩し続けると主審試合を止めて33秒「極端な防御姿勢」による「指導」。ザアリシヴィリはリネールの引き手の袖を落として絡みつくがリネール面倒な組み手には一切付き合わず手早く切り、自分の間合いで手先を探り続ける。1分19秒双方に消極的試合姿勢の咎で「指導」。2つ目の反則を貰ったザアリシヴィリ早くも後がなくなる。
リネール引き手で襟、釣り手で奥襟を掴んで右内股も引き手が切れて技は流れる。ザアリシヴィリいったん襟を持った釣り手をこじあげて右一本背負投もリネールは余裕あり。横襟を握った釣り手を放さぬまま返しにかかる。いったん後方に仰け反ったザアリシヴィリ外側に体を開いて逃れようとするがリネールコントロールを解かず、足を捌いて追撃。ザアリシヴィリが伏せたときにはもう絞めの態勢に入っている。左手で頭の裏側を押し、襟を掴んだままの右手と連動させてあっという間に絞め上げ「一本」。期待のザアリシヴィリ、何も出来ず。

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半端な担ぎ技に入ったバシャエフを強引に引き戻し、仰け反らせて「一本」

【準々決勝】
テディ・リネール(フランス)○大内返(2:33)△タメルラン・バシャエフ(ロシア)

ひときわ注目の一番はリネールが右、バシャエフ左組みのケンカ四つ。短躯のバシャエフと対峙するとリネールはひときわ大きく見える。オーソドックスに左構えでスタートしたバシャエフに対し、リネール釣り手で右片襟を差すことから組み手をスタート。いったん離れたバシャエフ組み際に片襟の右背負投を見せるがこれで一瞬右組みになってしまったことが致命傷、リネール一瞬で引き手で袖、釣り手で奥襟という完璧な組み手を作り出す。窮したバシャエフ、両手を背負投様にまとめて立ったまま相手の右脇下を潜り抜けようとするが弾き返され、次いで似た形の担ぎ技。後隅めがけて右背負落を拝み打ちする形、しかしリネールはまっこう右大外刈で迎え撃つ。たまらず膝を着いたバシャエフすぐさま立ち上がって左小外掛に体を捨てるがリネール大きく下がってあっさり捌き、伸び切ったバシャエフの体をずるりと引きずる。死に体のバシャエフがたまらず上体を起こすとリネール大きく踏み込んで右大外刈一閃、低い軌道でもろとも畳に転がり45秒「技有」。
バシャエフ左の片襟背負投に両袖からの右袖釣込腰と次々手立てを繰り出すがリネール立ったまままったく崩れず、最終的には引き手で袖、釣り手で奥襟を掴む形に繋いでしまう。完全に頭を下げられたバシャエフ右背負投に飛び込みんでようやく展開を切るが、掛かる気配はまったくなし。続いてリネールがまたもや引き手で袖、釣り手で奥襟を掴む一方的な形を作ると、バシャエフは片襟の右大内刈の形のまま右前隅めがけて背負投を打ち込む奇襲。しかしそもそも投げる方向が中途半端で相手の「崩れ待ち」とも言えるこの技術では当然ながらリネールは崩れない。立ったまま受け切り、バシャエフは1人相手にぶらさがってしまう格好となる。そのまま前に伏せようとするがリネールこれを許さず強引に引き戻し、上体を制して叩きつける。バシャエフ真裏に仰け反る格好で畳に埋まり「一本」。一方的な試合だった。

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ヤキフ・ハモーから払巻込「技有」

【準決勝】
テディ・リネール(フランス)○優勢[技有・払巻込]△ヤキフ・ハモー(ウクライナ)

ハモーは両組み。左構えの「ケンカ四つクロス」(同側の襟と袖を掴む)を経て左で奥襟を叩こうとするがリネールはバックステップしてあっさり外し、釣り手を手先に絡ませながらまず引き手で袖を得る。危機を感じたハモーが思わず右袖釣込腰を打つとこれをきっかけに釣り手で奥襟もガッチリ確保。そのまま持ち続けてグイと圧力、腰を切りながらプレッシャーを掛け続ける。耐えきれなくなったハモーがたまらず釣り手で背中を横から抱くと、リネールいったん背筋を伸ばして切り離し、次いで腰を寄せると思い切った右払巻込。ハモー吹っ飛んで1分10秒「技有」。
リネール以後は試合のスピードを意識的に減殺。ただし組み手には迷いなく、釣り手は手先を絡ませ、引き手は争わず前襟か袖を素早く持ち、ハモーの背中抱きはすぐさま外して支釣込足で蹴り崩す。リネールが出足払から右払腰を見せた3分1秒にはハモーに消極的との咎で「指導」。ハモーは、組み際に釣り手を大きくスイングさせての横抱きアプローチを数度。しかしリネールは冷静にバックステップで外す。ハモー背中を掴んで時計回りの「出し投げ崩し」から身を翻して反時計回りの浮技という連続技を見せるがまったく噛み合わず自爆。リネール残り30秒を切ると明らかにクロージング態勢。下がりながら手先のみを絡ませて付き合わず。ハモーの突進にあっさり下がった残り3秒で場外の「指導」を受けるが大勢は動かない。「はじめ」が宣されると開始線で腰に手を当てたまま立ってブザーを待ち、試合終了。余裕をもって決勝進出決定。

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一方的に組み勝つと、タソエフはまったく抵抗出来ない。

【決勝】
テディ・リネール(フランス)○反則[指導3](3:45)△イナル・タソエフ(ロシア)

ともに右組み。リネール釣り手を片襟に入れて寄せると引き手で袖を確保。この際タソエフに手を絡まれるが背筋を伸ばして距離を取ると、リネールのみが引き手一本で袖を把持する形が出来上がる。リネールここから釣り手を降らせて奥襟確保。タソエフ1度は絞り落とすがリネールがあっさり同じ形を作り出すと手立てがなくなって頭が下がり、もはやバンザイ状態で何も出来ない。リネールが足元を蹴り崩し、たまらず畳を割ったタソエフに40秒場外の「指導」。
リネール再び釣り手で片襟を差す1手目から引き手で袖を一方的に確保。タソエフ組み手の進行を止めるべく左で背中を差して左小外掛を試みるがリネール捌いてこれをきっかけに釣り手で奥襟も得る。またもや一方的な形となり、タソエフの頭は下がりっぱなし。タソエフそれでも右大内刈、左小外掛、右体落と技を積んで逃れようとするが最後は両手を離して潰れてしまい、1分30秒偽装攻撃の「指導2」。
リネールまたもや引き手で袖を絞り、釣り手で奥襟を掴む一方的な形。タソエフはまったく頭を上げられない。リネール小内刈から右大内刈、しかしこれにタソエフが一瞬大内返の動きを見せるとリスクは取らぬとばかりにあっさり矛を収め、以後は安全運転に終始。組み勝ち、頭を下げさせ、組み手が面倒となればいったん離れ、手先を絡ませて相手を抑えるのみ。残り1分を過ぎるとこの安全志向は加速、組み勝ち、ゆすり、横変形でかみ殺し、と組み手のみでプレッシャーを掛け続ける。タソエフは内股を一発見せるが透かされて空転。この体制では出来ることが何もない。残り15秒、一方的に組み勝ったリネールが浅い蹴り崩しを続けたところで主審が試合を止め、双方に消極的との咎で「指導」。タソエフ3つ目の「指導」となりここで試合が終わった。リネール余裕の優勝決定。

※ eJudoメルマガ版1月14日掲載記事より転載・編集しています。

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