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【プレビュー】豪華大会締めるにふさわしい贅沢な3階級、注目はリネール、原沢、イゴルニコフ/ワールドマスターズ・ドーハ2021男子最終日プレビュー(90kg級、100kg級、100kg超級)

(2021年1月13日)

※ eJudoメルマガ版1月13日掲載記事より転載・編集しています。
【プレビュー】豪華大会締めるにふさわしい贅沢な3階級、注目はリネール、原沢、イゴルニコフ
ワールドマスターズ・ドーハ2021男子最終日プレビュー(90kg級、100kg級、100kg超級)
ワールドマスターズ・ドーハ2021組み合わせ(Ippon.org)
文:eJudo編集部

■ 90kg級 イゴルニコフの強さがみもの、全日本の好パフォーマンス繋げたい向
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ミハイル・イゴルニコフ

(エントリー29名)

豪華トーナメント。2018年バクー世界選手権王者のニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)が出場を回避したものの、昨年10月のグランドスラム・ブダペストと11月の欧州選手権に連勝してもっかの実力ナンバーワンと目されるミハイル・イゴルニコフ(ロシア)をはじめ、現役世界王者のノエル・ファンテンド(オランダ)らこれぞという役者ほぼ全員が顔を揃えた。世界大会のファイナリストだけでも実に7名(優勝者3名、2位が4名)がエントリー、世界大会と比べても遜色がない、下手をするとそれ以上のレベルの高さ。

優勝候補の筆頭はもちろんイゴルニコフ。欧州選手権ではライバルのシェラザディシヴィリを一瞬両者の体が完全に宙に浮く強烈な内股「一本」で破って世界中に衝撃を与えた。この人が得意とする「遠間×片足」状態になった場合の強さはまだまったく天井が見えない。かつては不用意に脇を差して密着する悪癖があったのだが、最近の進退にはこの弱点に対する自覚の気配があり攻守ともにますます隙がなくなってきている。今大会は第5シード扱いで配置はプールD。2回戦でイスラム・ボズバエフ(カザフスタン)、準々決勝では2017年世界王者のネマニャ・マイドフ(セルビア)か前回のワールドマスターズの覇者ラシャ・ベカウリ(ジョージア)と対戦が見込まれる。まだ覚醒する前の2018年、イゴルニコフはワールドマスターズでボズバエフに背負投「技有」で敗れているという来歴がある。いまの力ならばまず負けることはないと思われるが、ここでどのような勝ち方をするかで今日の調子を測りたい。

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向翔一郎

続いて注目したいのが、東京五輪日本代表の向翔一郎(ALSOK)。昨年末の全日本選手権では90kg級ながら1階級上の強者下和田翔平(京葉ガス)に勝利するなど存在感を示し、非凡なところを見せている。今大会の組み合わせは2回戦でベカ・グヴィニアシヴィリ(ジョージア)とマーカス・ニーマン(スウェーデン)の勝者、準々決勝でこれまでに何度も対戦している因縁の相手イワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)、そして準決勝ではダヴラト・ボボノフ(ウズベキスタン)というなかなか厳しいなものだが、いずれも五輪でメダルを目指すのであれば必ず倒さねばならない相手。ここで確実に結果を残してシード順を上げ、本番に向けて勢いをつけたいところだ。戦い方としては、担ぎ技と抱き勝負という両極端にある2つのモードの使い分けに注目したい。

【プールA】
第1シード:イワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)
第8シード:ベカ・グヴィニアシヴィリ(ジョージア)
有力選手:イェスパー・シュミンク(オランダ)、エドゥアルド・トリッペル(ドイツ)、マーカス・ニーマン(スウェーデン)、アブデラフマネ・ベナマディ(アルジェリア)
日本代表選手:向翔一郎(ALSOK)

【プールB】
第4シード:
第5シード:ミハエル・ツガンク(トルコ)
有力選手:ペテル・ジルカ(スロバキア)、ダヴラト・ボボノフ(ウズベキスタン)、ダヴィド・クラメルト(チェコ)、

【プールC】
第2シード:ノエル・ファンテンド(オランダ)
第7シード:ガク・ドンハン(韓国)
有力選手:シリル・グロスクラウス(スイス)、ニコラス・ムンガイ(イタリア)、ガンツルガ・アルタンバガナ(モンゴル)、ラファエル・マセド(ブラジル)

【プールD】
第3シード:ネマニャ・マイドフ(セルビア)
第6シード:ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)
有力選手:ラシャ・ベカウリ(ジョージア)、リ・コツマン(イスラエル)、クエジョウ・ナーバリ(ウクライナ)、コルトン・ブラウン(アメリカ)、イスラム・ボズバエフ(カザフスタン)

■ 100kg級 優勝争いの軸はシード選手8名、注目はロシア勢2人とチョ・グハン
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ニヤズ・イリアソフ

(エントリー28名)

ウルフ・アロン(了徳寺大職)ら日本勢を除いた上位陣が勢揃い。ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)とチョ・グハン(韓国)の2名の世界王者を筆頭に、ニヤズ・イリアソフ(ロシア)にヴァルラム・リパルテリアニ(ジョージア)らメダルクラスの強豪がところ狭しと詰め込まれ、この階級も超豪華トーナメントが組まれた。

優勝争いは第1シードの欧州王者ペテル・パルチク(イスラエル)をはじめとするシード選手8名が中心になると予想されるが、この階級は上位陣の実力が高い位置で拮抗、大会が始まってみないと勝ち上がりの予想は難しい。実績や調整力の高さからすればチョ・グハン、イリアソフ、リパルテリアニ、マイケル・コレル(オランダ)らが優勝候補だが、これもあくまでも平均値を比べた場合の話。まずは序盤戦を観察しながら各選手の調子をチェックしたい。ここまで2日間韓国勢の出来が良く、昨秋欧州を席捲したロシア勢が期待ほどのパフォーマンスを見せていない、という傾向は参考になるかと思われる。

注目ポイントの第1はイリアソフとアルマン・アダミアン(ロシア)の優勝争い。昨年10月のグランドスラム・ブダペスト決勝の直接対決でイリアソフが勝利して五輪代表の行方はほぼ決まりかと思われたが、なんと翌月の欧州選手権ではイリアソフがまさかの初戦敗退。しかし、アダミアンも決勝で敗れて優勝を逃してしまい、結果としてまだ決定打のない状況が続いている。五輪までのスケジュールを考えれば今大会の重要度は極めて高く、ここでどちらかが優勝した場合にはほぼその選手に決まると見て良いのではないだろうか。

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チョ・グハン

2つ目の注目ポイントは久々畳に姿を現すチョ・グハンの出来。前述の通り韓国チームは2日目までの4階級で3階級を制するなど今大会絶好調。どうやら新型コロナウイルスによる大会休止期間にかなりの稽古を積んできたようで、この流れからするとチョも相当なハイコンディションで今大会に臨んできていると予想できる。チョはもちろん東京五輪における優勝候補の一角であり、まあた他選手との相性の凹凸から「最大の変数」とも位置付けられる。例えばなんらか新兵器や新戦術を持ち込んでくるのかなど、その戦いぶりをチェックしたい。

ほか、日本からオーストラリアに国籍を変更して五輪を目指している高木海帆(カイハン・オズチチェク=タカギ、オーストラリア)もエントリーしており、こちらにも注目したい。初戦がムアマドカリム・フラモフ(ウズベキスタン)、2回戦がコレルと過酷な組み合わせだが、まだ出場するためにランキングポイントの足りない高木にとっては本大会が五輪を目指す上での正念場。気合の入った戦いに期待したい。

【プールA】
第1シード:ペテル・パルチク(イスラエル)
第8シード:アルマン・アダミアン(ロシア)
有力選手:ラファエル・ブザカリニ(ブラジル)、エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)、ヨアキム・ドファービー(スウェーデン)、イェフゲニース・ボロダフコ(ラトビア)

【プールB】
第4シード:ヴァルラム・リパルテリアニ(ジョージア)
第5シード:マイケル・コレル(オランダ)
有力選手:ニイアズ・ビラロフ(ロシア)、ダニエル・ムケテ(ベラルーシ)、ベンジャミン・フレッチャー(アイルランド)、カイハン・オズチチェク=タカギ(オーストラリア)、ムハマドカリム・フラモフ(ウズベキスタン)

【プールC】
第2シード:チョ・グハン(韓国)
第7シード:シャディー・エルナハス(カナダ)
有力選手:ラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)、レオナルド・ゴンサルヴェス(ブラジル)、アレクサンドル・イディー(フランス)、ラウリン・ボーラー(オーストリア)

【プールD】
第3シード:ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)
第6シード:ニヤズ・イリアソフ(ロシア)
有力選手:サーイエニッチ ・ミクロス(ハンガリー)、ズラトコ・クムリッチ(クロアチア)、ボヤン・ドセン(セルビア)、ミキタ・スヴィリド(ベラルーシ)

■ 100kg超級 観戦の軸はリネールと原沢、そしてロシアのトップ2
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テディ・リネール

(エントリー31名)

これまで大会出場を極端に絞ってきたテディ・リネール(フランス)が満を持して参戦。現役世界王者のルカシュ・クルパレク(チェコ)こそ出場を見合わせたが、原沢久喜(百五銀行)とグラム・ツシシヴィリ(ジョージア)を筆頭に階級のメダル候補たちが遍く名を連ねており、大会のレベルは世界大会と比べても遜色がない。

もっとも注目すべきはもちろんリネール。昨年は2つの大会に出場したものの、2月のグランドスラム・パリでは3回戦で影浦心(日本中央競馬会)に内股透「技有」で敗れて連勝記録が「154」でストップ、さらに10月に行われたフランス国内のクラブ選手権(団体戦)では国際的には全く無名のジョセフ・テヘー(フランス)に「指導3」の反則で敗れるなど、結果だけでいえばまさに散々であった。現在の世界ランクは五輪出場圏ギリギリの27位であり、ここで負けると東京五輪の出場自体に黄信号が灯ることになる。組み合わせは1回戦でロイ・メイヤー(オランダ)、2回戦でゲラ・ザアリシヴィリ(ジョージア)と初戦から階級上位の実力者と連戦せねばならない過酷なもの。とはいえ、本来のリネールの力であれば勝ち抜くことはそう難しくないはずだ。果たしてコンディションは戻っているのか、それともあの2試合は加齢による衰えなのか。まずは初戦、その調子の程に注目だ。

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原沢久喜

続いて注目したいのは日本代表の原沢久喜。最後に出場した昨年のワールドマスターズでは決勝こそ相手の棄権による不戦勝だったものの、そこまでの4試合を全て「一本」(「指導3」の反則を1つ含む)という素晴らしい内容で優勝を飾っている。さらにコロナ禍による大会休止期間に相当な体力強化を図ったようで、かなり力を付けていると見て間違いない。今大会は堂々の第1シード配置。組み合わせも準々決勝のダヴィド・モウラ(ブラジル)以外にプール内に障害となる相手はおらず、できるだけ余力を残して準決勝に控えるリネールとの大一番に備えたい。直近の成績からはむしろタメルラン・バシャエフ(ロシア)が上がってくる可能性の方が高いと考えるべきではあるが、どちらが上がってきたとしても現在の原沢なら遅れを取ることはないはずだ。決勝の相手は順当にいけばツシシヴィリ。こちらも相手に合わせすぎずに自分の柔道ができればそこまで問題にはならないはず。じっくりと戦い、相手が焦れたところで勝負したい。

最後の注目ポイントとしてイナル・タソエフ(ロシア)とバシャエフによる代表争いの行方に触れておきたい。この2人は10月のグランドスラム・ブダペストと11月の欧州選手権でともに決勝を争っており、前者ではタソエフが、後者ではバシャエフがそれぞれ勝利を収めている。純粋に成績だけを比べるなら現在の立場はイーブン。今大会は前述の2大会と比べて出場者のレベルが一段上がっていることもあり、ここで差がつくようであれば決定的なものとなるはずだ。果たしてどちらが東京五輪の代表権を得るのか、ふたりの戦いぶりに注目である。

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グラム・ツシシヴィリ

【プールA】
第1シード:原沢久喜(百五銀行)
第8シード:ダヴィド・モウラ(ブラジル)
有力選手:ヤキフ・ハモー(ウクライナ)、キム・スンミン(韓国)、ユール・スパイカース(オランダ)、ヴラダト・シミオネスク(ルーマニア)

【プールB】
第4シード:ロイ・メイヤー(オランダ)
第5シード:ラファエル・シウバ(ブラジル)
有力選手:テディ・リネール(フランス)、アンディー・グランダ(キューバ)、ゲラ・ザアリシヴィリ(ジョージア)、ユーリ・クラコヴェツキ(キルギスタン)、ヨハネス・フレイ(ドイツ)、タメルラン・バシャエフ(ロシア)

【プールC】
第2シード:イナル・タソエフ(ロシア)
第7シード:オ-ル・サッソン(イスラエル)
有力選手:ベクムロド・オルティボエフ(ウズベキスタン)、レヴァニ・マティアシヴィリ(ジョージア)、ウルジバヤル・デューレンバヤル(モンゴル)ステファン・ヘギー(オーストリア)、テムル・ラヒモフ(タジキスタン)

【プールD】
第3シード:グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)
第6シード:ヘンク・フロル(オランダ)
有力選手:アントン・クリヴォボコフ(ロシア)、マチェイ・サルナツキ(ポーランド)、キム・ミンジョン(韓国)、スヴェン・ハインル(ドイツ)、アリアクサンドル・ヴァハヴィアク(ベラルーシ)

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