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【プレビュー】3強揃い踏みの48kg級に注目、渡名喜とビロディドは準決勝で激突/ワールドマスターズ・ドーハ2021第1日女子プレビュー(48kg級、52kg級、57kg級)

(2021年1月10日)

※ eJudoメルマガ版1月10日掲載記事より転載・編集しています。
【プレビュー】3強揃い踏みの48kg級に注目、渡名喜とビロディドは準決勝で激突
ワールドマスターズ・ドーハ2021第1日女子プレビュー(48kg級、52kg級、57kg級)
ワールドマスターズ・ドーハ2021組み合わせ(Ippon.org)

文:eJudo編集部

■ 48kg級 ビロディドと渡名喜が準決勝で激突
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ダリア・ビロディド

(エントリー24名)

超ハイレベルトーナメント。現役世界王者のダリア・ビロディド(ウクライナ)を筆頭に渡名喜風南(パーク24)、パウラ・パレト(アルゼンチン)、ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)と世界王者経験者が4名も顔を揃えた。表彰台クラスの強豪も第1シードのディストリア・クラスニキ(コソボ)を始め、イリーナ・ドルゴワ(ロシア)、フリア・フィゲロア(スペイン)と分厚く、加えて若手からも昨年11月の欧州選手権を制したシリーヌ・ブクリ(フランス)に同2位のアンドレア・ストヤディノフ(セルビア)と注目株が名を連ねている。ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)など一部出場を見送った強豪もいないではないのだが、世界大会と比較しても遜色のない陣容と言ってよいだろう。

優勝候補はもちろん世界選手権2連覇中の絶対王者ビロディド。減量苦のためか最近は大会ごとにパフォーマンスにかなりの差があり、以前ほどの絶対性は薄れて来た印象だが、それでもやはり実力では頭ひとつ抜けている。10月のグランドスラム・ブダペストでは新型コロナ禍での減量のリスクを回避するために52kg級での調整出場(結果は3位)を行ったが、今大会では本来の階級である48kg級での出場を選んだ。ランキング的な事情(世界ランク32位以上が出場条件)はもちろんあるのだろうが、今後の大会開催が不透明な状況にあって、ここで五輪の予行演習をしておこうという意識がかなり強いのではないだろか。当然ながら相応に仕上げて来ていると考えるべき。その出来に注目である。配置は第2シード、準々決勝でムンフバットとブクリの勝者と戦い、続く準決勝で日本代表の渡名喜との大一番に臨むことになる。欧州選手権の出来を考えれば準々決勝の相手はブクリ。昨年2月のグランドスラム・パリでビロディドが大苦戦した因縁の相手である。まずビロディドがこの試合をどのように切り抜けるのかに注目だ。

渡名喜に話を移したい。渡名喜は昨年2月のグランドスラム・デュッセルドルフ以来の実戦。この大会では当時まだ名前が売れ始めたばかりのブクリに決勝で金星を献上、出世の足がかりを与えてしまった。あれから約1年。準決勝でビロディドと対戦できる今大会はこの敗戦の悪い流れを断ち切り、どころかビロディド超えを果たして階級の一番手に躍り出る大チャンスである。組み合わせにも恵まれ、準々決勝でパレトとストヤディノフの勝者に勝ちさえすればビロディドへの挑戦権が手に入るという好配置。あと一歩まで王者を追い詰めた2019年世界選手権を足掛かりに、どのようなビロディド対策を練って来たのか。東京五輪を見据えて敢えて取り置く戦略を採る可能性もあるが、相手に冷や汗をかかせるような戦いぶりを期待したい。

一方、比較的強豪の少ない上側の山からはクラスニキの勝ち上がりが濃厚だ。もともと階級トップクラスの実力者ではあるが、この選手の最近の逞しい戦いぶりを見る限りでは、既にビロディドや渡名喜に比肩しうるだけの力を持っているという観測が十分に成り立つ。昨年の欧州選手権では若手のブクリの勢いの前に不覚を取ったが、今大会ではミスなく決勝まで勝ち上がり、ビロディド、あるいは渡名喜に挑戦してその力を示したい。今大会の結果次第ではこの選手が一番手として東京五輪に臨む展開すらあり得るだろう。

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渡名喜風南

【プールA】
第1シード:ディストリア・クラスニキ(コソボ)
第8シード:カタリナ・コスタ(ポルトガル)
有力選手:マルサ・スタンガル(スロベニア)、ミリツァ・ニコリッチ(セルビア)、ガンバータル・ナランツェツェグ(モンゴル)

【プールB】
第4シード:フリア・フィゲロア(スペイン)
第5シード:メラニー・クレモン(フランス)
有力選手:サビーナ・ギリアゾワ(ロシア)

【プールC】
第2シード:ダリア・ビロディド(ウクライナ)
第7シード:ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)
有力選手:カタリナ・メンツ(ドイツ)、シラ・リショニー(イスラエル)、シリーヌ・ブクリ(フランス)、イリーナ・ドルゴワ(ロシア)

【プールD】
第3シード:渡名喜風南(パーク24)
第6シード:パウラ・パレト(アルゼンチン)
有力選手:ラウラ・マルティネス=アベレンダ(スペイン)、アンドレア・ストヤディノフ(セルビア)

■ 52kg級 優勝争いの軸は志々目とケルメンディ
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志々目愛

(エントリー30名)

2019年東京世界選手権王者の阿部詩(日本体育大2年)と同2位のナタリア・クズティナ(ロシア)は出場を回避した。しかし、志々目愛(了徳寺大職)とマイリンダ・ケルメンディ(コソボ)の世界王者経験者2名を筆頭に、近年成長著しいアモンディーヌ・ブシャー(フランス)、階級ナンバーワンの足技師オデット・ジュッフリダ(イタリア)、昨年来復調傾向のアンドレア・キトゥ(ルーマニア)と世界大会表彰台クラスの強豪がずらり参戦。52kg級としては世界大会以外ではなかなか見ることのできない豪華なトーナメントが組まれた。

優勝争いの軸はもちろん志々目とケルメンディ。トーナメントではケルメンディが上側、志々目が下側と山が分かれており、対戦が実現するのは決勝だ。両者の戦績は1勝1敗。2017年ブダペスト世界選手権では志々目が内股透「技有」で勝利したが、2019年東京世界選手権ではケルメンディが「指導3」の反則で勝利している。この試合の志々目は負傷を抱えて本調子ではなかったのだが、昨年末の皇后盃での戦いぶりを見る限りもっかのコンディションは良好。今回は全く違う戦いを見せてくれるはずだ。また、志々目が皇后盃に挑むに当たって磨いたであろう対重量級、対パワーファイターの方法論はケルメンディ相手にも生きるはずである。

組み合わせはケルメンディの方がやや厳しく、初戦からかつて世界選手権の決勝を争ったこともあるキトゥとの対戦が組まれている。両者はともに階級随一のパワーファイター、真っ向から組み合っての力比べが見られるはずだ。また、キトゥは試合運びや戦術選択に長けたインサイドワーカーでもある。戦績はケルメンディの7勝0敗であるが、この選手がどんな戦いを仕掛けるかにも注目したい。もちろんこれが序盤戦の最注目カードである。

ケルメンディはこの試合さえ勝ち抜けばベスト4までは無風だが、準決勝ではブシャーの挑戦を受けることになる。このカードも過去ケルメンディが2勝0敗と勝ち越しているが、最後の対戦は2019年6月の欧州選手権。ブシャーがこの年の冬から急成長したことを考えれば、勝負はまったく予断を許さない。絞る、潜る、反らすと相手を封じることに長けたブシャーがケルメンディを相手にどのような試合を見せるのか。非常に楽しみ。この2人はもっか「対阿部詩」という観点で番付を激しく争う関係にある。仮にブシャーが勝利した場合には、東京五輪最大のライバルはこの選手に移ることになるだろう。

一方の志々目は準々決勝の相手にシャーリン・ファンスニック(ベルギー)とラグワスレン・ソソルバラム(モンゴル)の勝者が置かれているくらいで、ベスト4進出まではまず確実。おそらくジュッフリダと対戦することになる準決勝が唯一の山場である。過去の対戦は1勝1敗。ジュッフリダは担ぎ技の弾幕に切れ味抜群の足技、さらに内股透までも備えており、相性的にはかなり戦いづらい相手だ。実力的にはあくまでも志々目の勝利と予想するが、試合の入り方を間違えると思わぬ一発を食ってしまう可能性もある。とはいえ、志々目は内股のみではなく小外刈に寝技、「韓国背負い」と多彩な攻撃パターンを持つことも強み。これらを状況に応じて使い分ければそれほど苦戦することはないだろう。ここはしっかり勝ってもらい、ケルメンディとのリベンジマッチを実現させてほしい。

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マイリンダ・ケルメンディ

【プールA】
第1シード:アモンディーヌ・ブシャー(フランス)
第8シード:ジェフェン・プリモ(イスラエル)
有力選手:ジョアナ・ラモス(ポルトガル)、チェルシー・ジャイルス(イングランド)、ビシュレルト・ホルロードイ(モンゴル)、プップ ・レカ(ハンガリー)

【プールB】
第4シード:マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)
第5シード:アナ・ペレス=ボックス(スペイン)
有力選手:アンドレア・キトゥ(ルーマニア)、アガタ・ペレンク(ポーランド)、ディヨラ・ケルディヨロワ(ウズベキスタン)、ジョン・ボキョン(韓国)、エヴェリン・チョップ(スイス)

【プールC】
第2シード:志々目愛(了徳寺大職)
第7シード:シャーリン・ファンスニック(ベルギー)
有力選手:アンジェリカ・デルガド(アメリカ)、ラグワスレン・ソソルバラム(モンゴル)、ファビアン・コッヒャー(スイス)、カロリナ・ピンコフスカ(ポーランド)

【プールD】
第3シード:オデット・ジュッフリダ(イタリア)
第6シード:ラリッサ・ピメンタ(ブラジル)
有力選手:エストレーヤ・ロペス=シェリフ(スペイン)、ギリ・コーヘン(イスラエル)、パク・ダソル(韓国)、エカテリーナ・グイカ(カナダ)、アストリーデ・ネト(フランス)

■ 57kg級 芳田の決勝進出は既定路線、連敗中のクリムカイト倒しての優勝がミッション
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芳田司

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ジェシカ・クリムカイト

(エントリー29名)

日本からは2018年バクー世界選手権王者の芳田司(コマツ)が参戦。この選手が優勝候補の一番手だ。現役世界王者の出口クリスタ(カナダ)は欠場。世界王者級の力を持つ選手としてはジェシカ・クリムカイト(カナダ)にサハ=レオニー・シジク(フランス)、ノラ・ジャコヴァ(コソボ)、ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)、クォン・ユジョン(韓国)が参加している。ドルジスレンとクォンは2019年から全く結果を残せていないが、長い大会休止期間を経て復調しているかに注目だ。ほか、2019年東京世界選手権3位のユリア・コヴァルチク(ポーランド)にテルマ・モンテイロ(ポルトガル)、ダリア・メジェツカイア(ロシア)など名のある選手はひととおり顔を揃えており、トーナメントのレベルは世界選手権に遜色のないレベルと言っていい。

第2シードの芳田は組み合わせに恵まれ、ベスト8までは無風。準決勝の相手が出てくる隣の山(プールD)にもこれという難敵はおらず、準々決勝のドルジスレン戦が唯一の山場と言っていい。過去の戦績は3勝2敗、直近は2連敗とう形になってはいるが、最後に戦ったのは2017年。ドルジスレンの調子が2018年以降一貫していまひとつであることからも、芳田が遅れを取ることは考えづらい。ここさえ勝ち上がれば前述のとおり準決勝はまず問題なし、順当に決勝まで勝ち上がれるはずだ。

一方、上側の山はともにここ数年で一気に伸びた選手同士の一騎打ち、クリムカイトとシジクの争いと見てまず間違いない。両者の対戦成績は意外にもクリムカイトの4勝。モチベーション的にも出口との代表争いがまだ続いているクリムカイトの方が高いと予想され、今回もクリムカイト勝利となる可能性が高いだろう。

というわけで決勝は芳田対クリムカイトとなる可能性が高い。実はこのカード、2勝2敗の五分ながら直近の2戦はいずれも芳田が背負投で「技有」を奪われ、敗れている。余計な苦手意識を持たないよう、今回は確実に勝ってこの悪い流れを止めてしまいたいところだ。コロナ禍を経て負傷も癒え、充電十分の芳田がどんな戦いを見せてくれるか。大いに期待したい。

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サハ=レオニー・シジク

【プールA】
第1シード:ジェシカ・クリムカイト(カナダ)
第8シード:レン・チェンリン(台湾)
有力選手:ユリア・コヴァルツィク(ポーランド)、ヨワナ・ロギッチ(セルビア)、アナスタシア・コンキナ(ロシア)、クォン・ユジョン(韓国)

【プールB】
第4シード:サハ=レオニー・シジク(フランス)
第5シード:テルマ・モンテイロ(ポルトガル)
有力選手:キム・チス(韓国)、イヴェリナ・イリエワ(ブルガリア)、サンネ・フェルハーヘン(オランダ)、ザブリナ・フィルツモザー(オーストリア)

【プールC】
第2シード:芳田司(コマツ)
第7シード:ティムナ・ネルソン=レヴィー(イスラエル)
有力選手:キム・ジャンディ(韓国)、エテリ・リパルテリアニ(ジョージア)、ロレダナ・オフイ(ルーマニア)、ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)

【プールD】
第3シード:ノラ・ジャコヴァ(コソボ)
第6シード:テレザ・シュトル(ドイツ)
有力選手:ミリアム・ローパー(パナマ)エレーヌ・ルスヴォ(フランス)ダリア・メジェツカイア(ロシア)

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