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【eJudo’s EYE】佐々木健志が受け継ぐ2つの役割。襲名すべきは「全日本男」、そして「令和の三四郎」/令和2年全日本柔道選手権早出し評③

(2020年12月28日)

※ eJudoメルマガ版12月28日掲載記事より転載・編集しています。
【eJudo’s EYE】佐々木健志が受け継ぐ2つの役割。襲名すべきは「全日本男」、そして「令和の三四郎」
令和2年全日本柔道選手権早出し評③
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大活躍の佐々木健志。令和2年大会のまさに花形だった。

(「早出し評」②から続く)

文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

■佐々木健志は令和2年大会の「フェノメナ」、その戦いぶりを追う

初出場の81kg級の強者・佐々木健志が全日本柔道選手権準決勝進出の快挙。単に中量級選手がベスト4に入ったというだけではない。その戦いぶり、どころか「動き」や立ち振る舞いに歩く動作といった一挙手一投足そのものが、もっと言えばその体から立ち上るオーラ自体がもう「ゼニの取れる」コンテンツのレベルにあった。“そこにいる”ということ自体からもう目が離せない。佐々木健志は単なる一選手という存在を超えた、令和2年大会の「現象」(フェノメナ)であった。

しばしその戦いぶりの描写をお許し願いたい。まず1回戦は天理系本格派の系譜に連なる強者、体重105キロの古田伸悟とマッチアップ。畳に現れると柔道衣を着ていても隠せない、モリモリにパンプアップした身体の逞しさがまず目を引く。デカイ。体幹が太い。僧帽筋に鋼の質感を感じる。滑るように接近すると、ケンカ四つの古田がまず内股フェイントの左出足払。相手が滑り飛ぶさま脳裏に瞬く良い技であったのだが、吹っ飛んだのは仕掛けた古田の側。佐々木が右内股をかち合わせたのだ。確かに脹脛同士が当たる技で決定的なインパクトはなかったかもしれないが、それにしても中量級選手が100キロの相手の出足払をそんなやり方で弾き返すか。
続いてのバックステップに思わず声を上げてしまった。速い。一瞬で異常な距離を滑る。おそらく「全柔連TV」の映像を見れば解説している私の驚声が入っていると思う。映像だと奥-手前の二次元投影になるだろうからわかりにくいのではないかと思うが、一階上から見ていると異常な速さと距離。どこの誰が、バックステップ1つでここまで人を驚かせるか。桁違いの仕上りである。

落ち着きも凄い。釣り手一本の攻防からどうやら指のテーピングがはがれて畳に落ちたようなのだが、足元に落ちたテープ屑をまず左足アウトサイドで外側に払い出し、次いで右出足払で場外まで掃き出す。この間目は相手を見据えたまま。なぜこんなに冷静なのか。初出場選手の振る舞いではない。

2分過ぎには古田の隅返をパスして腕一本の後袈裟固(=崩袈裟固)。古田の脚は腿に入って佐々木は相手の右側に蹴り飛ばされているのだが、落ちたときにはもう相手の左側から抑え込みに入っている。速い。放物線ではなく最短距離、ボディバランスが重力法則を凌駕しているという印象だ。この試合はそのまま抑え切って「一本」。これでは佐々木相手に捨身技は出来ない。次戦の垣田、そして勝てば待ち受ける巴投男・加藤はいったいどう手を打ってくるのだろう。

続く2回戦に待ち受けるはその垣田恭兵との一番。仕上り抜群の一発屋佐々木は、業師であり策士であり大会きっての「曲者」であるこの名物男といったいどんな試合をしてくれるのか。双方担ぎ技と抱き勝負というモードがあるが、どちらがどうこの2軸を絡ませて前線を設定するのか、駆け引きの巧い垣田に対し、駆け引きなしの一発勝負を好む佐々木、勝負の土俵はどうクロスするのか。2人の似たモードを持つ、しかしタイプが全く違う勝負師同士の掛け合わせは試合にどんな化学変化をもたらすのか。

そんな我々の期待を、実相はあっさり裏切る。

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※ eJudoメルマガ版12月28日掲載記事より転載・編集しています。

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