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【eJudo’s EYE】大会ベストスローはこれだ!2020年度講道館杯を彩った美技

(2020年11月3日)

※ eJudoメルマガ版11月3日掲載記事より転載・編集しています。
【eJudo’s EYE】大会ベストスローはこれだ!2020年度講道館杯を彩った美技
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90kg級2回戦、森健心が前田宗哉から払釣込足「一本」。技術、背景と申し分ない一発だった。

文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

今年度初めての全国大会は、シニアの国内最高峰大会。延期となっていた全日本選抜体重別選手権を兼ねる2020年度講道館杯全日本柔道体重別選手権が、10月31日から2日間の日程で行われた。規模縮小、かつ無観客という制限つきとはいえ、ついに我が競技でも大規模大会が行われたことはまことに感慨深い。大会前日に行われた検査での陽性者もゼロ、柔道がたとえ少しづつでも前に進みつつある、その復活の息吹が存分に感じられた2日間であった。

各階級のレポートをはじめ書きたいことはたくさんあるのだが、まずそれに先んじて。ポジティブなテーマから発信を始めたいと思う。大会ベストスローは果たしてどの技か。2020年度講道館杯を彩った美技、あっと思わず腰を浮かせて拍手を送ってしまった、これぞという、投技「一本」を紹介したい。

この美技紹介、今回はかなり意味がある気がしている。すべての技を動画で見ることが出来るからだ。今大会では初めて主催者による全試合場のライブ中継が行われたのだが(大拍手!)、胴元の全柔連はこのあと、ライブでは中継出来なかった決勝も入れ込んですべての試合をウェブ上にアップしてくれるとのこと。探しやすいようすべての技術にMATと試合番号を付しておくので、ぜひどんどんアクセスして、トップ選手たちの素晴らしい「一本」を堪能してもらいたい。

まっさきに紹介したいのは、90kg級で3位入賞の森健心(明治大1年)の2回戦、優勝候補のシード選手前田宗哉(自衛隊体育学校)を相手に決めた鮮やかな払釣込足「一本」(最終日、MAT4第4試合。公式記録は送足払だが明確に払釣込足である)。左小外刈で相手の右足を下げ、次いでつられてツト下がる左足を己の右で思い切り払い上げる、まさに手順通りに嵌った素晴らしい一撃。瞬間、前田の体はうつぶせに空を飛ぶ格好で畳と平行に浮き上がり、次いで襲った回旋に逆らえず背中から落ちて文句なし「一本」。おお、とライブ中継の向こう側で日本中のファンが腰を浮かせて同じく感嘆の声を上げたであろうという「繋がった感」まで感じさせてしまう見事な一発だった。技自体の鮮やかさはもちろん、背景の積み上げがまた、いい。まずもちろん優勝候補相手にジュニアの選手が一発食らわすというアップセットであること。また。パワーと圧力に勝るシニアの強者に対しガップリの組み合いでは勝ち目がない、その構図の中で足技一発で舞わせたという痛快さ、つまり「パワー」や「実績」に対し掛けた梯子が、「技」であるということ。そしてもう1つは、技術伝承という観点。いま風に言うといわゆる「フォンセカ」ということになるこの払釣込足だが、これはもともと全日本強化チームでジュニアのコーチも務める持田達人氏の得意技。失われつつある技術を若い選手がきちんと繋いでくれるということが、言葉ではなく決まった「技」それ自体でわかる。こういう背景が回路として脳内で繋がり一瞬にして電流スパーク、散った火花がこの払釣込足「一本」。いやはや、凄かった。

ちなみにこの技を森に教え込んだのが持田氏であることは、業界内では有名。近くにいらしたのですぐさま訪うて話を伺ってみた。相手を下げる(フォンセカなら逆の大内刈による腰入れ、モチダならこれに加えて小外刈)こと以上に実は相手の重心を浮かすことが大事とのこと。1回「こう、グッとやる」(肘を下に己の腕を寄せて、縦に突き上げる)ことが重要で、奥襟を持って上から下への圧を掛けっぱなしになる圧力柔道ではこれは難しい。ゆえに日本でこの術者が減っていること、逆に海外のトップ選手が質の良い柔道でこれを使いこなし始めていることを危惧していた。森は敗者復活戦でも戸髙淳之介(延岡学園高3年)からこの技で「技有」を奪っており(最終日MAT4、第25試合。公式記録は出足払になっているがこれも払釣込足である)、こちらも要チェックだ。グランドスラム・ブダペストにおけるサイード・モラエイの「フォンセカ」、そしてこの森の「モチダ」。コロナ禍からの再開第一戦における白眉が国際、国内ともに払釣込足であったというシンクロもなかなか興味深い。

足技から話を始めたので、続いても足技。

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※ eJudoメルマガ版11月3日掲載記事より転載・編集しています。

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