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【プレビュー】面白過ぎる最終日、世界王者3人揃い踏みの90kg級には特に注目/グランドスラム・ブダペスト2020最終日男子プレビュー(90kg級、100kg級、100kg超級)

(2020年10月25日)

※ eJudoメルマガ版10月24日掲載記事より転載・編集しています。
【プレビュー】面白過ぎる最終日、世界王者3人揃い踏みの90kg級には特に注目
グランドスラム・ブダペスト2020最終日男子プレビュー(90kg級、100kg級、100kg超級)
→グランドスラム・ブダペスト2020組み合わせ(公式サイト)

■ 90kg級・リオ後の世界王者3人が揃い踏み、トーナメントは上下で選手属性がきれいに分かれる
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ニコロス・シェラザディシヴィリ

(エントリー39名)

現役世界王者のノエル・ファンテンド(オランダ)を筆頭に、2018年バクー世界選手権王者のニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)、第3シードで2017年ブダペスト世界選手権王者のネマニャ・マイドフ(セルビア)と、過去3年間の世界王者が一堂に会することとなった。さらにミハイル・イゴルニコフ(ロシア)、マーカス・ニーマン(スウェーデン)、ママダリ・メディエフ(アゼルバイジャン)、ダヴラト・ボボノフ(ウズベキスタン)、イスラム・ボズバエフ(カザフスタン)ら世界大会表彰台クラスの強豪がずらりと名を連ねており、このブダペスト大会屈指の豪華陣容となっている。90kg級の強豪選手はざっくり言って2つのタイプに分かれるのだが、トーナメントはまるで遠心分離機にでも掛けたかのようにこの様相をきれいに反映。上下の山にそれぞれ「柔道が強いタイプ」と「勝負が強いタイプ」がはっきり振り分けられた。同じ属性の選手同士で潰し合った末の代表戦として決勝が用意されており、予選ラウンドと決勝ラウンドで全く異なる試合展開を楽しむことができるだろう。

純実力的な意味での優勝候補は第1シードに配されているシェラザディシヴィリ。単純な力比べではこの豪華メンバーのなかにあっても頭ひとつ抜けている。柔道が素直なために戦略を立てるのが上手い頭脳派や想定外の行動をする勝負師タイプを苦手としているものの、決勝までに対戦する相手にこのタイプはいない。準々決勝で当たるボボノフには今年2月のグランドスラム・パリで対戦した際に背負投「技有」を奪われたのちに残り4秒の「指導3」で逆転勝ちをするという大苦戦を強いられているが、じゅうぶん警戒して臨むであろう今回は同じ轍を踏むことはないだろう。プールBからは、順当にいけば同じく階級を代表する本格派でジュニア時代からのライバルでもあるイゴルニコフの勝ち上がりが濃厚。対戦なれば壮絶な投げの打ち合いとなることは間違いなく、是非両者ともに勝ち上がって見ごたえのある勝負を見せてもらいたい。

一方、前述のとおり下側の山は癖のあるタイプが揃っている。組み手とは逆の技が主体の難剣使いファンテンド、ビッグマウスと奇想天外な試合運びが持ち味のマイドフ、隅返と巴投に足技を盛った変則柔道家ニーマンと枚挙に暇がない。柔道力や体力との掛け算でファンテンドの勝ち上がりを予想するが、誰が残ったとしても上側の山を勝ち上がってくるであろう「柔道自体が強いタイプ」代表にぶつける選手としては十分すぎる好役者。王道タイプvs、彼らに勝つこと自体をレゾンデートルとする「試合が強いタイプ」、そして最後に待ち受けるそれぞれの代表同士による優勝決定戦。たまらない構図のトーナメントである。

【プールA】
第1シード:ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)
第8シード:ダヴラト・ボボノフ(ウズベキスタン)
有力選手:イスラム・ボズバエフ(カザフスタン)、クエジョウ・ナーバリ(ウクライナ)、シリル・グロスクラウス(スイス)

【プールB】
第4シード:トート ・クリスティアン(ハンガリー)
第5シード:ママダリ・メディエフ(アゼルバイジャン)
有力選手:アヴタンディル・チリキシヴィリ(ジョージア)、ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)、イェスパー・シュミンク(オランダ)

【プールC】
第2シード:ノエル・ファンテンド(オランダ)
第7シード:マーカス・ニーマン(スウェーデン)
有力選手:リ・コツマン(イスラエル)、ダヴィド・クラメルト(チェコ)、フセン・ハルモルザエフ(ロシア)

【プールD】
第3シード:ネマニャ・マイドフ(セルビア)
第6シード:ラファエル・マセド(ブラジル)
有力選手:コルトン・ブラウン(アメリカ)、ガンツルガ・アルタンバガナ(モンゴル)

■ 100kg級 コロナから復活の世界王者フォンセカが参戦、ロシアとアゼルバイジャンの代表争いに注目
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ジョルジ・フォンセカ

(エントリー40名)

現役世界王者の業師ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)をはじめ、階級随一の剛力を誇るニヤズ・イリアソフ(ロシア)とアルマン・アダミアン(ロシア)のロシア強力2枚看板、豪快な腰技が持ち味のシャディー・エルナハス(カナダ)とゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)、通称「仙人」の浮技師エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)、両組みの技巧派ペテル・パルチク(イスラエル)、立って良し寝て良しの2017年世界無差別選手権準優勝者トマ・ニキフォロフ(ベルギー)と一線級の強豪が大挙参戦。ほかにもサーイエニッチ ・ミクロス(ハンガリー)、アレクサンドル・イディー(フランス)ら十分に表彰台に届く力を持つ選手がトーナメントのそこかしこに散らばっており、非常に層の厚い、まさに重厚なトーナメントが組まれた。

優勝候補はイリアソフ。強さはもちろんのこと、組み合わせ配置が良い。準々決勝まではほぼ無風のブロックに置かれており、これはかなりのアドバンテージ。

世界王者のフォンセカは第2シード選手としてプールCに配されており、こちらも準々決勝までは無風。タイプ的にも実力差の大きさに鑑みても事故の可能性は低く、決勝ラウンド進出まではまず間違いないだろう。同選手は今年5月には新型コロナウイルス陽性と診断されてファンを心配させたが、SNSなどを見る限りどうやら順調に回復を果たした様子。フォンセカらしい切れのある投げ技と試合後の陽気なパフォーマンスに期待したい。

本大会では佳境に入った各国の東京五輪代表争いが大きな見どころとなっているが、この100kg級ではロシアがイリアソフとアダミアン、アゼルバイジャンがガシモフとコツォイエフとライバル選手を同時派遣している。第2日までの試合を見る限り代表争いに絡む選手は明らかに一段高いパフォーマンスを見せており、これらの選手には特に注目してその戦いぶりをウォッチしたい。

【プールA】
第1シード:ペテル・パルチク(イスラエル)
第8シード:ラファエル・ブザカリニ(ブラジル)
有力選手:トマ・ニキフォロフ(ベルギー)、アレクサンドル・イディー(フランス)

【プールB】
第4シード:エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)
第5シード:ニヤズ・イリアソフ(ロシア)
有力選手:メルト・シスマンラル(トルコ)、ヨアキム・ドファービー(スウェーデン)、ズラトコ・クムリッチ(クロアチア)、アレクサンダー・クコル(セルビア)

【プールC】
第2シード:ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)
第7シード:ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)
有力選手:アーロン・ファラ(オーストリア)、ボヤン・ドセン(セルビア)、サーイエニッチ ・ミクロス(ハンガリー)

【プールD】
第3シード:シャディー・エルナハス(カナダ)
第6シード:アルマン・アダミアン(ロシア)
有力選手:ヴェグ・ジャンボル(ハンガリー)、ラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)、ムハマドカリム・フラモフ(ウズベキスタン)、ダニエル・ディチェフ(ブルガリア)、レオナルド・ゴンサルヴェス(ブラジル)

■ 100kg超級 タソエフなのかバシャエフか、本音読めぬロシアの代表争いに注目
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もっか一番手扱いのイナル・タソエフ

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一時は一番手確定と目されるも、なぜかまったく試合に出てこなくなったタメルラン・バシャエフ

(エントリー27名)

テディ・リネール(フランス)のエントリー取り消しに現役世界王者ルカシュ・クルパレク(チェコの出場停止(新型コロナウイルス検査で陽性反応)と、開始前から大会の柱となるべき2選手を欠くこととなった本階級。それでもメンバーはかなりの豪華さ。イナル・タソエフ(ロシア)とタメルラン・バシャエフ(ロシア)の属性異なるロシアの若手コンビ、ともに階級随一の怪力を誇るゲラ・ザアリシヴィリ(ジョージア)とウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)、最重量級に担ぎ技の流行のきっかけを作った2016年リオデジャネイロ五輪銅メダリストのオ-ル・サッソン(イスラエル)、組み手ベースの圧力柔道から積極的に投げを狙うスタイルへと生まれ変わった巨漢ラファエル・シウバ(ブラジル)、多彩な技を持つ2017年ブダペスト世界選手権2位のダヴィド・モウラ(ブラジル)など魅力的な強豪がずらり名を連ねている。見どころは枚挙に暇がない。トーナメントの構図としては90kg級と同様にその属性ごと各プールに選手が集められており(余談ながらなんだかこのあたり講道館杯めく)、ざっくり言えば大型選手の多いプールAとC、アスリート体型や担ぎ技系の選手が多いプールBとDという構成である。こちらも同属性同士で戦う予選ラウンドと、異なる属性の選手がぶつかる決勝ラウンドで全く違った様相の試合が見られるはずだ。

注目トピックは他階級と同様、1番手と2番手が同時派遣されている国の代表争い。ロシアは昨年の東京世界選手権で代表を務め、昨年のグランドスラム大阪でも優勝したタソエフが一歩リードしているが、ライバルのバシャエフは昨年3月のグランドスラム・エカテリンブルク優勝以来まったくワールドツアーに出ておらず、いわば評価を保留されている状況。バシャエフがこの階級の上位選手に対して適正のある担ぎ技属性の選手であることからロシア国内で高く評価されているとも考えられ(「バシャエフ本番まで取り置き」はいかにも計算高いロシアがやりそうな策ではないか)、今回たとえばバシャエフが優勝するようなことがあれば序列逆転の可能性も十分にあるだろう。一方ブラジルの代表争いは安定して結果を残し続けているシウバが大きくリードしている状況にある。今大会に同時派遣されているということはまだモウラにも可能性がのこされているということであり、モウラとしてはなんとしても直接対決が実現する準決勝まで勝ち上がりたいところだ。

【プールA】
第1シード:イナル・タソエフ(ロシア)
第8シード:ゲラ・ザアリシヴィリ(ジョージア)
有力選手:ユーリ・クラコヴェツキ(キルギスタン)、シポッツ・リヒャルト(ハンガリー)

【プールB】
第4シード:オ-ル・サッソン(イスラエル)
第5シード:ベクムロド・オルティボエフ(ウズベキスタン)
有力選手:オドフー・ツェツェンツェンゲル(モンゴル)

【プールC】
第2シード:ラファエル・シウバ(ブラジル)
第7シード:ウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)
有力選手:ユール・スパイカース(オランダ)

【プールD】
第3シード:ダヴィド・モウラ(ブラジル)
第6シード:ステファン・ヘギー(オーストリア)
有力選手:レヴァニ・マティアシヴィリ(ジョージア)、タメルラン・バシャエフ(ロシア)

※ eJudoメルマガ版10月24日掲載記事より転載・編集しています。

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