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【プレビュー】一気の五輪代表目指すアブラゼに注目、66kg級はヴィエルの復活に期待/グランドスラム・ブダペスト2020第1日男子プレビュー(60kg級、66kg級)

(2020年10月23日)

※ eJudoメルマガ版10月22日掲載記事より転載・編集しています。
【プレビュー】一気の五輪代表目指すアブラゼに注目、66kg級はヴィエルの復活に期待
グランドスラム・ブダペスト2020第1日男子プレビュー(60kg級、66kg級)
→グランドスラム・ブダペスト2020組み合わせ(公式サイト)

■ 60kg級 ライバル同時派遣の3カ国に注目、V候補筆頭はアブラゼ
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ヤゴ・アブラゼ(ロシア)

(エントリー30名)

存在それ自体が目玉となるような超ビッグネームの参戦はなかったが、柔道自体が面白い選手が集まってかなり見ごたえのあるトーナメントが組まれた。また、この階級にはロシア、フランス、アゼルバイジャンの3カ国がそれぞれ国内トップの2選手を同時派遣しており、彼らによる東京五輪代表争いも大きなみどころである。

注目選手を挙げていきたい。形上の第1シード選手は2019年東京世界選手権2位のシャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)だが、この選手は同大会で素晴らしいパフォーマンスを見せて以降は意外なほどの低空飛行を続けており、優勝候補一番手に挙げるのは少々難しい。

直近の成績から導き出される優勝候補の最右翼は、第5シードのヤゴ・アブラゼ(ロシア)。激しい代表争いの渦中にある2018年バクー世界選手権2位のロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)との同時派遣が組まれており、今大会に掛けるモチベーションは相当に高いと思われる。力で相手を蹂躙する、これぞアブラゼという暴れっぷりを見せてくれるはずだ。武器は立ってはパワフルな巻き込み技、寝ては熟練度高い「加藤返し」。

続いて注目したいのはワリード・キア(フランス)とダヴド・ママドソイ(アゼルバイジャン)の2人。こちらもそれぞれライバルとの同時派遣が組まれており、キアはルカ・ムヘイゼ(フランス)、ママドソイはカラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)とこの大会での出来を競う。

このうち、フランスのキアとアズルバイジャンのママドソイはプールCに同居。両者は昨年の東京世界選手権3回戦で対戦しており、壮絶な抱き勝負の末にキアが豪快極まりない裏投「一本」で勝利して会場を大いに沸かせている。両者が勝ち上がれば準々決勝で対戦する可能性があり、実現なればあの魅力的な投げ合いの再現に期待が持てる。ただしキアはヨーレ・フェルストラーテン(ベルギー)、ママドソイはグスマン・キルギズバエフ(カザフスタン)といずれも序盤戦に山場あり。純実力的にはキルギズバエフが勝ち上がる可能性が高いと言わざるを得ないが、実はこの選手の柔道スタイルもカザフスタンらしい密着系。というわけで誰が勝ちあがっても、スリリングな「抱き勝負」の競演が必至という、見逃すわけにはいかないブロックである。

ほか、昨年来担ぎ技専門から足車、大車を連発する腰技系に変貌を遂げたエリック・タカバタケ(ブラジル)、片手状態から肘を差し入れて相手を固定するサンボ式谷落の使い手のミフラジ・アックス(トルコ)、ひたすら捨身技で寝技に引き込みまくるヤニスラフ・ゲルチェフ(ブルガリア)と、柔道にひと癖ある好選手が目白押し。このあたりが冒頭語った「柔道自体が面白い選手が揃った」部分。誰が勝ち上がったとしても決勝ラウンドは盛り上がること間違いなしだ

【プールA】
第1シード:シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)
第8シード:アルテム・レシュク(ウクライナ)
有力選手:モハマド・ラシュノネザド(IJF)、カラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)、ルカ・ムヘイゼ(フランス)

【プールB】
第4シード:エリック・タカバタケ(ブラジル)
第5シード:ヤゴ・アブラゼ(ロシア)
有力選手:アドニス・ディアス(アメリカ)、ダヴィド・プルクラベク(チェコ)、ミフラジ・アックス(トルコ)

【プールC】
第2シード:グスマン・キルギズバエフ(カザフスタン)
第7シード:ヨーレ・フェルストラーテン(ベルギー)
有力選手:ダヴド・ママドソイ(アゼルバイジャン)、ワリード・キア(フランス)

【プールD】
第3シード:ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)
第6シード:トルニケ・チャカドア(オランダ)
有力選手:ヤニスラフ・ゲルチェフ(ブルガリア)、サリ・イルディス(トルコ)、ラグワジャムツ・ウヌボルド(モンゴル)

■ 66kg級 ロンバルドはまさかの出場停止、好選手ヴィエル復活なるか
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デニス・ヴィエル(モルドバ)

(エントリー41名)

もっか世界ランク1位、昨年12月のワールドマスターズで鬼神の強さを見せていたマニュエル・ロンバルド(イタリア)がまさかの欠場。出国前に2度行われたPCR検査をクリアして現地入りしていたが、入国後最初の検査でイタリアチームに複数の新型コロナウイルス陽性反応者が判明。チーム全員が出場停止を言い渡され、無念のリタイアとなった。この後はハンガリー内のホテルで10日間の隔離措置がとられるとのこと、ライバルたちの戦いをテレビで見守るしか出来ることがなくなってしまった。

優勝候補の筆頭が欠けた本階級、新たなV争いの軸は2019年東京世界選手権3位のデニス・ヴィエル(モルドバ)ということになる。昨春突如ブレイクした2019年ワールドツアーの上半期MVP、ロンバルドにも直接対決で2勝(0敗)している(ただしロンバルドが本格的に化けたのは昨秋以降で、対決はいずれもヴィエルがもっとも乗っていた2019年の前半戦という事情は斟酌する必要がある)。一見すると体は細身、その柔道も切れる足技と連絡技のコンビネーションをベースとした「柔」のスタイルだが、「剛」の強さがもっとも発揮されるはずの際(きわ)の勝負でもパワーファイターに引けを取らない。東京世界選手権の3位決定戦では階級きっての体力自慢ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)の突進力を綺麗に吸収、「やぐら投げ」による「一本」で鮮やかに勝利している。昨年後半から調子を落としたため今大会ではノーシードまで落ちているが、柔道力自体で言えば間違いなくナンバーワン。昨年後半のような徹底マークを受けてなおあのセンス溢れる柔道が展開出来るか。この期間の成長に期待したい。このヴィェルの勝ち上がりが、今大会66kg級ウォッチ第1の注目ポイント。

第2の注目ポイントは、国内のライバル選手を同時派遣したロシア、カザフスタン、アゼルバイジャンの代表争い。具体的な選手名は下記の有力選手リストをご確認いただくとして割愛するが、いずれの国の選手も実績、実力ともに伯仲しており、どちらが選ばれてもおかしくない接戦。今後の国際大会の開催自体が不透明な現状にあっては、今大会の出来が代表選考に及ぼす影響は甚大だ。全員モチベーションは相当高いはず、ハイパフォーマンスが期待できるだろう。

ほか、注目選手としてウィリアン・リマ(ブラジル)とシゲキ・ナカムラ(コソボ)をピックアップしたい。リマは昨年の世界ジュニア選手権王者。柔道スタイルは貪欲に一本背負投を連発するという泥臭いもの。同大会の決勝ではこの戦法一本やりでみごと日本代表の武岡毅(國學院大3年)を破っている。ここ数年、世界ジュニア王者は翌年以降一気にメジャー大会の上位クラスまで番付を上げることが続いており、リマが現時点でどこまで成長しているのかは五輪を占う上でも外せない注目ポイント。ナカムラは日本出身で、32歳のベテランながら2016年には全日本実業個人選手権60kg級で2位入賞を果たしている猛者。国際舞台への出場機会を求めてナショナルコーチ名目でコソボに移籍、今月3日のヨーロッパカップ・ドゥブロヴニクではみごと優勝を飾っている。組み合わせでは強豪が比較的少ないブロックに入っており、2回戦でアドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)に勝利すれば決勝ラウンド進出の可能性も十分だ。

【プールA】
第1シード:イェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)
第8シード:サルドル・ヌリラエフ(ウズベキスタン)
有力選手:ジャスリーン=シン・サイニ(インド)、アブドゥラ・アブドゥルジャリロフ(ロシア)

【プールB】
第4シード:ニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)
第5シード:ボグダン・イアドフ(ウクライナ)
有力選手:ウィリアン・リマ(ブラジル)

【プールC】
第2シード:タル・フリッカー(イスラエル)
第7シード:イェルドス・ジューマカノフ(カザフスタン)
有力選手:セルジュ・オレイニック(ポルトガル)、バグラチ・ニニアシヴィリ(ジョージア)、デニス・ヴィエル(モルドバ)オルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)

【プールD】
第3シード:アドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)
第6シード:ヤクブ・シャミロフ(ロシア)
有力選手:シゲキ・ナカムラ(コソボ)、キリアン・ルブルーシュ(フランス)

※ eJudoメルマガ版10月22日掲載記事より転載・編集しています。

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