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ワールドツアーきょう再開、直前でクルパレクら欠けるも陣容は豪華/グランドスラム・ブダペスト2020オーバービュー

(2020年10月23日)

※ eJudoメルマガ版10月22日掲載記事より転載・編集しています。
ワールドツアーきょう再開、直前でクルパレクら欠けるも陣容は豪華
グランドスラム・ブダペスト2020オーバービュー
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ドローに臨むIJFマリウス・ビゼール会長。

柔道競技に復活の狼煙上がる。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて3月以降中断していたワールドツアー大会が、きょう23日からのグランドスラム・ブダペストでついに、8か月ぶりに再開される。

ヨーロッパが第2波、第3波に揉まれて再びの厳戒態勢を敷くという厳しいタイミングで行われることとなった今大会。IJFは8月に発表した大会実施プロトコル通りに徹底した検査と隔離、そして消毒と「ソーシャルディスタンス」を以て臨んでいる。選手は出国前から畳に上がるまで最低5度のPCR検査をクリアせねばならず、入国後はホテルに隔離されて専用車で試合場を往復。練習場の使用時間も厳しく制限され「密」は徹底的に排除される。選手は畳に上がる直前までマスクの着用が義務付けられ、まさに試合をしている間のみしか外すことは許されない。

果たして本当に大会は行われるのか。当初700人近かったエントリー選手は本番が近づくにつれ漸減。大会の目玉になるはずだったテディ・リネール(フランス)ら大物選手も次々姿を消し、20日には100kg超級の現役世界王者ルカシュ・クルパレク(チェコ)が出国直前のPCR検査で陽性反応を示してエントリー取り消し。ドロー当日にも現地入りしていたイタリアチームがまるごと出場停止となる躓きはあったが、それでも最終的に409人の選手の出場が確定した。

そしてこの残ったメンバー、予想に反してと言うべきか、驚くべき豪華さである。大会が8か月行われず実戦機会が極端に少なかったという事情はあろうが、端的に言ってグランドスラム・パリ、あるいはグランドスラム・デュッセルドルフと比べても見劣りしない濃い陣容。

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ダリア・ビロディド

女子でまず挙げるべきは、48kg級の絶対王者ダリア・ビロディド(ウクライナ)。前週末になってエントリーを取り消しており今大会は不参加と思われていたが、蓋を開けてみれば、なんと1階級上げて52kg級で出場という大サプライズが待っていた。ビロディドは173センチという高身長、かねてから減量の厳しさが指摘されて (グランドスラム・パリ準決勝における疲労困憊ぶりはファンに記憶にも新しいはず)いたが、五輪まで10か月を残すこの明らかな調整期にあっては敢えて無理をする必要はないと判断したか。実戦で試合勘を養いつつ、しかし調整ペースは崩さないという「いいとこどり」の戦略と推察される。しかし外野のファンとしてはこれほど面白いことはない。東京五輪後の階級アップが噂されるビロディドがパワー自慢揃う52kg級で実際どれほどやれるのか、まさに注目である。順調なら準決勝でジェフェン・プリモかギリ・コーヘンのイスラエル勢との対決、決勝では昨年12月に阿部詩を破って世界を驚かせたアモンディーヌ・ブシャー(フランス)との大一番が待ち受ける。ビロディドはこのコロナ禍期間もっともニュースになること多い柔道選手でもあったが、その多くはインスタグラムの投稿を紹介しては「まるで天使!」「完璧な着こなしだ!」とそのスタイルと美貌を伝えるという体の浅はかなものばかり。アクセス狙いのお手軽芸能記事で取り上げられるだけのチープな選手ではなく、きちんと本業でスポーツメディアに高く評価される絶対無二のアスリートであると、あらためて示す機会となってほしい。

女子は男子に比べるとどうしても層の厚さで劣るが、48kg級にはワールドマスターズで驚きの強さを示した「小さな巨人」ディストリア・クラスニキ(コソボ)とリオ五輪王者パウラ・パレト(アルゼンチン)、57kg級にはジェシカ・クリムカイト(カナダ)、63kg級にリオ五輪王者ティナ・トルステニャク(スロベニア)、70kg級に現役世界王者マリー=イヴ・ガイ(フランス)とそれぞれの階級にハッキリした軸があり、観戦する立場としてはかなり面白い大会となっている。

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ジョルジ・フォンセカ

男子は、率直に言ってどの階級も面白い。リオ後の世界チャンピオンの称号を持つ選手としては東京世界選手権100kg級王者のジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)、90kg級のニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)、そして国籍変更後これが3大会目となる81kg級サイード・モラエイ(モンゴル)らがエントリー。大向こう的には彼らが出場する階級がそのまま注目階級と言えるが、1つ敢えて熱い階級を推すとすれば、100kg級。陽気な現役王者フォンセカ(5月に新型コロナウイルスに感染、快癒との情報)はもちろんのこと、伸び盛りのシャディー・エルナハス(カナダ)、腰技一発の威力でキャラの立つユニバーシアード王者ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)に、掴みどころのない仙人的な柔道という意外な方向に仕上がってきたリオ五輪2位のエルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)と若手からベテランまで役者が揃い、そして何より激しく代表を争うニヤズ・イリアソフとアルマン・アダミアンというロシアの強豪2人が同時参戦するのだ。本格派から戦術派、一発屋に業師、そして若手にベテランとあらゆるタイプが揃ったこの階級は非常に楽しみ。

ちなみにこの「代表争い」は今大会ウォッチの裏テーマとしてかなり面白い。このロシアでいうなら、60kg級は建前上の1番手ロベルト・ムシュビドバゼと、メキメキ売り出し中の変則巻き込み技ファイターのヤゴ・アブラゼが同時派遣されて雌雄を決し、81kg級ではハサン・ハルムルザエフとアスラン・ラッピナゴフが同時出場。イリアソフとアダミアンといずれも頂点を狙える100kg級は熱さマックス、才能豊かな若手2人が激しく争う100kg超級ではかつて1番手確実と目されたタメルラン・バシャエフと、もっかワールドランキング上では序列1番手(WR5位)のイナル・タソエフが同時起用された。特に60kg級と100kg超級は今大会の結果次第でほぼ先行きが見えるはず。気に掛けてウォッチすると、観戦の豊かさが増すこと請け合いだ。

この代表争いも含めたみどころは、あらためて各階級のプレビュー記事で詳しくお伝えしたい。

※ eJudoメルマガ版10月22日掲載記事より転載・編集しています。

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