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東京都でコロナ下初の柔道大会実施、指導者5氏に聞く「これまで」と「これから」/東京都高等学校学年別柔道大会

(2020年10月10日)

※ eJudoメルマガ版10月5日掲載記事より転載・編集しています。
東京都でコロナ下初の柔道大会実施、指導者5氏に聞く「これまで」と「これから」
東京都高等学校学年別柔道大会
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開会式。密を避けて選手は整列せず、散らばって座る形で行われた。

さる10月3日(土)に、第70回東京都高等学校学年別柔道大会(2020 Tokyo Thanks Match)が行われた。いわゆるコロナ禍以降、東京都で行われる初めての柔道大会である。

なにしろ東京都は感染のホットスポット、そして柔道競技は濃厚接触を伴う格闘技という「コロナの世界」にもっともそぐわぬスポーツ。その厳しい条件の中で高校生と指導者は大会の中止をどう受け止め、どう活動していたのか。条件の異なる地域、学校の皆さまと少しでも情報を共有すべく、当日の試合開始直前に話をお聞きした指導者5氏のコメントをお伝えする。

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日体大荏原高・小久保純史監督

日体大荏原高・小久保純史監督のコメント
「3月に高校選手権が中止になって金鷲旗、インターハイもなくなった。どこを目標にしていのか、指導者も子どもたちも、戸惑い、悩んだ期間でした。冬の招待試合も軒並み中止となってしまいましたが、いまは高校選手権の予選があることを信じて頑張っています。今日も『中止になるかもしれない』と不安に思いつつここまでやってきましたが、まずなによりも大会を開いて頂いたことに感謝したい。勝ち負け云々ではなく、久々真剣に試合が出来ること自体が本当に貴重な機会です。(-これまでの稽古について教えてください)全日本柔道連盟と東京都柔道連盟のお達し通りの段階を踏みました。日体大グループとして大学から厳しい指導があったこともあり、当初は柔道衣も着ず、トレーニングのみ。6月から柔道衣を着て打ちこみを始め、段階を踏んで今はようやく乱取りまで進んでいます。とはいえ学校に下校時間の規制があり、稽古も時間短縮。まだまだいつも通りとはいきません。自粛期間は完全に外出禁止としましたが、一番良かったのは1人の感染者も出さなかったことです。これは間違いない。トレーニングや技の研究なども充実していて、普段では出来ないいいことも出来ました。(-3年生の海堀選手は高校選手権無差別の東京代表に決まっていました)意気込んでいましたが、1個、1個目標が崩れていくのは本当に辛かったと思います。高校時代にもう1回国士舘と戦いたいという3年生の思いが、今日は叶います。思う存分、きょうが全国大会のつもりでやってこいと送り出します。」

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修徳高・大森淳司監督

修徳高・大森淳司監督のコメント
「(-劇的展開で出場権を手にした高校選手権が中止になりました)子どもたちの目標を次どうやって作ろうかと。普段厳しいことを言っているぶん、虚無感に襲われました。(-どう言葉を掛けられましたか?)ずっとこの状態が続くわけではない、トンネルは必ず抜けられるから前をみようと。でもそのトンネルが物凄く長くなってしまった。高校選手権に続いて金鷲旗も、インターハイもなくなってしまった。3年生が明るいことと凄く前向きだったことが救いでした、柔道が出来なくても後輩たちに自分たちの足跡を残したい、自分たちの文化を後輩たちに残していこうと色々考えて、勝手に3年生で学校全体の清掃を始めたり。それでも1人になる不安があったのか、私の家になんとなく集まっては草刈りをしたり、農作業をしたり、レンガを買ってきてセメントで固めて積んだり。出来ることをしようと色々考えたことが、そういう形で出て来たんでしょう。柔道が出来なくても、これまで一生懸命やってきた部生活を最後までまっとうしようという気持ちを感じました。(-稽古はいつから?)やれていなかったですね。7月中旬からようやく練習を始めて、それから柔道衣を着て、と段階を踏んできました。8月に入って、この学年別大会という目標が見えて、乱取りを始めて、という感じです。まだ大学で稽古が出来ない大学生も来てくれて、いい刺激を受けることが出来ました。(-今大会に関して?)やっぱり大会はワクワクする。子どもたちもそれを感じつつ、こういう日常では当たり前だったことが出来るということに感謝の気持ちを持って欲しい。そして、結果からたくさん教えられることがあるはず。自分なりにそれを感じて、これからに生かしてもらいたい。」

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渋谷教育学園渋谷高・古矢彰浩監督

渋谷教育学園渋谷高・古矢彰浩監督のコメント
「とにかく生徒と会えない期間が長かった。2月末からの休校が長引いて、4月に1回教室に集まって、あとはオンライン授業。授業自体は相当充実していて、他の学校ほど夏休みを削らなくても良いくらいの質と量があったんですが、部活動としてはともかく集まれないわけですから、これはどうにもならない。各自家でトレーニングすることにしました。でも自分で考えてやることはやっぱり大事。これが出来た子はしっかり成長しています。その後6月4日から学校に集まっていわゆる「第1段階」から稽古をスタート。うちは8月1日に学校側が「部活動は正常通りに行う」との判断を下してくれましたので、そこからは普通通りに活動しています。(-今日の大会については?)生徒にはとにかく楽しんでやって欲しいです。(-運営側としては?)作業部会で、とにかく、何があっても、どんなことを言われても大丈夫なように徹底的にシミュレーションを繰り返して、話し合って、開催に漕ぎつけました。感染防止はもちろんですが、もし感染者が出てしまっても、我々はこれだけのことをやりました、しっかり対策をしました、来場者全員と連絡が取れて当事者の前後の行動もしっかり追えて、濃厚接触者も確定出来ています、と堂々説明できる体制を目指しました。こうやって少しづつ前に進んでいくしかあありません。」

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早稲田実業学校・小室宏二監督

早稲田実業学校・小室宏二監督のコメント
「6月から学校が再開しましたが、分散登校が続きました。生徒全員が登校出来たのが7月の3週目で、それまでは当日来れるもののトレーニングのみです。それから1ヶ月掛けて徐々に段階を上げて、8月の終わりから乱取りを開始しました。もどかしさはありましたが、ここでクラスターが発生すると学校全体、柔道界全体に迷惑が掛かってしまいます。あくまでルールに則ってやってきました。(他地区、他校と比べてもなかなか稽古段階を上げられなかったように思われますが?)いや、そこを言っても仕方がないですし、状況を考えればむしろ早い方だ、早く始めさせてもらえてありがたいと考えるようにしています。(-昨年この大会1年生の部で準優勝の快進撃、一気に注目を集めました)去年はビギナーズラックがあったと思いますし、極端に調子の良い選手もいた。彼らにとってはまさに自己ベストが出た試合だったと思います。これからはそう簡単にはいきません。(-きょうの試合への期待は?)新しいチームに勢いがあった去年に比べると色々な面で『中だるみ』に入っている印象があります。勝てば自信になって勢いづくでしょうが、そんなに甘くはない。今の取り組みではまだまだ足りない、と結果を受け止めて、そこから何を考えるのか。自分たちで考えて行動することが大事です。」

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国士舘高・岩渕公一監督

国士舘高・岩渕公一監督のコメント
「競技をしようと必死に動いてくれた先生方に感謝したい。とにかく開催出来て良かった。もちろん賛否両論あり、議論の末に1年生の部がなくなってしまったことには色々な思いがありますが、コロナ以後の、それも東京都という日本で一番状況が厳しかった地区で、初めて柔道の大会が開催出来たという意義は大きいです。3月の高校選手権はもちろんやれるものならやってほしかったが、まだコロナウイルスのことがよくわからず感染者がグングン増えていて、あの時期は仕方がなかった。でもいまは状況が違います。やるべき対策をしっかりやるのはもちろんですが、じゅうぶん警戒したその上で、経済も、スポーツも、柔道も、コロナがあることを前提に少しづつ前に進んでいくべき。練習もしていくことが大事です。そうでないとスポーツも柔道も、社会も足踏みどころか本当に終わってしまいます。きょうの大会では例えば「試合以外は選手もマスク着用」「コーチを少なく」「声掛けはしない」など、いまこの時点でのスタンダードとなり得るルールが出来て来ています。貴重な一歩です。この先も、その時点で出来る対策をしっかり考えて、状況に応じて少しづつそれを変えながら、一歩ずつ前に進んでいくべきです。もどかしいのは、世の中、真剣に感染や重症化、社会に与える影響のリスクを考えての判断というよりも「自分のところからだけは出したくない」という考えで大会を中止したり、活動を縮小している面があること。全体で、感染者が出たら行動記録を把握して濃厚接触者は素早く検査を受ける、感染者を責めない、こういう体制と意識を共有して前に進んで欲しいと思います。もちろん医療体制がひっ迫するようならまったく話は違いますが、社会全体で「共に栄える」意識を持って欲しいです。(選手たちについて?)「やれることを一生懸命にやりなさい」と声を掛けてきました。高校生はインターハイに掛けている。一生に一度しかない短い高校生活の時間の中で、自分の全てを何かに掛けて必死にやること、それでうまく行っても失敗したとしても、その経験自体がかけがえのない価値なんです。インターハイは物凄く険しい山。国士舘の選手としてその頂きに挑むのは肉体的にも精神的にも本当に厳しいことなのですが、登ろうとしてみないとわからないことがある。単に「試合がなかったからかわいそう」ではなく、険しい山を必死で登ろうともがく、そういう経験をさせてあげられなかったことが切ないです。この学年別大会は例年であれば、インターハイで一回完全に燃え尽きた子たちがノビノビやって、その中で、きつい頃に言われたこと、掛けられた言葉の意味がわかってくる時期の試合。だいぶ意味合いは違いますが、やるからにはここに掛けて、真剣に戦って欲しい。自粛期間、みなが辛い中、きょうBチームで出る軽量級の選手が物凄く頑張っていました。真剣に練習するだけでなく、帰り道、ふと学校の近くの公園を見ると、暗い中、練習が終わってから中村、小田桐、津嘉山といった子たちが、必死にトレーニングをしていた。いざ試合があるとなったときに思い切りやる準備が出来ていた。目標となる大会が見えない中で誰にでも出来ることではありません。今日は大いにやってくれるんじゃないかと思っていますし、それが後輩たちのいい見本になるのではないかと期待しています。」

※ eJudoメルマガ版10月5日掲載記事より転載・編集しています。

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