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グランドスラム・デュッセルドルフ2020最終日女子プレビュー(78kg級、78kg超級)

(2020年2月23日)

※ eJudoメルマガ版2月23日掲載記事より転載・編集しています。
グランドスラム・デュッセルドルフ2020最終日女子プレビュー
(78kg級、78kg超級)
文責:古田英毅/eJudo編集部
→組み合わせ(ippon.org内)

■ 78kg級 組み合わせに恵まれた濵田、注目すべきは「戦い方」
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日本代表は濵田尚里

(エントリー36名)

代表争いのバックグラウンドはオーバービューで示した通り。追撃者・梅木真美がワールドマスターズとグランドスラム・パリをいずれも落としていることで、濵田尚里の位置は相対的に上がっている。代表内定自体はもはや既定路線。優勝なら文句なし、ミスがあっても表彰台に上がれば確定、どころかもっと言って、よほどの大失敗がない限りは内定が打たれる可能性が高いのではないかと見る。

しかも濵田、比較的組み合わせに恵まれた。最大のライバルであるマイラ・アギアール(ブラジル)と、ワールドマスターズを制して勢いに乗るファニー=エステル・ポスヴィト(フランス)が揃って逆側の山。さらに、濵田に対するアップセット要素である「パワーがあって至近距離での一発勝負を好み、しかも濵田に立ち勝負をあきらめさせるほどの絶対性はない」というレンジに嵌るベルナデッテ・グラフ(オーストリア)もアギアールの座るプールAに吸収された。序列通りにトーナメントが進めば、濵田は準々決勝でルイーズ・マルツァーン、準決勝でアナ=マリア・ヴァグナーとドイツ勢との連戦となるわけだが、いずれもパワー十分ながら上記3名に比べると突破の難易度は低め。(ただし後述するが、アップセット要素がないわけではなく特にマルツァーンは相性的に危険)

力だけでいえば決勝進出まではほぼ間違いなく、そしてこの時点で内定は確実。あとは五輪に向けてここでどう勝っておくかという「足し算」の試合になる。

となると、みどころは勝敗自体よりも濵田の柔道自体ということになる。観察点は3つ。

まず1つ目は濵田の立ち勝負と寝勝負のバランス。寝技をやれば絶対に負けない濵田、しかし投げに極めて威力があり実は「立って投げる」ことに強い志向性を持つ(そしてリスクある投げ合いを厭わぬ)この選手が、五輪代表決めの大事な大会でどんな「配合」の試合を期するか。濵田自身が立ち技の強さを認めているアギアールには、過去の戦いを見る限りほぼ間違いなく寝勝負専心で立ち向かうものと思われ、逆にここは安心。それまでの戦いをどう考えているかが、五輪勝利の確率を測る上で非常に大事な観察ポイントだ。2つ目は、寝勝負に持ち込むための「立ち→寝」の引き出しを増やしているかどうか。リスクなく得意のフィールドである寝勝負に持ち込めるのであれば、濵田が負けることは絶対にない。この「入り口」が上積み出来ているか、引き出しを増やそうという志向が見えるかどうかは、もはや「出口」(フィニッシュホールド)の質や種類を超えた決定的要素。五輪勝利に直結するファクターである。注目したい。

3つ目は、濵田の怪我の状態。濵田はグランドスラム大阪決勝で梅木真美に投げられた際に足首を残したまま反り返ってしまい、この負傷でワールドマスターズを欠場している。これがしっかり治っているかどうか。濵田タイプの柔道にあっては、ハッキリした怪我よりも僅かな違和感、「立ち勝負に舵を切れるだけ回復しているが、実は意外に踏ん張りが効かない」というレベルの感覚の狂いが残る場合のほうが怖い。受けに硬いところがある濵田が感覚の違和感を抱えたまま進退するようだと思わぬアクシデントが起こる可能性もある。これは五輪までにハッキリ白黒つけておきたいファクター。

ここで浮上してくるのが前述のドイツ勢2人。濵田の弱点である受けの脆さがマックスになるのは「下がり癖」が出たとき。ワグナーは腰技×前技系なので耐えられるのではないかと思うが、大外刈一発に力のあるマルツァーンとの試合は少々不安。この観点からも、注目はやはり序盤戦ということになる。

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第1シードはマイラ・アギアール

【プールA】
第1シード:マイラ・アギアール(ブラジル)
第8シード:ベルナデッテ・グラフ(オーストリア)
有力選手:アレクサンドラ・バビンツェワ(ロシア)、ヤヒマ・ラミレス(ポルトガル)

【プールB】
第4シード:ファニー=エステル・ポスヴィト(フランス)
第5シード:カリエマ・アントマルチ(キューバ)
有力選手:ユン・ヒュンジ(韓国)

【プールC】
第2シード:アナ=マリア・ヴァグナー(ドイツ)
第7シード:パトリシア・サンパイオ(ポルトガル)
有力選手:カルラ・プロダン(クロアチア)、イ・ジョンギュン(韓国)

【プールD】
第3シード:濵田尚里(自衛隊体育学校)
第6シード:ルイーズ・マルツァーン(ドイツ)
有力選手:アナスタシア・タルチン(ウクライナ)

■ 78kg超級 朝比奈沙羅とオルティスが準決勝で激突
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朝比奈沙羅が意地を見せられるか

(エントリー36名)

階級の上位選手がひととおり顔を揃えた、豪華なトーナメント。イダリス・オルティス(キューバ)と朝比奈沙羅(パーク24)の世界王者経験者2名のほか、イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)、ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)、マリア=スエレン・アルセマン(ブラジル)、ニヘル・シェイフ=ルーフー(チュニジア)、ベアトリス・ソウザ(ブラジル)と実に魅力的な選手が揃っている。

この階級に関してはすでにグランドスラム大阪の段階で五輪代表は素根輝(環太平洋大1年)に内定しており、代表争いは終了している。ただし朝比奈には素根のリザーバーという非常に重要な役割があり、ここで負けるわけにはいかない。今回は組み合わせに恵まれ、この豪華な顔ぶれにあってプール内に同居しているシード選手は過去に7勝0敗と得意としているセリッチ。オルティスとの準決勝まで勝ち上がるところまではまず間違いないだろう。できるだけ良い内容でここに辿り着きたい。素根との代表争いに敗れたとはいえ、朝比奈は世界王者。しっかり優勝を飾って王者としての矜持を示してほしい。世界選手権やグランドスラム大阪では体を絞ったことにまだ柔道が適応できていなかった印象だが、あれからさらに2か月。本来目的としていたレベルのパフォーマンスを見せられるようになっている可能性がある。まずは初戦、かつて無類の威力を誇った、全質量を載せて叩き込むあの支釣込足が復活しているのかに注目したい。

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イダリス・オルティス

【プールA】
第1シード:イダリス・オルティス(キューバ)
第8シード:アン=ファトゥメタ・ムバイロ(フランス)
有力選手:イヴァナ・スタロ(クロアチア)

【プールB】
第4シード:朝比奈沙羅(パーク24)
第5シード:ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
有力選手:アナマリ・ヴェレンセク(スロベニア)、キム・ハユン(韓国)、サンタ・パケニテ(リトアニア)、ヤスミン・グラボウスキ(ドイツ)

【プールC】
第2シード:マリア=スエレン・アルセマン(ブラジル)
第7シード:ニヘル・シェイフ=ルーフー(チュニジア)
有力選手:ジュリア・トロフア(フランス)、イヴァナ・マラニッチ(クロアチア)、ホーテンス=ヴァネッサ・ムバラ=アタンガナ(カメルーン)、サンドラ・ヤブロンスキーテ(リトアニア)

【プールD】
第3シード:イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)
第6シード:ベアトリス・ソウザ(ブラジル)
有力選手:メルセデス・シゲトヴァリ(ハンガリー)

※ eJudoメルマガ版2月23日掲載記事より転載・編集しています。

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