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グランドスラム・デュッセルドルフ2020最終日男子プレビュー(90kg級、100kg級、100kg超級)

(2020年2月23日)

※ eJudoメルマガ版2月23日掲載記事より転載・編集しています。
グランドスラム・デュッセルドルフ2020最終日男子プレビュー
(90kg級、100kg級、100kg超級)
文責:古田英毅/eJudo編集部
→組み合わせ(ippon.org内)

■ 90kg級 向の勝負どころは準々決勝と準決勝
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日本代表は向翔一郎

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準決勝ではガク・ドンハンが待ち受ける

(エントリー54名)

代表争いの状況はオーバービューで示した通り。男子7階級中もっとも混戦となっている階級であるが、それでもというべきか、それゆえと言うべきか、向翔一郎が優勝すれば代表内定が打たれる可能性は高い。

エントリー段階でお伝えした有力メンバーが全員下がらず、今大会の面子自体は青ざめるほど豪華。1年半練った内股スタイルに封印していた担ぎ技の蓋も開けて競技者として一段違う位相に歩を進めつつあるガク・ドンハン(韓国)、グランドスラム大阪でその到達点の高さを存分に見せつけたベカ・グヴィニアシヴィリと、狂気のパフォーマンスでワールドマスターズを制したラシャ・ベカウリのジョージア勢2人、無冠の帝王ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)に、イワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)もいる。ママダリ・メディエフ(アゼルバイジャン)やエドゥアルド・トリッペル(ドイツ)、マーカス・ニーマン(スウェーデン)やダヴラト・ボボノフ(ウスベスタン)、イスラム・ボズバエフ(カザフスタン)ら普段は注目すべきと紙幅を割く実力派たちに触れる余裕がない密度の高さ。

ただし向、まず決勝ラウンド生き残りを目指すという観点でいえば比較的薄い山を引いた。プールDの最終戦(準々決勝)で組まれるであろうメディエフ(あるいはニーマンかコムロンショフ・ウストピリヨン)戦まではまったくの無風。ダメージ少なく序盤戦を勝ちあがることがまず必須、ここからが本番である。メディエフはグランドスラム・パリで村尾三四郎を倒したばかりの強豪だが、これを突破して、準決勝でガク・ドンハン(韓国)と手を合わせるところまでが最低限必須の仕事。そしてここがこの日のシナリオの最大の分岐点。勝てばメダル確定だが、もし決勝進出を逃せば今大会明らかに重たいプールA・Bから落ちてくる強豪選手と「表彰台登攀かメダルなし」のオールオアナッシングの3位決定戦を戦わねばならない。

このハイプレッシャーを考えれば、山場は実は準々決勝と準決勝の2戦。命を懸けて戦わねばならない2試合だ。メディエフには過去1戦1敗(2018年バクー世界選手権団体戦で大外刈「技有」で敗退)、ガクには1勝2敗。いずれも分が悪い相手だがここを譲るとすべてを失いかねない。

ライバル長澤憲太がグランドスラム・パリで優勝を逃しながら、ノエル・ファンテンドやシルバ=モラレスら強豪ひしめくブロックを勝ち上がり、ニコロス・シェラザディシビリと手を合わせていることを考えれば、メダルなしに終わることは絶対にあってはならない。なんとしても決勝まで勝ち上がり、「メダル確定、あとは挑戦」という心理的に乗りやすいステージで戦いところ。

というわけでトーナメントの重心は上側(A・B)にあり、グローバルな視点でいえばみどころはこちら。勝敗予測の立てやすい下側の山とはまったく様相異なる修羅の世界である。特に、五輪代表を激しく争うグヴィニアシヴィリとベカウリが同居するプールBには注目だ

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プールAにミハイル・イゴルニコフが配された

【プールA】
第1シード:イワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)
第8シード:ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)
有力選手:ザッカリー・バート(カナダ)、ロベルト・フロレンティーノ(ドミニカ共和国)、ダヴィド・クラメルト(チェコ)、ガンツルガ・アルタンバガナ(モンゴル)

【プールB】
第4シード:ベカ・グヴィニアシヴィリ(ジョージア)
第5シード:ラシャ・ベカウリ(ジョージア)
有力選手:エドゥアルド・トリッペル(ドイツ)、シリル・グロスクラウス(スイス)、ダヴラト・ボボノフ(ウズベキスタン)、イスラム・ボズバエフ(カザフスタン)

【プールC】
第2シード:ママダリ・メディエフ(アゼルバイジャン)
第7シード:向翔一郎(ALSOK)
有力選手:イェスパー・シュミンク(オランダ)、コムロンショフ・ウストピリヨン(タジキスタン)、マーカス・ニーマン(スウェーデン)

【プールD】
第3シード:ガク・ドンハン(韓国)
第6シード:ラファエル・マセド(ブラジル)
有力選手:リ・コツマン(イスラエル)、ヤホル・ヴァラパエウ(ベラルーシ)、クエジョウ・ナーバリ(ウクライナ)

■ 100kg級 ウルフ欠場も内定はほぼ確実、見どころは世界王者フォンセカのワールドーツアー初制覇なるか
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強豪ことごとく下がり、ジョルジ・フォンセカにツアー初優勝のチャンスが訪れた

(エントリー58名)

当初出場予定であったウルフアロン(了徳寺大職)は右膝半月板の負傷により本大会の欠場した。ただし、オーバービューで示したとおり、ライバル2名との差はもはや全日本選抜体重別選手権1大会だけでは逆転不可能なレベル。この段階で内定が与えられるものと予想される。

今大会、実はウルフ以外にもヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)、ペテル・パルチク(イスラエル)ら当初エントリーしていた強豪が揃って姿を消し、他階級と比べるとトーナメントのレベルは一段下。とはいえ現役世界王者の業師ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)の出場や、ベテランのエルマー・ガシモフと若手のゼリム・コツォイエフによるアゼルバイジャンの代表争いなど面白いトピックには事欠かない。

特に注目したいのはフォンセカのワールドツアー初優勝なるか。世界王者となったフォンセカだが、業師タイプにありがちな集中力が途切れる癖ゆえ、実はグランプリの準優勝が2度あるのみでワールドツアー大会の優勝はまだない。そんな中、今大会は連戦うち続く中で突如ぽっかり現れた、強豪の影が薄いエアポケット。それもグランドスラム・デュッセルドルフというスーパーメジャー大会である。これまでにない大チャンスだ。ラウンドに応じた強豪との戦いはあるものの、スーパートップとの対戦はなし。是非ともここで優勝を果たし、いまいちど、東京世界選手権で日本のファンを魅了した「フォンセカダンス」を披露してほしい。

【プールA】
第1シード:ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)
第8シード:レオナルド・ゴンサルヴェス(ブラジル)
有力選手:ダニエル・ムケテ(ベラルーシ)、ミクロス・サーイエニッチ(ハンガリー)

【プールB】
第4シード:ベンジャミン・フレッチャー(アイルランド)
第5シード:エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)
有力選手:レイエス・ブヤクブ(アルジェリア)、カヨル・レイズ(カナダ)、ニイアズ・ビラロフ(ロシア)

【プールC】
第2シード:シャディー・エルナハス(カナダ)
第7シード:ラファエル・ブザカリニ(ブラジル)
有力選手:イワン・レマレンコ(アラブ首長国連邦)、ヨアキム・ドファービー(スウェーデン)、ダニエル・ディチェフ(ブルガリア)、フセイン=シャー・シャー(パキスタン)、ラウリン・ボーラー(オーストリア)、カール=リヒャード・フレイ(ドイツ)

【プールD】
第3シード:ラグワスレン・オトゴンバータル(モンゴル)
第6シード:ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)
有力選手:イェフゲニース・ボロダフコ(ラトビア)、ムハマドカリム・フラモフ(ウズベキスタン)、グリゴリ・ミナシキン(エストニア)

■ 100kg超級・2018年世界王者ツシシヴィリと、強豪各国の代表争いに注目
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第1シードはグラム・ツシシヴィリ

(エントリー35名)

当初出場予定であった原沢久喜(百五銀行)は左半膜様筋の肉離れにより本大会を欠場した。ただしこちらもオーバービューで示したとおり、序列2位の影浦心(日本中央競馬会)との間には全日本選抜体重別選手権1大会ではちょっと逆転不可能な差がある。この段階で内定が与えられるものとみてまず間違いないだろう。

トーナメントは100kg級とは対照的に極めて豪華。第1シードに久々のワールドツアー参戦となる2018年世界王者グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)が座るほか、複数の強豪国がここを代表争いの場に選んでおり、国内のトップ2名を同時派遣している。代表的なものはグランドスラム・パリ大会の覇者ヘンク・フロルとロイ・メイヤーを送り込んだオランダ、キム・ミンジョンとキム・スンミンの韓国、ラファエル・シウバとダヴィド・モウラのブラジル。いずれの国も代表争いは佳境。ここは絶対に結果を出したい大会のはずであり、かなりのハイコンディションで臨んでくるはずだ。

優勝候補はもちろんツシシヴィリ。この選手はメインである両袖や片襟の形のみならず、相手の腕を外から抱えてロックして、あるいは脇を差してと試合の中で状況に合わせて様々なモードを使い分けてくる。変則スタイルでありながら、真っ向相手を投げつける様それ自体はまさに王道。「見ごたえのある柔道」と評するしかない。今大会でも試合ごとに異なるスタイル、異なる投げを見せてくれるはずで、ファンはこのあたりにぜほ注目してもらいたい。最初の山場はバクー世界選手権で決勝を争ったウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)と対戦する3回戦。ただし初戦(2回戦)で対戦するアリシェル・ユスポフ(ウズベキスタン)も好選手、初戦から目が離せない戦いが続く。

前述の同国ライバル対決に関しては、山の上下に配置が分かれている韓国はともかく、オランダとブラジルは早い段階で直接対決が実現する可能性が高い。ブラジルの2名は同一プールに配置されており、他選手の顔ぶれを見ても準々決勝での対決が濃厚。オランダ勢も揃って下側の山に置かれており、それぞれメイヤーがベクムロド・オルティボエフ(ウズベキスタン)、フロルがキム・スンミンとそれぞれ壁となる選手が置かれているものの、こちらも両者の調子を考えるならば直接対決が組まれる準決勝まで勝ち上がる可能性は非常に高い。いずれも実現なれば代表選考における最重要カード。必見である。

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ヘンク・フロル

【プールA】
第1シード:グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)
第8シード:キム・ミンジョン(韓国)
有力選手:アリシェル・ユスポフ(ウズベキスタン)、ウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)、オドフー・ツェツェンツェンゲル(モンゴル)、スヴェン・ハインル(ドイツ)、アンディー・グランダ(キューバ)

【プールB】
第4シード:ラファエル・シウバ(ブラジル)
第5シード:ダヴィド・モウラ(ブラジル)
有力選手:アリアクサンドル・ヴァハヴィアク(ベラルーシ)、ユーリ・クラコヴェツキ(キルギスタン)

【プールC】
第2シード:ロイ・メイヤー(オランダ)
第7シード:ベクムロド・オルティボエフ(ウズベキスタン)
有力選手:マチェイ・サルナツキ(ポーランド)

【プールD】
第3シード:ヘンク・フロル(オランダ)
第6シード:キム・スンミン(韓国)
有力選手:ヨハネス・フレイ(ドイツ)、ステファン・ヘギー(オーストリア)、バトトルガ・テムーレン(モンゴル)

※ eJudoメルマガ版2月23日掲載記事より転載・編集しています。

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