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グランドスラム・デュッセルドルフ2020第2日男子プレビュー(73kg級、81kg級)

(2020年2月22日)

※ eJudoメルマガ版2月22日掲載記事より転載・編集しています。
グランドスラム・デュッセルドルフ2020第2日男子プレビュー
(73kg級、81kg級)
文責:古田英毅/eJudo編集部
→組み合わせ(ippon.org内)

■ 73kg級 大野将平の戦いぶりが最大のみどころ、決勝ではアン・チャンリンと対戦濃厚
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五輪代表決め、「総仕上げ」に挑む大野将平。

(エントリー78名)

エントリー78名の巨大トーナメント。非常に大きく括ると、プールAにルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)、プールBにアン・チャンリン(韓国)がおり、この2人が準決勝で激突。勝った選手がプールDから勝ち上がった大野将平と決勝を争うという構図。

日本の五輪代表争いの背景はオーバービューで示した通り。第一候補として今大会に臨む大野が優勝すれば、そのまま代表に内定する確率が非常に高い。最大のみどころは大野の戦いぶりそれ自体。出場大会を極端に絞り、その代わりに出るときは過不足ないパフォーマンスと結果で周囲を納得させてきた大野が今回「必要」と敷くラインは、リオ後もっとも高い水準になっている可能性がある。「強さ」それ自体を堪能できる1日になるのではないか。

大野の山、実はオリンピックの金メダリストが3人仕込まれている。最初の楽しみは3回戦で組まれるリオ五輪66kg級金メダリスト、ファビオ・バジーレ(イタリア)との一番。バジーレはご存じの通りジャンプ力なら業界随一の天才肌、素晴らしいパフォーマンスを見せて優勝したグランプリ・テルアビブにちょっと気怠そうな戦いぶりで予選ラウンド敗退に甘んじたグランドスラム・パリと相変わらずそのムラ気は相当なものだが、大野戦の注目度の高さに入れ込んで「表」の確変状態を披露する可能性も十分。柔道自体の到達点は大野とは比べものにならないが、スリルを抱いて観ることが出来る試合である。そして準々決勝ではロンドン五輪66kg級金メダリストのラシャ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)が腕を撫す。

準決勝は対戦相手のランクがいったん下がり、そして決勝で、おそらく五輪では最強の挑戦者となるであろうアン・チャンリンと戦うことになるはず。

怪我で昨年の後半戦を全休したアンは1月のグランプリ・テルアビブで復帰を果たすも予選ラウンド敗退。ただこの時はマルティン・ホヤック(スロベニア)がこの日投げに投げまくったサンボ式谷落による奇襲に嵌っただけ、単に「知っているか知らないか」の技術的陥穽に嵌っただけとのエクスキューズがある。ある程度仕上がっているようならタイプ的にもこれまでの戦歴からも、やはり一番怖い相手。対戦実現なれば、今大会全体を通した最注目ゲームである。

序盤の注目対決としては、ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)と上記マルティン・ホヤックによる2回戦を挙げたい。膂力の強さと思い切りの良い投技という強者王道の装備で戦うガンバータルに対し、ホヤックは「相手の知らない技術」を持ち込むことで出世の梯子に片足を掛けている曲者。半端な新技術は寄ってたかって潰され、1つの技に頼り過ぎると二度と浮かび上がれない「嵌り」も多い現代柔道。ホヤックがこの必殺技をあまたある手札の一、あるいは相手の警戒を呼び起こすブラフとして上手くこれを使っていけるのか。ちょっと楽しみである。

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アン・チャンリンの出来に注目

【プールA】
第1シード:ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)
第8シード:ベフルジ・ホジャゾダ(タジキスタン)
有力選手:チャールズ・チバナ(ブラジル)、ツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)、マグディエル・エストラダ(キューバ)、イゴール・ヴァンドケ(ドイツ)

【プールB】
第4シード:アルチュール・マルジェリドン(カナダ)
第5シード:アン・チャンリン(韓国)
有力選手:アンソニー・ツィング(ドイツ)、ジョヴァンニ・エスポージト(イタリア)、ヴィクトル・ステルプ(モルドバ)、ギヨション・ボボエフ(ウズベキスタン)、アルテム・ホムラ(ウクライナ)、ディルク・ファンティシェル(ベルギー)

【プールC】
第2シード:トミー・マシアス(スウェーデン)
第7シード:ソモン・マフマドベコフ(タジキスタン)
有力選手:ニルス・スタンプ(スイス)、アントワーヌ・ブシャー(カナダ)、ヴァジム・ショーカ(ベラルーシ)、ギヨーム・シェヌ(フランス)

【プールD】
第3シード:大野将平(旭化成)
第6シード:ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)
有力選手:ゲオルギオス・アゾイディス(ギリシャ)、エドゥアルド・バルボサ(ブラジル)、ミクロス・ウングヴァリ(ハンガリー)、ファビオ・バジーレ(イタリア)、シャフラム・アハドフ(ウズベキスタン)、マルティン・ホヤック(スロベニア)、ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)

■ 81kg級 陣容は世界選手権なみ、優勝候補は永瀬とモラエイ
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昨年中盤から圧倒的な強さを見せる永瀬貴規。五輪代表争いの一番手を走る。

(エントリー67名)

過去5年の世界王者のうち実に4名が顔を揃えた超ハイレベルトーナメント。現役世界王者のサギ・ムキ(イスラエル)は負傷から復調し切らぬ段階でこの陣容を迎え撃つのは厳しいと見たかドロー当日にエントリーを取り消した(そのまま出ていれば過去5年の世界王者すべてが出る大会となったわけだ)が、それでも豪華さに変わりはない。世界選手権なみだ。。

優勝候補は第1シードのサイード・モラエイ(モンゴル)と日本代表の永瀬貴規(旭化成)。両者の配置はトーナメントの上下に分かれており、対戦が実現するとすれば決勝だ。

両者の最近の戦績、実は対照的であり。モラエイが3大会連続で表彰台を逃しているのに対して、永瀬は昨年4月の全日本選抜体重別選手権から数えて5大会連続優勝と絶好調。ただし、モラエイは国籍離脱やモンゴル籍取得の混乱が落ち着き、現在はかなり調子を上げてきているとの情報もあり、どちらが勝利するのかは実際に試合を見るまでは読み難い。

全体的な組み合わせから言えばベスト8でハサン・ハルモルザエフ(ロシア)との対戦が組まれているモラエイの方が厳しいが、永瀬のほうも初戦で若手注目株のタト・グリガラシヴィリ(ジョージア)の挑戦を受けるという山場が設定されている。陣容極めて厚いジョージアのこの階級×この世代を引っ張る強者だ。攻撃力の高さを前面に押し出す典型的な「投げて解決」タイプ、試合運びの上手い永瀬ならば遅れを取ることはないと思われるが、初戦で戦うにはちょっと嫌な相手だ。

東京五輪代表争いについては、オーバービューに記した通り。永瀬を追撃する立場であった2番手藤原崇太郎(日本体育大4年)がグランドスラム・パリで優勝を逃すという決定的な事態があり、加えて藤原がこの大会で世界選手権と同じ選手(シャロフィディン・ボルタボエフ)に再び敗れているという内容面のマイナスまでを勘案すれば、もはや永瀬の選出は確定的。パリ大会より遥かに高い今大会の出場メンバーのレベルを考えれば、永瀬は表彰台に登ることさえできればこの段階での内定が出ると読む。

どのプールともメンバーが濃すぎて、みどころはちょっと挙げきれない。下記シード選手と有力選手のリストを参照して、この豪華さを感じて頂きたい。

敢えて序盤戦の注目対決をもう1つ挙げるとすると、2017年ブダペスト世界選手権の覇者アレクサンダー・ヴィーチェルツァク(ドイツ)と、ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)が戦うプールDの2回戦。ヘイダロフは東京世界選手権73kg級銅メダリスト、パリ大会では4回戦で優勝したボルタボエフに敗れたが、そろそろ81kg級にアジャス出来てきた気配が漂う。ちなみに勝った方が、おそらく4回戦で永瀬と激突することとなる

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サイード・モラエイは久々良い仕上がりとの噂。

【プールA】
第1シード:サイード・モラエイ(モンゴル)
第8シード:ハサン・ハルモルザエフ(ロシア)
有力選手:エマニュエル・ルセンティ(アルゼンチン)、カモリディン・ラスロフ(ウズベキスタン)、ルスラン・ムッサエフ(カザフスタン)、ティモ・カフェリウス(ドイツ)、イ・スンホ(韓国)

【プールB】
第4シード:アスラン・ラッピナゴフ(ロシア)
第5シード:フランク・デヴィト(オランダ)
有力選手:ヌグザリ・タタラシヴィリ(ジョージア)、クリスティアン・パルラーティ(イタリア)、ドリン・ゴトノアガ(モルドバ)、ロビン・パチェック(スウェーデン)、ティム・グラムコフ(ドイツ)、モハメド・アブデラル(エジプト)

【プールC】
第2シード:ドミニク・レッセル(ドイツ)
第7シード:シャロフィディン・ボルタボエフ(ウズベキスタン)
有力選手:エティエンヌ・ブリオン(カナダ)、ナシフ・エリアス(レバノン)、ニャムスレン・ダグワスレン(モンゴル)、アッティラ・ウングヴァリ(ハンガリー)、ウラジミール・ゾロエフ(キルギスタン)、イ・ムンジン(韓国)

【プールD】
第3シード:永瀬貴規(旭化成)
第6シード:イヴァイロ・イヴァノフ(ブルガリア)
有力選手:タト・グリガラシヴィリ(ジョージア)、アントニオ・エスポージト(イタリア)、アレクサンダー・ヴィーチェルツァク(ドイツ)ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)エドゥアルド=ユウジ・サントス(ブラジル)、アルファ=ウマ・ジャロ(フランス)

※ eJudoメルマガ版2月22日掲載記事より転載・編集しています。

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