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グランドスラム・デュッセルドルフ2020第1日男子プレビュー(60kg級、66kg級)

(2020年2月20日)

※ eJudoメルマガ版2月20日掲載記事より転載・編集しています。
グランドスラム・デュッセルドルフ2020第1日男子プレビュー
(60kg級、66kg級)
文責:古田英毅/eJudo編集部
→組み合わせ(ippon.org内)

■ 60kg級 髙藤最初の山場は初戦、決勝でルトフィラエフへのリベンジに挑む
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優勝すれば五輪代表内定濃厚の髙藤直寿

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直下にフェリペ・キタダイとともにガンバット・ボルドバータルが配された。

(エントリー46名)

代表争いの様相はオーバービューで書かせて頂いた通り。
優勝すれば五輪代表内定濃厚の髙藤直寿は第3シード。ターゲット選手である東京世界選手権2位のシャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)と当たるのは決勝、強敵キム・ウォンジン(韓国)の山は隣でこれも戦うとすれば準決勝、確変要素の一であるヤン・ユンウェイ(台湾)はルトフィラエフ側の山におりエリック・タカバタケ(ブラジル)と潰し合い。このあたりはシード順の読み通り。全体的な勝負の重心は準決勝以降だ。

しかし初戦に意外な山場が設定された。シードされた髙藤の直下にはガンバット・ボルドバータル(モンゴル)とフェリペ・キタダイ(ブラジル)が配されたのだ。ここは、ちょっと怖い。少しここについて書き込んでおく。

ガンバットは長年モンゴルのトップを張り続けている2トップの一角、言わずと知れた2014年チェリャビンスク世界選手権金メダリスト。リオ後は2017年ブダペスト世界選手権でもしぶとく3位に入賞している。髙藤はモンゴル2トップ「もう1人」ダシュダワー・アマルツヴシンとはある程度定期的に戦っているが、意外にもガンバットとは2013年以来対戦がない。ガンバットのスタイルは徹底して体の強さを押し出したもので「絞りと圧」がベース。圧を掛けて低く前に出、相手のリアクションを待ち構えては浮落、隅落、大内刈や横落で仕留める。地力があるので常にアップセットの可能性を秘めるというタイプだ。髙藤は2011年から2013年まで4度の対戦歴があり、通算では3勝1敗。トップ選手となってからの直近2戦は連勝しており2012年グランドスラム・モスクワ準決勝は「指導」3つ(技有相当)と小内刈「技有」の合技「一本」で勝利。ただし2013年ワールドマスターズ・チュメン決勝では実は1発投げられており、背中を抱えあっての攻防から畳に頭をつけた右内股でガンバットが「技有」を奪っている。その後髙藤が「指導3」(※当時の反則負けは「指導4」)を奪い、追い詰められたガンバットの両袖横落を切り返して隅落「一本」を奪っている。リスキーな投げ合いを好んだ当時の髙藤は今とまったくスタイルが違うが、かように「事故が起こる状況」をじっくり作ってくる(時に作っているうちに「指導3」失陥で試合が終わってしまったりもするが)地力派である。もう1つ言えば、この人実は「永山竜樹キラー」で、2016年グランドスラム・バクー決勝に、2017年ブダペスト世界選手権3回戦と永山相手には実に2戦2勝。後者の対戦では、まさに圧に窮して仕掛けた永山の巻込技を捉えて隅落「技有」奪取。その地力の高さを以て、永山の「相手の方が地力が上だと突如手が詰まる」積年の弱点をあぶりだした選手である。

ただ、ワールドツアーに好調子で現れることは実は少なく、特にここ1年はパッとしない。しかしこのままだと五輪代表はダシュダワーであろうので、大物・髙藤を食って形成逆転を狙おうという山気があるとしたら怖い。ここを頭に入れて観戦すると面白いはず。

キタダイは2016年リオ五輪の銅メダリスト。後進のエリック・タカバタケやフェリペ・ペリムの躍進に伴い姿を消すかと思われたが昨年前半は意外な好調。切れ味鋭い投げを披露してファンをうならせる場面多々、グランドスラム・バクーでは優勝し29歳(現在は30歳)にして初めてのツアータイトルを手にした。

そしてこの両者、昨年4月のグランプリ・アンタルヤで対戦してキタダイが両袖絞り合いからの浮落(支釣込足様に近い足を蹴ったところから)「一本」で勝利している。勝敗は予断を許さない。

キタダイは柔道がきれいゆえ、髙藤にとってはやりやすい。意外性があるタイプというわけでもなく、自分のペースで試合が進められるだろう。ガンバットが来た場合は圧に軽挙せずこれもしっかり自分の間合いで組み、ここぞの切所で無理をしなくてすむよう、粛々優位を取り続けたい。

以降は前述の通り準決勝でキム・ウォンジン(Aシード選手はフランシスコ・ガリーゴス(イタリア)だが力はキムが上)(大番狂わせ要素としてアゼルバイジャンのカラマット・フセイノフの上がりも考えておくべきだが)、決勝でルトフィラエフ。キムは1月のグランプリ・テルアビブで優勝しているがグランドスラム・パリにおける永山竜樹戦を見る限り仕上がりはまだまだ。髙藤が本調子であれば問題ないはず。ルトフィラエフには東京世界選手権準々決勝で内股「一本」で吹っ飛ばされているが、この際は両者のコンディションの差が大きかった。あの試合までは過去2戦2勝、これも髙藤が本調子であれば問題ないとは思われるが、ルトフィラエフのほうもパリ出場を取りやめてかなり良い状態にはあるはず。注目対決、髙藤にとってはまさに最後の関門だ。

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第1シードは世界選手権で髙藤を倒した>シャラフディン・ルトフィラエフ

【プールA】
第1シード:シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)
第8シード:トルニケ・チャカドア(オランダ)
有力選手:ジャバ・パピナシヴィリ(ジョージア)、レニン・プレシアド(エクアドル)


【プールB】
第4シード:エリック・タカバタケ(ブラジル)
第5シード:ヤン・ユンウェイ(台湾)
有力選手:ヤニスラフ・ゲルチェフ(ブルガリア)、ヨーレ・フェルストラーテン(ベルギー)、イ・ハリン(韓国)


【プールC】
第2シード:フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)
第7シード:キム・ウォンジン(韓国)
有力選手:カラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)、イスラム・ヤシュエフ(ロシア)


【プールD】
第3シード:髙藤直寿(パーク24)
第6シード:アシュリー・マッケンジー(イングランド)
有力選手:ガンバット・ボルドバータル(モンゴル)、フェリペ・キタダイ(ブラジル)、ケムラン・ヌリラエフ(ウズベキスタン)、アドニス・ディアス(アメリカ)、モリッツ・プラフキー(ドイツ)、テムル・ノザゼ(ジョージア)

■ 66kg級 海外勢の陣容魅力的もターゲット選手の出場はなし、阿部一二三に許されるは優勝のみ
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ライバルの丸山城志郎が不在、阿部一二三に許される戦果は優勝のみ

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世界選手権でも阿部相手に健闘した、ヨンドンペレンレイ・バスフーとの戦いが山になる。

(エントリー66名)

今大会の目玉、丸山城志郎(ミキハウス)と阿部一二三(日本体育大4年)による東京五輪代表を賭けた大一番が組まれるはずであったこの階級であるが、丸山が大会の1週間前に怪我による欠場を発表。日本からは阿部ただ1人が出場することとなった。

現役世界王者丸山の欠場という一事によってトーナメントのバリューは大きく下がることとなってしまったわけだが、それでも参加者の顔ぶれは豪華。優勝候補の阿部を筆頭に、昨年海外勢ナンバーワンとも呼ぶべき活躍を見せた東京世界選手権3位のデニス・ヴィエル(モルドバ)、異様なタフネスが売りの「モンゴルの粘り腰野郎」ことヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)ら、魅力的な選手が揃った。世界ランク11位の強豪ヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)がシードから漏れているあたりに、今回のレベルの高さ端的。

とはいえターゲット選手であるアン・バウル(韓国)やマニュエル・ロンバルド(イタリア)が出場しておらず、阿部の優勝自体は既定路線。代表争いの詳しい構図については配信済みのオーバービューを御覧いただきたいが、少しでも丸山との差を詰めねばならない阿部にとって、この陣容で許される結果は優勝のみだ。

阿部の配置は第6シードでプールDの下側。4回戦でニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)、準々決勝でここのところ力をつけてきているダニエル・カルグニン(ブラジル)と対戦することになるが、いずれも常の実力さえ出せれば問題なく勝利できるはず。決勝での対戦が濃厚なヴィエルが柔道がきれいで阿部にとって戦いやすい相手であることを考えれば、最大の勝負どころは恐らくヨンドンペレンレイが上がってくる準決勝。徹底した密着圧力とスタミナでひたすら消耗を強いてくるこの選手は、組み際と両袖が得意の形である阿部にとっては戦いにくい相手だ。相手に具体的な試合を終わらせる手段と勝負どころを見極める目が欠けていること、阿部がスタミナ面、集中力の面でヨンドンペレンレイに勝っていることから勝利自体は堅いと思われるが、果たしてどのように料理するのか。丸山との対戦を想定して準備をしてきているであろう、その仕上がり具合に注目だ。

ほか、海外勢の注目対決が序盤戦にいくつかあり、これも紹介しておきたい。まずはプールAの最上部に組まれているヴィエルとオルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)のカード。いずれも技一発の威力と密着線を得意とする実力者だけに、面白い攻防が見られるはずだ。そしてもうひとつは、プールC3回戦のガンボルド・ヘルレン(モンゴル)対グランドスラム・パリに続いて66kg級に出場のディヨルベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)の試合。こちらもともに密着しての力技、曲芸技を得意とする選手同士による対戦。ウロズボエフの本階級への適応具合を確認する意味でも必見だ。

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第1シードは階級きっての業師デニス・ヴィエル。

【プールA】
第1シード:デニス・ヴィエル(モルドバ)
第8シード:イェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)
有力選手:オルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)、セバスティアン・ザイドル(ドイツ)、ムフリディン・ティロヴォフ(ウズベキスタン)、アドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)、ヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)、パヴェル・ペトリコフ(チェコ)


【プールB】
第4シード:第4シード:キム・リマン(韓国) ※欠場
第5シード:バルチ・シュマイロフ(イスラエル)
有力選手:ヤクブ・シャミロフ(ロシア)、ズミトリー・ミンコウ(ベラルーシ)、オルランド・ポランコ(キューバ)、セルジュ・オレイニック(ポルトガル)、アルベルト・ガイテロ=マルティン(スペイン)

【プールC】
第2シード:ガンボルド・ヘルレン(モンゴル)
第7シード:ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)
有力選手:ディヨルベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)、ズミトリー・シェルシャン(ベラルーシ)、ツァイ・ミンイェン(台湾)、アブドゥラ・アブドゥルジャリロフ(ロシア)、バグラチ・ニニアシヴィリ(ジョージア)、タル・フリッカー(イスラエル)


【プールD】
第3シード:ダニエル・カルグニン(ブラジル)
第6シード:阿部一二三(日本体育大4年)
有力選手:ボグダン・イアドフ(ウクライナ)、モハメド・アブデルマウグド(エジプト)、イマド・バッスー(モロッコ)、ニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)

※ eJudoメルマガ版2月20日掲載記事より転載・編集しています。

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