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【eJudo’s EYE】ついに来た「五輪決め」の大一番、各階級代表争いのシナリオを整理する/グランドスラム・デュッセルドルフ2020オーバービュー

(2020年2月20日)

※ eJudoメルマガ版2月20日掲載記事より転載・編集しています。
【eJudo’s EYE】ついに来た「五輪決め」の大一番、各階級代表争いのシナリオを整理する
グランドスラム・デュッセルドルフ2020オーバービュー
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昨年8月以来の試合となる大野将平。ハイパフォーマンスが期待される。

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代表内定は確実、今大会でアモンディーヌ・ブシャーを潰しておきたい阿部詩。

文責:古田英毅

IJFワールドツアー今年2つ目のグランドスラム大会、グランドスラム・デュッセルドルフがいよいよあす21日から、現地のISSドームで開幕する。現時点でのエントリー実に718名。2週間前のグランドスラム・パリを超え、世界選手権に迫る超大型大会である。

今大会は日本にとって特別な意味を持つ大会。日本代表は8月に控える東京五輪に向けて段階的な選考制度を採っており、この欧州シリーズが昨年11月のグランドスラム大阪に続く2度目の「五輪決め」(代表内定)の機会となっている。既に2週間前のグランドスラム・パリまでで2番手選手の戦いは終わっており、最終戦である今大会に派遣されるのはすべて1番手(男子66kg級の阿部一二三と女子78kg超級の朝比奈沙羅を除く)。優勝した選手は大会後の強化委員会でそのまま五輪代表に内定する可能性が非常に高く、また「2番手以降と明確な差がある」と判断された選手もこの時点で内定が出されることとなる。残る選考会は4月の全日本選抜体重別ただ1大会であるから、「明確な差がある」とはすなわち「たとえ選抜体重別で負けてももはや逆転がない」状況を指す。内定のハードルは、実は字句そのままほどには高くないわけだ。直前で大量4人の欠場者が出たが、だからと言ってその階級に内定が打たれないというわけではないはず。

組み合わせ抽選は今晩(日本時間22時)。例によって各階級プレビュー記事はその後に配信させて頂くが、この稿ではまずそれに先んじて、各階級の代表争いの状況を整理しておきたいと思う。

■ 男子60kg級
日本代表選手:髙藤直寿(パーク24)

グランドスラム・パリで「敵失」がなく(永山竜樹が優勝)、男子ではもっとも競っている階級の1つと言っていい。とはいえ優勝すれば実力の接近如何に関係なく「制度上の差」を以て代表内定が打たれることは確実。負けた場合のみ、僅かに選抜体重別での再決戦の可能性が残る。1次エントリーを見る限りでは参加選手のレベルはさほど高くなく、髙藤直寿の勝敗を揺らすレベルの敵はターゲット選手であるシャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)とキム・ウォンジン(韓国)くらい。髙藤であれば平均値の出来で優勝出来るメンバーだ。

■ 男子66kg級
日本代表選手:阿部一二三(日本体育大4年)、[欠場]丸山城志郎(ミキハウス)

既報の通り丸山城志郎が欠場し、「丸山が直接対決で勝てばその場で代表内定」というわかりやすいシナリオはなくなった。阿部一二三が優勝すれば選抜体重別での決戦という形でシナリオは一種すっきりするが、もしここで不覚を取ってしまった場合が問題。この場合阿部は1年間で海外勢に2敗(世界選手権3位決定戦のマニュエル・ロンバルド(イタリア)戦における「一本」取り消しは明らかな誤審だから、実質3敗)したこととなり、かつ対丸山戦は1勝3敗で分が悪い。ここで、1年間海外勢に無敗だが8月以降ベストコンディションで試合をしていない丸山との「差が開いた」として決めてしまうのか、出るべき試合に出られなかった丸山にペナルティを与える形で「逆転がありうる」との認識をもって選抜体重別に決戦の場を設けるのか。このあたりは今回の阿部の成績の高低や内容ともリンクしてくるので現時点では何ともいえないところがある。強化は既に一定の線を設けているものと思われるが、ちょっと予想のしようがない。

エントリーリストには、阿部にとってもっとも厄介なロンバルドと、アン・バウル(韓国)の名前がない(アンは当初登録も取り消した模様)。シード上位を占めるのは体捌きで戦うタイプの業師デニス・ヴィエル(モルドバ)や、抱き勝負好きだが投げ切る力に欠けるヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)ら、比較的阿部と相性が合う選手ばかり。普通に力を出せば優勝、そのまま選抜体重別の決戦へと駒を進める可能性が大だ。

■ 男子73kg級
日本代表選手:大野将平(旭化成)

試合出場を極端に絞り、ここぞという試合に出力を集めてきた大野将平が満を持して「五輪決め」に登場。ハイパフォーマンスを期待して間違いないだろう。
そして今大会におけるこの階級の陣容、実は世界選手権以上。エントリーリストには五輪で最強の挑戦者となるであろうアン・チャンリン(韓国)と、2度大野と世界大会の決勝を戦っているルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)、そしてジャンプ力ならおそらく世界一のファビオ・バジーレ(イタリア)と面倒な3名が過たず名を連ねている。

とはいえアンはグランプリ・テルアビブを見る限りいまだ本調子には遠く、オルジョフとバジーレはそもそもの地力で大野には及ばない。高い確率で大野が優勝、そのまま五輪代表を決めるであろう。万が一大野が優勝できなかったとしても、ここまでの実績と直接対決の星取り、そして橋本壮市がグランドスラム大阪を落としているという「敵失」を勘案すれば、それでも内定が打たれる可能性は十分と見る。

■ 男子81kg級
日本代表選手:永瀬貴規(旭化成)

永瀬貴規が優勝すればそのまま内定。ただしエントリーリストのメンバーは凄まじく、サギ・ムキ(イスラエル)、サイード・モラエイ(モンゴル)と、永瀬と併せて現在の実力トップ3×世界タイトル保持者がずらりと並んでいる。とはいえ、永瀬は昨年4月の選抜体重別からここまで無敗、国際大会は4連勝中。2番手以下との成績の差は明らかだ。結果の如何を問わず(極端な不出来でなければ)そのまま内定する可能性が高いとみる。

■ 男子90kg級
日本代表選手:向翔一郎(ALSOK)

向翔一郎は優勝すれば代表内定間違いなしだが、エントリーリストの面子は青ざめるほど豪華。競技者として一段違う位相に歩を進めつつあるガク・ドンハン(韓国)、さらにベカ・グヴィニアシヴィリと、狂気のパフォーマンスでワールドマスターズを制したラシャ・ベカウリのジョージア勢2人、無冠の帝王ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)に、イワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)もいる。しかもリストを見わたす限り、これらターゲット選手だけでなく要所に面倒な選手が仕込まれそうな気配が色濃い。もっとも揉めそうな階級に、もっとも面倒なメンバーが集まったというのがこの階級の様相だ。世界選手権2位の向が第一走者、そして第二走者との間には容易に越えがたい壁が設けられているのは事実だが、万が一、あまりにパフォーマンスが悪かったりすれば事態が揉めることも十分考えられる。個人的には、この強力メンバーが本当にそのまま出るとしたら、表彰台に上がれば十分内定が取れる(=選抜体重別での逆転はないと判断される)のではないかと考える

■ 男子100kg級
日本代表選手:[欠場]ウルフアロン(了徳寺大職)

「敵失」があまりに大きい。羽賀龍之介と飯田健太郎のパリ組2人が揃って予選ラウンド敗退というこの極端な状況下にあっては、もはや逆転はありえない。釈然としないファンもいるかもしれないが、ここはそのままウルフアロンの内定が打たれるはず。

■ 男子100kg超級
日本代表選手:[欠場]原沢久喜(百五銀行)

この階級も2番手である影浦心がパリでタイトル奪取に失敗、この1年半国際大会のタイトルが1つもないという状況。さすがにもう逆転はないはず。強化委員会が原沢久喜を選び、代表レースは終わるとみる。

■ 女子48kg級
日本代表選手:渡名喜風南(パーク24)

まだ内定が出ていないのが不思議なくらいに2番手選手との差は開いている。ここまで内定が出なかったのは単に「制度の都合」と考えていい。成績の如何に関わらず渡名喜風南の代表内定は確実。かつ、エントリーリストを見る限り今大会に渡名喜の敵はいない。グランドスラム大阪でスポット的にハイパフォーマンスを見せたフリア・フィゲロア(スペイン)が目立つくらい。優勝して文句なしに代表を決めてくれるはずだ。

■ 女子52kg級
日本代表選手:阿部詩(日本体育大1年)

阿部詩の代表内定自体は確実。48kg級の渡名喜同様、制度とスケジュールの都合でここまで内定が伸びただけと解釈して良いかと思われる。今大会の焦点はグランドスラム大阪で思わぬ敗戦を喫したアモンディーヌ・ブシャー(フランス)へのリベンジなるかただ一点。そしてこれが、全階級を通じた今大会女子最大の注目ポイントだ。

■ 女子57kg級
日本代表選手:[欠場]芳田司(コマツ)

グランドスラム大阪にワールドマスターズと2大会連続V逸、2番手の玉置桃との直接対決にも連敗したまま今大会を欠場した1番手芳田司。そして芳田に連勝しながら勝負どころのワールドマスターズとグランドスラム・パリをいずれも優勝出来なかった2番手玉置桃。どちらも「下がり目」のこの階級は、もう読めない。過去の実績では世界選手権で3度決勝に進出し、2018年には頂点に立っている芳田が圧倒的。芳田の状態はかなり疑問だが、「選抜体重別での直接対決での逆転が本当にあり得るか」となるともうこれは強化委員の考え方次第。14階級中、もっとも読めない階級かもしれない。個人的には「両者とも下がり目」なら、実績の上積み圧倒的でここまで見せた最高到達点が高い芳田に、この時点で手が挙がってもまったくおかしくないと考える。

■ 女子63kg級
日本代表選手:田代未来(コマツ)

ワールドマスターズでクラリス・アグベニュー(フランス)を倒して猛追気運にあった2番手・鍋倉那美がグランドスラム・パリでV逸。直近の直接対決での勝利歴が「効かない」ところまで位置を下げている。

であればもともと実績の差は圧倒的、1番手田代未来が優勝すればそのまま代表に内定と考えて間違いないだろう。そして今大会は日本勢唯一の天敵・アグベニューの名前がエントリーリストにない。たった1つのハードルが存在しない以上、普通に考えて田代優勝の可能性は極めて高い。ここまでくればシナリオが狂う可能性は僅少。田代が優勝、五輪代表内定という筋書きでほぼ決まりだろう。たとえV逸でも、内定の可能性は極めて高いと考える。

■ 女子70kg級
日本代表選手:新井千鶴(三井住友海上)

2番手大野陽子はグランドスラム・パリで優勝も、ワールドマスターズの初戦敗退で既に追撃者としての資格を半ば失っていた状況。一方1番手新井千鶴のほうも世界選手権以来の精神的、技術的な閉塞から抜け出せたとは言えないが、なにしろこの3年間の実績が圧倒的。ここで優勝すれば制度上代表内定は確実という位置にはつけている。そしてエントリーリストを一見する限り、パリ大会とは打って変わって海外勢のグレードがかなり落ちた。力比べで新井に迫るものはゼロ、アップセットを起こすような変化球タイプの曲者の影も薄い。新井本人の自滅さえなければ、順当に優勝するだろう。率直に言って、新井にとってはかなり良い巡りである。

■ 女子78kg級
日本代表選手:濵田尚里(自衛隊体育学校)

1番手・濵田尚里をグランドスラム大阪で下した梅木真美が、しかし追撃を期して乗り込んだワールドマスターズでは予選ラウンド敗退。続くグランドスラム・パリも3位に終わり、2018年世界選手権金メダリストにして2大会連続のファイナリストである濵田の立ち位置は相対的に上がっている。今大会で優勝なら文句なし、選抜体重別での逆転ももはや考えられないので、少なくとも表彰台に上がればそのまま内定が出るものと思われる。エントリーリストを見渡すと、マイラ・アギアール(ブラジル)にファニーエステル・ポスヴィト(フランス)と歯ごたえのある敵はいるものの、いずれもAシード配置が予想され濵田とはベスト4までは対戦しない可能性が高い。波乱の可能性は極めて少ない。

■ 女子78kg超級
日本代表選手:朝比奈沙羅(パーク24)

既に代表は素根輝に決しており、朝比奈沙羅が意地を見せられるかどうかだけが焦点。イダリス・オルティス(キューバ)、マリア=スエレン・アルセマン(ブラジル)、イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)にラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)、ベアトリス・ソウザ(ブラジル)とエントリーリストには階級の主役たちが一通り揃っている。力を見せておくにはまたとない機会。

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