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グランドスラム・パリ最終日女子3階級プレビュー(70kg級、78kg級、78kg超級)

(2020年2月9日)

※ eJudoメルマガ版2月8日掲載記事より転載・編集しています。
グランドスラム・パリ最終日女子3階級プレビュー
(70kg級、78kg級、78kg超級)
文責:eJudo編集部

■ 70kg級・世界王者ガイが地元に凱旋、大野陽子と新添左季がそれに挑む
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東京世界選手権を制したマリー=イヴ・ガイ

(エントリー43名)

現役世界王者のマリー=イヴ・ガイ(フランス)が地元大会に凱旋。ほか、マルゴ・ピノ(フランス)、サリー・コンウェイ(イングランド)、アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)、バルバラ・ティモ(ポルトガル)ら旬の強豪が色濃く参戦、この階級の有力選手の多さを反映して非常に分厚いトーナメントが形成された。新井千鶴(三井住友海上)やキム・ポリング(オランダ)など世界大会で優勝を狙うクラスの強豪の出場はガイのみだが、世界選手権と比べても見劣りしない豪華な陣容だ。

優勝候補はもちろん第1シードのガイ。密着してのパワーファイトというリスキーなスタイルゆえに戴冠以降はタイトルから遠ざかっており、地元開催の今大会でこの嫌な流れを払拭したいところ。相当に気合を入れて臨んでくると予想され、久々この人のハイパフォーマンスが見られるはずだ。

日本代表は大野陽子(コマツ)と新添左季(自衛隊体育学校)。国内の1番手である新井は東京世界選手権以降、組み手技術を因とする不調に陥っているが、追いかける立場の大野と新添のほうも調子が上がらず、格下相手の思わぬ敗戦が目立っている。一番手の不調にも関わらず結果としてその差はむしろ広がっているという構図で、序列逆転の可能性はほぼない状況だ。それでも今できることは勝利のみ、可能性が見えたときのために何としても優勝しておきたい。組み合わせでは大野が初戦(2回戦)でケリタ・ズパンシック(カナダ)と対戦予定、まずここが最初の山場。以降もコンウェイをはじめとした実力者との戦いが続くが、本調子の大野であれば十分に決勝進出が狙えるはずだ。一方の新添も2回戦でミヘイラ・ポレレス(オーストリア)、3回戦でアッスマ・ニアン(モロッコ)、準々決勝でピノとなかなか厳しい組み合わせとなっている。最近の調子を見る限り試合巧者で担ぎ技主体のピノには苦戦を強いられることになると予想されるが、なんとかここを勝ち上がって準決勝で王者ガイに挑みたい。こちらも本来ならば決勝進出するだけの力を持っているはず。日本人決勝の実現に期待したい。

ほか、プールC上側の山では先日のグランプリ・テルアビブで決勝を争ったばかりのコンウェイとキム・ソンヨン(韓国)のカードが3回戦で早くも組まれている。これは序盤戦屈指の好カード。併せてプールD2回戦のサンネ・ファンダイク(オランダ)対ティモ、そしてその勝者対マリア・ベルナベウ(スペイン)の3回戦も是非チェックしておきたい。

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グランドスラム大阪で優勝もワールドマスターズでは不首尾、難しい立場の大野陽子

【プールA】
第1シード:マリー=イヴ・ガイ(フランス)
第8シード:マリア・ペレス(プエルトリコ)
有力選手:ヒルデ・ヤヘル(オランダ)、アリーチェ・ベッランディ(イタリア)、ジェンマ・ハウエル(イングランド)

【プールB】
第4シード:マルゴ・ピノ(フランス)
第5シード:ミヘイラ・ポレレス(オーストリア)
有力選手:ロクサーヌ・タエイモンス(ベルギー)、エリザヴェト・テルツィドゥ(ギリシャ)、タイシア・キリエワ(ロシア)、ダリア・ポゴジェレッツ(ポーランド)、アッスマ・ニアン(モロッコ)
日本代表選手:新添左季(自衛隊体育学校)

【プールC】
第2シード:サリー・コンウェイ(イングランド)
第7シード:ケリタ・ズパンシック(カナダ)
有力選手:キム・ソンヨン(韓国)、ガブリエラ・ヴィレムス(ベルギー)、マディーナ・タイマゾワ(ロシア)
日本代表選手:大野陽子(コマツ)

【プールD】
第3シード:サンネ・ファンダイク(オランダ)
第6シード:アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)
有力選手:バルバラ・ティモ(ポルトガル)、マリア・ベルナベウ(スペイン)、グルノザ・マトニヤゾワ(ウズベキスタン)、ツェンドアユシュ・ナランジャルガル(モンゴル)

■ 78kg級・マロンガ、ポスヴィトらフランスのトップ3が競演
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世界王者マドレーヌ・マロンガ

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いつの間にか大躍進、ついにワールドマスターズをも制したファニー=エステル・ポスヴィト

(エントリー29名)

エントリーは29名。グランドスラム・パリというツアー切っての「お祭り」であることを考えれば少なく感じられるかもしれないが、地元フランスチームが充実していることで相応のレベルが確保されている。

そのフランスは第1シードに東京世界選手権の覇者マドレーヌ・マロンガ、第4シードに2011年パリ世界選手権の覇者オドレイ・チュメオ、そして第6シードにファニー=エステル・ポスヴィトとトップ3を惜しみなくエントリー。注目はもちろん王者マロンガ、そしてもと70kg級のポスヴィトだ。ポスヴィトは昨年5月に階級を上げて以降、実は表彰台登攀を連発。王者マロンガが東京世界選手権での戴冠後、持ち前のムラ気を悪い方向に発揮して煮え切らないパフォーマンスを続ける一方、こちらはプレッシャーとは無縁ののびやかな柔道でグランドスラム大阪では3位、12月のワールドマスターズでは堂々の優勝を飾っている。五輪代表争いにおける序列という意味ではマロンガの優位は揺らがないと思われるが、秋以降いまだタイトルがなくさすがに尻に火がついた状況のはず。マロンガが久々本来の力を見せてくれるか、はたまた好調ポスヴィトがさらに躍進し、ついに代表争いに化学変化を起こすところまで評価を上げるのか。なかなか楽しみな大会である。

優勝候補としてはこの3名に加えて、第2シードの長身選手クララ・アポテカー(スロベニア)と日本の梅木真美(ALSOK)の名が挙がる。梅木はワールドマスターズで意外な早期敗退。グランドスラム大阪優勝で再び上りかけた代表挑戦への階段を一段おりてしまった状況だが、ここでしっかり勝って第1候補の濵田尚里にプレッシャーを掛けたいところ。ベルギー国際大会に勇躍参戦、優勝から中6日で出場している第3シード、カリエマ・アントマルチ(キューバ)の奮戦にも期待したい。

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日本代表は梅木真美。グランドスラム大阪を制しながらワールドマスターズではポスヴィトに屈した。

【プールA】
第1シード:マドレーヌ・マロンガ(フランス)
第8シード:アントニーナ・シュメレワ(ロシア)
有力選手:ヤヒマ・ラミレス(ポルトガル)

【プールB】
第4シード:オドレイ・チュメオ(フランス)
第5シード:梅木真美(ALSOK)
有力選手:イ・ジョンギュン(韓国)

【プールC】
第2シード:クララ・アポテカー(スロベニア)
第7シード:ベアタ・パクト(ポーランド)
有力選手:ユン・ヒュンジ(韓国)

【プールD】
第3シード:カリエマ・アントマルチ(キューバ)
第6シード:ファニー=エステル・ポスヴィト(フランス)
有力選手:アナスタシア・タルチン(ウクライナ)

■ 78kg超級・フランスとブラジルの代表争いに注目、躍進ディッコの出来やいかに
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フランス期待のホマーヌ・ディッコ。

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第1シードはマリア=スエレン・アルセマン

(エントリー39名)

たとえば素根輝やイダリス・オルティス(キューバ・6日前にはベルギー国際に出場して優勝している)、朝比奈沙羅といった世界チャンピオンクラスの出場はなし。しかしラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)やカイラ・サイート(トルコ)、加えてキム・ミンジョン(韓国)にマリア=スエレン・アルセマン(ブラジル)、テッシー・サフェルコウルス(オランダ)など続くグループの有力選手は色濃く参戦という、紹介する側からするともっともラベルの貼りにくい陣形。間違いなく面白くレベルも高いのだが、みどころはバラけているという通好みのトーナメントとなった。

その中にあってひとつ、フランスの五輪代表争いという注目ポイントを提示したい。おそらくは本命として英才教育を受けていた20歳ホマーヌ・ディッコが負傷で長期離脱する中、東京世界選手権ではアン=ファトゥメタ・ムバイロ(フランス)、ツアーではジュリア・トロフア(フランス)が踏ん張ってそれなりに結果を残してきた。そして代表争いの行方混沌としてきたこのタイミングで、ようやくディッコが戦線復帰。11月のグランドスラム大阪では初戦敗退だったが、1月のグランプリ・テルアビブではついに優勝を飾って駆け込みの五輪代表権獲得にアクセルを踏み込んでいる状況だ。

資質としてはディッコが図抜けているとみるが、その才能と周囲の期待をしっかり結果に反映できるか。ここ1年かつての育成能力を取り戻した感のあるフランス女子チームにとっても、曲がり角の大会である。

代表争いということではブラジルも面白い。第1シードを張るのは前述の31歳アルセマンで国際的な評価は圧倒的にこの選手ではないかと思われるが、このところ光る試合を見せているのは21歳のベアトリス・ソウザのほう。11月のグランドスラム大阪では朝比奈沙羅を払腰一発で屠り、昨年10月のグランドスラム・ブラジリアでは決勝の直接対決で過去4敗のアルセマンからついに初勝利を挙げてもいる。アルセマンのような「自分より強い選手に勝つ」ような深みや意外性があるタイプではないが、五輪代表が十分狙える位置までしっかり成績を積みあげて来た。今大会は第3シード、決勝ラウンドでの直接対決も十分あり得るのではないだろうか。注目である。

日本からは冨田若春が出場。2戦目でアルセマンと戦わねばならない配置であるが、純実力的には優勝も狙える選手。大ブレイクに期待したい。

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日本からは冨田若春が出場する

【プールA】
第1シード:マリア=スエレン・アルセマン(ブラジル)
第8シード:アン=ファトゥメタ・ムバイロ(フランス)
有力選手:ホシェリ・ヌネス(ポルトガル)
日本代表選手:冨田若春(コマツ)

【プールB】
第4シード:マリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)
第5シード:カイラ・サイート(トルコ)
有力選手:ハン・ミジン(韓国)、サンドラ・ヤブロンスキーテ(リトアニア)、クセニーア・チビソワ(ロシア)、ジュリア・トロフア(フランス)

【プールC】
第2シード:ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
第7シード:テッシー・サフェルコウルス(オランダ)
有力選手:キム・ミンジョン(韓国)、ガリーナ・タラソワ(ウクライナ)、ホマーヌ・ディッコ(フランス)

【プールD】
第3シード:ベアトリス・ソウザ(ブラジル)
第6シード:ニヘル・シェイフ=ルーフー(チュニジア)
有力選手:サラ・アドリントン(イングランド)、サンタ・パケニテ(リトアニア)、アナマリ・ヴェレンセク(スロベニア)

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