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グランドスラム・パリ最終日男子4階級プレビュー(81kg級、90kg級、100kg級、100kg超級)

(2020年2月9日)

※ eJudoメルマガ版2月9日掲載記事より転載・編集しています。
グランドスラム・パリ最終日男子4階級プレビュー
(81kg級、90kg級、100kg級、100kg超級)
文責:eJudo編集部

■ 81kg級 世界王者サギ・ムキ中心に強豪密集、藤原崇太郎は背水の陣
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東京世界選手権の覇者サギ・ムキ。

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第2シードはワールドマスターズ王者マティアス・カッス。

(エントリー70名)

総エントリー数70名、大会第2日目最大の巨大トーナメントである。下記有力選手リストをご確認いただければわかるとおり、一息には書き切れないくらいの強豪がパリに集った。

第1シードに座るのは現役世界王者のサギ・ムキ(イスラエル)。昨年12月のワールドマスターズでは準決勝で負った怪我のために決勝を棄権しており、先月行われた地元の晴れ舞台グランプリ・テルアビブも出場を回避した。復帰戦となる今大会、いかなるパフォーマンスを見せるのかに注目が集まる。

対抗1番手は、第2シード配置の2019年ワールドマスターズ王者マティアス・カッス(ベルギー)。同大会では後の先という新たなモードを持ち込んで返し技を決めまくった。ほか、今大会での再起を狙う藤原崇太郎(日本体育大3年)にヴェダット・アルバイラク(トルコ)、フランク・デヴィト(オランダ)など世界大会メダルクラスの強豪がムキ打倒を目指して腕を撫す。

日本代表の藤原は文字通り背水の陣。もともと安定感が売りのはずであったが、昨年は東京世界選手権にワールドマスターズとビッグタイトル2大会で初戦敗退を喫してしまい、復活基調にある永瀬貴規(旭化成)に序列の逆転を許してしまった。世界王者のムキが出場する今大会はアピールの大チャンス。恐らくグランドスラム・デュッセルドルフに出場する永瀬の結果を待つという状況に変わりはないが、ここでムキを倒して優勝を飾り、少しでもプレッシャーを与えておきたい。

ほか、注目したいのは今回ジョージアから出場のウラジミール・アハルカツィとギオルギ・カツィアシヴィリ。アハルカツィは言わずと知れた昨年の世界ジュニア王者。両袖からの袖釣込腰が得意技であり、ジュニアカテゴリではこの技を決めまくっている。一方のカツィアシヴィリは昨年12月に実力者揃うジョージアの国内選手権で優勝しており、これまで目立った実績は残していないもののかなりの力を持っていると予想される。この階級のジョージアの若手はこの2名に加えて東京世界選手権3位のルカ・マイスラゼ、タト・グリガラシヴィリと異様な充実期を迎えている。今のところ東京五輪の代表レースではマイスラゼが一歩リードしている形だが、ここでしっかりとアハルカツィとカツィアシヴィリの戦いぶり、そしてその潜在能力をチェックしておきたい。

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藤原崇太郎は背水の陣。

【プールA】
第1シード:サギ・ムキ(イスラエル)
第8シード:アラン・フベトソフ(ロシア)
有力選手:アレクシオス・ンタナツィディス(ギリシャ)、クリスティアン・パルラーティ(イタリア)、ディダル・ハムザ(カザフスタン)ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)、ニャムスレン・ダグワスレン(モンゴル)、シャロフィディン・ボルタボエフ(ウズベキスタン)

【プールB】
第4シード:藤原崇太郎(日本体育大3年)
第5シード:アントワーヌ・ヴァロア=フォルティエ(カナダ)
有力選手:イ・ムンジン(韓国)、ギオルギ・カチアシヴィリ(ジョージア)、エマニュエル・ルセンティ(アルゼンチン)、ティム・グラムコフ(ドイツ)

【プールC】
第2シード:マティアス・カッス(ベルギー)
第7シード:イヴァイロ・イヴァノフ(ブルガリア)
有力選手:アバス・アジゾフ(ロシア)、オトゴンバータル・ウーガンバータル(モンゴル)モハメド・アブデラル(エジプト)、アルファ=ウマ・ジャロ(フランス)、イ・スンホ(韓国)、ドリン・ゴトノアガ(モルドバ)、ウラジミール・ゾロエフ(キルギスタン)

【プールD】
第3シード:ヴェダット・アルバイラク(トルコ)
第6シード:フランク・デヴィト(オランダ)
有力選手:レアンドロ・ギヘイロ(ブラジル)、アントニオ・エスポージト(イタリア)、アレクサンダー・ヴィーチェルツァク(ドイツ)、エティエンヌ・ブリオン(カナダ)、ロビン・パチェック(スウェーデン)、アンリ・エグティゼ(ポルトガル)、カモリディン・ラスロフ(ウズベキスタン)、ウラジミール・アハルカツィ(ジョージア)

■ 90kg級 第1シードのシェラザディシヴィリに試練の組み合わせ、長澤も最激戦区に配される
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ニコロス・シェラザディシヴィリが第1シードに配された。

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東京世界選手権の覇者ノエル・ファンテンド。

(エントリー61名)

現役世界王者のノエル・ファンテンド(オランダ)と2018年の世界王者ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)が揃って参戦。加えてイワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)にミカイル・オゼルレル(トルコ)、地元選手のアクセル・クレルジェ(フランス)などトップ選手がずらりと顔を揃えており、グランドスラム・パリの名に恥じない豪華、かつ魅力的なトーナメントとなっている。

純戦力的な観点での優勝候補は第1シードのシェラザディシヴィリだが、初戦(2回戦)からリ・コツマン(イスラエル)、以降も3回戦でダヴラト・ボボノフ(ウズベキスタン)、準々決勝でアクセル・クレルジェ(フランス)と、シード順をまったく反映しない過酷な組み合わせを引いてしまった。なかでもクレルジェには過去1勝4敗と極端に相性が悪い。直近の対戦である昨年12月のワールドマスターズでは勝利しているものの、今大会がクレルジェの地元フランスで開催されていることを考慮すれば相当な苦戦を強いられることになるだろう。

日本代表は村尾三四郎(東海大1年)と長澤憲大(パーク24)の2名。村尾はプールBに置かれており、初戦から好選手ギオルギ・パプナシヴィリ(ジョージア)と当たるなかなかにタフな組み合わせ。3回戦では過去苦杯を喫したママダリ・メディエフ(アゼルバイジャン)との対戦が予想され、ここを勝ち抜かなければ敗者復活戦に進むことすらできない。もちろん、ここが勝ち上がり上最大の勝負どころだ。一方の長澤はプールDに配され、こちらも一昨年のワールドマスターズで敗れた来歴のあるダヴィド・クラメルト(チェコ)と初戦から戦わねばならない少々嫌な引き。この選手には昨年のワールドマスターズでリベンジを果たしているが、ここを勝ち抜いた後もプールを抜けるまでにフセン・ハルモルザエフ(ロシア)、コムロンショフ・ウストピリヨン(タジキスタン)、シルバ=モラレスと休む間もなく強豪と連戦せねばならない。大げさでなくこれだけで1大会分以上のボリュームがある、極めて過酷な組み合わせだ。

国内の序列では東京世界選手権2位の向翔一郎(ALSOK)が五輪代表争いの1番手に座っているが、この大会以降はいまひとつ結果を残せておらず、他階級ほど1番手との間の「溝」が深く切られていない状況と考えられる。村尾、長澤にもチャンスがないとは言い切れない状況だ。あくまでもデュッセルドルフ大会に派遣されるであろう向の結果次第ではあるが、もし今大会のこの陣容で優勝することができれば極めて大きなアピールになるだろう。気持ちのこもった戦いに期待したい。

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世界選手権では団体戦代表を務めた村尾三四郎。

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長澤憲大は厳しい山に配置。

【プールA】
第1シード:ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)
第8シード:アクセル・クレルジェ(フランス)
有力選手:リ・コツマン(イスラエル)、ロベルト・フロレンティーノ(ドミニカ共和国)、ダヴラト・ボボノフ(ウズベキスタン)、ペテル・ジルカ(スロバキア)、ザッカリー・バート(カナダ)、スルジャン・ムルヴァリエヴィッチ(モンテネグロ)

【プールB】
第4シード:ママダリ・メディエフ(アゼルバイジャン)
第5シード:ミカイル・オゼルレル(トルコ)
有力選手:ギオルギ・パプナシヴィリ(ジョージア)、ガンツルガ・アルタンバガナ(モンゴル)、イェスパー・シュミンク(オランダ)
日本代表選手:村尾三四郎(東海大1年)

【プールC】
第2シード:ノエル・ファンテンド(オランダ)
第7シード:イスラム・ボズバエフ(カザフスタン)
有力選手:ニコラス・ムンガイ(イタリア)、アヴタンディル・チリキシヴィリ(ジョージア)、アブデラフマネ・ベナマディ(アルジェリア)、コルトン・ブラウン(アメリカ)

【プールD】
第3シード:イワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)
第6シード:長澤憲大(パーク24)
有力選手:クエジョウ・ナーバリ(ウクライナ)、ダヴィド・クラメルト(チェコ)、フセン・ハルモルザエフ(ロシア)、ナシフ・エリアス(レバノン)、コムロンショフ・ウストピリヨン(タジキスタン)

■ 100kg級 レベルは世界選手権なみ、復活羽賀龍之介の出来に期待
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ワールドマスターズで「確変」パフォーマンスを見せたマイケル・コレルが第1シード。

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東京世界選手権の覇者ジョルジ・フォンセカ

(エントリー51名)

12月のワールドマスターズで素晴らしいパフォーマンスで優勝を飾った、「柔道サイボーグ」ことマイケル・コレル(オランダ)が第1シード。ここに現役世界王者の業師ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)、ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)、欧州王者のアルマン・アダミアン(ロシア)らが加わり、さらに羽賀龍之介(旭化成)と飯田健太郎(国士舘大3年)の日本勢2名をはじめとする世界大会メダルクラスの強豪が大勢顔を揃えた。序盤戦から注目カードが目白押しの、世界大会と比べても遜色のない超豪華トーナメントだ。この階級は上位選手の実力が伯仲しているため、今回も優勝候補として特定の選手の名前を挙げることは難しい。

日本代表の2名は他階級と同じく、ともに背水の陣。ただし羽賀は昨年11月のグランドスラム大阪で抜群の出来で優勝しており、今大会にも代表争いの展望を超えて大きな期待がかかる。組み合わせでは同大会で決勝を争ったエルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)と2回戦を戦うことになっており、ここが最初の山場。次戦の相手もシャディー・エルナハス(カナダ)であり、勝ち上がりの難易度は非常に高い。とはいえ、前述のグランドスラム大阪で見せたようなパフォーマンスが発揮出来れば優勝も十分に可能。今一度ベテランの矜持を見せてほしい。一方の飯田は比較的戦いやすい位置を引き、プールを抜けるまでの山場は準々決勝のリパルテリアニ戦のみ。飯田は極端なパワーファイターを苦手とする一方でリパルテリアニのように「柔道自体が強い」巧者タイプは得意としており、平均値の出来を出せればベスト4進出までは問題ないはずだ。国内の100kg級ではウルフアロン(了徳寺大職)がトップを走っているが、ここのところウルフはあと一歩勝ち切れずに実は3大会連続で優勝を逃している。ここで勝利してプレッシャーを掛け、デュッセルドルフ大会に出場するであろうウルフの結果を待ちたい。

ほか、今大会カスタムの注目選手として地元フランスのシリル・マレの名前を挙げておきたい。かつてマレはこの大会で3連覇(4連覇目は決勝で飯田に敗れ阻止された)を果たすなど滅法地元に強いことで知られていた。その神通力も近年失せ気味、ツアーの表彰台からも遠ざかってしまってはいるが、ところどころで光る戦いは見せており、いまだ上位進出をするだけの力はあるとみる。地元・パリの大歓声を受けての復活があるか、その戦いぶりに注目したい。

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グランドスラム大阪を制した羽賀龍之介

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飯田健太郎は第7シード

【プールA】
第1シード:マイケル・コレル(オランダ)
第8シード:ベンジャミン・フレッチャー(アイルランド)
有力選手:シリル・マレ(フランス)、イワン・レマレンコ(アラブ首長国連邦)、ヨアキム・ドファービー(スウェーデン)、ラウリン・ボーラー(オーストリア)、カイハン・オズチチェク=タカギ(オーストラリア)

【プールB】
第4シード:ペテル・パルチク(イスラエル)
第5シード:シャディー・エルナハス(カナダ)
有力選手:カズベク・ザンキシエフ(ロシア)、オニセ・サネブリゼ(ジョージア)、フセイン=シャー・シャー(パキスタン)、ダニエル・ディチェフ(ブルガリア)、ミキタ・スヴィリド(ベラルーシ)、エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)
日本代表選手:羽賀龍之介(旭化成)

【プールC】
第2シード:ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)
第7シード:飯田健太郎(国士舘大3年)
有力選手:レイエス・ブヤクブ(アルジェリア)、ズラトコ・クムリッチ(クロアチア)、イェフゲニース・ボロダフコ(ラトビア)

【プールD】
第3シード:ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)
第6シード:ラグワスレン・オトゴンバータル(モンゴル)
有力選手:ムハマドカリム・フラモフ(ウズベキスタン)、アルマン・アダミアン(ロシア)ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)アレクサンドル・イディー(フランス)ミクロス・サーイエニッチ(ハンガリー)

■ 100kg超級 絶対王者リネール登場、担ぎ技系が「包囲網」敷く
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テディ・リネールが久々ベルシーの畳に立つ

(エントリー40名)

強豪が打ち揃った豪華トーナメント。そして、絶対王者テディ・リネール(フランス)が2013年以来7年ぶりに地元パリの畳に上がる。現在の世界ランクは32位だが、東京五輪での強豪との連戦を避けるべく、シード権の獲得を目指しているとの情報だ。であればこの先それなりの頻度で大会に出てくることが予想され、そうなると連戦に耐え得るだけのコンディションに仕上げて来ているはず。ハイパフォーマンスが期待される。

ドローの結果、3回戦で日本代表の影浦心(日本中央競馬会)との対戦が組まれることとなった。この試合は大会全体を通じた最注目試合の1つだ。

両者は昨年10月のグランドスラム・ブラジリアで対戦しており、GS延長戦でリネールが払腰「技有」を得て勝利している。しかし影浦も小内刈で惜しい場面を作るなど前評判に違わぬ相性の良さを垣間見せており、1度実際の対戦を経験した上で迎える今回にはかなり期待が持てるのではないだろうか。現状国内の代表争いは原沢久喜(百五銀行)の独走状態だが、リネールを倒したとなれば話は別。かなりの議論を呼ぶことが予想され、今回の再戦は影浦にとってはまさに千載一遇の大チャンスと言えるだろう。健闘に期待したい。

なお、今大会には影浦以外にもキム・ミンジョン(韓国)、オール・サッソン(イスラエル)、ロイ・メイヤー(オランダ)、ベクムロド・オルティボエフ(ウズベキスタン)とリネールが比較的苦手としている動ける担ぎ技系の選手が多く参加している。タイプだけで見れば「リネール包囲網」の感すらあり。リネールがこれをどう突破するのか。東京五輪に向けた現時点の仕上がり具合を測る意味でも、1試合も逃さず確実にチェックしたい。

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影浦心はリネールと2度目の対決。

【プールA】
第1シード:ロイ・メイヤー(オランダ)
第8シード:ダヴィド・モウラ(ブラジル)
有力選手:ナイダン・ツヴシンバヤル(モンゴル)、ゲラ・ザアリシヴィリ(ジョージア)、ベクムロド・オルティボエフ(ウズベキスタン)

【プールB】
第4シード:ヘンク・フロル(オランダ)
第5シード:オ-ル・サッソン(イスラエル)
有力選手:キム・ミンジョン(韓国)、ベクボロト・トクトゴノフ(キルギスタン)、ヨハネス・フレイ(ドイツ)、アンディー・グランダ(キューバ)

【プールC】
第2シード:イナル・タソエフ(ロシア)
第7シード:影浦心(日本中央競馬会)
有力選手:ヤキフ・ハモー(ウクライナ)、ユーリ・クラコヴェツキ(キルギスタン)、レヴァニ・マティアシヴィリ(ジョージア)、アリシェル・ユスポフ(ウズベキスタン)、テディ・リネール(フランス)、ステファン・ヘギー(オーストリア)

【プールD】
第3シード:キム・スンミン(韓国)
第6シード:ラファエル・シウバ(ブラジル)
有力選手:スヴェン・ハインル(ドイツ)、ウルジバヤル・デューレンバヤル(モンゴル)ウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)

※ eJudoメルマガ版2月9日掲載記事より転載・編集しています。

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